「特変」結成編4-1「冷却の日々(3)」

あらすじ

「その前に……一つ連絡事項? 正直これ連絡する必要あんのかって私は思うんだけど、云えって云われてるから云っとく」☆「「特変」結成編」4章2節その3。いよいよ第一学年の修学旅行が始まる……! 松浦さん達、果たして大丈夫なのか。そして謙一くんら特変が選んだルートとは……?

↓物語開始↓

290711



Face_ishikawa

……此処が、女潤……


Ishikawa

 私たちの選んだコースの集合場所は、女潤都のグローバルステーションだった。
これから、私たちが班ごとにそれぞれお世話になる場所。1・2日目はこの全員で特定のスケジュールをこなすけど、3日目から各班に別れて自主的に立ててきたスケジュールに従って動く。


Ishikawa

 ……特変の誰かは、今のところ姿を見せない。彼らだって制度上同じ1年であって、10コースのうちどれかをそれぞれが選ぶんだろう。
 勿論、誰も此処を選ばない可能性もある。けど……そんなのは、希望でしかなくて。


Ishikawa

 実際集合時間に集合した私たちも、自分たちで立ててきた計画にワクワクする気持ちを持ちながらも、それを覆う恐怖に、多かれ少なかれ苦しんでいた。


Face_matsuura

…………


Face_haginuno

松浦ちゃん、大丈夫? お茶とか飲んだら、落ち着くかも


Face_matsuura

大丈、夫……


Ishikawa

 全然大丈夫じゃない松浦ちゃんは、日曜日は多少寝れたらしい……けど、これまでの精神的疲労を取り除けるほどの熟睡ではなかっただろう。
 無理もない……私も、怖い。今日は、当日なんだ。


Ishikawa

 修学旅行という逃げ場のない空間で……
 革命を起こした私たちに対して勝利した特変が、あの日以降初めて私たちに近付くのだから。


Ishikawa

 罪を犯した者は罰せられる。罪を定めるのは、神であり――勝者だ。


Ishikawa

 松浦ちゃんは、恐れている。同時に、仕方無いと思っている。
 私たちはどうしようもない、救いようのない、彼らの怒りを買った罪人で……。
 だから確実に、私たちは裁かれるのだと。


Ishikawa

 あの日の光景は、昨日のことのように、鮮明に視覚に染みついている。


Ishikawa

 400人もの、真理学園の強者たちが、井澤謙一という特変によって、敗北した。
 それは奇跡のような事態。神のような業。であるならば……元から私たちの上に立っていた彼は、私たちの神だったのだろう。
 だから結局、必然の裁きだった――私たちは全員、彼を裏切り、彼に敵対し、彼を怒らせたのだから。


Ishikawa

 皆、それが分かっていた。いずれ、あの400人の人達と同じように、私たちも――


Ishikawa

 ――どうして、こうなったの……?


Ishikawa

 修学旅行の計画は、とても楽しかったのに。
 松浦ちゃんだって、あんなに笑って、楽しみにしていたのに。


Ishikawa

 私たちって、一体――


Face_kaoru

はーい、人員点呼完了、全員来てるみたいで良かった良かった。一部顔暗い奴いるけど、トラベル行事なんだからもっと喜んでいいのよー


Face_yukari

……それはちょっと、この空気では無茶なんじゃ……


Face_kaoru

今からこの女潤満喫コースを選択した都会に憧れてるアンタ達のその荷物を一旦ホテルに詰め込む作業に入るんだけど、その前に……一つ連絡事項? 正直これ連絡する必要あんのかって私は思うんだけど、云えって云われてるから云っとく


Face_kaoru

えーっと……そのまま文面読み上げるわねー


Face_kaoru

「特変管理職の井澤謙一から、しっかり準備をして修学旅行当日を迎えることのできた超絶優秀で羨ましい君たちに、正直連絡する必要も無いだろとは思うけれども――」ってそれもう私が前置きしたわ、何この読みにくい文章


Face_yukari

え、井澤さん――?


Face_ishikawa

ッ――!?


Face_matsuura

……ッ……


Ishikawa

 場が、緊張したのが分かる。
 彼の名前が、出てきただけで――


Ishikawa

 一体、彼は……特変は……
 何処を選んだのだろうか――


Face_kaoru

「俺はとても悲しいけど、君たちにとっては嬉しいかもしれない報告をしようと思います。因みにこれを云ったらざまーみろと笑い転げてた女子も居ましたが、そんな感じで緊張する内容ではありませんので、リラックスして聞いてください。自意識過剰なのも認めてるので、聞き飛ばしてもらっても全然構いません」


Face_kaoru

「ぶっちゃけます。俺たち、修学旅行の準備間に合いませんでした」……は?


Face_haginuno

え?


Face_yukari

間に……え?


Face_kaoru

……「だから、今回俺たち特変は、修学旅行の10のコースいずれにも、参加できません。それは当然のことで、これはただの旅行でなく修学旅行であるので、学び経験する気持ちを持たずしてこの行事に意味はありません」


Face_kaoru

「つまり、事前の計画構築や土地の学習、それ以前にコース選びすらやっていなかった俺たちにはその気持ちがないと判断されるのも自然な学園の処理であり、」


Face_kaoru

「色々忙しなかったとはいえ、自業自得でしかないんです。なので、今年度はその恥ずかしさを肝に銘ずるために、俺たちは修学旅行に参加しないでダラダラしていることにしました。」……勝手だなああぁああ相変わらず!!!


Face_yukari

ダラダラしてるんじゃ、反省できてないのでは……


Face_matsuura

……………………


Face_kaoru

「扨、もう少し書かせてもらいますが、そして余計なお世話かもしれませんが……修学旅行に臨む君たちの使命は、君たちが求め、考え、計画してきたものの儘に、5日間を全力で過ごしきることです。そこに、特変とかいう要素は全くありません」


Face_kaoru

「やりたいように、やってください。これはお願いです。命令と解釈してもらってもこの際構いません。或いは――」


Face_kaoru

「罰、と思ってくれても」……罰ぅ?


Face_matsuura

――!


Face_ishikawa

罰――


Ishikawa

 それが……罰……?
 裁、き――??


Ishikawa

 私たちが、計画してきた、楽しみを……そのまま、楽しむ……?


Face_kaoru

「以上です。君たちが美味しいものを食べたり都会のハイテクなアミューズメントに燥いでる間、俺は寂しく図書館棟の視聴覚資料コーナーに陳列されてた白宮さんのライブBDを制覇してようと思います。頑張ります」……だってさ


Face_kaoru

まあ、要は特変全員修学旅行には参加しないから皆余計な心配せず楽しんでこいってことなんじゃない? ほんっと余計なお世話な文章。何様よー……てか普通にクオニアン井澤くん最高に充実した5日間過ごすつもりだし!!


Face_kaoru

皆もそう思うでしょ――


Face_students

「「「……………………」」」


Face_kaoru

……………………


Kaoru

 あれ……
 何、この雰囲気? 元からちょっとおかしいなとは思ってけど、何コレ――?


Face_yukari

……あの人は…本当に、恐ろしいなぁ……


Face_kaoru

……ん~?????


Face_haginuno

……悪いのが、私たち、なら……


Face_haginuno

あの人たちは……あの人は、私たちが思ってきたほど、極悪なんじゃなくて……


Face_haginuno

私たちが思った以上に、良い人、なのかもしれないね……松浦ちゃん


Face_matsuura

……萩布ちゃん……


Face_haginuno

凄く、怖くて、痛くて、思い出したくもない……言葉だったけど……


Face_haginuno

私――信じて、みようかなって思えたの……


Ishikawa

 萩布ちゃんが、そう小さく、儚い笑顔を作って、松浦ちゃんにそう云った。


Ishikawa

 精一杯に出された、それを……


Face_ishikawa

……うん


Ishikawa

 どうしてか、私は肯定――
 ううん、共感、できた。


Ishikawa

 私たちを罰する、あの時の言葉とは雰囲気がだいぶ違っていた。それは先生の口で読まれた文面だったからなのかもしれないけど……
 それでも、同じ人――彼の言葉だと、分かった。


Ishikawa

 私は――私たちは、生きろと……。
 留まるな、と――


Face_kaoru

んー何か釈然とできてないんだけど、時間圧してきてるから作業入りまーす!


Face_kaoru

取りあえずホテル行きのバスさんに班ごとに乗ってもらうから、整列崩さず、一般人の妨げにならないように附いてきてくださーい、他先生がたジョイントお願いします、ではGO!


Ishikawa

 まだ、動揺している真理学園生たち。


Ishikawa

 だけど、私たちは最前列のようだった。だから……兎に角、立ち上がらなきゃいけない。
 着替えやら何やらで重く膨れたリュックを背負って、元気――かどうかは分からないけど、取りあえずそれを出して……


Ishikawa

 私は、声を、出した。


Face_ishikawa

行こ、松浦ちゃん


Face_matsuura

…………


Face_matsuura

――うん


otherside

Stage: 特変教室


Face_kenichi

ってことで、俺らは5日間各々のんびりと休んでようと思います


Face_eita

なるほど。考えたものですね


Kenichi

 今頃1年は各地集合場所にて出発をしているのだろうが……
 そんな時刻に、俺たち特変は相変わらずこの教室で朝を過ごしていた。


Face_so

偵察に行って、それで帰ってきて自信と確信に満ちた顔で提案されたのが、まさかの「修学旅行サボっちゃおう」案……


Face_so

まあ、ホント事前調べとか何もしてなかったし存在そのものを忘れてたから楽しみとか全然無かったからいーんだけどさー……皆は、それで良かったのー?


Face_saya

かーくんと一緒に過ごせる、というか雌牛に独占される恐れが無くなったから私的にはファインプレーよ


Face_nagi

平穏が乱れないならノープロブレム


Face_joe

寝る


Face_nono

まあ、私も、その方が都合は良かったですかね。新兵器(♂)も開発できますし


Face_fui

奏ちゃんと、居られるなら……何処でも、いいかなぁ……


Face_so

流石の面子だねー……ていうか譜已ちゃん天使ぃいいいいいい!!!(←抱きつき)


Face_shiho

……ま、妥当なところだったんじゃねえの? お互い、な


Face_kenichi

だろ?


Kenichi

 ていうか殆ど事前告知も無しに「これから5日間修学旅行してくるわ」なんて亜弥に云おうものなら……ああ恐ろしい……。


Face_mikan

…………


Face_kenichi

……美甘は、残念だった、て感じか?


Face_mikan

い、いや、別にいいよ。奏と同じ意見


Face_kenichi

でも、行きたいとは思ったんだろ? ごめんな、お前の主張を尊重できなくて


Face_mikan

そんな、謝られてもな……自業自得、なんだろ?


Face_mikan

謙一だけじゃない、ウチら全員がそうなんだ。だったら、それもしっかり受け入れなきゃ……権力者で……その、仲間、なんだから


Face_kenichi

美甘ホント良い奴だよな


Face_mikan

ぅ……な、何だよ、おちょくるな……!


Face_shiho

んじゃ、私ぁ新しいメロサイでも開発してるかねー


Face_kenichi

……メロサイ? 何だそれ? また何か新しいもん配布してくんの? 正直俺もうティーボで精一杯なんだけど


Face_shiho

使わせねーよ、私専用の武器だ。まあ機会があったら見せてやる。その時がお前の最期だ


Face_kenichi

じゃあ一生見なくていいや……んじゃあ、態々集合してもらってアレなんだが、帰るか


Face_eita

井澤くんは何をして過ごすつもりですか?


Face_kenichi

家でまったりのんびり、ですかね。久々に何の仕事もせずダラダラ~っと


Kenichi

 ……ヤダ、超最高!!


Face_kenichi

訓舘先生は? 俺ら居なくなるとだいぶ暇になりそうなイメージですけど


Face_eita

そうですね、空き時間は可成りあるでしょう……では、書棚の整理でもしていましょうか。修学旅行に行った特Bの方々と合流するのもいいですね


Face_eita

兎も角、引き出しの中をより充実させて、特変の2学期に私も備えるといたしましょう。少し早いですが、1学期の勉学、大変お疲れ様でした


Face_eita

井澤くんには後日直接学園長から話があると思われますが……夏休み期間、特変として駆られるようなイベントは私の知る限りでは用意されておりません。各々の趣床しき儘に、満喫されてください


Face_kenichi

それじゃ――


Face_kenichi

解散!!


Kenichi

 ……かくして、俺たちの。彼らの。


Kenichi

 休息を勝ち取る5日間が始まった。


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