「特変」結成編1-2「特変破り(1)」
あらすじ
「俺は委員会って聞くと前の学校の頃の委員会の姿をイメージしちゃうわけだが、そうじゃないんだろ?」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」1章2節その1。新学期恒例のイベントその2、委員会決めの光景を紹介します。しかしながら変わり者な真理学園式の委員会もまた変わり者。初心者の謙一くんはまず、逆にこれについて教えてもらうのでした。
↓物語開始↓

【謙一】
委員会を決めたいと思います!!
~ ☆ 5分後 ☆ ~

【謙一】
決まらねえ……
この日も早々に心が折れかけている謙一だった。
Stage: 特変教室

【奏】
絶対やりたくないでーす!

【志穂】
ごがー……\(~o~)/

【情】
ごがー……Zzz

【凪】
眠いわ……

【謙一】
おいコラ烏丸、お前まで寝入る姿勢入るな

【乃乃】
私には無縁の話ですねー

【沙綾】
同じく。かーくんと雌牛ならともかくねぇ

【謙一】
何無関係顔貼ってんだピカピカの一年生ども

【謙一】
ここは、もっとフレッシュに積極的にだな……

【謙一】
ほら、よく云うじゃん? 自分を変える季節っていうかさ……

【謙一】
新年度ということで気分一新して新しいことに挑戦してみるとか……

【沙綾】
因みにだけど、そんなボロ雑巾レベルで陳腐なことを云っちゃう井澤謙一くん

【謙一】
な、何だよ……

【沙綾】
ほんとーに……そう思ってる?

【沙綾】
具体的には、私たちをソレで納得させられるって思ってる?

【謙一】
……そんなの。考えるまでもねえよ

【沙綾】
うん

【謙一】
できるわけねえだろ! 俺でも動かねえよこんなザラザラな啓発!!
謙一は教卓に立ったまま突っ伏した。
寝てしまいたいのはコッチだと云わんばかりに。
しかし誰も彼の苦労など興味無いのである。

【沙綾】
井澤くん、嘘つけない性格でしょ

【沙綾】
言葉が真っ直ぐというか、取りあえず嘘なのか嘘じゃないのかはすぐ分かっちゃう

【謙一】
……そんなに俺は説得力の無い誘導をしてたのか

【沙綾】
ボロボロの格好して難民になりすまして募金を迫る悪女より見え見えよねー

【謙一】
……マジか
Kenichi
マジか……

【凪】
この前どこぞのゆでだこは見事にお金を払っていたけれど

【奏】
……え!? あ、アレ、ガチ詐欺だったの!? マジ!?

【譜已】
奏ちゃん……

【凪】
というか、その直後に偶然現場を見てた女の人に貴方怒られてたでしょう

【凪】
会話は聞こえなかったけど、おおよそ内容は、アレは詐欺なんですよ、といったところかしら

【奏】
てかそこまで現場マジマジと見てたならあの時の私を止めてよ!!?

【凪】
視界に入るだけならまだしも、どうして態々貴方ごときの為に私が動かなきゃいけないの

【謙一】
そんな二邑牙くんにはいつまでも清らかで純白――ぶほッ……な心で、いてほしいからさ……

【謙一】
そうだな……ここは、美化委員なんてどうだろう! 充実した一年を過ごそうぜ!

【奏】
引っかからないよ! ホントに心ないことを、ってか途中で吹き出すなー!!

【凪】
折角ここまでお膳立てしてあげたというのに、貴方は本当に翠さんに認められた器なの?

【謙一】
すまない烏丸、けどこんな俺でも一応文脈を読むのは得意なんだぜ
Kenichi
少なくともお前は他人の為に働く女子じゃねえだろ、ってこととかな。
こんな感じで新学期の定番・委員会決め(※擦り付け合い)は難航していた。

【謙一】
というかだな、俺は君らとは違ってそもそも新参者なんだ

【謙一】
俺は委員会って聞くと前の学校の頃の委員会の姿をイメージしちゃうわけだが、そうじゃないんだろ?

【奏】
あぁ、そういえば井澤パイセンは真理学園初心者でしたねー
Kenichi
一応この学校のシステムというか、暮らし方というか、そういうのは教えてもらった。
Kenichi
但し、教えたのは大事な部分まで笑顔で省略する学園長なので、ぶっちゃけ理解できてない。
Kenichi
こんな中途半端な事前知識を振りかざして、生活に溶け込んでる経験者を騙せるわけがないのだ。

【謙一】
悪いがこれからは、初心者から抜け出すまでは真理学園のこと適宜解説してくれ

【謙一】
してくれないとお前の目と鼻の先で思いっきり鼻をかんでやる

【奏】
え、何ソレ最悪!? しかも私オンリー!?
Kenichi
クラス同じとはいえ、後輩。しかもバカ。
Kenichi
こん中で一番利用できる奴といったらぶっちぎりでお前だろ。

【謙一】
できれば譜已ちゃんとかも、附き合ってくれると嬉しい

【譜已】
わ、分かりました……私で説明できることがあれば

【奏】
グググ……極めつけに譜已ちゃんを籠絡するだなんて……!!

【奏】
分かりました! ここはこの優しい後輩たちが初心者鬼畜頭皮パイセンにずっぷんずっぽんレクチャーしてあげますよ!

【謙一】
マジで助かる
Kenichi
でもずっぷんずっぽんは無いわ。あと鬼畜頭皮って何?

【奏】
んじゃあ、まずは委員会って概念から説明しましょー!

【奏】
抑もなところ、委員会って云い方は真理学園じゃ堅すぎるんですよ

【謙一】
は? 何で? 委員会だろ?

【奏】
まぁそうなんですけど……あーややこしい。私たちは逆に真理学園以外の文化、知らないからなー

【譜已】
えっと、多分、真理学園でしか使われてない表現なんですけど……

【譜已】
クローズ、って私たちは云ってます

【謙一】
……クローズ?
Kenichi
何で妙にカッコいいことになってんだ委員会。

【奏】
そ。まぁ私たちも委員会って云い方に慣れてあげますから、パイセンはクローズに慣れてください。

【奏】
そんでもってそのクローズの性質ってのも、どうせ真理学園オンリーな文化なんだろーね譜已ちゃん

【譜已】
うん……ちょっとだけ、お母さんから話を聴いたことがあるんだ

【譜已】
一般的といえる学校の委員会は、学生全員が入るわけじゃないんだって

【奏】
そこんところどうなのパイセン?

【謙一】
逆に、委員会って全員入るもんなの?
鮮明なカルチャーショックが静かに且つ雷鳴の如き速度で以て二人の間を激走した。

【譜已】
真理学園では、全員が何かしらのクローズに所属することになるんです

【譜已】
C等学生の時は、殆ど遊びの延長でしたけど、この一般棟に入ってからは仕事って感じがします

【沙綾】
つまり面倒いのよね

【乃乃】
仕事を回避する方法は、あるといえばあるんですけどね

【謙一】
回避? 委員――クローズに入ってるのに?

【乃乃】
その説明は便宜上、後に回した方がいいです。横入り失礼しました、譜已さん

【譜已】
だ、大丈夫です、佐伯先輩……
Kenichi
かたいなぁ譜已ちゃん……
こんな奴に先輩って付けなくて良いと思うんだ。
Kenichi
……でもタメな譜已ちゃんは見たくないな……

【謙一】
っと、危うくまた脱線するとこだった

【奏】
何がですか?

【謙一】
何でもない。続けてくれ

【奏】
えっと……どこまで話したっけ?

【譜已】
取りあえず、全員がクローズに所属して、仕事を持つ……のが基本的かな、と

【謙一】
なるほどな……んで、そのクローズの種類ってのが――

【謙一】
コイツらなんだな。もう、一つ一つ説明してもらっていいか?
Kenichi
どうせ全部俺の予想とは違うんだろうからさ。

【奏】
仕方無いですねー……でも、考えたら私たち、一般ver.のクローズ、2年間しか経験してないんだよね

【奏】
おまけに私はサボり組一択だから、あんまり仕事内容とか分からないかも
テヘッ(^0^;)

【謙一】
予想よりだいぶ早く使い物にならなくなったな。譜已ちゃんは?

【譜已】
わ、私も、ちょっと別の用事があって……だからそれ以外、やったことないです……

【謙一】
そっか、それなら仕方無いな!

【奏】
この扱いの差どう思うよ烏丸パイセーン!

【凪】
……? 何かおかしいところでもあったかしら

【奏】
井澤パイセーン、貸してくださーいこの女の眼鏡焼き消します

【謙一】
眼鏡どころか教室一帯焼き消えかねない兵器常備してるわけねえだろ

【謙一】
ところで烏丸は何かやったことはないのか?
Kenichi
いや、全員入るんだから確実にやってるんだけど。

【凪】
雑務一択

【沙綾】
ですよねー

【譜已】
あ、あはは……

【謙一】
……?

【沙綾】
何かこのままだといつまでも話終わらなくて帰れなくなりそうだから、助太刀してあげる

【謙一】
お
気まぐれ猫が動き出した。
具体的には、謙一らの立っている黒板前まで移動してきた。

【謙一】
遠嶋は経験豊富なのかクローズ?

【沙綾】
は?

【謙一】
……悪かった
Kenichi
やるわけねえわなコイツが……
Kenichi
やる気が無きゃ意地でも動かなそうなのは文脈から察してるのである。
Kenichi
その分、助太刀してくれるのはラッキーと思わなきゃいけないのだろう。

【沙綾】
ま、やるつもりは毛頭無いけど、情報だけは仕入れてるのよー

【沙綾】
上から順に……

【沙綾】
福祉は露骨に助け合いをアピールするところねー。あー鳥肌鳥肌

【謙一】
前の学校では重量級エコキャップ推進フェスティバルとかやったな

【謙一】
アレは良い青春だった……

【沙綾】
そんな熱そうな感じじゃないけど、エコキャップ回収とかはたまにあるわねー

【沙綾】
学内だとあんまり目立たないところ。学外ではなかなか手堅い評判持ってるけど

【謙一】
……学外?

【沙綾】
優海町にとって真理学園は街の象徴みたいよー。だから私たちも附き合わざるをえないの

【沙綾】
クローズの仕事っていうと、やっぱり優海町の彼方此方で業務、が醍醐味なんじゃない?

【奏】
まーそんな感じの風潮だよねー

【謙一】
つまり、この学校での委員会は学外での活動が当たり前になってるってことか
Kenichi
……凄えアクティブなんだけど!

【沙綾】
学外では病院とか、まぁそっち系の施設に出張ね。何やってるのかまでは飽きて調べてない

【沙綾】
美化は、まぁ一言で云ってお掃除ね

【謙一】
ん、もしかして放課後のお掃除タイムとか、強制じゃない系?

【沙綾】
何で私が掃除しなきゃいけないのよ系
Kenichi
マジか! 超楽じゃん!!
まぁ俺はどうせ楽じゃない生活だけどね!!

【沙綾】
学内では校舎の状況をざっとチェック。放課後にチェック内容に従って清掃活動

【沙綾】
学外でもそんな感じねー。ホント、何が楽しいのかしら

【奏】
多分、一番人口多いですよねー遠嶋パイセン

【沙綾】
上限は例年100人くらいに設定してたわねー。学園もそれくらい無理矢理集めてるし

【謙一】
まぁ、街規模となると結構人必要になるよな。とかゴミ拾いしてそう

【沙綾】
まぁそんな説明することないと思うけど、図書はもっぱら本関係ね

【謙一】
図書室とか管理してんの?

【沙綾】
学外だとそれに加えて、本屋さんとかでも何かやってるんじゃないかしら

【奏】
烏丸パイセンとかそんな本に埋もれた生活してるんだからやればいいのに

【凪】
……私、本は好きじゃないの

【奏】
日々の生活が説得力を隈無く剥ぎ取ってる件

【凪】
本を読むなら、リブラリでなくともできるわ

【謙一】
いやまぁそうだけどさー

【沙綾】
それでもリブラリを選ぶのは大体、本好きねー。井澤くんはどう?

【謙一】
うーん……俺はマンガなら多少は読むかな
Kenichi
誰かに借りる前提だけど。間違っても買ってはならない。沼だからな……

【謙一】
何か凄く学内オンリーみたいな雰囲気出てるんだけど、何これ?

【沙綾】
入学したての男子の多くはそういう先入観で入って残念な思いをしてたわねぇ

【沙綾】
体育館営業サポートね、一言だと

【奏】
実態を知っても、結局人気だったよねー体育

【譜已】
えっと、真理学園は、おっきい体育館を持ってるんですけど……

【謙一】
体育館……え、そんなのあったっけ?
Kenichi
まだまだ地理的にも知らないこと沢山なのは承知だけど、今のとこそんな施設見てないな。
Kenichi
でも体育館は学校に普通あるか……

【譜已】
「GAC」って施設があるんです……

【謙一】
アリーナ!?
Kenichi
いやねえよ普通!

【奏】
優海町にも一般利用OKってことでちょっと歩くところにありまーす

【沙綾】
大輪でも中々大きい体育館ってことで有名ねー

【奏】
そんなGACの管理とかやってまーす。暇な時間あったら体育館で遊んでてOKみたいです

【沙綾】
いっつも上限設定オーバーするものねぇ
Kenichi
そりゃ人気もあるわな。今までの中じゃ一番魅力的だし……。