「特変」結成編1-11「破壊宣言と記念写真(2)」
あらすじ
「んじゃ、君らだけで撮ろうか。担任の居ないクラス。先生は必要無いクラス。特変を、撮るよ」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」1章11節その2。真理合宿最後の山場であるクラス発表が終わり、後は帰るだけ……と思いきや、最後の最後で試練が訪れる! 合宿を通して、少しは形成されたであろう「特変」という一つのクラスで、この突然の試練に立ち向かいます! 合い言葉は……「刃を持て――ぶっ壊す!!」 ※1章「調律章」最終回です! これをもって暫く休載状態といいますか、チャージタイムに入るのです。2章「特変破り章」を、ぜひぜひ気長にお待ちくださいませ……。
↓物語開始↓
Stage: ホール
静かに大講堂は大盛り上がりだった。
熱狂と呼んでも差し支えない空気。

【啓史】
まったく……こんなギラギラとした光景を見るのはいつぶりだろうなぁ
Keji
……あの人、以来なんだろうなぁ。

【啓史】
はーい特変の皆さん、いや第一学年の皆さんお疲れ様でしたー

【啓史】
本当なら総評とか入れたいんですが、ちょっと時間圧してるんでもう次のスケジュール行きますー

【啓史】
予定通りの16時を目標に、各部屋の荷物を整理して、辺りの清掃に取り組んでくださーい

【啓史】
掃除用具や担当場所は昨夜合宿委員から告知されたはずですので、その通りにお願いしまーす

【啓史】
因みに遅れたら連帯責任ケツバットで全員アウトー的なノリでよろしく、ではGO!!

【謙一】
って40分しかねえじゃん!! 20分オーバーしてんじゃん!!

【奏】
パイセンが長々と自己紹介してたからでしょー!! ナルシスト! ナルシストハゲパイセン!!

【謙一】
ハゲてねえ!! あークソ、失敗しちまった、だから前に立つとかイヤなんだよ!!

【美甘】
謙一!!

【謙一】
何だよ美甘、お前まで俺をバカにすんのかよ! あーそうだよバカだよバカって云えよ好きなだけ!!

【志穂】
ごがあぁああああああああああああああ……

【美甘】
志穂が起きない!!!

【謙一】
何だと!!?!?

【沙綾】
あらら、ホントにアルティメット爆睡してるのねー。よいしょ(←腹パン)

【沙綾】
起きないわねー……イヤよ私運ぶの。美甘やってよ

【凪】
……運んだ後も問題でしょう? この人のベッド周り凄く散らかってるのよ?

【譜已】
荷物整理が、大変かも……

【謙一】
やっぱり起こさないと――! 俺の直感が云ってる、このままだと全員ケツバット喰らうぞ!
Kenichi
クッソ、自虐してる場合じゃなかった……!
あんだけカッコ付けて演説しといていきなりケツバットとかカッコ悪いにも程があるだろ!!

【乃乃】
噂通りならば、私が全力を出しても起きないかもしれませんね

【謙一】
だけどやる価値はある。ありったけ刺激を送ってやるんだよ!

【謙一】
刺激が脳に届けば、厳重なスリープモードも解除できる! 頼りにしてるぜ乃乃!

【乃乃】
……私の行為が頼りにされたのは、きっと初めてのことです……

【乃乃】
分かりました、本気を出します。凪さん、文庫本を貸してください

【凪】
絶対嫌よ。云ったでしょ、もう絶版してるのよコレ

【奏】
一週間後には忘れてるんでしょー! いいから貸して、貸ーしーてー!!

【譜已】
あ……もう講堂、学生は私たちしかいない……!

【謙一】
乃乃! 志穂を起こすのに要員は!?

【乃乃】
起こすのは私一人で頑張りますが、起床後に暴れるかもしれませんので、美甘さんと謙一さんには居てほしいです

【謙一】
情、テキトウに俺の荷物カバンにぶち込んでおいてくれ!

【情】
元々テメエはペンケースと冊子しか出してねえがな

【譜已】
その、美甘先輩のは私が……いいですか……?

【美甘】
あ……

【美甘】
うん、お願い――!

【譜已】
! はい……!

【沙綾】
そもそも特変の権力使えばケツバットも回避できるでしょうに

【沙綾】
私嫌よーそんなドタバタと。しかも大して自分が使ってない場所をどうして掃除しなきゃいけないのよ

【謙一】
沙綾の分もやってくれ奏!! 報酬は用意する!!

【奏】
流石パイセン、演説は兎も角思考は早いですよねー! オッケー受託しましたー!

【謙一】
凪は乃乃の分を!

【凪】
コレ(←ラノベ)の代わりを見つけることと報酬

【謙一】
すぐには用意できないかもしれんが分かった!

【凪】
……ま、いいでしょう。連帯責任で巻き込まれるなんて、甚だごめんだわ
Kenichi
あんまり金で解決するのは習慣として良くないというか、貧乏学生には多用できないやり方なんだが……仕方無い。決断していけ井澤謙一。
今は、兎に角これ以上カッコ悪くならないように、時間通りにバスに乗る!

【奏】
あっ💡!

【謙一】
どうしたその名案閃いた的な声! モアな打開策でも見つけたか!

【奏】
こういう皆で一斉に活動する時って何か掛け声欲しくないですか?!

【奏】
ミッションスタート! みたいな
Kenichi
迷案だった。

【謙一】
何でこんな唐突忙殺なタイミングで!?

【奏】
いやだってパイセンが促すから云うしかないでしょ!

【凪】
そもそも圧倒的に必要無い気がするの

【沙綾】
どーでもいーいー

【譜已】
(それはちょっと、恥ずかしい……)

【情】
あろうがなかろうが俺には関係ねえ。テメエの事情で決めろ謙一

【乃乃】
ふむ、そういうのは、何というか憧れますね……ちょっと子どもっぽい感性でしょうか

【美甘】
(だとしたらウチも子どもっぽいな……)

【志穂】
ごがあぁあああああ

【謙一】
全員拒否だったら即行で流したけど、案外賛成派多そうだぞ……

【凪】
……………………(←嫌そう)

【凪】
決めるなら早く決めなさい(←投げやりな平穏)

【謙一】
悪いな……
Kenichi
けど、一体感というべきか……一クラスとしての号令を作るのは、正直悪くない考えだと思う。
俺たちは特変という枠なのだと……潜在的な意識を育む策として。それも、最低俺が喋ればいいだけの内容なので、皆にも負担になりにくそうだ。この面子にそんなちっちゃい効果が覿面するのか分からんけども。
Kenichi
ただ、俺こういうの考えこんじゃうんだよなぁ……やっぱり今考えることではない気もする。
しかしその一方で、皆で一致団結なノリを醸し出してる今がいわば特変初戦って感じであり、だからこそしっかり開戦も決めていきたいって気持ちもある! 20分以上圧してる時点でしっかりしてないけどな!

【情】
オイハゲ、今脱線してるだろ

【謙一】
いや、脱線というより迷ってた。いずれにしてもサンクス。但しハゲてねえ
Kenichi
俺だと考え込んじゃうから……
Kenichi
ここは――

【謙一】
学園長、何かないですかね?

【翠】
あら~? 私~?
Kenichi
他人に丸投げしてみる!

【特変】
「「「……………………」」」
「えぇ~~」という感じの視線が英断した謙一に集中する。

【謙一】
仕方ねえだろ! 俺ホントそういうクリエイティブな思考は慣れてないんだよ!!

【沙綾】
それなのに創っていこうとか率先して云うリーダー(笑)

【謙一】
(~,~)(~,~)(~,~)(~,~)(~,~)(~,~)
(いじいじいじいじいじいじいじいじ)

【美甘】
思いっきりいじけちゃったじゃないかこの忙しい時に!!

【沙綾】
女々しいわねーもーう……

【翠】
…………
Midori
……場合によっては、ね……
――だから学園長は裏切らない。勝ったお前らを裏切らない。もし裏切るようなら――
この俺が特変最後の権力を使って銘乃政権を破壊する。
Midori
私にすら、躊躇無く攻撃意思を向けると。
今目の前でイジイジしちゃってる子がはっきり言葉にしたのね。

【翠】
ふふっ……

【啓史】
ん?
Midori
そうね、それくらい研ぎ澄ましてくれなきゃ……
きっと私の求めた領域に、貴方たちは登り詰めることはできないのだから。
Midori
今更、私が怖じる意味はどこにも無いのだから。
Midori
だから――

【翠】
刃を持て――

【謙一】
……え?

【譜已】
お母さん――?

【翠】
探してたんでしょう~? 活動開始の決め台詞~

【翠】
「刃を持て、ぶっ壊す」ってのはどうかしら~☀

【啓史】
…………

【謙一】
えらくまた弩ストレートに不穏なアイデアが出てきましたね……
Kenichi
……でも。
Kenichi
何だかなぁ――
Kenichi
天感が奔るんだもんなぁ……
Kenichi
俺、別に魅力的とかカッコいいとか思わなかった筈なんだけどなぁ……

【謙一】
はい、採決タイム

【謙一】
翠さん案でOKって人リアクション返してくださーい

【奏】
物騒な決め台詞大好きー! 賛成ー! 珍しく翠さんがマトモなこと云ったよ譜已ちゃん!!

【譜已】
マトモではないと思う……

【凪】
もう別に何でもいいの私

【乃乃】
破壊に等しい音を奏でよ、ということですか……それはそれで燃えてくるものがありますね

【情】
正義面するよりは千倍マシだ

【沙綾】
どーでもいーいー

【美甘】
ぶっ壊すって、何を壊すんだろう……?

【志穂】
ごがあぁあああああ

【謙一】
はい、てことで全員リアクション取ったので可決しまーす!

【譜已】
(えっ――!?)

【美甘】
(ウチ疑問呟いただけなんだけど!? 志穂にいたっては鼾かいてただけなんだけど!?!?)
即行で決め台詞的なものが決まった。
因みにコレは後日、真理学園において「破壊宣言」とか呼ばれるようになるのだった。

【謙一】
さて、寄り道したところで諸君!

【謙一】
俺らはスタートダッシュに失敗してかれこれ30分ほどスケジュール圧している状態だ!

【奏】
ごめんさーい……

【謙一】
最終確認だ!

【謙一】
爆睡マフラーを起こし! 担当場所の清掃を済まし、荷物を整理してこの合宿場を出る! 駐車場がゴール時点だ!

【謙一】
俺と美甘と乃乃で志穂を相手する! それ以外はまず自分の持ち場に集中しろ!

【謙一】
俺らが難航するのも考えられるので、情は俺の、譜已ちゃんは美甘の、凪は乃乃の持ち場を考慮してくれ!

【謙一】
ついでに沙綾が仕事しなさそうなので奏は沙綾の持ち場を考慮する! これを、25分で完了する!

【謙一】
残り5分で全員荷物を持って駐車場に合流する! いいな!!

【奏】
おおっ! 作戦会議みたいで何か燃えてくる! やることただのお掃除だけど!

【譜已】
遅れないようにしないと……

【凪】
乃乃、貴方の持ち場はどこ

【乃乃】
この本棟1Fの東男性トイレです

【凪】
どうして女子に男トイレ回されてるのよ……

【沙綾】
核弾頭は女扱いされてないってことでしょー

【情】
10分あれば充分だ。焦る必要はねえだろ

【美甘】
兎に角、志穂をどれだけ早く起こして機嫌を取れるかがポイントになるな……
一呼吸置いて……

【謙一】
さあ、行くぜ。お前らこういう時ぐらいノリ合わせろよ
いよいよ、「特変」が行動開始する!

【謙一】
刃を持て――

【特変】
「「「ぶっ壊す!!」」」
Kenichi
……感想。
Kenichi
最高に恥ずかった。

【啓史】
はーいタイムアッp――

【謙一】
ごおぉおおおおおおおおおおおおおおおおる!!!
特変が駐車場に到着したのは15時59分58秒だった。
Stage: 合宿場 林道

【啓史】
俺の腕時計は16時ジャストだったんだけどなぁ

【謙一】
ジャストなら良いでしょ! それに沙綾のアルスは59分58秒でしたよ! アルスは正確でしょ!

【啓史】
まっ、アレだけ遅れておきながら間に合わせてきたワケだし、その努力を認めてあげよう

【啓史】
俺は学園長みたいに鬼畜じゃないからねー
圧倒的に最後にやってきた特変も無事セーフってことになった。
喜ぶより前にへばり込む謙一たちだった。

【謙一】
さ、流石にもうダメかと思った……

【奏】
たかがお掃除なのにすっごい少年漫画みたいな展開だったねー……

【志穂】
んだよおめーら、体力なさ過ぎだろ

【沙綾】
こんなギリギリになった主因がソレ云うのはダメでしょー。大変だったのよーホントに?

【奏】
沙綾パイも云っちゃダメだからねー……!!
Kenichi
そう、お掃除の方は割とスムーズに行った。仕事を多く持たされた凪や譜已ちゃん、情が手際良かったらしい。奏は苦戦したようだが、譜已ちゃんが助っ人に来たことで間に合ったようだ。
Kenichi
しかし問題はこの復活したマフラーだった。
乃乃が全力を出して志穂を起こしたのは良かったが、その全力のお陰で志穂は可成り精神的なダメージを負ってしまった。そして――現場を見てた俺らは当然だなと同情するけど――めっちゃくちゃ不機嫌になって暴れ出した。
Kenichi
その為に俺と美甘は残ってたから計画通りと云えるかもしれない。しかし俺らは一昨日体験したように、志穂の戦闘力を前に事実無力だった。何故か俺は裸一丁にまでされた。
Kenichi
ということで志穂の問題を解決するのに手間取り過ぎて、一番片付けが面倒だったらしい志穂の荷物をまとめるのも当然難航、その結果志穂が起きて荷造りし始めたのが残り5分前。譜已ちゃんと奏が気を利かせて志穂の担当場所まで掃除しておいてくれたのが勝因といえよう。

【謙一】
他の奴らは……もう行っちゃったんすね……

【啓史】
皆早く帰りたそうだったからなー。んじゃ、最後の君らの写真を撮って、俺も帰るとしましょうかね

【謙一】
写真……そっか、クラス写真撮るんだった
Kenichi
発表とか掃除で完全に失念してた。
Kenichi
コイツらと、写真ねえ……
疲れ切った一同はその辺にテキトウに並ばされる。

【謙一】
って、あれ? こういうのって後ろの人は台に乗ったりするんじゃないすか?

【啓史】
他のクラスは40人とか普通に居るから必要だけど、君らは要らんでしょ

【啓史】
ほら、早く帰ろー。何となく身長低めな子は前に出てさー

【啓史】
学園長一番前どうぞー

【翠】
どのクラスでも、私が一番前のど真ん中なのよね~

【謙一】
それは一種の仕来りですって。記念撮影の時って大体先生センターだと思いますよ。前いた学校とかそうだったし
Kenichi
何となく、「ホントに身長的にもセンターですよね」とか云わない方が良い気がした。

【翠】
…………
しかし翠は足を止めた。
9人のクラスに混ざろうとはしなかった。

【啓史】
……どうしたんすか?

【翠】
啓史さん、ごめんね。私は、この中に入らない方がいいかもって

【啓史】
…………

【啓史】
分かりました。んじゃ、君らだけで撮ろうか。担任の居ないクラス。先生は必要無いクラス

【啓史】
特変を、撮るよ

【謙一】
……分かりました
Kenichi
特に反対意見も思いつかなかったから、そう云うしかなかった。
Kenichi
それならそれで、良いとは思ったし。

【謙一】
んで、皆コレでちゃんと映ってますー?

【啓史】
一応云っておくと、秋山くん口隠れてるよー

【志穂】
私はコレでいー

【啓史】
ならいーや

【謙一】
良いのだろうか

【奏】
ひゃっはー可愛く撮ってねー啓史さーん!

【奏】
譜已ちゃん、ぴーーーす!!

【譜已】
う、うん

【沙綾】
あっ、かーくんもう真理学園着いたって。はやーい(←SNSナウ)

【凪】
早く帰りたいから早く撮ってほしいの。だから早くしまってほしいのソレを

【沙綾】
同じ気持ちだから聞き入れてあげるー(←アルス仕舞う)

【奏】
ぎゅ~~~~!!

【譜已】
は、恥ずかしいよ奏ちゃん……!

【乃乃】
…………

【乃乃】
謙一さん、抱きついてみていいですか

【謙一】
せめて女子にお願いしろよ

【乃乃】
それは、何というか……ネタが被ってるので恥ずかしいといいますか

【謙一】
お前おかしいよホントに

【情】
つーかテメエはセンターだろハゲ

【謙一】
ハゲてねえ。でも身長的に俺後方だと思ったんだけど

【奏】
しゃがめば解決ですよー! そんなつまんない事云ってないでど真ん中来てってパイセン!

【奏】
何と云っても、管理職! リーダーなんだからこのクラスのー!

【志穂】
だなー。寧ろそういう意味を強調していけよー

【謙一】
テンション上がってる時だけリーダー扱いしやがってこんにゃろうども……

【乃乃】
では私はそのお隣ですね

【謙一】
お前ホントに俺に抱きつくの? 確定なの? 俺譜已ちゃんみたいな対応できないよ絶対

【凪】
寧ろ真似しようものなら串刺しにするわ

【沙綾】
ていうか早く撮りましょーよー。帰りましょーよー(←地団駄)

【志穂】
ってことだから早くしゃがめー

【謙一】
うおっ!?
背後の志穂に無理矢理腰を低くさせられる謙一。

【志穂】
美甘はここー

【美甘】
あ、うん……

【啓史】
堀田くん秋山くんちょい屈んでくれると遠嶋くん映るかなー

【志穂】
あーい
自由に揉めた結果、センターを謙一、一列目に奏と譜已と乃乃、二列目に凪と志穂と美甘、三列目に沙綾と情、ということになった。
最初の整列状態は完全に崩れきっていた。

【謙一】
ったく……
Kenichi
ま、コレが俺たち……納得といえば納得か。
でも、俺は合宿をこうやって終えるんだな。

【啓史】
はい、5秒前ー

【啓史】
4、3、2、1――
Kenichi
何だかんだで……亜弥。
俺はお前のお願い通り、

【啓史】
ちーーーず
Kenichi
割と楽しめたかもしれないよ。