「特変」結成編1-10「森(2)」

あらすじ

「あと何時間歩かなきゃいけないの~……」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」1章10節その2。翠学園長お得意のその場のノリ急遽変更が発動して、昼前から合宿生たちは冨士美町の代名詞で大輪大陸屈指の名山・冨士を登る羽目になりました。突然の軽くない運動にやる気無く歩く特変でしたが、運悪くアクシデントに次々見舞われ、果てにはとんでもない危機が謙一くん達を襲います――。

↓物語開始↓


Face_kenichi

【謙一】

…………


Kenichi

…………ふむ。


Kenichi

真っ暗だ。


Kenichi

いや、もっと現実を見ようか。




Kenichi

限りなく真っ暗闇な緑だ。


Kenichi

今、俺はそんな光景に囲まれている。


Kenichi

変わり映えしない光景とは云わない。
生命の声が色々が聞こえる。決して同じ画面じゃないのだ。


Kenichi

ただ、逆に果てしない。
果てしなさ過ぎて、どうしようもないっていうのがきっと適切な感想なんだろう。


Kenichi

空を見上げる。
…………。
矢張り、同じく暗く、緑。


Face_kenichi

【謙一】

……ははは


Kenichi

意味不明な笑いが零れる。
まぁ、よくあるよな。あれだ。
「笑うしかない」って場面だ。
…………。


Face_kenichi

【謙一】

いや、ねえよ……


Kenichi

滅多にねえよ。あっちゃダメだよ。


Face_kenichi

【謙一】

ったくもう……


Kenichi

どうしてこうなったのかは、笑ってるうちに把握した。
よくよく辺りを見渡すと……居た。良かった。


Face_shiho

【志穂】

――――


Face_mikan

【美甘】

――――


Kenichi

見たところ深い傷は無い。息もしているから、気絶してるだけだろう。
……いや、美甘については脚がちょっとヤバいか。


Face_kenichi

【謙一】

……んじゃ、もっとしっかり現実を見ようか謙一


Kenichi

不幸中の幸いは幾つか用意されている。
じゃあ後は、その不幸を打破するだけだ。だいぶヤバめの不幸なわけだが……


Face_kenichi

【謙一】

懐かしいなぁ――


Kenichi

……ふと、そんなことをつぶやいていることに気付く。
こんなこと、経験したことない癖に。


Face_kenichi

【謙一】

……何が、懐かしいんだろ


Kenichi

我ながらお気楽な疑問を延々呟きながら……
美甘の怪我を軽く措置しながら……


Kenichi

森に迷い込んだ経緯を、思い出していた――



flashback

Stage: 冨士山道 梺



AM11 30


Face_so

【奏】

だーーーーっしゅ!!!


Face_kenichi

【謙一】

バカだろアイツ


奏は他の体力自慢同様に鮮やかなスタートダッシュを決めていた。
それをはるか遠くから、悠々ゆうゆうと歩くクラスメイトがテキトウに見守る。


Face_kenichi

【謙一】

何時間歩いて到達する距離をいきなり全力疾走してんだけど。そんなに体力自慢なの?


Face_fui

【譜已】

奏ちゃん、スタミナ無い方です……


Face_kenichi

【謙一】

もう1回云うわ。バカだろアイツ


Face_nono

【乃乃】

あとで倒れている状態を回収する仕事が増えた予感がします


Face_kenichi

【謙一】

よう俺、奇遇だな


Face_nagi

【凪】

別に回収しなくていいと思うの。そのまま放置してバスで帰れば


Kenichi

鬼がいる。


Face_kenichi

【謙一】

でも何であんな本気になってんだ? 奏は兎も角、他の奴らも……


Face_kenichi

【謙一】

別に昨日のレクみたいに特変が関わってるわけでも無いのに


Face_saya

【沙綾】

お金でしょ


Face_kenichi

【謙一】

またかよ!!!


Kenichi

どんだけ金に飢えてんだよ学生たち! いや気持ち分かるけど!


Face_saya

【沙綾】

どっかの娘さんのお陰で、この前の歓迎祭は有耶無耶うやむやで終わっちゃったからねー


Face_fui

【譜已】

す、すみません……


Face_saya

【沙綾】

だから今度こそプレフォウを買おうと意気込んでたのよ。因みに賞金が判明したのは昨日のレク直後


Face_kenichi

【謙一】

どうりで俺が知らないわけだ……


Face_saya

【沙綾】

でも何で冨士なんて登らないといけないのよー。歩くのヤ~……誰かおぶって~


Face_joe

【情】

テメエの男にでも乗ればいいだろ


Face_saya

【沙綾】

勿論そーしたかったのだけれど、かーくんお腹壊してお布団でダウン中なのよ~……


Face_kenichi

【謙一】

……………………


Kenichi

かーくんって沙綾の彼氏だったのか……
勿論こんな驚きを声に発しようものならまた不機嫌になるのでひかえる。


Face_saya

【沙綾】

あと何時間歩かなきゃいけないの~……


Face_kenichi

【謙一】

そうだなぁ……


Kenichi

大輪大陸屈指の公山Mt[Fuji](俗称冨士ふじ)をほぼ手ぶらで登山とか論外だ。
だから、「歩く」という表現で事足りる距離……
安全を考えたら、ふもとから越えはしないのではないか。あの人の発想に安全が組まれてるのかは知らないが。


Face_kenichi

【謙一】

スケジュールを見る限りだと、クラスアクション兼レクっていったところか……


Face_kenichi

【謙一】

そもそもクラスアクションの後に昼飯挟んでからレクリエーションの筈だったんだけど


Face_nono

【乃乃】

よくあることですよ。突然のスケジュール変更なんて


Face_kenichi

【謙一】

だろうな。だからあんまり信頼できない考え方になるが……


Face_kenichi

【謙一】

元々のスケジュールでは18時までがレクになってる。んで、今は11時だから――


Face_kenichi

【謙一】

昼飯とかの休憩、それに帰還を考慮して、ざっくり6時間か?


Face_saya

【沙綾】

学園長死んでほしいわね


Face_fui

【譜已】

ごめんなさい……


Face_nagi

【凪】

貴方少しは言葉を選びなさいよ


Face_saya

【沙綾】

言葉を選ぶのも面倒臭いの。ていうか折角私が楽できるようルール定めたのにその翌日にコレ?


Face_kenichi

【謙一】

俺たちの間でだけ適用されるルールだからかな。少なくとも学園長はやりたいようにやるだろ、俺らのことすら考えず


Face_saya

【沙綾】

そういう解説してる余力は全て私が楽する為の案をるのに使ってほしいのだけどリーダー


Face_kenichi

【謙一】

何様だよとかツッコんじゃ負けなんだろうなぁ……


Face_nono

【乃乃】

……おや。沙綾さん、あそこを見てください


山の圧倒的広大な坂道にはゴミも少なくなかった。
一行のほぼ隣に置かれていたその一つを乃乃は指差した。


Face_saya

【沙綾】

何これ?


Face_nono

【乃乃】

リヤカーですね。全体的に少し酸化してますが、問題無く使えそうです


Face_saya

【沙綾】

なるほど……つまり、私がコレに乗って、リーダーが引っ張ると


Face_saya

【沙綾】

それなら私は楽ね! グッドアイデア!!


Face_kenichi

【謙一】

じゃねえだろ!!? 俺の疲労は数倍覚悟じゃん!!!


Kenichi

延々と続く登り坂でリヤカー引くとか!


Face_shiho

【志穂】

!! おい、アレ見ろ!


Face_kenichi

【謙一】

ん、どうした?


今度は乃乃と逆方向を指差した。
その方向には真理学園無関係の一般客の姿。
登山する者とは思えない重装備である。


Face_kenichi

【謙一】

は!? 何でガスマスクしてんのあの人たち?


4人集団はその重装備のまま何かを囲んで、作業しているようだった。


Face_shiho

【志穂】

爆弾でも解体すんのか――ッ……!? 違う、そうじゃない!!


Face_saya

【沙綾】

何か分かったの?


Face_shiho

【志穂】

あれ……だ!!


Face_shiho

【志穂】

シューストを、開けてるんだ――!!!


Face_tokuhen

【特変】

!?!?!?


シュールストレミング



一行、逃走!!


Face_kenichi

【謙一】

解体するどころか起爆するつもりじゃねえか!!


Face_fui

【譜已】

あ、あの缶って、爆弾なんですか……!?


Face_nono

【乃乃】

いえ、食べ物ですね


Face_fui

【譜已】

た、食べ物……? シューストって、一体……


Face_nono

【乃乃】

食べ物ですが、不用意に開封しようものなら気絶しますね


Face_nono

【乃乃】

あの装備で登山すると思えませんし……恐らくアレを開封するためだけに来たのでしょう


Face_nono

【乃乃】

普段人気の無い場所ですから


Face_saya

【沙綾】

けどお互い運が悪かったわね……人気有りまくりよ今日この梺


Face_kenichi

【謙一】

恐らく後でテロ疑惑で通報されるんだろうな……


Kenichi

しかし自業自得な人たちの心配をしてる余裕は無い。
友達候補だったビアスがテレビで見たらしいが、臭いに巻き込まれない為には100mぐらい離れるのが必要だとか。一旦染みついた臭いを取るのは難しく、その日の服装全て捨てることになるとか。
しかも肌にもこびり付くとかいうレビューも紹介されてて、半袖とか論外らしい。


Kenichi

……俺今、半袖です!!!


ということで100m走が突然始まった。
100mどころか、心情的にできるだけ離れたい為に、結局奏同様に全力疾走する羽目になった。



timeskip



……それから十数分後。


AM11 45


Face_kenichi

【謙一】

はぁ……はぁ……




Kenichi

必死に奔ってたら、何だかんだでレクリエーション1位独走していた……


Kenichi

ついでに予想通りぶっ倒れてた奏をいつの間にか回収していた……


Face_so

【奏】

な、何で全員全力疾走……? やっぱり皆賞金ほしかった系?


Face_nagi

【凪】

……💢💢💢


Face_so

【奏】

何でこの人そんな怒ってんの……? 私が喧嘩仕掛ける時の数倍不機嫌じゃん……


Face_fui

【譜已】

その……知らない方が、良いと思う……


Face_so

【奏】

じゃあ知らないままでいよー……


So

気のせいかな、下から阿鼻叫喚あびきょうかんが現在進行形で聞こえてくるような――


So

うん、やっぱ探らないようにしよう!!


一行、休憩タイムに入る。


Face_saya

【沙綾】

もーう! 何で私がこんな疲れなきゃいけないのよー!


Face_nono

【乃乃】

リヤカーも結局引きませんでしたね謙一さん


Face_kenichi

【謙一】

当たり前だ


Face_kenichi

【謙一】

……ていうか、沙綾が足速かったの俺的に意外なんだけど


Face_saya

【沙綾】

知らないわよー……運動能力とかその辺は気にしないし私


Face_saya

【沙綾】

あーお腹空いたー……もう歩けない~


Kenichi

いや、あの走り方からしてまだ全然コイツは余裕だと思う。
とはいえ嘘を云ってる感じではないな……ホント心のままに生きてるってことだろう。


Face_kenichi

【謙一】

腹が減ったのは同意だな。昼食も取っちまうか


Kenichi

出発前に各自にお弁当が渡されていた。クラス毎に登山スケジュールは自由に立てていいとのことだ。
宿舎のご飯は美味しいから、楽しみだなぁ――


Face_nono

【乃乃】

あ、云い忘れてましたが皆さんのお弁当に私なりのトッピングをアレンジしてみました☆


お弁当の死亡が発覚した。


Face_kenichi

【謙一】

巫山戯ふざけんなよお前……ホント巫山戯んなよ……


Face_nono

【乃乃】

食べてみなければ真実は分からないでしょう謙一さん。喰わず嫌いは損ですよ


Face_fui

【譜已】

泣泣泣泣泣泣泣泣泣


乃乃なりの厚意を無駄にすまいと全力でお弁当を開けて直視していた譜已の顔は静かにナイアガラだった。


Face_kenichi

【謙一】

無理すんなって譜已ちゃん……


Face_fui

【譜已】

ごめん…なさい~……(泣)


Face_nono

【乃乃】

ふむ……案の定と云うべきか、譜已さんはゲテモノコースに慣れてませんでしたか


Face_kenichi

【謙一】

取りあえずお前が最初に喰えよ元凶。コレが食えるものかどうかをまず確認だ


Kenichi

まだ全てが死んだわけじゃないなら、見た目ぐらいはどうにか直せる。
そしたら譜已ちゃんも百歩ゆずって食べられるようになるんじゃないだろうか。


Face_nono

【乃乃】

ふむ……譜已さんを泣かせてしまったのは心苦しい事態です。ここは従いましょう――


乃乃が自分でアレンジ拡散したお弁当を毒味する。


Face_nono

【乃乃】

ふむ、中々に刺激的な味に様変わりしていますが、これなら大丈――(←倒れた)


Face_kenichi

【謙一】

はーい全員お弁当回収ー


Kenichi

希望はついえて全部ゴミ袋行きとなりました。


Face_saya

【沙綾】

か~え~り~た~い~(←地団駄)


Face_shiho

【志穂】

今下山したらシューストガスの餌食えじきだろーなー


Face_shiho

【志穂】

それに、何だかんだで暫定ざんてい1位だ。どうせなら賞金も貰っちゃおうぜー


Face_kenichi

【謙一】

ゴールには宿が建ってるらしい。当然登山者の為の場所だが、そこで休ませてもらおう。食べ物もあるかも


Kenichi

自業自得とはいえ、乃乃を介抱しなきゃいけないからな……
ここまで来たら安心して寝かせられる場所はゴールの方が近いのだ。


Face_kenichi

【謙一】

情、乃乃背負ってくれない?


Face_joe

【情】

テメエが運べばいいだろハゲ。俺はコイツが息絶えようが構わねえ


Face_kenichi

【謙一】

構う俺が運べばいいってのは道理かもしれんが、流石に辛い。日頃鍛えてるわけでもないし


Face_kenichi

【謙一】

一方お前、風呂場で見た限りだと相当良い筋肉してるし、まだ余裕ありそうだろ


Face_so

【奏】

おや、いきなりのボーイズトーク! 赤裸々せきららなお話だ!


Face_fui

【譜已】

あ、ああまりそんなこと云わないで奏ちゃん……!?


Face_so

【奏】

ということでシャイな譜已ちゃんの前で刺激的な話しないでください男共ー


Face_kenichi

【謙一】

ホント何云ってるんだろうこの後輩


Face_kenichi

【謙一】

はぁ……まぁそういうことなんで、さっさと決めちゃおうぜ


Face_joe

【情】

筋肉を求めてるなら、そこにもっと適役が居るだろうが


Face_mikan

【美甘】

…………


Face_kenichi

【謙一】

…………(←期待の眼差し)


Face_mikan

【美甘】

…………(←距離を取る)


Face_kenichi

【謙一】

ダメらしい。てことで、潔くじゃんけんだ!!


ロック、ペーパー、シーザーズ。


56回の拮抗の果て、井澤謙一の勝利に終わった。


Face_shiho

【志穂】

さりげに名勝負だったな今の。レコれば良かった


Face_saya

【沙綾】

ねぇ二人とも、今のもう1回やってくれない?(←アルス構えながら)


Face_kenichi

【謙一】

できるか


Kenichi

……取りあえずリヤカーもおんぶも回避できたわけだが。
空腹問題は解決できそうにない。M教の人には怒られそうだが、やっぱり人間お腹が空いちゃ何もできないのだ。
他の登山客がいらっしゃって、丁度良く上の宿で食べ物恵んでもらえるのを期待するしかないか……


Face_kenichi

【謙一】

にしても……随分と危険な場所だな


Kenichi

慌ててルート確認をしてる暇は無かったとはいえ、そこまで本来の安全な登山経験コースからは大きく離れていない筈だ。


Kenichi

だが、此処は傾斜けいしゃが比較的激しく、所々に断崖な光景が広がっている。
もし万が一踏み外しなんかしたら、森林エリアにほぼほぼ真っ逆さまだな――


天感


Face_kenichi

【謙一】

――!?


Face_so

【奏】

え!?


いきなり身体を震わせた謙一にくついでいた周りの面子がつられて驚く。


Face_joe

【情】

あ?


Face_so

【奏】

い、いきなりどうしたんすか、寒気? 半袖で来ちゃうから――


この時、謙一の耳に周りのリアクションは一切入っていなかった。
極めて無色透明、一方で混沌と云ってもいい、どうしようもない感覚の迷路を謙一の思考は疾走していた。


天感


Kenichi

何処だ――



Kenichi

どうして、今、コレ・・が疾走した……!?
見ろ、考えろ、現実を徹底的に、分析しろ……!


Kenichi

この悪寒の根拠は、何処にある――!?


fall_moya


Kenichi

疾走の方向は……


Kenichi

上、から、下……、包まれる、ように……


Kenichi

この感覚は……そうか、この感覚は――



Face_kenichi

【謙一】

落下――!!


Face_so

【奏】

はいっ!?


Face_shiho

【志穂】

いきなり何だおめー


周りを見渡す。
そして、思考がそこまで行き着いた謙一の視界において……


一カ所のみが、明確に輝いてマークアップされた。


Face_mikan

【美甘】

…………


一人、距離を取って休憩を取っていた堀田美甘。
その場所は、つい先ほど謙一が目を遣ったような、ちょっとした断崖だった。


Face_kenichi

【謙一】

ッ――美甘――


謙一が声をかけようとした、同時――


地が、揺れた。


Face_so

【奏】

えっ、何!?!?


Face_saya

【沙綾】

もーう今度は何なのよー……地震ー?


Face_nagi

【凪】

……奏、貴方ちょっと“機能”準備なさい


Face_so

【奏】

は?


Face_fui

【譜已】

う、上……!!


一同、譜已の切羽詰まった言葉に従い上を見る。
休憩後登ろうとしていた方向を見上げる。


落石


自分たちの身長と良い勝負している岩が雪崩なだれてきていた。


Face_so

【奏】

!?!?!?!?


Face_joe

【情】

チッ……


Face_saya

【沙綾】

凪ちゃんガード~(←凪の後ろに隠れながら)


Face_fui

【譜已】

ひぃぃぃぃ――!!?(←凪の後ろに隠れながら)


Face_nagi

【凪】

私を盾にしたところで何も状況は変わらないと思うのだけれど


Face_shiho

【志穂】

オイハゲ、これ――


Face_kenichi

【謙一】

美甘、早くこっちに!!


Face_shiho

【志穂】

――!


誰よりも早く、「何か」を察知し動いていた謙一。その事実を志穂は理解していた。
しかしこの瞬間、謙一が察知したのは岩雪崩ではなかったことを更に理解する。


break (2)


Face_mikan

【美甘】

ぇ――


Face_shiho

【志穂】

ッ――くっそがあぁあああ!!!


理解し、地を蹴る。
本来ならあり得ない方向へのダッシュを決めた志穂。その視線の先では――


地響きにより削られてしまった断崖の上で……
美甘の姿が、傾き始めていた。


Face_shiho

【志穂】

うおぉおおおおらあぁああああ……!!!


Shiho

くっそ――


Shiho

間に、合わねえ……!!!


間に合わない。
絶対に間に合わない。


重心感覚を失いゆく堀田美甘の、此方こちらへ伸びる手を掴むことはできない。


その認識が、否が応、志穂の動きを止めていく。
科学的、合理的判断。自殺行為にストップをかけようと――


Shiho

違う――


Shiho

違う、こうじゃない!!


flashback_sa


Shiho

これじゃダメなんだ――


Shiho

私は……


Shiho

強く、なきゃ――


ダッシュ


Face_kenichi

【謙一】

うおぉおおおおおおおおお――!!!!


Face_shiho

【志穂】

ッ――!?


Face_kenichi

【謙一】

掴まれえぇええええええええええええ!!!


志穂の横を、男子は過ぎ走った。


此方から、手は届かない。


――だったら、此方から自分が離れればいい。


それが、たった今地を離れ、気付けば跳躍ちょうやくした脚に秋山志穂の身体をからませて、堀田美甘の手を掴んだ井澤謙一の理論だった。


Face_joe

【情】

――!!


Face_fui

【譜已】

え……えぇえええええええ!!?!?


Face_mikan

【美甘】

な――


Face_shiho

【志穂】

なあぁああああああにやっとるんじゃあぁああああああああ――!?!?


Face_kenichi

【謙一】

沙綾ああぁああああああああああああ!!!


fall


Face_saya

【沙綾】

……!?


Face_kenichi

【謙一】

臨時リーダーになってレクを乗り切れえぇええええええええ――!!


Face_saya

【沙綾】

はあ!? ち、ちょっと!?




break (2)


Face_saya

【沙綾】

はあぁああああああああああ――!?!?


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