「特変」結成編1-7「多難」
あらすじ
「――じゃあ、最早私がお前と手を組むのは、ここまで利害の衝突が無いんだ、義務だろ」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」1章7節。歓迎祭は金に飢えた特変面子の暴走、そして殺戮自己防衛な銘乃譜已ちゃんによって滅茶苦茶な結果となりました。それが相当精神に来たのか、管理職謙一くんはもうグッタリと芝生に転がっていました。そんな彼に話しかけてきたのは―― ※お知らせ:「X」とか「SM」とか画像に組み込まれてたり無かったりしますが、いずれにせよ著作権注意というニュアンスは漂わせますのでご了承ください。また、利用しているフリー素材の大半、著作権は手離されていないので、「使用している画像の著作権はすべて、スタジオメッセイ或いは素材提供者に属しています!」というざっくりした解釈でご了承くださればと思います。
↓物語開始↓
Stage: 謙一の家

【謙一】
んじゃ、行ってきます

【亜弥】
……あ、あの、兄さん?
「嫌いな曜日はいつですか?」
こんなアンケートをとったらぶっちぎって優勝するのは月曜日である。
大半の人は平日を闘いと見なし、生き残ることを望み進む。その結果、日曜日が現れる。
さながら砂漠の中のオアシス。では、月曜日とは何であるか。
そんなオアシスを自分と引き剥がす悪魔なのである。月曜日とは、存在自体が悪魔なのである。
謙一の日常もまた例外じゃなかった。朝の圧倒的な魔力にため息を零す姿は珍しくない。
普段通りならば止めるつもりの無かった亜弥はしかし、一度だけ謙一の歩みを止めた。
つまり、彼女なりに例外的な状態を察したのである。
というか疲れまくってるのである。

【亜弥】
本当に、大丈夫ですか……? 疲れという表現に上位互換があるなら迷い無く使う程度のビジュアルですが……

【謙一】
流石妹、鋭い

【亜弥】
客観的視点から見ても、普段の兄さんの疲れ方とは一線を画しているといいますか……

【亜弥】
学業は大事ですけど……それを維持する為の身体は以前の問題として見なすべきかと

【亜弥】
兄さん……本当に、本ッッッ当に、大丈夫ですか――?

【謙一】
心配性だなぁ亜弥は

【亜弥】
兄さんだって、私のことをよく心配するじゃないですか

【亜弥】
ですから、こうやって私も兄さんを心配するんです。相思相愛です

【謙一】
また新しい表現覚えたんだなぁ
Kenichi
まったく、情けない限りだ。もっとしっかりしないとな、兄さんよぉ……

【謙一】
ま、ホントに疲れ果てたら惰眠でも貪るからさ。今日は行くよ

【亜弥】
……そう、ですか。無理し過ぎないでくださいね、本当に……

【謙一】
ああ。そんじゃ今度こそ――

【謙一】
行ってきます

【亜弥】
行ってらっしゃい、兄さん
井澤謙一が異常に疲れ果てた理由は、ただ一つである。
Stage: 特変教室

【奏】
烏丸凪ごらあぁあああああ!!!!

【情】
テメエらは、俺の視界に要らねえ――

【凪】
一ヶ月我慢してあげたんだから、いい加減平穏が欲しいものね

【乃乃】
う゛ぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃい――

【沙綾】
かーくん……やっぱりアルスオフってる……! 昨夜のチャラ男覚醒宣言は何処行ったのよ!!
この教室である。

【譜已】
お、落ち着いて奏ちゃん……烏丸先輩に平穏をあげないと……

【奏】
譜已ちゃんは烏丸パイセンに優しすぎるんだよ……! そんな譜已ちゃんが大好き!!

【凪】
私も大好きよ譜已

【奏】
おめぇの大好きなんて私の大好きに比べたらちっぽけだっつーの

【凪】
貴方に抽象的な情報を比較測定する数学力があるなんて驚きね。恐れ入るわ(←本読みながら)

【奏】
テメーの評価できるとこなんてその安定して私を苛つかせてくる表現の数々くらいじゃごらあぁあああ!!

【譜已】
…………

【情】
少しは黙れねえのかゆでだこ。これ以上俺の仮眠を妨げんなら、ガチでゆでるぞ?

【譜已】
あ、ご、ごめんなさい……! その、頑張って抑えるので、ゆでないでください……!

【情】
てめえには聞いてねえが……まあいい。見張っとけ

【譜已】
ふぅ……

【沙綾】
隙あり!(←後ろから捕獲)

【譜已】
ひゃあ!?

【沙綾】
ごめんねぇ銘乃ちゃん~、ちょっと利害が一致しちゃってねぇ……?

【乃乃】
謙一さんが居ない今がチャンスです謙一さんが居ない今がチャンスです謙一さんが――

【譜已】
え――な、なに、何が始まるんですか……!?

【沙綾】
大丈夫……気持ちよく、させてあげるだけだから……

【沙綾】
だから、お・ね・が・い……? 銘乃ちゃんの魅力を、もっとぉ、まさぐらせて――?

【乃乃】
う゛ぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃい――

【譜已】
ひ、ひいぃいいいいいいいい――!!?

【美甘】
……………………(←消しゴムをさりげなくぶん投げる)

【乃乃】
う゛ぃいぃいぃい――ゴハァッ(←消しゴムが後頭部にクリティカルヒット)

【沙綾】
!? な、何!? まさか祟り――? 井澤くんが居ないからってこの子で遊ぼうとした私達にどこぞの神格が裁きを?

【沙綾】
し、信じないわ……! 私そういう不確実なもの信じないタイプだもの!! ねぇ銘乃ちゃん!

【譜已】
え? えと、あの、取りあえず私どこの宗派にも属してないんです、けど……

【美甘】
――――(←鉛筆削りをさりげなくぶん投げる)

【沙綾】
私は神を信じないの! だから私には罪も罰もない、強いて云うなら貴方が可愛いのがいけな――ゴハァッ

【譜已】
(あ……堀田先輩が、助けてくれた……?)

【美甘】
…………(←寝たふり開始)
本日も特変は大変仲が悪かった。良くも見えるのが、また悩みの種だった。
そんな悩みに圧倒的に苦しんでいる本人は、教室には不在だった。
しかし近くに居た。
Stage: 6F 屋上庭園

【謙一】
ふぅ……
そこは6F南棟の、「屋上庭園」。
一般棟の北側が6フロア分重ねられているのに対し、繋がった南側は一段少ない5フロアだった。
故に6Fの廊下をテキトウに歩いていると、南棟の屋上に、全く高度を変えず辿り着くのである。
庭園と呼ばれるだけあって、南棟の屋上は緑の景観を持っていた。
流石に森というわけにはいかないが、芝生は常にフッサフサで、寝転がれば天然のベッドである。
本日偶然にもその情報を仕入れた謙一は、早速午前中の悲しみと苦しみから逃れるように転がった。
そして今に至る。
Kenichi
……朧荼の情報は、悔しいが信頼性が高い。
事前準備の時にも色々お世話になったし、今でも隣のクラスらしいので、徳川同様に癒やしポジションなのだろう。
……いや、会話しててストレスは上がるから同じじゃないか。
Kenichi
しかしそんなキザから教わったこの芝生は、確かに心地良い。
我が家の布団もボロッボロだから、俺史上最高級の寝具を今体感しているといって良かろう。
おまけに直射日光の具合が丁度良すぎる。
あと数分で、意識が沈む予感がする。この場合自信と云うべきか。それすらもどっちでもいい気持ちでいっぱいなのは確か。
Kenichi
ヤバいな、次起きたら夕方になってるかもしれない……俺、サボるタイプじゃないのに。
学業が、一番大事なんだ……こんなとこで本末転倒してたまるか。

【謙一】
奨学生落ちしちゃ、何のために此処来たのか分かんなくなるしな

【謙一】
意識だけは、キープしとこう……いや、そんなセルフ生き殺しやるんだったらもう教室戻った方がいいか――?

【???】
別にいーじゃん

【謙一】
ん――?
謙一しか居なかった屋上庭園に、別の声が混じった。
一回起き上がり、周りを見渡す謙一。すると――

【志穂】
疲れてんだろー。起こしてやってもいーぜー
さっきの謙一みたいに、大の字になって芝生に沈む女子を発見した。

【謙一】
……いや、やっぱ起きてる

【志穂】
私が信用ならんと

【謙一】
普段あんな日中睡眠フェスティバルしてる奴をどうすれば信用できるのか
Kenichi
しかも既に体勢が起こす側の姿をしていない。コイツ確実に寝るもん。

【謙一】
ていうか……どういう風の吹き回しだ?

【志穂】
あ?

【謙一】
いっつも寝て過ごして起きたら暴れるだけの秋山が一体どうして俺に話しかけてきたのかなって

【志穂】
悪意ある修飾だな

【謙一】
恨めしい気持ちが溢れてるんだと思う

【謙一】
つまり悪いのはソッチだ

【志穂】
つくづく情けねー男子だなお前はー
志穂は上半身を起こした。
春になっても首を隠すマフラーは健在である。

【志穂】
私は比較的、マシな部類な筈だと自負してるぞ

【謙一】
…………

【志穂】
外部入学組っていうのもあるけど……アイツらは真理学園スタイル極まってるだろ。特に3人

【志穂】
アイツらに比べたら、私の惰眠貪る姿なんて、大人たちも愛くるしく妬ましく思うフツーの女子学生だろ

【志穂】
自分なりの目標があって、それに向かって……見栄えは地味でも、毎日努力してる青春の姿だ

【謙一】
秋山は、何かその目標にあたるモノがあって此処に来たのか?

【志穂】
私はプライベートなことは吐かない主義だ

【謙一】
そっかよ

【志穂】
……ただ、お前同様金が必要だった。正確には節約がしたかった

【志穂】
全額分削減できる奨学金制度を探した。結果、家チカだったのが此処

【謙一】
学問的観点からいえばしょーもない動機だったな

【志穂】
そういうお前はどーなんだゴラ

【謙一】
ミートゥー

【志穂】
モロ人のこと云えねーじゃねーか

【謙一】
兎に角、困窮しててな。節約できれば、その分他のものに金が回せる

【志穂】
趣味優先か。入試満点かませる実力が泣いてんぜお前

【謙一】
ははっ、だろーなー
Kenichi
学問に興味なんて無い。進学に拘りも無い。
今はただ、俺の全てが、亜弥だということ。
それ以外に理由なんて要らなかった。

【謙一】
……結果、俺は特変管理職に就いてしまったわけだが

【謙一】
進路選択を侮るとこうなるんだな。ほんとビックリだよ

【謙一】
そりゃ前の学校の先生も熱籠もるわけだ。もっと勉強しろって。しっかり進路と向き合えって

【謙一】
人生金だけじゃねーな、ホント
Kenichi
まぁ、後悔はしてないんだけどさ。
今は波に乗れてないだけ。困難な道なんて覚悟してる
この道から、外れてなるものか。

【志穂】
……侮ってたのか?

【謙一】
ん?
志穂の突然の問い。
それは全く気ままに飛び出た言葉だった故に、そこを衝かれた謙一は少し思考を乱した。

【謙一】
……どういうこと?

【志穂】
お前は、テキトウに進路選択して此処に来たのかって話
Kenichi
……その言葉の真意を探る。
怒っているわけでもない。質問しているようにも、思えない。
Kenichi
――分かりきっている話。指摘。

【志穂】
違ぇだろ。お前は……情けねー面ばっかだけど、思想は軟弱じゃない

【志穂】
あんな啖呵をノーウェイトで切る奴が、生半可な進路志望をしているわけがない

【謙一】
啖呵って――

【謙一】
ついでに云わせてもらうと、譜已ちゃんに八つ当たりするような人たちの云うことを聞きたくない

【謙一】
まだ付き合いも全然無いのにコレを云うのは未熟な証なんだろうが……それでも敢えて云いましょう

【謙一】
俺は貴方がたを尊敬しない

【教師】
ッ――!!

【謙一】
貴方がたに指示されて、あの人に牙剥けようなんて、俺はそんな無意味にリスキーな真似はしたくない

【謙一】
極めつけに、俺はあの人の傀儡であることのメリットを持つ

【謙一】
絶対譲れないメリットがある。以上のことから、俺は貴方がたの言葉では動かない

【教師】
学園のことより自分のことか……!!?

【謙一】
その通り

【謙一】
貴方がたは子どもみたいなあの人の権力に泣かされてきてるんだろう

【謙一】
そしてその苛つきを、子どもである学生に「上の立場」として接することで発散してるんだろう

【謙一】
これも敢えて、云いましょう

【謙一】
アンタらにこの教室で教育を語る資格なんて無え

【謙一】
即刻立ち去れ
Kenichi
アレか……

【志穂】
私は、ぶっちゃけ真理学園に何かを期待して来たわけじゃない

【志穂】
偏差値が酷いトコは、フラフラ彷徨ってる奴ばっかだろうと

【志穂】
そんなとこに志望してくる奴もまた、どうせ落ち零れか何かなんだろうと

【志穂】
興味無かったんだ。私は、私が在れば、金を節約できるなら、充分だった

【志穂】
学園に、何も期待しちゃいない。つまらない場所でも、条件が整ってるなら構わない

【志穂】
思った以上に癖の強い環境なのが分かっちまったが、そこは今も、これからも変わらない

【志穂】
周りは興味なんて無い

【志穂】
……ただ

【志穂】
お前だけは、意識せざるを得なかった

【謙一】
……は?
Kenichi
えらくストイックな話聞いてたら突然俺が出てきた。
思わずまた情けない声が出てしまう。

【志穂】
真理学園を志望してくる外部入学組なんて、ロクな人間も居ない

【謙一】
いや、徳川はちゃんとした人間だと思うんだが

【志穂】
けど、お前だけは違う……お前だけは、異常なほどに、目立つ

【志穂】
お前は落ち零れではない。話じゃ特待生Aにも合格してた。それは真理学園といえども相当な強者だ

【志穂】
テストを解く力だけじゃない、これまでおさめた成績・業績無しに通らない審査だ。ソレを突破してきてる――

【謙一】
お前も突破したんだから相当な強者だよな。極めつけに特変入っちゃってるし

【志穂】
プライベートは語らん、私を分析するな。それに今はお前の話だ
Kenichi
すげー横暴。

【志穂】
絶対あり得ない進路を、お前は選択した。加速する学歴社会の中で、お前は異端だ

【謙一】
まぁ、本当なら附属とか受けてみよっかなって、それこそ生半可な進路希望してたんだがな

【謙一】
進学してからの日常でかかる経費諸々もタダになる奨学金制度を、ほんと偶々発見しちまってさ

【謙一】
〆当日になって進路変更した

【志穂】
あり得ない

【謙一】
お前に云われたくないんだけどなソレは

【志穂】
……だからだろうな

【志穂】
私は少しだけ、ほんの、ほーーーーーーんのっ、少しだけ……

【志穂】
お前に親近感を抱いてるんだ

【謙一】
…………
Kenichi
笑った。
Kenichi
ほんの、ほーーーーーーんの、少しだけ、笑った。
Kenichi
多分、初めて見た。コイツが笑ったとこ。
口元は殆どマフラーで隠れていたけど、笑声っていうくらいだから、声から分かる。
Kenichi
……俺、人の笑顔を見たの、いつぶりだ?

【志穂】
社会がくだらない、あり得ないと評価する進路動機を貫くお前が、それを自分で低く見るような真似は……

【志穂】
私は見過ごせない

【謙一】
……………………
Kenichi
……コイツ、器用なのか不器用なのか、どっちなんだろうな。
人を貶したいのか褒めたいのか、どっちなんだろうな。
……自分の納得する途中式通りでないと、気が済まないのか。さっきの俺の呟きはソコに触れたと。
Kenichi
……だとしたら、自分勝手も良い処だ。まさに特変とも云うべき、人格性。変態と云ってもいいだろう。

【志穂】
今朝のお前の顔色は冗談じゃない。構わず佐伯がパイ顔面にかましたがな

【謙一】
今日は松茸のお吸い物の香りがした

【志穂】
午前の授業も、大いに混沌だった。お前、いちいちツッコミ入れてさ。超加速のまま脱線するし

【謙一】
そこは悪癖だと自負してる。そして治らないと思う

【志穂】
で、遂にお前はここでぶっ倒れた

【謙一】
別に限界だったわけじゃない。大切な奴に命令されてたんだ、ヤバくなったら休みなさいって

【謙一】
だからキザ野郎にオススメの癒やしスポット訊いて、それで此処に転がりに来たってだけ

【志穂】
だけ、で済ませる辺りお前最高にアホだな

【謙一】
さっき学力評価してくれたのに

【志穂】
それとは話が全く別項。自分の死に際も理解できない奴をアホと呼ばずにどーする

【謙一】
いやいや、こんなとこで死ぬわけないだろ
Kenichi
クラスメイトと上手くやれてなくてストレス死とか、くだらない。笑い話にもならない。
何より、亜弥をあの家に独りにする事があり得ない。

【謙一】
今はまだ軌道に乗れてないだけ。そこさえ通過できれば、あとは何とかなるさ。それまでの辛抱だ

【志穂】
お前、あのクラスに軌道なんてものが存在するとか思ってないよな?

【謙一】
……………………
Kenichi
黙らされた。

【志穂】
私も、どうなるのか、どうすればいいのか分からない。果てには、金も受け取れなくなるかもしれない

【謙一】
確かに。特変破りで負けるようなことがあったりすれば……
Kenichi
どんな展開も、実現しうる。
俺や秋山が入学してきた意味も失いかねないような展開も当然ながら。
Kenichi
それほどのリスクを背負うから、特変は絶対的な権力を持った。そして今、ソレが暴走気味。
結果真理学園の大半の人間に特変は恨まれるようになった。邪魔な存在、排除すべき奴らだと。
Kenichi
暴走を、止めなきゃいけない。その為にどうすればいいか……?

【謙一】
何とかクラスをクラスとしてまとめる……
Kenichi
まず、そこから始めなければいけない。
空中分解する前に、この凶器な程にチグハグした一枠を整えなければいけない。

【志穂】
……他の奴らはどうなのか知らねーけど

【志穂】
少なくとも私の節約学園生活は、誠に不本意ながら、お前に懸かってる

【志穂】
お前が特変管理職として、アイツらから一目置かれるようになることが、必要条件だ

【謙一】
……秋山。俺は、あんな変態共をひとまとめにできるような器じゃない

【謙一】
それでも――俺に、懸けるってのか

【志穂】
此処でお前とこんな長話した時点で、察せ

【志穂】
私の意思も重要だが、それだけで何とかなる領域をコレは越えてる

【志穂】
お前が何とかしなきゃいけない。だがお前は何とかできるような器じゃないと自己分析する

【志穂】
――じゃあ、最早私がお前と手を組むのは、ここまで利害の衝突が無いんだ、義務だろ

【謙一】
秋山……

【志穂】
分かってるな。今週だ。今週で決まる

【謙一】
ああ……俺たちの財政事情が、学園生活がどうなっていくのかは――
Kenichi
明後日から始まる、「真理合宿」で方向付く。
Kenichi
存続か、滅ぶか。
その近い未来が決定される。

【志穂】
ガチ、気張れよおめー

【謙一】
……お前こそ、ほんと頼むから日中寝るなよ
予鈴が響く。昼休みの終わり。
間近に存在する山場を前に――
井澤謙一は、夢見心地の芝生から完全に身体を起こした。