「特変」結成編1-1「親睦(1)」

あらすじ

「出来れば、俺の今感じてる、ミッションの難易度。夢であってほしいなぁと、思いながら顔についたパイをスプーンで掬い取るばかりだった……」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」1章1節その1。入学式早々同学年の学生たちの青春を何か知らない間に剥奪して嫌われてしまった井澤謙一くんの率いる「特変」。何より一番本人が動揺して憂鬱になる中、それでも今学期からの彼の戦場、特変教室へと重い足を引きずる彼の朝のお話でございます。

↓物語開始↓

290404


AM8 00
Face_kenichi

【謙一】

…………


Kenichi

……………………。


Kenichi

ダルい。


Kenichi

かなりダルい。


Face_kenichi

【謙一】

えげつない道のりよ……


Kenichi

家から優海町へ――この学園へ行くまでは問題無い。


Kenichi

けど、門を抜け、森に突入してからが本番。


Kenichi

そこまで深くないし、よく見れば幾千人の足跡が刻まれている。


Kenichi

それもあって新参者がこの校舎に辿り着くことは決して不可能じゃない。


Kenichi

しかし一旦このレールを外れたら、戻ってくるか校舎に行き着くか、いずれにしても困難を極める。


Kenichi

現に俺は何度目かの真理学園、案の定一人だとまだ迷子になる。早く登校してきて良かった。


Kenichi

で、それから自分の教室に向かうわけだが……




Face_kenichi

【謙一】

…………


Kenichi

朝からこんなに気分が重たいとはな……何て新学期だ。


Kenichi

我が教室は一般棟の6Fに存在する。
ぶっちゃけ5Fと6Fはまだ空き教室だらけだが、そのうち2部屋がクラス教室として使われることになった。他クラスと交流しづらい環境だが、俺達の場合はコレで良かったんだろうな。


Kenichi

でも階段を一度に10段とすると多分100段は昇ることになる……ぶっちゃけダルい。


Kenichi

極めつけに辿り着く我が教室は……


Face_kenichi

【謙一】

…………


それでも謙一は足を止めない。


彼の居場所は。彼の戦いは確かに彼処あそこにあることを、彼自身が認めているからである。


そうさせるのは、ひとえに家族の存在である。


Face_kenichi

【謙一】

……亜弥


Kenichi

その名前を呟くだけで、不思議とエネルギーが海底から湧き出てくる気がする。


Kenichi

…………。


Kenichi

よし、行こう。


気付けば、階段を昇りきっていた。


そこは6F。


踊り場を抜ければすぐに教室札が視界に入った。


Face_kenichi

【謙一】

……さあ


Kenichi

生半可なものじゃ、絶対俺はくじけないぜ!


Face_kenichi

【謙一】

何でもこーい!


謙一は前方のドアを開けた。



water101 (2)

ベチャッと視界一面が、というか眼球が白く塗りつぶされた。


Face_kenichi

【謙一】

……………………


Face_nono

【乃乃】

あっ、しまったサプライズが


……………………。


謙一は試しに口を開けてみた。


当然顔をストレートに塗りつぶしてきた白い物体が中に入るが、甘かった。


Face_kenichi

【謙一】

……オイ


Face_nono

【乃乃】

はい


Face_saya

【沙綾】

あーらら、朝からはしたない(パシャッ)


Face_kenichi

【謙一】

主犯とたった今写メった奴、正座しろ


Face_saya

【沙綾】

(°ω °;)?~


写メ犯は逃亡したが、トラップを仕掛けていた乃乃は大人しく正座した。


云うまでもなく謙一はマジで怒っているのであるが、端から見ればバラエティの洗礼を受けた普通の人みたいな姿になっていた。


Stage: 特変教室


Face_kenichi

【謙一】

弁明を聴こうか


Face_nono

【乃乃】

いやぁ、今日のメインテーマを考えるに何かしら一つでも催し物を準備しておいた方がいいかなと思いまして


Face_nono

【乃乃】

ゲームは特に考えてませんが、罰ゲームとしてパイを用意しておこうと


Face_kenichi

【謙一】

まず真っ先に罰ゲームから取り組むところが流石核弾頭だな


Kenichi

パイ何で用意できてんだよ。


Kenichi

ってかコレ、パイだったんだなやっぱり……
この甘さで8割予想はついてたんだが、残りの2割をそうさせなかった味まで感じていたものだから。


Face_kenichi

【謙一】

何でこのパイほのかに梅の香りただよってんの?


Face_nono

【乃乃】

ただのパイだとインパクト薄いじゃないですか、何より凡庸ぼんよう的です。故に、私なりのトッピングをしてみました


Face_nono

【乃乃】

甘い悪夢に沈む暇も与えられず、仄かな香りによってすぐ現実に帰り直面してくださるように


Face_kenichi

【謙一】

ぶっちゃけ美味いのが困る


Kenichi

それ故か、激しいリアクションも取れない。顔を真っ白にされ且つリアクションを殺されるという二重の暴力。
何て鬼畜な罰ゲーム大使なんだ。


Face_kenichi

【謙一】

というか未だに視界真っ白で教室の様子見れてないんだけど、俺全然心配されてないわけ?


Face_fui

【譜已】

え、えと……おはようございます、井澤先輩……?


Face_kenichi

【謙一】

おお、その声は譜已ちゃんか。声掛けてくれてありがとう


Face_fui

【譜已】

は、はい……


Kenichi

取りあえず左に顔を向けてみるが、実際に譜已ちゃんがそこに居るかは分からない。


Face_kenichi

【謙一】

おはよう、今日も元気か?


Face_fui

【譜已】

は、はい……先輩も、えっと、元気そうで良かったです……


Face_kenichi

【謙一】

ありがとう


Kenichi

死にたい。


Face_nono

【乃乃】

それにしても、折角パイ発射機、あと少しで完成したのに……作業の流れ上仕方なく安全装置を外したタイミングでドアを開けるから


Face_nono

【乃乃】

謙一さん、笑いの神に愛されてるのでは? 御神籤おみくじの結果どうでした?


Face_kenichi

【謙一】

確か末吉だった。細かい内容は覚えてない


Kenichi

でもコレは大凶なんじゃなかろうか、神様……


因みにこの状態の謙一に話しかけた、というか話題に触れたのは結局乃乃と譜已ぐらいだった。丁度その頃、


Face_so

【奏】

あのさぁ、毎年思ってたんだけど、どうしてパイセンそんなスカート長いわけ? 可愛さ無いよね~てか可愛くないのかやーい!


Face_nagi

【凪】

私には貴方みたいなS丈の女はほぼ全員ふしだらに見えるの


Face_so

【奏】

何つー極端な発想してんだこの眼鏡! そういうパイセンのL丈の方が何かを隠したがってるみたいで、逆にふしだらに見えるもんねー!!


Face_nagi

【凪】

眠い……


Face_so

【奏】

無視!! てか毎日云ってるけど、人と話する時くらい本から目を外せーい!!


Face_nagi

【凪】

毎日返してるけど、貴方に視線を向ける時間がもったいないの


Face_so

【奏】

表に出ようか……新年度だろうが特変だろうが関係無く、切れちまったよ……


二邑牙奏と烏丸凪は喧嘩中(?)であり、


Face_saya

【沙綾】

はぁ~、かーくん全然アルス握らないなぁ……


Face_saya

【沙綾】

って、まさか、あの女狐、もとい牛が何かやってるんじゃ……


遠嶋沙綾はアルスでサーフィン中であり、


Face_mikan

【美甘】

フンッ……フンッ……フンッ……――


堀田美甘は椅子の上で腹筋中であり、


Face_joe

【情】

ごがあぁああああああああああああああああああ


Face_shiho

【志穂】

ぐぉおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


衒火情と秋山志穂は机に突っ伏し爆睡中である。


Face_kenichi

【謙一】

……マジかよ、ここまでえて顔面キープしてたのに、誰もツッコまねえのかよ……


Face_nono

【乃乃】

謙一さんも、割とエンターテイメント精神持ってるんですね


Face_kenichi

【謙一】

まぁ俺だし……


Kenichi

でも、それを呼吸のついでにしのいでくるキャラの濃さを此奴こやつらはそれぞれ確立してるんだなぁ。


Kenichi

……出来れば、俺の今感じてる、ミッションの難易度。ざっくり云い換えれば嫌な予感。


Kenichi

夢であってほしいなぁと、思いながら顔についたパイを佐伯から渡されたスプーンですくい取るばかりだった……


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