「特変」結成編3-4「革命と革命(2)」
あらすじ
「沼谷。好奇心旺盛なのは構わないが、少しは節度を持った方がいいぜ。踏み込む領域はしっかり考えた方が良い」☆「「特変」結成編」3章4節その2。謙一くんの危機はすなわち特変の危機。追い詰められた特変の教室を2人の敵が偉そうに訪問します。
↓物語開始↓
Stage: 特変教室

【美甘】
謙一全然帰ってこねえ!!
Mikan
謙一が住吉先生に連れて行かれたのが3限目始まったときだから……もう3時間くらい帰ってきてない。
これは、相当学園長に色々云われてる感じなのか……?

【美甘】
謙一は、悪くないのに……

【沙綾】
でも、藤間くんを選んで敗北確定の特変破りを受けてしまったのは事実でしょ

【奏】
まーた今回もサヤパイは外道な意見を……

【沙綾】
……………………

【奏】
……? サヤパイ?
Mikan
いつも通り、飄々と色んなものをディスるのかと思っていた。
けど、沙綾はただそれだけしか云わなかった。そして笑ってなかった。
Mikan
その様子を見て、違和感……そして次に押し寄せてきたのは、怖いっていう感情。
ウチは、沙綾が今尋常じゃ無いほど怒ってるんだって悟る。

【奏】
ど……どうしたの……?
Mikan
あまりに露骨に黒く、強烈な殺気にいつも怖じけなく突っかかっていた奏も、声を震わせる。

【沙綾】
……外道は、嫌いじゃないんだけどね

【沙綾】
私は外野で見てるぐらいが好きなわけ。そういう距離感、分かる? 大事なわけよ

【奏】
??? う、うーん……? 分かるような、分からないような……

【沙綾】
だからね、直接こう私に絶大なダメージぶち込んでくる外道は、まぁ嫌いじゃないけど当然お断りなわけよ

【美甘】
だ、ダメージ……?

【情】
――なるほどな

【情】
お前の彼氏擬きは平賀に捕まってるのか
Mikan
情は、いつも通りだった。
その調子のまま、核心を呟いた。

【奏】
ぁ――

【沙綾】
……ま、音々はどうでもいいんだけどね。かーくんとゆかりを取られちゃったのは、正直焦るわよねー

【美甘】
そ、それ……確定なのか……?

【沙綾】
貴方たちが無駄にハラハラしてる間に、光雨に色々スキャンしてもらったのよ。指紋とかあれば、それ読み取って優海町ぐらいの範囲をスキャンして位置情報ぐらいは割り出せる

【沙綾】
無事なのかどうかまでは分からないけど、取りあえず生きてるってことね。因みに指輪使ってスキャンしたけど、藤間妹ちゃんは何処にも反応なかったから……実は優海町外まで逃げきれてるか、それとも……

【沙綾】
美玲さんと朧荼くんは無事で……あと、四谷くんと黒田くんだっけ? あの二人も捕まってるわね

【凪】
貴方の気になっていた三重も、スキャンに出たわ。春日山くんと同じ場所に監禁されてるのかしらね

【乃乃】
……先ほど調理委員の方が話してくれたのですが、枢奈さんも朝から姿を見せないようです……申請用紙から指紋を採って、スキャンしたところ……ビンゴでした

【志穂】
他にも、美甘に憧れたバスケ部とか、藤間戦でちょっと見直した連中とかが、反革命派に見なされたっぽいな。流石に全員分把握はできてないが……人質の数は、存外多い

【沙綾】
何で貴方のジョーカノ、まだ捕まってないの?

【情】
……単純に、俺が怖いからだろう。たとえMSBを煽ってこの学園を壊そうとも、俺が一人残らず逃がさないのを奴らは知っている

【沙綾】
……嘘でもいいから、こうなるのを察してかーくんも捕まんないでほしかったわねー

【凪】
私は、銘乃政権がどうなろうとどうでもいいけれど――

【凪】
この状況では、もう貴方は私同様の立場ではいられなくなったのね

【沙綾】
そうそう、そこなのよ。かーくんの学園生活が保障されなきゃ、ダメなのよ
Saya
……一番早急に何とかしないといけないのはゆかりね。あの子、変な気起こさなきゃいいけど……
Saya
そして、あの莫迦雌牛は……

【沙綾】
ッ――
Saya
折角今の状態まで回復したのに、斑鳩の傷痕が開いたらどうすんのよ――

【???】
……居ないのか? アイツは

【特変】
「「「――!!」」」
焦りに焦っていた放課後の特変の教室に、異質な声が響く。

【嘉祥】
失礼する。……広いな。本当に教室を9人だけで使っているのか。正直羨ましいよ

【珠洲子】
…………

【奏】
え、ちょ、誰――?

【凪】
少なくとも一方は知ってるでしょう?

【情】
………………

【沙綾】
……猛者狩りの沼谷嘉祥に、優海町冥王相楽珠洲子様ね。斬新なツーショット一応撮っておこうかしら

【嘉祥】
こころなしか、随分と元気が無いように見えるな。遠嶋沙綾

【嘉祥】
俺の印象では、栗田寮でバカ騒ぎをしている姿なんだが……そうか、そのうち3人も居なくなっているのだから、それは為しえないわけだ

【沙綾】
挑発のつもりかしら? まあ、そういう系の理由でここ来たんでしょうけど。見ての通りリーダー不在よ

【嘉祥】
そのようだな。だが、それでも一応まだこの場所に立つ意義はある。何せ、お前たち特変を見れる最後の機会になりそうだからな

【奏】
……ねえ、熊谷先輩

【譜已】
沼谷先輩……

【奏】
沼谷先輩

【嘉祥】
何だ?

【奏】
こんなことして楽しい?

【嘉祥】
……フッ……もっと無鉄砲で、何も考えていないイメージがあったが……それは少し改める必要がありそうだな

【凪】
合ってるわよ、貴方のそのイメージで

【嘉祥】
だが、俺は今そんな年下の女子に……少しだが、脅威を感じた。負ける気は更々無いはずなんだがな

【奏】
質問に答えてよ!!

【嘉祥】
……楽しいかどうか、か……
嘉祥は、悩む素振りを見せる。
が、それは素振りでしかない。答えは、最初から確定している。

【嘉祥】
現時点では、あまり楽しいことはなかったな

【美甘】
現時点――?

【嘉祥】
総ては、井澤謙一と相見えるため。特変の頂点に立つ者は、そう簡単にはこちらの申し出に頷いてはくれないだろう?

【嘉祥】
だから、忍耐したよ。奇襲でもいいから、と逸る気持ちもあったが、それを制してこの時を待ち続けた

【嘉祥】
平賀殿は云ったんだ。お前達一人たりとも介入する余地を作らずに、奴と戦う舞台を用意できると

【嘉祥】
だから、俺はあの外道の駒になることを選んだ

【凪】
……あの後輩相手にボコボコになってた人と戦うためだけに? 相当な物好きね

【凪】
ああいう人種と一度でも関係を持つと、後々ややこしいことになりそうだけど

【美甘】
恥ずかしいとか、思わなかったのか……!? 藤間が…後輩の男子が、あんなことになって――!

【嘉祥】
惨いとは思っている。そうなるに至って、俺は加担した者なのだというのも、自覚している。罪が無いとは決して思わない。その上で――

【嘉祥】
弱者が弱者であったのが悪いと、俺はそう結論づけている

【美甘】
――は――?

【嘉祥】
自分の障害を、自分の力で撥ね除けることのできなかった……これを弱者と呼ばず何と云うんだ?

【嘉祥】
とても虚しく、悲しい存在だ。故に弱者は努力しなければならない。克己し、磨き、高みを目指して強者とならねばならない! お前達のような存在に!

【嘉祥】
それができなかったなら、その弱者は……救いようがない。他の者と協力し、酷い時には護られて、生きていかねばならない……そんな生を強制されるのは、最早拷問だ

【嘉祥】
……だからといって、藤間はあの場で死んでいいとは、思わなかったがな。アイツは強くなる。だがその前に屈してしまった……

【嘉祥】
いずれ詫びは入れよう。その時が来たら、だが。そしてそれが来ようとも来なかろうとも、俺は後悔していない

【嘉祥】
……こんなところでどうだ? 俺はそれなりに、お前が訊きたそうなことを整然と答えたつもりだが

【奏】
……譜已ちゃん……

【譜已】
――ダメ。奏ちゃん、抑えて……

【嘉祥】
俺としては構わないぞ。最大の興味は井澤謙一だが、欲を云えば特変全員に興味がある。今ここで拳を交えるとしても、平賀殿には俺の方から寛恕願っていい

【嘉祥】
抑もいずれ、あの強者にも挑むつもりでいるのだからな

【沙綾】
ほんっと猛者狩りしか頭にないのねこの眼鏡。でも奏、抑えなさいよー

【沙綾】
あくまで今、真理学園の雰囲気を掌握しているのは平賀先輩なんだから。あの人の機嫌を損ねるようなことはしないでおくのが吉

【奏】
だからって、このまま云われるがままでいろって――!?

【沙綾】
鑓多さんが死んでいいなら私は止めないけど

【奏】
ッ……く……くそ――ッ

【嘉祥】
……お前はお前で、気が気じゃない筈なのに、その冷静さは畏れ入るな

【沙綾】
その辺分かってるんだったら、貴方たちも無闇に刺激しないでくれない? それで不測の展開に行ったら、困るかもしれないのはまず貴方なんだから

【嘉祥】
その通りだな。明日を控えて、俺も心が湧いていた。反省しよう

【嘉祥】
ちなみに用件はまだあってな。明日のお前達の行動拘束についてだ。それと、人質の件

【美甘】
――! 人質……皆は、無事なのか!?

【嘉祥】
実際を見ていないから信頼性には欠けるが、藤間以外に暴行は加えていないと聞いている

【嘉祥】
そして明日の本番時、お前達にはこの人質の無傷解放を引き換えに自主的に行動を控えてくれると、我々としては助かる、という念には念の押しだ

【譜已】
無傷、解放……!?

【乃乃】
……それは、同じく信頼できないものではありますが

【嘉祥】
だろうな。正直、革命成功後に人質を解放する意味があるとは思えない。平賀殿の視点で、の話だが

【沙綾】
だけどソレまでは、確実に私たちの行動を抑える為に、人質に何かするわけにはいかなくなる……

【嘉祥】
お前達は無線も持ってるようだからな

【志穂】
……あのハゲ、何ヘマやらかしてんだ……

【嘉祥】
安心しろ、それに気付いているのは俺だけだ。云うつもりもない。本当にお前達が行動を抑制しているにもかかわらず人質に傷が入ったと、何らかの方法で知り得た時には、無線でも何でも使って好きに暴れればいい

【嘉祥】
ここまで約束事を守った現権力者を裏切る行為だ。MSBの信号を緩和することはできずとも、平賀殿の喉元に刃を突き立てるぐらいの隙は生まれるだろう

【嘉祥】
故に、現状お前達がこの追加の約束事を受け入れることには、メリットがある
Mikan
……コイツは、全然動じてない。
今までの挑戦者とは、根本から違う。心の底から、ウチ達を懼れる心を持っていない。寧ろ、ワクワクしてるんだ。
だから隙がない……それどころか、譲歩を突きつけてきて……総てが、平賀の手のひらの上だと、思い知らされるようで――
Mikan
それが、尋常じゃ無く、悔しくて――!

【???】
――俺が居ない間に、何かまたややこしいものを持ち込んできてるな沼谷
Mikan
――だから。
Mikan
3時間ぶりにその声を聞いて、すごく……ウチは、安心できた。

【謙一】
っていうかお前凄いな、ベラベラとこの教室来てこんなに喋ってるの小松ぐらいだぜ。あと朧荼

【嘉祥】
会えないかと思っていたよ。特にお前個人に今用事はないが、どうせだからな。もっと近くで、事前にお前を見ておきたかった

【謙一】
気持ち悪いこと云わないでくれない?

【美甘】
謙一――!!

【謙一】
ん……な、何だ美甘。急に明るい声出して……

【美甘】
うぁ、ぅ……
Mikan
我に返って……めっちゃ恥ずかしくなった。
気付けば、そんな声が出てたから……。

【謙一】
んで、取りあえず俺の耳に入ってきた内容だと……何か交渉したいんだろ?

【嘉祥】
当日、特変面子には自主的に行動を控えてほしくてな。ずっと職員室で何もせずに観戦してくれていたら、人質を無傷で解放すると

【謙一】
つまり、少なくとも革命に決着が付くまでは人質の無事が保障されるってことだな。分かった、それでいこう

【奏】
ちょ、ケンパイ――!? 即決て!!

【謙一】
悩む必要もねえだろ。メリットしかない。それを裏切ったら付け入る隙もできるし、翠ちゃんも行動しやすくなる

【譜已】
え――翠、ちゃん――?

【謙一】
……色々あって、学園長のことを本日からちゃん付けすることになりました……

【譜已】
……………………
Kenichi
譜已ちゃんの目が死んだ。
今無言で娘は一体何を考えてるのか、正直怖くて目が合わせられない。

【嘉祥】
…………

【謙一】
ん、どうした……?

【嘉祥】
相楽、どう思う?
突然嘉祥は、共に来ていた女子に主語が曖昧な話題を振った。

【珠洲子】
……どうせ雑魚だろ。オレは興味なんてない

【謙一】
初見でいきなり酷い云われようだ

【美甘】
初見――? って、あ、そっか……あの時、謙一はエレベーターの故障の件で色々動いてたから……

【謙一】
え? なに、お前らはこの女子知ってんの?

【奏】
相楽珠洲子パイセン。この前独りで奇襲仕掛けてきて、ジョーパイに叩きのめされた可哀想な人

【珠洲子】
…………

【奏】
……そんなガン飛ばされたって、怖くないし。もう武器ないんでしょ? 実際今、特変が預かってるんだし
Kenichi
どうやらいつぞや、俺の居ない間に印象的な奇襲が入ってたみたいだ……何ソレ怖い。

【嘉祥】
良かったな相楽。お前の気になっていたことが判明した。無事だそうだ

【珠洲子】
うるせえ。……なら、明日取り返す。そこの雑魚潰して、そして――

【珠洲子】
お前を、潰す

【情】
……………………
情は、彼女を見ていなかった。
それが何を意味するか、相楽珠洲子という女子はよく分かっていた。

【珠洲子】
……それならそれでいいぜ、のんびり空でも仰ぎながら潰れて四散してな

【謙一】
なんて怖い表現してんのこの女の子。こんな奴まで明日居るの?

【嘉祥】
確定だ。しかしどうやら勿体ないことに、井澤には興味がないらしい。お陰で俺も多少安心して、お前と相対することができる

【謙一】
んで、俺は結局なんで今相楽ちゃんにゴミ評価されたわけ?

【嘉祥】
いや、面白いなと思ってな。俺としてはとても好都合だから文句は一つとて無いが……

【嘉祥】
ヤル気がある人間の眼をしている

【謙一】
沼谷。好奇心旺盛なのは構わないが、少しは節度を持った方がいいぜ。踏み込む領域はしっかり考えた方が良い

【謙一】
知っての通り、今の俺には余裕がない。お前らの命の、保障はしないことにしてるから
Kasyo
……虚勢、ではないようだ。
本気の眼をした男の本気の口だ。
Kasyo
ここにきて、これほどとは……なるほど。
もしや、この男は――アイツよりも……

【嘉祥】
殺し合い、になったとしても明日の試合は止まらない。それをも覚悟して……

【嘉祥】
明日、最初で最後の、お前との試合を楽しむとしよう
最後まで毅然を崩さず振る舞った沼谷嘉祥は、軽快な調子で去って行く。

【珠洲子】
…………
それとは対照的に、ずっと不機嫌な調子を隠そうともしなかった相楽珠洲子も、嘉祥の後に続いた……。

【凪】
……………………

【沙綾】
……………………

【謙一】
……ん、どうした?

【沙綾】
いや、えーと……

【沙綾】
貴方、ほんとリーダー??

【謙一】
いきなりなんだよ……

【奏】
ケンパイ、何か……めっちゃカッコいいんだけど!? どうしたのいつものケンパイは!? 何処に置き忘れたの!? 学園長室!?

【譜已】
学園長室で……一体、何が……

【謙一】
カッコいいと云われたのは嬉しいけど、普段の俺ディスられてるよねこれ
Kenichi
そして学園長云々は全力でスルー。

【志穂】
……お前、ヤケに自信ありげだが、何か打開する策でも見つけたのか?

【謙一】
いんや、全然

【美甘】
ないのかよ!!?

【奏】
カッコ悪い!! ただの背伸びだったのさっきの!?

【謙一】
別に俺、勝ちます宣言なんてしてないし。自信なんてあるわけないだろ

【謙一】
っていうか、俺は無責任な言葉はあんまり口にするの好きじゃなくてさ。そういうのは――

【謙一】
勝ってからしっかり俺たちの勝ちって云うことにしてるから

【乃乃】
――――

【奏】
――――

【譜已】
――――

【謙一】
……なに?
Kenichi
何、この空気?
俺、そんな奇天烈なこと云ってないよね? そんな意味不明なことではないよね?

【謙一】
お前らこそどうした? 何かいつもとちがくね……? こういう時、何かしらすぐ罵倒っていうか、馬鹿にしてくるじゃんお前ら……調子狂うなおい……

【美甘】
く、狂わされてるのは間違いなくコッチなんだ……謙一……

【謙一】
美甘、何か顔赤い――

【美甘】
見るなバカーーー!!?(←パンチ)

【謙一】
ぐっふう!?

【志穂】
……ま、私らの振れる賽はもう殆ど残ってねえ

【志穂】
それは全部、お前が振れ謙一

【情】
俺は帰る

【沙綾】
え、帰るの? 貴方いつも通りすぎない?

【情】
俺は何も奪われてねえ

【沙綾】
超羨ましい……でもま、私たちにできることは何もない感じだし。リーダーが迷い無く私たち封印確定させちゃったお陰で

【謙一】
そうだな。今回は、皆帰ってくれて構わない

【美甘】
え……謙一!? 作戦会議は!?

【謙一】
どうせ何もすることないだろお前らは。だったらテスト勉強でもしてろ

【謙一】
あ、でも今回の革命で一般クラスも定期テストのタイミングずれるの確定なんだよな……ま、いいや。後で考える

【奏】
こんっっっっな絶体絶命の危機の中、テスト勉強してろと!?

【譜已】
け、謙一先輩……!?

【謙一】
……正直云うとな。今、俺独りで考えてたいんだ

【謙一】
いっつもお前達と考えてるけど、今回はそれとは別のことを、やりたい

【美甘】
謙……一……?

【謙一】
お前にも、教えてもらったからな。美甘
Kenichi
こんな時だってのに、随分とお気楽な俺だ。
Kenichi
……空元気なのは認めよう。
だが、明日はもっと、正直な俺の姿が出る。
Kenichi
そうなった時の為に……俺は、心構えを作らなきゃいけない。

【志穂】
謙一

【謙一】
ん?

【志穂】
――勝てよ
Kenichi
何とも、青春溢れる押しの言葉だ。三重なら喜ぶのだろうが。

【謙一】
それは、明日判明する
Kenichi
俺はこんな微妙なことしか返せない。
だが、それが俺であり、真実だろう。
Kenichi
俺がソレを言葉にすべきは、明日勝った瞬間なのだから――