「特変」結成編3-2「人生字を識るは憂患の始め(2)」
あらすじ
「どうしてこんな殆ど思い出のない連中のテンションを上げる為だけに金と亜弥タイムを手放さなきゃいけないんだっ……!」☆「「特変」結成編」3章2節その2。これまた日常オンリーな回。かつての学校の同級生たちの同窓会に参加する羽目になった謙一くんと磨美ちゃん、更には秋都ちゃんがひたすら疲れます。
↓物語開始↓
Kenichi
本日、日曜日。
学生歓喜の日曜日である。少なくとも俺にとっては憂いの原因の連中と会わなくて済む欣喜雀躍ダンシングのサンデーである。
Kenichi
……………………。

【謙一】
はぁ~~~~~~
Kenichi
だが、今週の俺は、早速憂いの溜息を、大勢の前で吐いていた――

【ビアス】
おいおい、いきなり何だよ、主賓なんだからしっかり元気に振る舞えって。はよ開会の挨拶

【謙一】
何で主賓としてもてなされる予定の俺が挨拶担当してるの?
Kenichi
と、最近板につき始めてたツッコミなる役割が発動してしまったが、今回俺に憂いを仕掛けてきているのは奴らではない。

【男子】
いいぞー! ひっこめひっこめー!

【男子】
ひっこめハゲー

【女子】
井澤くんナイスハゲ!

【謙一】
殺されたいようだな。乾杯

【noname】
【バカ共】「「「かんぱーーい!」」」
投げやりな開会の挨拶で、真っ昼間からユストビの一魚介レストランにて宴が始まった。
貸し切りだった。

【謙一】
ワケ分かんないんだけど。普通貸し切りだったら俺入れないよね?

【ビアス】
丁度赤塚が欠員することになって、残念だなぁって思ってたとこで金曜お前と出くわしたんだな

【謙一】
ほんっと俺運無いなぁ
Kenichi
本来なら亜弥と仲睦まじくしながら今週の期末試験の最終調整をしようと思ってたのに、あの放課後にユストビに寄ったのが悪かった。あと少しで完全に忘れ去りそうだった髙橋と目が合い、「同窓会やるから来い! 来いよな! 来るよな!」と……
Kenichi
周りの視線が気になって早くやり過ごす為に、頷くしかなかった……。
Kenichi
畜生、別に試験準備はできてるからいいんだけど、どうしてこんな殆ど思い出のない連中のテンションを上げる為だけに金と亜弥タイムを手放さなきゃいけないんだっ……!

【謙一】
ってよく見たら廿栗木まで居るじゃん……? 俺より意味分かんないんだけど

【廿栗木】
多分だけどお前と同じ流れだと思う

【謙一】
なるほど
空気伝いに二人は握手した。

【女子】
廿栗木さん、また黒くなったー? 遊んでるねー!

【廿栗木】
黒くなってねーよ

【女子】
さては男でもできたかなー?

【女子】
いや、今時この黒塗りは男受けしなくね?

【廿栗木】
帰りてえ(笑顔)

【謙一】
廿栗木、案外皆と仲良くやってたんだなぁ……
Kenichi
俺の乏しい記憶によれば、ほんっとぐーたらしてるだけの羊頭狗肉そのものな奴だと結論づけざるをえないんだけど……

【謙一】
マジで俺来てなんかメリットあった? 数合わせ以外で

【ビアス】
は? そんなのあるに決まって――

【ビアス】
……………………

【ビアス】
……あるよ?

【謙一】
帰りてえ(笑顔)
しかし律儀にも帰らないで何とか話題を作って盛り上がる。
各々の現在所属の学園についてに。

【ビアス】
冨士美農林、入ってみると結構良いトコなんだよー! 皆明るいし体力もあって、野球部の全身体力と云われたこの俺がカラオケで真っ先にへばるくらいだぜ

【謙一】
……………………

【男子】
俺の風前灯火学園さ、小便流鏑馬部ってのがあって俺も入ったんだけど、これがまた奥深いんだよなぁ……極めた先輩とか、「お前らの立ちションは止まって見える」とか云い出すんだぜ? 俺もいつかああなりたい――

【謙一】
……………………

【女子】
私、吉報須弥山学園に入ったんだけど……まさかボランティアにハマるだなんて思わなかったなぁ

【女子】
え? 島村って「人助けとかボランティアなんて傷の舐め合いしたいだけの集まり」とか豪語してたじゃん

【女子】
そうなんだよねー。でも、何かそういう私を受け入れてくれた人がいて……正直私もどう思ってたのかとかあんま分からなかったんだけどね、私自身のことなのに……そういうとこもまるっと受け入れてくれて

【女子】
どうしてこんなに尽くしてくれたんだろって不思議に思って……それでその人の部活を体験してみて……

【女子】
気付けば3ヶ月経ってるんだもん。楽しくて、気付かなかった

【謙一】
……………………
Kenichi
やべえ……
Kenichi
コイツらの学園生活が羨ましすぎて泣きそう!!

【女子】
廿栗木って何処行ったんだったっけ?

【廿栗木】
えっ!? あー……えっと
謙一を見るその眼差しには気遣いがたっぷり仕込まれていた。

【謙一】
……………………

【廿栗木】
うわー
Mami
何て説明してやればいいか分かんねー……

【廿栗木】
うん、まあ、取るに足らないとこだ。聞くだけ無駄だ、私寝てるだけだし――

【noname】
【???】「お待たせしました、こちらフライドしらすポテト20人前となります」
テーブルに尋常じゃない量のフライドポテトの皿を置いた、ウェイトレス。

【謙一】
え――

【廿栗木】
え?
その人を見て、井澤謙一、さらに廿栗木磨美は硬直した。

【謙一】
徳……川……?

【秋都】
え――? ……へっ!?

【女子】
あれ、徳川……? 徳川って……ああ、ビルから飛び降りてた優等生の!!

【ビアス】
それだけ聞くとヤバい女の子にしか思えないが、俺もよく覚えてるぞ! クラスメイトだったしな!

【ビアス】
つまり、この同窓会に入る資格がある! ようこそ、徳川、えっと……徳川ー……

【謙一】
よく覚えてねえじゃねえか! 秋都だよ、徳川秋都!

【廿栗木】
おいばか!
Kenichi
ってしまったあぁあああああ!!
徳川も真理学園生じゃねえかあぁああああ!!

【女子】
へい徳川ちん! 徳川ちんって何処の学園入ったの?

【秋都】
わ、私は真理学園ですけど……(誰だろうこの人、でも同窓会ってことはあの学校出身なんだよね、でもでも謙一くんの交友関係ってこんな広かったっけ? おかしいなぁ私ずっと観察してた筈なのに見落としなんか無かった筈なのに)

【ビアス】
真理学園って……確か、井澤の入ったところじゃん!!

【noname】
【みんな】「「「え!?」」」
Kenichi
ってやべえぇえええええええ!!

【女子】
すっげ、徳川さんあの井澤くんと同じ処なんだ!?

【ビアス】
……どうなってんだよ井澤も徳川も、もっと上のとこ行けただろ……

【謙一】
毅然としたノーコメントでお願いします

【ビアス】
目が泳ぎすぎててどこらへんが毅然なのか分かんないけど、こんな面白いネタを態々逃してやるほど俺たちは優しくねえぜ、なあ島村!

【女子】
ひゃっはーあの頃の酷い私が蘇るぜー!!

【謙一】
そこは今の優しい島村でフォローしてくれよ!?
Kenichi
クッ……どうする、これは逃げられそうに無いぞ……。
こうなったら、多少は嘘を交えてでも、テキトウに誤魔化すしかない……!!

【謙一】
えっとだな、真理学園ってとこは――

【noname】
【???】「あっ、ケンパイじゃーん!!」

【ビアス】
ん?

【謙一】
え……?
貸し切りのお店に躊躇無く突入してきた女の子を見て、謙一のなけなしの毅然とした態度は完全崩壊した。

【奏】
こんなとこで何してるのー?
Kenichi
ぎゃあぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!?

【譜已】
だ、だだダメだよ奏ちゃん、今このお店貸し切り状態だから、勝手に入っちゃダメだよ!?

【謙一】
ふ、譜已ちゃんまで……!? そ、そうだ、今俺たちの同窓会で貸し切ってるから、悪いがここは大人しく来た道を戻って何もかも忘れてくれお願い

【奏】
なんかめっちゃ汗掻いてるけど大丈夫ケンパイ……?

【ビアス】
可愛い女の子だけど知り合い? 別にいーんじゃねーこの店割とフランクだから二人参戦したぐらいでお断りはしねーよ。なー店長

【noname】
【店長】「👍」

【奏】
わーいありがと店長ー!

【謙一】
じゃあ俺数合わせで誘われた意味最初からねえんじゃねえか!?

【廿栗木】
…………(←憐れみの合掌)

【譜已】
????
こっからはマシンガンの如き南無の会話だった。

【奏】
私、二邑牙奏っていいまーす。ケンパイと同じクラスメイトでーす。こっちの銘乃譜已ちゃんもでーす

【譜已】
け、謙一先輩……その、いきなりごめんなさい……押しかけちゃった、形で……

【ビアス】
先輩? え、先輩って何で? クラスメイトでしょ?

【奏】
年齢的にもビジュアル的にも先輩なんでパイセンでーす。でも同じクラスで毎日闘ってまーす

【譜已】
ちょ、奏ちゃん、あんまりお外に学園のことは……

【奏】
分かってる分かってる。翠さんのはらわたを逆撫でしないラインは心得てるから👍

【秋都】
はらわたを逆撫でするの……?(と口に出してはみたけど、そんなことよりも謙一くんがアンニュイな顔してて案の定ステキ!)

【奏】
今、じゆー主義な真理学園は超☆絶優等生が集められた特進クラスの制度を試験的にやってるんだー

【奏】
価値あるものには価値を、が学園長のモットーだから、優秀な私たちは年齢の垣根なんか無視して王様なのでしたー

【奏】
因みに一般クラスよりVIP扱いされてる私たちだけど、一般クラスも下剋上に成功したら学園長から直々に特典を受けられたりするんだよねー。で、毎日毎日返り討ちにする忙しい毎日でーす

【譜已】
……………………
Fui
思いのほか絶妙な説明だけど、私そんな優秀じゃないよ……

【ビアス】
奇異の更に先を行ってるなー……で、我らが井澤くんもそのクラスの一員と

【奏】
リーダーだよねー(←背中に抱きつく)

【謙一】
……うん……そうだね……(←落ち込む)
もう手遅れだなと髪の毛が一斉に抜け落ちそうなほど儚い表情をするリーダーであった。

【ビアス】
な――!?

【男子】
バカな――!?
Bias
あんな可愛くて巨乳な後輩クラスメイトが何の躊躇も無く抱きついてきただとおぉおおおおおおおお!!!
同級生たちの意識が思いっ切り話題から逸れた。

【女子】
おっと廿栗木さんに負けず我らが井澤くんが遊び呆けてる説が浮上だーーー!!

【秋都】
ぐふっ(←吐血)

【廿栗木】
だから遊んでねえっつってるだろ!! あと徳川大丈夫か!?

【ビアス】
お、おい、井澤、その……二邑牙さんと、どういう関係なんだ!!?

【謙一】
いや、今の説明の通りだけど……(諦)

【男子】
嘘つけえ!! まだ隠してるだろ、ただでさえこんなに元気で愛嬌あって小がらで可愛くて巨乳で、剰え後輩且つクラスメイトで巨乳なんだぞ!!?

【謙一】
何で巨乳って2回云ったの?

【女子】
おまけにその躊躇無いダイブだもんねー……――は!! もしかして、そっちの女の子も!?

【譜已】
へ!? わわ、ち、ちが、違います……!

【譜已】
あ、えっと、その……違うっていうのは、別に、謙一先輩のことが好きじゃないってことじゃなくて、あ、だからって……でも……

【女子】
「「「…………」」」

【譜已】
あぅ……///

【女子】
「「「ギルティ!!!」」」
井澤謙一に有罪判決が駅ビルの魚介レストランで云い渡された。
因みにだが何のギルティなのかを謙一と奏は誤解していた。

【謙一】
いや、別にッ、俺がそうしたかったわけじゃないし!!

【謙一】
全部学園長がそう仕向けただけであって、俺はだな――

【女子】
ここにきて他人の所為と云い張るわけか!! 見損なったよこのモテ漢!! スケコマシ!! 何回やった!!

【謙一】
もうそんなの数えてねえよ!! 多分3桁はいってるね!!(←ヤケクソ)

【男子】
「「「さん――」」」

【女子】
「「「けた――ッ!?」」」

【譜已】
!?!?!?!?

【奏】
ねー。案外皆、ノリノリでやるよねー。でも、間違いなく一番頑張ってるのはこの私だねー

【謙一】
確かにそうだが、お前は後先考えないから後処理も大変なんだぞ……

【奏】
いやいや、ノノパイの罰ゲームプレイに比べたら

【謙一】
アレはもう別枠というか別次元だ。それと、案外一番考えてくれてるのは意外にも情だぞ
Kenichi
まあ他者の為というよりは、余剰なことはしないっていう考え方なんだろうけど……。

【奏】
えー、マジ? ケンパイそんなこと考えてたの? こんな可愛い後輩よりもあんなイケメン以外取り柄の無い非情男がいいのー!?

【奏】
私たち、アレに負けてるっぽいよー譜已ちゃん……

【譜已】
えっ

【謙一】
いやいや、譜已ちゃん頑張ってたから。お前と同軸にすんなって!

【謙一】
まさかあんなにアニマルが得意だなんて……

【譜已】
アニマル!?!?

【謙一】
……譜已ちゃん……?

【譜已】
……………………

【譜已】
~~~~~――(←湯気)

【謙一】
譜已ちゃん!?

【奏】
うわあぁあ譜已ちゃんがアッツアツだよ!? どうしたの譜已ちゃん、もしかしてまだ体調戻ってなかったの!?

【ビアス】
……………………

【男子】
「「「…………」」」

【女子】
「「「…………」」」

【秋都】
(←真っ赤に染まったウェイトレス)

【廿栗木】
徳川あぁあああああ!! 救急車、救急車を呼んで店長――

【noname】
【店長】「羨まゴフッ」(←吐血)

【廿栗木】
てんちょおぉおおおおおお!!!?
宴はまだ始まったばかりである。