「特変」結成編3-11「真理学園生として(1)」

あらすじ

「お前らの誰よりも、この学園で幸せ掴み取ってやるよ畜生」☆「「特変」結成編」3章11節その1。あまりに呆気ない幕引き。勝利が確定した特変の謙一くんですが、今回酷い目に遭わされた彼が何よりも苛つきを覚えていた対象は……。

↓物語開始↓

timeskip

Stage: GAC 101会場


Face_kenichi

【謙一】

……?


Kenichi

 元々、動揺しっぱなしの会場だったが……。
 何か人が動き始めてるな、観客席の一部が……何が起きてる?


Face_kenichi

【謙一】

って、ん!?


Kenichi

 そう思ってたら続々と人が舞台に入ってきてるんだが……!!


Face_kenichi

【謙一】

何だ、増援か!?


Face_miu

【実夢】

あー、違う違う、実夢たち医療班だから! 皆さん回収しに来てるだけだから!!


Face_miu

【実夢】

えーっと……ソッチは何か、比較的無事っぽいね! じゃあ次行こっと……


Face_kenichi

【謙一】

……医療班?


Kenichi

 医療班が入ってくるタイミングといったら……


Face_menoha

【めのは】

……ほや? 何か職員室の方からメッセージが届きましたので、それそのまま読み上げまーす


Face_menoha

【めのは】

平賀利家は車道で轢かれて戦闘不能。よって特変破りは終了。……とのことでーす


Face_noname

【noname】

【会場】「!?!?!?!?」


 完全に、試合終了であった。


Face_chihae

【千栄】

あらー、やっぱ逃げてたかー……でも全然関係無い乗用車がフィニッシュ決めちゃったかー終わり方としては凄く微妙だね


Face_noname

【???】

【???】「――医療班、事前方針の通りに分担し開始! 3分で仕上げろ!」


Face_noname

【noname】

【医療班】「「「サーッ!!」」」


 主任の迫力ある声に従い、会場に医療班の学生たちが散らばっていく。
 その中には――


Face_yuzuyu

【柚子癒】

……この…莫迦……


 彼女も居た。


Face_akitsu

【秋都】

小松さん……大丈夫……? さっきもう呼吸もヤバかったって廿栗木さん云ってたけど……


Face_mera

【目羅】

…………ああ……何とか、ね……見ての通り、だいぶ回復したよ



Face_yuzuyu

【柚子癒】

…………


 額に赤いカードを貼り付けて、柚子癒は次の負傷者のところへ向かっていった。


Face_kenichi

【謙一】

アイツすっごい怒ってるな……


Face_chihae

【千栄】

何かこんなモンスター、どっかの映画で見た気がするなー……何だっけ?


Face_kenichi

【謙一】

ていうかトリアージもやれんのか此処の医療班は……予想以上だわ……


Kenichi

 でもまぁ今回の特変破りは、ざっと負傷者400人居るからな……最早災害といってもいいよな……いや人災なんだけどさ。


Face_mami

【廿栗木】

あ、あたしは責任ねーよな……? 負傷者の大半爆発によるものだけどあたしに責任ねーよな……!?


Face_mera

【目羅】

医療班には嫌われるかもねー……私は既に九条くんに嫌われつつあって辛い


Face_akitsu

【秋都】

え、じゃあ私も嫌われつつあるのかな?


Face_chihae

【千栄】

っていうかよく見たら徳川さん無傷じゃーん……! いーなー一人だけズルいなー……!!


Face_kenichi

【謙一】

お前も見たところ外傷ないじゃん


Face_chihae

【千栄】

いや、すっごいお腹痛かったし……それと落ちてきた時普通に死ぬかと思ったし……


Face_kenichi

【謙一】

抑も何であの高さからシャンデリアと一緒に落ちてこようとか思ったしお前……


Kenichi

 矢張りただの莫迦である。
 というかこの場に立ってる君たち全員莫迦である。


Kenichi

 そんな莫迦たちに、俺は助けられたのである。


Face_kenichi

【謙一】

……ありがとう。こんな巫山戯た戦いに、付き合ってくれて


 戦いが終わり、和やかになりつつあった場で、謙一は真っ直ぐ頭を下げた。
 平賀利家を裏切った4人に。


Face_chihae

【千栄】

……ま、私はやりたくてやっただけだしー


Face_mera

【目羅】

特変には、また別の形で挑むこととしよう……


Face_mami

【廿栗木】

もうマジで休ませてほんと


Face_akitsu

【秋都】

……////////


Kenichi

 彼女たちには、凄まじく大きな恩ができた。この先、亜弥と共に生きていく為の道を、途絶えさせないようしてくれたのだ。


Kenichi

 いつか絶対、この恩は返す。


Face_noname

【???】

うあぁあああああああああ~~~!!


Face_kenichi

【謙一】

……ん?


Kenichi

 医療班たちが忙しなく活動している会場で……
 何か遠くから、テンションのおかしい声が聞こえた気がした。えっと……あの辺、かな――


Face_saya

【沙綾】

かあぁああああああくうぅううううううううううん!!!


Face_kenichi

【謙一】

……………………


Kenichi

 超知ってるけどあんま知らない姿の女子が観客席を疾走していた。
 それを止める理由も力も、人質を監視していた者たちにはもう無い。


Kenichi

 あっという間に、俺の見知った人質たちが解放されていった。
 ……一部、悲鳴というか断末魔というか修羅場というか、そんな声も聞こえてはくるが……。


Face_kenichi

【謙一】

これで、安心、か――


Kenichi

 ――いや、まだだ。


Face_kenichi

【謙一】

乃乃。聞こえてるか?


 制約が解け、謙一は無線で彼女の応答を待った。
 それは彼女がクラスインしていることが条件であったが、その辺も推測済みであった。


Face_nono

【乃乃】

……こっちから声をかけてやろうと思ってたのに、酷いです謙一さん


Face_nono

【乃乃】

その……お疲れ様でした、大変


Face_kenichi

【謙一】

ああ。まあ誰かしら特変面子はクラスインしてくれてるかなって思ってたからさ。それで、ちょっと志穂に、光雨に繋げてくれるよう云って欲しいんだけど


Face_nono

【乃乃】

光雨さんですか? 分かりました、少々お待ちを……


 ……………………。


Face_ku

【光雨】

?? マスター、終わったの~?


Face_kenichi

【謙一】

お前今どこにいる? んで何してる?


Face_ku

【光雨】

教室でマンガ読んでたの~☀


Kenichi

 コ イ ツ 。


Face_kenichi

【謙一】

じゃあ、えっと……GACの101会場のスピーカーとかハッキングできたりする? 俺ちょっと喋りたいことあるんだけど


Face_ku

【光雨】

ん~? 101~? えっと――


Face_ku

【光雨】

ぴこぴこーぴこぴこぴー(←ハッキング中)


Face_ku

【光雨】

完了なのー


Face_kenichi

【謙一】

はええな


 「はええな」という声が会場に響き渡って皆驚きである。
 しっかり繋がったことは、これで分かった。


Face_chihae

【千栄】

びっくりしたぁ! 井澤くん?


Face_kenichi

【謙一】

ちょっとまだ云い足りないことがあってさ、主に観客の奴らに


Face_noname

【noname】

【観客】「「「……!!」」」


 400人勢を相手に勝ってしまった男が。
 今度は自分たちに牙を剥こうとしている。


 それは仕方の無い論理。そして否定のしようもない恐怖。


 ……そんな空気も、中央で感じながら……


Face_kenichi

【謙一】

なあ、ホントさお前ら――


 彼は前日から、ずっと思っていたことを、まず有りの儘に吐いた。


Face_kenichi

【謙一】

もっと自分の人生大事にしろよ!!!


Kenichi

 ……自分の声が、会場中に響き渡る。
 エコーからも伝わる、自分自身の怒り……というより、苛つきか。


Face_kenichi

【謙一】

改めて自己紹介しよう、俺は井澤謙一!! 真理学園A等部1年で特変管理職!! そんでもって、新規組だ!!


Face_kenichi

【謙一】

初めてこの学園に来て、もう3ヶ月が経った! そして今のところ俺は、この学園が!


Face_kenichi

【謙一】

嫌いだ!!!


Face_fui

【譜已】

…………


Face_so

【奏】

え――?


Face_kenichi

【謙一】

そりゃそう思いたくもなるだろ、よーく考えろその考え無しの頭で感情移入してみろや!! 俺のこの3ヶ月を!!


Face_kenichi

【謙一】

まず1ヶ月はクラスメイトの暴走に追われた!! これは現在進行形だが、今も相当に苦しんでる。これについては俺はもう諦めてる!!


Face_kenichi

【謙一】

だがそれからの2ヶ月は、特変破りが熾烈化した!! 理由は様々だ! そして中には、生半可じゃない理由と覚悟で俺たちに挑んできてる奴もいた!


Face_kenichi

【謙一】

けどな!! それよりも遙かに、考え無しの奴が多いんだよ!! 更に更に、抑も特変破りに参加する気配を見せない奴だっている!! それ自体は俺は有難く思ってたんだよ、今日まではな!!


Face_kenichi

【謙一】

俺たちは恨まれている!! 突然お前達を支配する存在がポット出してきたこと!! 献上制度!! 日頃のクラスメイトの愚行!! それはお前たちの方が理解してるだろうさ!!


Face_kenichi

【謙一】

だけど――それだけなんだよ!! 俺からすれば、それだけなんだよ恨まれてる理由が!! 殆ど、俺たちが率先して行動して、お前らのヘイトを買ってるんじゃないんだよ!!


Face_kenichi

【謙一】

分かってるだろ、学園長なんだよこの学園のトップがこの構造を作ってるんだ!! 俺たちを恨むのはな……はっきり云って、お門違いなんだよ!!


Face_kenichi

【謙一】

そしてそれを認めない奴が、今回革命を主導した連中だ!! 一方で観客でしかなかったお前達は……俺に、今云ったことに感情移入できる奴ばっかなんだろ――!?


Face_kenichi

【謙一】

何よりも、この空気が嫌いなんだよ! 大した理由と論理も誇示すらせず、ただのうのうと俺たちを恨む一方で何もしない、いや……何かやりたいのにそれをしようとしない、中途半端な時間を彷徨ってるお前達が、俺は物っっっっっ凄く嫌いだ!!


Face_kenichi

【謙一】

ある後輩は自分の信じる青春を突き通す為に自分の社会的立場も顧みずアクションを起こし、ピンチになりつつも、今は元気にまた部活をしてる!


Face_kenichi

【謙一】

ある男子は優しい世界を理想に掲げて、それを俺たちに訴えてきた。俺たちはそれを良しとはできなかったが、その一件を通して彼はまた熱意をもって夢を目指すだろうさ!


Face_kenichi

【謙一】

ある女子は抑も特変とかどうでもいい、料理一筋な奴で、ただ俺たちの料理スキル知りたいってだけで特変破りしてきた。環境など知ったことじゃないと云わんばかりに、ただ具体的に将来へ近付こうと努力している!


Face_kenichi

【謙一】

……それが……今の学園のキホンだ問題児ども!!


Kenichi

 最低限、論理を維持しろ。
 俺が云いたいことは何だ? そこを間違えるな。


Kenichi

 俺がこの先、この学園で過ごしていくにあたり、今重要な変革は――


Face_kenichi

【謙一】

特変破りを、一時的に封印する


Face_mera

【目羅】

――!


Face_yukina

【雪南】

な――


Face_mirei

【美玲】

封、印……?


Kenichi

 それは、戒め。
 特変権力で以て、今アドリブで放とうとしている、途轍もなく大きな釘だった。


Face_kenichi

【謙一】

献上制度については特に考えてない。だが、俺たちを排除する手段が、暫く封印される。銘乃政権は暫く安泰となってしまう


Kenichi

 翠ちゃんは、これを安泰とは呼ばないだろう。
 寧ろ――停滞。


Face_kenichi

【謙一】

この学園では……停滞することは赦されない。殆どの学園生には、後が無いからだ


Face_kenichi

【謙一】

正直、俺はお前らの過去や価値観には甚だ興味がなかった。ポッと出3ヶ月の新規組が理解できるとも思ってなかったし


Face_kenichi

【謙一】

だが一つだけ、お前ら全員に対し分かってることはあるよ俺は


Kenichi

 分かってること。
 それは、俺がこの朝から暗い顔をしていた者たちに苛ついていた最大の理由でもあり。


Face_kenichi

【謙一】

お前らって、幸せなんだよ……


Kenichi

 口にした俺自身が身を裂かれそうな思いになる、曖昧で悲しい現実。


Face_shiho

【志穂】

…………謙一


Face_kenichi

【謙一】

この学園は、異常だ。ここでしか生活ができなかったお前達も……異常なんだろう。少なくとも普通じゃなくて、無視していられないほど大きな違いだろうさ


Face_kenichi

【謙一】

学園は学園でしかねえよ、お前達の家じゃ断じてない。お前達はいずれ、この学園を……この町を出て行くんだ。今のお前達に――それが、できるか?


Face_kenichi

【謙一】

自分の胸に手を当てて、よく想像してみろ。今日のお前が、この学園を出て、一体何をする?


Kenichi

 もしも亜弥が、今夜にも俺と家を失ったなら……生きていくことはできないだろう。
 だから、ここの学園生たちは、とても恵まれているのだ。
 委員会。ローカルコミュニケーション。変動する世界を渡り歩いていく為の基礎的な能力が、実践の中で積まれる柔軟なシステム。自由の利く、利きすぎる閉鎖的な学園。


Kenichi

 試練に思うかもしれない。事実そうだろう。
 だが、試練という道がある時点で、お前達人間はとても幸せなのだ。


Face_kenichi

【謙一】

結局お前達はどう生きたいのか? どんな道を進みたいのか? それは当然俺に分かるわけないし、これから先特変が定める予定もない、故に他でもないお前自身で考え抜くことだ


Face_kenichi

【謙一】

そしてお前の決めたその道を、歩きたいお前の背中を、この学園には元から後押しするシステムが整っている! 優海町という人格がお前を信じる


Face_kenichi

【謙一】

……お前たちは、平賀の城で捨て駒として尽くしていく道を、選びたかったのか?


Face_kenichi

【謙一】

ちょっとでも反抗したら貼り付けられるような世界に、自分の立場を全て有無を云わせず決められる道で、幸せになれると思ってたのか?


Face_kenichi

【謙一】

俺は、そういう奴は……


Face_kenichi

【謙一】

もう人じゃないと、思ってる


Kenichi

 ――ただ俺の声が残響する、静かな空気。重苦しいと云った方がいい。
 というかやっぱ、いきなりアドリブで、纏まりきってない自分の感情を有りの儘に外に出すってのは、難しいな……。


Kenichi

 それは、間違いなく刃物だった。
 一体この場所で今この時間に、俺によって何人に人間が切り裂かれているのだろうか。


Kenichi

 ……今日については。
 それももう、構わない、と俺は家で決めてきていたから。
 今日の俺は、もっと隠さず俺でいようと、たとえらしくなく思えても俺の衝動を大切にしようと思ったから。


Kenichi

 俺もまた、特変として、道を彷徨う学園生の一人なのだから。


Face_kenichi

【謙一】

半分以上俺のぼやきだ。最悪忘れてもらっても構わない。どう受け止めようが、俺たちが嫌われてることと俺が学園もといお前らが嫌いなのは変わらない


Face_kenichi

【謙一】

ただ、事務的な話に入るが……特変破り封印はマジでやる。徒に俺たち倒そうとするよりも前に、お前らはまずこの学園で何をやりたいのかを常々考えろ


Face_kenichi

【謙一】

その上で俺たちが邪魔ってんなら、来いよ。学園長っていう裏口使わず真っ正面から俺たちに申請用紙渡しに来い。そんなこともできない奴がこの学園の外で満足に生きていけると思うな


Face_kenichi

【謙一】

お前の道に俺たちが関係ねえってんなら鮭沢見倣って俺たちガン無視でひた走れ。何か協力してほしいことがあるなら、俺たちの処にも来てみせろ。結果は何も保証できないが、それくらいの覚悟を以て毎日を過ごせ


Face_kenichi

【謙一】

そんなの考えられねえよっていうなら、それもお前の立派な一つの選択だろうさ。全力で遊べ、全力で勉強しろ。無駄な経験なんて寧ろ希有だ、お前の過ごした全力の時間はお前の糧になる


Face_kenichi

【謙一】

……人のことを云えた義理じゃないがな。だからコレは、俺にとっても良い機会だよ。俺は、少なくとも封印期間中は確実に、お前らの上に座す権力者だからな――


Face_kenichi

【謙一】

お前らの誰よりも、この学園で幸せ掴み取ってやるよ畜生


Kenichi

 半分ヤケクソの、定められた俺の学園での目標。
 亜弥の為に俺は、幸せになる。


Kenichi

 だが、俺は……? 俺は、俺自身の何の為に、幸せになるべきだ? 亜弥という要素に縛られることは、いつも亜弥が嫌がっている俺の癖だ。ていうかこの時点でもう亜弥が入り込んでるし……。


Kenichi

 俺は、何なのか。
 そんな、あまりに広大な命題が、爆発してたテンションが却って降下してきたのと一緒に、俺に降り注いできたようだった。


Face_kenichi

【謙一】

……俺のぼやきは以上だ。1年はテスト頑張ろう、解散!


Kenichi

 ……何と云うか、この場にこれ以上立ってると、観客たちも微妙に帰りづらいように思えて……。
 取りあえず徳川たちに会釈して、気まずい俺は選手待機ルームへと戻っていったのだった――


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