「特変」結成編3-10「決着(2)」
あらすじ
「王様でない、平賀利家が生まれてしまう。それはもはや平賀利家じゃない。終わり果てた人間の姿だ。」☆「「特変」結成編」3章10節その2。秋都ちゃんのファインプレーによって何とか珠洲子ちゃんも倒せた謙一くんたちですが、決着の為に倒さねばならないのはただ一人、大将である平賀先輩です。短いようで長かった革命章、決着の時。
↓物語開始↓

【平賀】
はぁ……はぁ……!
平賀
何故――何故だ――!
平賀
この僕の、城が……! 数年かけて創り上げた世界がッ――
平賀
あんな、たった一人の後輩に、瓦解させられただと……!?
何でこんな事が起きた、全員、僕の支配にあった筈だ!!
平賀
真理学園の人間は、環境の変化に鋭敏だ……だから一度、支配体制を定着させてしまえば、安泰は難くない! 事実僕はそれを忠実に、注意深く実行してきた筈だ、どこにも間違いはない!
平賀
なのに……何故、このタイミングで並川が……
間違いないのは、井澤が全ての切欠だったことで……そこからどんどん、地盤が壊れていった。
小松目羅を筆頭とした、数名の裏切り者が、それでも数名でしかない反抗者が、的確に主柱を突き――
平賀
僕は――負けた、のか……?

【平賀】
はっ――はぁ――いや、違う――!
平賀
まだだ……僕は、負けなんぞ認めないぞ……!!
使えない駒、ばかりだからこんな事になったんだ……!! なら、駒を補給すればいいんだ!!
ここまで計画が破綻してしまった以上、もうルールなど構ってはいられない、潰してしまえばいい、既成事実としてしまえば……僕の時代は、まだ続く!
Stage: GAC 外

【平賀】
はぁ、はぁ、はぁ……!!
平賀
負けるわけには、いかない――
負ければそれは、僕が一番でないことを意味づけてしまう。
王様でない、平賀利家が生まれてしまう。それはもはや平賀利家じゃない。終わり果てた人間の姿だ。
平賀
――もっと大人の云う事を聞きなさい
――少しは協力してほしい。皆で頑張ろう
――余計なことをしないで
平賀
僕よりも低脳な奴らが僕を蔑む不条理の日々。
それと違って、この真理学園という社会はとても素晴らしかった。実力在る者が上に座す……最早僕が軈て王制を作る為に用意されたに等しいこの環境で、僕はやっと僕の王国を手に入れたのだ。
平賀
此処は、僕が支配する城なのだ。僕が不条理な思いをすることのない理想の世界!
その限りにおいて、僕は下々の君たちをも、低脳だった奴らのようには決して扱わない。優秀な君たちを、僕は必ず僕の城において活かしきってやる。
平賀
そんな、場所だったのだ――
なのに、どうしてソレが分からない!!
僕の城はこんなにも居心地の良い環境なのに、それに浸かろうとしない!!
平賀
……怒田……
お前が時々呟いたモノが、或いは真実だったとでも、いうのか――?

【平賀】
ッ……MSBに、何とか連絡を、職員棟に行けば船津が……ッ――!?
平賀
井澤謙一。
平賀
お前の特変という牙城は、万に一つも在るわけのない大変無意味な仮定ではあるが――
平賀
この平賀利家の築いた城よりも、僕たちにとって、幸福たりえるのか――?
Stage: 真理学園 職員棟

【美甘】
さ――相楽さんを……

【奏】
倒しちゃった……
So
しかも思いっ切り意外な流れで!! ケンパイ何もしてねえ!!

【譜已】
あ、あの……?(←最後まで視界暗闇)

【凪】
沼谷も相楽も終わったわ。つまり、あとは平賀の首を晒すだけ

【情】
ワケねえな。勝敗は確定した

【乃乃】
でしょうね……しかし、確定はしてもまだ勝利にはなりません。平賀先輩は何処へ行ってしまったのでしょう?

【沙綾】
逃げたんじゃない?

【美甘】
えっ、マジで……? ここでそんなことしちゃうの……?

【沙綾】
正直この場に留まってたって勝ち目無いんだから。だったら特変破りを反故にしてでも、別の何かをやろうとする……その方があの先輩らしいと思うけれど?

【奏】
外道のやることホント勘が良いよねサヤパイ。でも、それじゃどうするの……? 私たちが話し合っても意味無いけど――
ふぉぅるるるるるるるるるるるる。
職員棟の専用アルスが着信していた。

【薫】
ちょ、こんな時に……ドラマのラストシーン見れないのと同じパタンだよ……
仕方無く一番近くに居た皆崎教諭が担当する。

【薫】
はい、真理学園職員棟教務部より、担当皆崎が承り――えぇ!!?
事務的な口調はあっという間に砕けた。
進展のない中継映像から否応なしにソッチへ意識が移る。

【薫】
ッ……はい、直ちにこちらより、医療班を出動させます。それから優海総合病院にも……はい、あ、さようでしたか、では確認の意味で私から改めてあちらに連絡いたします

【薫】
――……はあ……って溜息ついてる場合じゃねえ!!

【翠】
どうかしたの~?

【薫】
学園長……その……今すぐ、GAC前の大道路に、GAC待機の医療班を一部向かわせます

【薫】
そこで……平賀くんが、倒れてます

【譜已】
え――?

【乃乃】
それは、一体どういう状況ですか……? どうして道路で――

【薫】
轢かれたんだそうよ。いきなり、飛び出してきて……気付かなかったんでしょうね

【薫】
っと、住吉先生あっちの医療班に通じる番号分かります?

【啓史】
はいはい、えーっと確かコレだね――
職員室が慌ただしくなる。
そんな中で、特変は……中途半端な静けさを持て余していた。

【志穂】
……………………

【美甘】
…………お……終わった……のか……?

【凪】
医療班を出すということは、もうまともに動ける状態じゃないということでしょう? 即ち、戦闘不能よ

【凪】
というかそれ以前に、特変破りの会場を抜け出していた時点で反則負けだって主張できるわ。外に出て何がしたかったのかは知らないけど

【沙綾】
お外の道路で果てるとはねえ……外道には最高のフィナーレじゃない

【情】
俺は帰る

【乃乃】
え、帰るんですか?

【情】
もう終わったろ。向こうの大将はもう倒れた。それだけでもう次の展開に進んでいる。つまりもう俺たちが此処に拘束されている理由もない

【情】
……無論、あっちで拘束されてるアホ共についても同じ事が云える

【美甘】
……! そうだ、栞々菜たちを、助けないと!!

【沙綾】
じゃ……私たちも向かいましょうか、GACに

【譜已】
け、謙一先輩のとこに行かないと……!!

【奏】
なるほど! ジョーパイたまには気の利くこと云うじゃん!! 翠さんもう行っていいよね!!

【翠】
……そうね。あちらの参謀は全員くたばってるから、貴方たちの行為にイチャモンを付けられる人は居ないわ

【翠】
いってらっしゃい。存分に溜め込んでたものを発散させにいくといいわ~
特変が職員棟からバタバタと走り去って行く。
……それを見届けてから、翠は静まり返った中継の光景をまた眺めた。

【翠】
……謙一くん、貴方が恐れていることは、一体何なのかしら
Midori
貴方はソレとどう、今回向き合っていたのかしら。
そこは私もまだ、ちょっと測りかねているけれど……
Midori
貴方が特変としてこの先どう在ろうとするのか、しっかり見届けさせてもらうからね。
Midori
そして、願わくば――

【翠】
刃を持て――
Midori
真理学園生。
Midori
貴方たちは幸福だ。何故なら――
この学園は貴方たちを、自由へ導くのだから――