「特変」結成編3-10「決着(1)」

あらすじ

「……この先に、きっと、オレがどこかで探し求めていた答えが……相楽珠洲子の、証明が……」☆「「特変」結成編」3章10節その1。嘉祥くんを倒しはしたけど、もう一人ヤバいのが残っています。優海町冥王である彼女は、何の為に戦い壊し、生きているのでしょうか。

↓物語開始↓


Suzuko

 顔に火傷を負った。


Suzuko

 相楽珠洲子にとってソレは、元々与えられていた筈の人生を全うすることがもうできないことを意味した。
 そして同時に、分からないままに、戦い続け、勝ち続け、立ち続けることが相楽珠洲子の人生になった。


Suzuko

 生きるとは何だろうか。オレには、分からなかった。元々必要ではなかったから、オレには教えられていなかった。
 姉様は自分の価値を証明していくことだと、優しく笑いかけていた。そうして姉様は至上に仕上がっていったのだろう。極めて高価なヒトへ……だがその一方で、他の者たちは劣等だと見なされていく。
 極めつけに珠洲子は、落ち零れと云うしかなかった。教え込まれる度に、失望される眼差しを真正面から受ける。


Suzuko

 相楽珠洲子の価値とは何だ?
 中途半端な珠洲子は、この世界で売れるわけがないのに、このままあの場所でずっと、無い時を待っていろと……?


Suzuko

 もうオレを覚えている姉妹は、居ない。仕事が入り、期間が終われば、リセットされるからだ。
 そしてすぐに別の仕事が入って、期間を終え、リセットされ……そんな姉妹の姿を、価値のある彼女たちを、価値のないオレが見詰め続ける。


Face_noname

【noname】

【???】「珠洲子は、見た目は良いのにね」


Suzuko

 姉様は、苦笑交じりにそうオレに云った。
 その姉様は、その時もうオレを覚えていない。


Suzuko

 それに恐怖を覚えるという相楽珠洲子は、本当に極めつけの、救えない、無価値のものだった。
 だからだろう。夜逃げをしても、オレは捜索されなかった。そのまま朽ちても、元から確定していたデメリットに大差は無いのだと。


Suzuko

 ――生きるとは何だろうか。
 価値が無いなら、潰れて壊れてしまえばいい。そういう世だと教えられていた。ならばオレは本来、もう生きていてはいけないのに……どこまでも×印の深い相楽珠洲子は、教えられていない死を実行することも出来ない一方で、教えられていない筈のソレを模索していた。


Suzuko

……………………。


Suzuko

 気付けば、そこは南湘の巨大なゴミ捨て場で――
 オレは、“象徴”を手に入れた。


Suzuko

 このオレの、象徴――
 この出会いだけは、大切にしなければならないと、顔に刻まれた熱と痛みで深く感じた。


Suzuko

 ……この先に、きっと……
 オレがどこかで探し求めていた答えが……相楽珠洲子の、証明が……


Suzuko

 落ちている――!!



 ――井澤謙一に真っ直ぐ、両の手のトンファをジェット噴射させて猛突進してきていた相楽珠洲子は、トンファを手放していた。
 そして空を、眩しい天井を眺めていた。


Face_suzuko

【珠洲子】

――?


 突然身に起きた異変。


 強烈な、腹部への衝撃。


 意識が、身体と共にゆっくりと回転し――
 重力に従い、地に叩き落ちた。



Face_kenichi

【謙一】

――――


 本来、彼女と一騎打ちを始めようとしていた謙一は、その光景を呆然と見ていた。
 ただ、観客たち同様に、どうしてそうなっていたのかをしっかりと視覚で理解していた。


秋都ホームラン


Face_kenichi

【謙一】

徳…川……――?


Face_akitsu

【秋都】

……井澤くんほど、球は飛ばせなかったんだけどね……


Face_akitsu

【秋都】

あの学校の女子野球部には、何度かお呼ばれされたんだよね。変だよね、私野球部じゃないから試合にも出れないのに


Kenichi

 突然――いや、ただ俺が相楽ちゃんに一点集中し始めていたから、気付くのに遅れたというだけだったんだが……
 突然視界に徳川が現れた。無事で良かったとか思う暇もなく徳川が金属バットを拾い、ちょうど俺と相楽ちゃんを結ぶ直線上に立ったかと思えば――構えた。


Kenichi

 見事なフルスイングだった。
 少なくとも髙橋たち、野球部の名折れ男子どもよりもずっと洗練された一撃。ホームランだってできるだろう。


Kenichi

 そんな一撃を、硬球でなく、猛スピードでコッチに来ていた相楽ちゃんの胴体に徳川は放ったのだ。


Face_kenichi

【謙一】

……………………


Kenichi

 こんな血塗れになってる俺が云うことじゃないとは思うけど、徳川さんちょっと怖すぎね……?


Face_akitsu

【秋都】

うぅ……手が痺れてる……流石にあんなロケットみたいな勢いの人間を飛ばすのは、難しかったかな……


Face_kenichi

【謙一】

いや、普通はできないしやろうとも思わないから……


Kenichi

 野球の感覚でいえば打ち上げてしまった感じに、相楽ちゃんの身体は空中を力無く泳いだ。
 しかしそれはつまり、あれだけあった勢いを総て殺してしまったということ。もうちょい物理的に考えるならば、時速60~70kmは余裕で出てそうだった相楽ちゃんの猛突進のエネルギーがそのまま相楽ちゃんに叩き込まれたようなものだった。


Kenichi

 誰が見ても、それは決定的な一撃だったのだ。


Kenichi

 だというのに――


Face_suzuko

【珠洲子】

ック――クゥウ――!


Kenichi

 彼女は、立とうとしていた。


Face_akitsu

【秋都】

……!


Kenichi

 徳川が、走る。
 だが俺は呑気なことに、その場に突っ立ったままだった。


Kenichi

 だって、そうだろ? これだって、誰もが分かることだ。
 もう相楽ちゃんはダメだ。遠目にも手足が震えて、立つことすらままならない。
 吐くもの全て吐いても、何か変わるわけでもない。ただ身体はもうダメなのだと警鐘を鳴らしているのみに違いない。


Kenichi

 ……徳川が眼前に辿り着いてしまったって、何も対処することができない。視界はあるようでない……徳川が、見えていないし聞こえていない。
 近くに落ちていたトンファを、徳川が拾う。


Kenichi

 もう一方の、手放され落ちていたトンファは――


Face_mami

【廿栗木】

ッ――!


Kenichi

 フラつきながらも、廿栗木が拾っていた。
 つまり、もう自慢の武器さえも無い。取り返す力も無い。


Kenichi

 沼谷以上に、相楽ちゃんは詰んだのだ。
 だというのに――


珠洲子根性


Face_kenichi

【謙一】

何が……そこまでお前を突き動かしてるんだ


Face_suzuko

【珠洲子】

ッー――ッーー――!!


Kenichi

 歩いてくる。確実に、コッチに。見えていない筈の俺へ。
 一歩、一歩。直線を保てずフラフラと蛇行しても、膝を着くことはしないで。


Kenichi

 その姿を、執念と云わずして何と表現できるだろうか。
 その光景を恐怖と思わずしてどうするのか。


Kenichi

 一体、この女子は――


Face_kenichi

【謙一】

何に、怯えてるんだ――?


break


 ……その疑問に答えの糸口を見つけることもなく、この時間は終了する。
 怒濤の展開と相楽珠洲子の歩きによって静寂していた会場には、ガラスの粉砕される音までよく響いたトドメの一撃。


 ひときわ大きな照明機が、落下してきたのだった。


Face_chihae

【千栄】

い……ッつつつ……


Face_akitsu

【秋都】

……拝田さん……落ちてきたの……?


Face_chihae

【千栄】

うん、ついでにねー……だって流石にこんな冥王様だったら、外すわけないと思ったし……


Face_chihae

【千栄】

これで……全員、潰したでしょ


Face_kenichi

【謙一】

…………ああ……


Kenichi

 ……シャンデリアみたいな、大きな照明機……といってももう跡形殆どないのだが……。
 その下に無理矢理倒された相楽ちゃんは、もう起き上がってこない。彼女の姿はいつまで経っても出てこない。


Kenichi

 ……もしかしたらこれでもまだ、と……嫌な想像をしてしまうのは、あの眼を見た後じゃ仕方無いだろ?


Face_kenichi

【謙一】

……人の眼じゃ、ねえなアレは……


Kenichi

 嫌な関連付けをしてしまいそうだった。
 あの眼と、似ていない筈なのに……どうして俺は今、アイツの姿を思い浮かべたのだろうか。


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