「特変」結成編3-8「言刃(1)」

あらすじ

「ならば本気を出せ井澤謙一!! お前には、この俺に勝たねばならない理由があるのだろう!!」☆「「特変」結成編」3章8節その1。ようやく回収される対戦カード、井澤謙一vs沼谷嘉祥。強者を求める嘉祥くんの脅威の護真術を前に、謙一くんはどう対抗するのか?

↓物語開始↓


bakuhatsu


Face_kasyo

……もっと、良い環境になったな


 周辺が爆音と焔に塗れていく中で、中央に立っていた嘉祥はなおも笑っていた。


Face_kasyo

お前との一騎打ちを、楽しめと神が云っているとしか思えない


Face_kenichi

何となくだけど、お前は神様とか信じないタイプだと思う


Face_kasyo

その通りではあるな


Kasyo

 一般的に想定されるような……万能で全人類を救う力を持った神が居たのなら……。
 俺はこんなにまで力に飢えてはなかったのではないだろうか。


Kasyo

 ――無駄な思考だ。今することではない。
 この先もう有りはしない対決カード。それを、俺のこの先の血肉へと変えていくだけだ!!


Face_kasyo

ハァッ――!!


Face_kenichi

!?


 先に仕掛けたのは、嘉祥だった。
 それはとても自然な踏み込み。まだ数mもあった距離はあっという間に詰められ、脚撃が放たれる!


Face_kenichi

あっぶね!?


Kenichi

 ギリギリ何とか避ける……それでか、分かったこと……。
 絶妙な曲線美。余計な力は籠められておらず、マナを纏わずして最も火力を引き出し、リスクを軽減できるか、それらが探求され尽くしたような見事な一打。


Kenichi

 そして藤間を思わせるような、二の撃、三の撃……!!


Face_kenichi

ッ……


Kenichi

 鳬端との戦いで折れたバットで何とか防御する……が、手がぷるぷるする。
 何て重い一撃だ……間違いなく、コイツ武道でも心得てるな……!


Face_kenichi

俺は、しっかり武器を使わせてもらうかね――!!


謙一斬撃


 刃物と化したバットの一打。
 無距離の沼谷嘉祥へと迷い無く吸い込まれたソレは――


Face_kasyo

…………


 ――すり抜けた。


Face_kenichi

…………はい?


Face_kasyo

目の前で気を抜かれると腹が立つな、井澤ぁ!!


dageki2


Face_kenichi

グアッ――!?


 何も不思議がることなく嘉祥は華麗に回し蹴りを放ち、謙一の後頭部を捉える!
 意識を吹き飛ばされそうになるのを何とか堪えて、殆どダメージと同時に身体を回転させ、再びバッドで攻撃を放つ。


Face_kasyo

……俺にソレは、効かないな


dageki2


Face_kenichi

グッ――


 が、またも沼谷嘉祥の身体をすり抜け、空を切るのみだった。
 それに対するカウンターが、今度は謙一の顎を捉える。とても危険なダメージであった。


 一瞬宙に浮いた謙一は、しかし倒れることなく着地し、バットを構える。


Face_kasyo

今確実に意識を飛ばす気でいったんだがな


Face_kenichi

飛んでも戻されるっつーの……こんな五月蠅い環境下で


Kenichi

 ……ていうか。


Face_kenichi

お前、まだ“機能”使ってないどころか、万気相もやってなくないか? それでいて何で透明人間なんだよ


Face_kasyo

フッ……的外れな一方で、的確に俺を見ている


 爆風が吹き荒れる。それは中央部に居ても無影響とはいかない。
 ……それでも、沼谷嘉祥は動じていなかった。常に、彼はそのままであった。


Face_kasyo

井澤……強者とは、具体的にどのような振る舞いをしていると思う?


Face_kenichi

……いきなり深い問いを投げられたな。それに答える義理は、ねえかな――!


 再び接近戦が始まる。
 が、矢張り沼谷嘉祥は調子を崩さず、そして攻撃が透き通る。


Face_kenichi

ッ……


Kenichi

 いや……これは、透き通ってる、のか……? 本当に?
 そんなことは普通に考えて有り得ない。“機能”は使われていない、マナを感じないから……これはこの沼谷嘉祥の身に着けているスキルと考えなければならない。


Kenichi

 ……感じろ。
 コイツに、どうして攻撃が当たらない?
 当たらないとは、つまりどういうことだ?


Face_kasyo

俺は……こういうことだと、思っている!


dageki2


 一方的な戦いと云える。
 次々と攻撃を仕掛けるのは謙一であり、しかしその攻撃はいずれも彼には届かない。そしてそれに対して嘉祥はカウンターを放ち、謙一は何とか防御をするも、ノーダメージとはいかず。
 このままいけばジワジワと敗北が近付くだけ。謙一に勝機は訪れない。


Face_kasyo

何事にも、動じないことだ!


dageki2


Face_kasyo

数多の、深い経験を通して培われた己の力! それは日常に影響されるものでなく、当然他者に揺らぐものでもなく、己の強さとして常に不動の位置に座し、それが日常となる!


dageki2


Face_kasyo

日常は俺に屈服し、そして俺として一体化する。次に、俺の日常を崩しにかかる敵を、変わらぬ俺によって屈服する!


dageki2


Face_kasyo

……師範の受け売りだがな。俺の日常、俺の自然を俺自身が大切にしてきたことで、俺は不動の力を手に入れたんだ


Face_kenichi

そうか――そういう、ことか――


 一見やはり進展の無い激闘。
 しかし謙一は、普通に考えておかしいこの現象に、納得し始めていた。


 だから――


Face_kasyo

ッ――!


bakuhatsu2


 まず、その答えを確かめた。
 具体的にはポケットの中に入れていた小型爆弾を使って無距離の戦いを爆撃した。


 当然ながら謙一は自爆したことになり、小さくないダメージを受け吹っ飛んだ。
 そして嘉祥は――


Face_kasyo

……そんな大胆な小細工は、しないでもらいたいのだが


 無傷――ではなかった。
 制服が破け、火傷跡も所々に見られる。


blood1


Face_kenichi

……流石に、無理し過ぎたな……


Kenichi

 本当はもっとダメージを受けて欲しかったが、流石にアッチも気付きが早い。
 リスクを負った割には結果は芳しくない……が。


Face_kenichi

……お前の護真術は、何となく分かったよ


Face_kasyo

……ほう?


 一度遮られた接近戦が始まる直前、謙一の言葉が嘉祥の足を止めた。
 結局再開はせず、会話が続く。


Face_kenichi

ぶっちゃけ、俺と戦いたいとか云ってた割には“機能”も万気相も使ってこないし、これは舐めプされてんのかな、とか思ってたんだけど……お前はとっくに本気を出していた


Face_kenichi

お前がよく口に出してる日常ってのはまだあんまりよく分かってないけど……要は今も、さっき俺と殴り合い蹴り合いしてる時も、ずっとお前はその日常ってのを保ってたんだろ?


Face_kenichi

俺の攻撃なんて、お前の日常を崩すには値しない。お前は不動だ……その一心において、あらゆる俺の攻撃に対してお前は、必要最低限の対処で済ませる。それ以上をやれば、お前の日常は崩れうるからだ。動じていることを意味するからだ


Face_kenichi

……ガチで武道に長けた人間は、自分の哲学をガッツリ雰囲気に出してくるからなぁ。絶対に自分は強者であり、お前の攻撃では自分の常日頃の有り様、つまりお前自身の生き様を揺らがせはしない。そんな哲学を醸し出されたら――


Face_kenichi

まあ、俺がソレに尻込みして恰もすり抜けてる――俺の攻撃がお前を全く崩せない、とそう見ちまっても仕方無いのかもしれない


Kenichi

 つまりは俺が勝手に錯覚していただけ。
 厳密には必要最低限の動きで以て回避していたというだけ。
 だが、そんな事象を引き起こせるほどに……この沼谷嘉祥という男は俺と同学年にして哲学を持ち、経験を積み、強者であり続けてきたのだろう。


Kenichi

 そしてこの先もずっと、より強者である為に、進むべきは他の強者に挑み続ける磨きの人生。
 何を認められたのかは知らないが、俺もまたコイツにとっては、もしかすれば己を揺るがすことのできるかもしれない、丁度良い強者であるのだと。


Face_kasyo

……多少喋っていたとはいえ、こんな短時間で、「紙一重」を見抜いたのはお前が初めてだよ井澤


Face_kasyo

そう、俺の最大の武器は俺という日常だ! そこにはマナも、“機能”も、自然と必要であるものではなかった。だから使っていない、それだけのこと


Face_kasyo

――だが、お前は違うだろう! お前は確実に、あの時マナを纏っていた! “機能”を……持っている筈だ。ちゃんと武器として、お前は“機能”を使っている!


Face_kasyo

ならば本気を出せ井澤謙一!! お前には、この俺に勝たねばならない理由があるのだろう!!


 井澤謙一は絡繰りを見破った。


 だが当然、見破ったからといって、状況が一変するわけではない。大事なのはそこからどんなアクションを起こすか。
 故に、嘉祥は煽る。


Face_kenichi

俺の、“機能”……ね


 “機能”を使えと。本当の護真術で以て、本気を出し自分と戦えと。そうでなければ状況は進展しないのだと。
 あらゆる物理攻撃が届かない沼谷嘉祥の護真術かみひとえ
 それに対して謙一が持っている有用な手段はあまりにも少ない――


Face_kenichi

……沼谷ぁ、お前さ……冷静なようでいて、殆ど熱血で――


Face_kenichi

正直ちょっとバカなところあるんじゃねえか?


 ――にも関わらず。
 それを受けた謙一は、笑みを浮かべた。決して追い詰められている人間がするものではない、実に嘲るような表情。
 嘉祥にとってそれは、都合の良くないものであるのは云うまでも無い。


Face_kasyo

……ここにきてまだ、そんな飄々としていられると?


Face_kasyo

お前の攻撃は、俺には届かないのは明らかだ。俺が変わらぬ限り、な


Face_kenichi

んなことねえだろ。現にお前は、今ダメージを受けた。お前は透明人間じゃないのが判明した


Face_kenichi

なら当たるさ、俺の攻撃は必ず。残念だが、お前に俺の総てをひけらかす必要は無いって俺は判断するよ


Face_kasyo

……何だと――?


Face_kenichi

けどまあ、折角お前が護真術を口頭で教えてくれたワケだし、俺も一つ口頭で教えてやってもいいぜ――


Face_kenichi

気になってるんだろ? 俺の、“機能”


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