「特変」結成編3-7「裏切者(1)」

あらすじ

「良かったぞ、これまでのお前の闘い方を高みの見物している時間は」☆「「特変」結成編」3章7節その1。突然ご乱心の並川先輩を瞬殺したのは、強敵フラグをビンビン立てていた優海町冥王相楽珠洲子ちゃん。遂に沼谷嘉祥くんまで動き出したわけですが、謙一くんだけでこの2人を相手にできるのか……!

↓物語開始↓


Face_suzuko

……数いりゃ良いってもんでもねえだろうが


Face_namikawa

――!!


 暴走する並川の眼前に、突然その女子は現れた。


 その時点で、彼女はゲームオーバーが決まっていたのだろう。


dageki2 (2)


 蹴りが入る。
 それは顔を――特に眼を潰し確実に怯ませる為の攻撃。
 それが決まった瞬間にはもう彼女は次のステップに入っていた。


 地上に着地し戸惑いなく、サッと、150kgあると云われているその巨体に蹴手繰りをかます。
 倒れていく巨体、それにこのままでは押し潰される彼女は、更に次の攻撃に――
 必殺に、入っていた。


SuzukoOut


Face_suzuko

――『冥王天撃』”!!


珠洲子打撃


 爆発するかのように、彼女の右腕のトンファにマナが溢れ――
 彼女の身体よりもずっと大きい半透明の装甲が刹那に右腕に表示される。


 ロケットのように、マナがトンファ後方から噴射され、そのアッパーカットは間違いなく一般女子の繰り出せるソレとは火力が異次元であった。
 それは仮令たとい並川羽生という超重量であっても――


Face_namikawa

――ぐおぉおわああああああ!!!


 十数m上空へと飛ばされるほどの、超火力!!


Face_suzuko

全員邪魔くせえ、オレがやる


千栄ライト2



Face_joe

……またか


Face_mikan

え? 何が……?


Joe

 何となく方向性の見当はついたが、これで並川はもう使えない。
 有象無象の雑魚共は可成り数を減らせたが、まだ200人近くはいるだろう。


Joe

 雑魚が少なくなってきたとしても、障害はまだ多く在る。それを、今のまま何とかするってのは、まず無理だろうな。
 降りてくるなら、とっとと降りてこい。


Face_saya

遂に出陣してくるみたいねー……優海町冥王様が


Face_so

な、何で――もうあのトンファは無いのに、並川パイセン吹き飛ばすくらいの火力をどうして出せるの!?


Face_shiho

なあ、昨日もちょっと気になったんだが、その優海町冥王って何だ? そんなにあの相楽ってやつ有名なのか?


Face_saya

そりゃ、昨日もちょっとリーダー向けに軽く説明したけど、特変できる前は情くんとどっちが強いのかで密かに議論になってたぐらいに強かったのよー


Face_saya

猛者狩りの称号は沼谷くんが持っちゃってるけど、ぶっちゃけ相楽さんもそんな感じね。まあ彼女の場合は自分から狩ってるんじゃなくて、情くんみたく自分の縄張りに踏み込んできた奴を暴力で潰してる


Face_saya

南湘は最近ヤンキーで溢れてるからねー。噂を聞き付けて、喧嘩を売ってくる他の町の塵芥をボッコボコにして返してるうちに、優海町の冥王だってヤンキー達から恐れられるようになったのよ


Face_so

それが真理学園でも浸透して、普通に冥王冥王って云われるようになったんだよね……一回転けて目の前のパイセンに全身コーラぶっ掛けちゃった時は死ぬかと思いました


Face_fui

奏ちゃん、ずっと追い掛けられてたね……


Face_so

何がヤバいって、あの人愛用のトンファが色々多機能過ぎてね……尻尾からジェット噴射かまして相手に急接近してくるのホントビビる


Face_so

でも、この前ジョーパイが奇襲を返り討ちにして、罰ゲームでそのトンファ取り上げたんだよ。今もしっかり献上物の保管庫に入ってるし……だからもうあんな怖い目には遭わないかなって思ってたのに、スペアがあったなんて――


Face_nagi

……そうでもないんじゃない?


Face_nagi

貴方のイメージが、相楽の実際と違っているというだけ。私には寧ろそう見えるわ


Face_nagi

あの武器を返してもらいたいようだけど、実際アレがなくなって戦力が絶望的なほど削がれたかといえばそうでもない。元々そういうものじゃない


Face_so

ど、どういうこと??


Face_nono

私もそんな感じに捉えてました。実際に彼女と相対した情さんはどう感じていました?


Face_joe

……知らん。一度砕いた奴への印象なんざいちいち覚えてられるか


Face_saya

怪我負ってたくせにー。でもま、情くんが殺し損なったという時点で強敵であるのは間違いないわね。それは今も変わっていない……


Face_saya

万気相でガードも取れないのにアレを喰らったら一巻の終わりよリーダー


Face_so

どういうことー!!


Face_shiho

……当然、その辺の対策も用意はしてるんだろうなハゲ


Shiho

 抑も現時点で色々不自然な事態が起きている。
 それら総てが、アイツの策によって作られた展開なのだとしたら……。


Face_shiho

希望は持てると、私は解釈するからな



Face_ikarida

相楽が動き始めたか――!


Face_hiraga

全員、連携を取りながら井澤を追い詰めろ! この戦いを長期化させるな!!


Face_ikarida

ッ――待て、相楽が動くんだろう? 知る限りじゃ相楽のバトルスタイルも相当周りを巻き込むぞ平賀!!


Face_hiraga

構うものか、革命を成功させるんだ、その確実な道を進むにあたって捨て駒を惜しむのは愚者のやることだ怒田!!


Face_ikarida

お前は、本当に……


Face_hiraga

石黒! 此村! 安田! お前たちが先導して井澤をまた取り囲め! 精神的な回復の暇を与えるな!!


Face_hiraga

……おい、どうした、無線は通じているだろう!


Face_ikarida

平賀、それなんだが……さっきから応答がねえんだ。リーダー格、全員と


Face_hiraga

……な……に――?


hiraga

 莫迦な、井澤はずっと、僕の視界に収まっていたぞ。
 並川というイレギュラーはあったが、アイツらは並川の攻撃にわざわざ巻き込まれに行くほど愚かではない。周りへの細かい指示役という立場も忘れていないはずだ。


hiraga

 ……乱れてきている。勝利の、道が――
 この僕の道が、あんな後輩男子一人を前にしているだけだというのにッ……!!


Face_hiraga

早く……最初の士気へ、戻さねば――


Face_akitsu

……………………


Akitsu

 ……うん、だいぶ本陣も混乱してきてるみたいだね。
 正直ここまで上手く進展するとは信じきれてなかったけど、謙一くんが関わると本当に謙一くんの道が確定するというか……改めて、あの人が一体どれだけ異常なのかが思い知らされるようで。


Akitsu

 まあ、私はソレを知ってたから、迷う必要もなく謙一くんに附けば良かった。つまるところ、平賀先輩は謙一くんを知ることを怠った。謙一くんがどういう人なのかを、肌で感じることもせず周りっていう駒を使って客観的に調べてばかりいたから、総監督として持っておくべきだった危機感を今持たないでいるんだと思う。


Akitsu

 まだどっちに勝ちが転ぶかは分からない。だけど、私たちはもう当初から決めていたことを、総てやり終えた。ノルマ達成、あとは自由に柔軟に動いて、足掻く。
 まさか、ここまで、これから自分たちが追い詰められるなんてまだ信じることもできないんだろうなぁ。


Akitsu

 ざまーみろ、としか云いようがないなぁ。彼と向き合うことが、どれだけ辛いかを知らないんだから。そんなこともしてない人たちに……私は、この先の人生を渡す気にはなれないみたいだった。


Face_akitsu

……莫迦だなぁ、私……折角のチャンスだったかも、しれないのに――


Akitsu

 ――無線が入った。
 謙一くんから預かった、アルスとちっちゃいイヤホン……それらを使ったお手軽な無線アプリ。
 ソレで小さくコミュニケーションを取りながら、私たちは緻密に歩いてきた。


Akitsu

 でも……その時間も、終わりで。


Face_akitsu

私は、まだ暫くこうしてようかな……うん、そっか。確かに、話によると相楽さんと沼谷くんって強敵なんだよね。井澤くんだけじゃ、辛いのかも


Face_akitsu

……気をつけてね


Akitsu

 ……ふと、フードで若干見にくくなった上空を見上げる。
 アリーナだから当然だけど、この会場の天井には沢山の鉄柱とライトが設置されている。中には見た目シャンデリアに近いスポットライトも複数あって、その横幅は半径で3mはあって、地上からでも何と云うか物騒で、色々な演出に使えるんだろうなっていうぐらいの雰囲気は出てる。そして重そう。


Akitsu

 さっきから全然応答がないけど、彼女は大丈夫なのだろうか。


Face_akitsu

っと、人の心配をしてる暇はないよね


Akitsu

 ただでさえ、バレたら即行で袋叩きに遭っちゃうポジションなんだから。
 謙一くんは「自分の身を案じることが最優先」って何度も釘を刺したし――


Face_akitsu

(謙一くんが心配してくれちゃったーーーーーー!!!)


Akitsu

 誰よりも危険な謙一くんの手間を掛けさせない為にも、私たちはポジションを悟られないようにしなきゃいけない。
 ……なのに、早速ソレを破ろうとしてるんだもんなぁ。


Face_akitsu

知らないよ――? 謙一くんに、怒られても


……………………。


Face_kenichi

……………………


Kenichi

 間一髪、何とか並川先輩に潰されずに済んだ。
 ……だが、並川先輩はどうやらもう戦闘不能のようだった。


Face_kenichi

……大丈夫なのか、アイツ?


Kenichi

 並川先輩が打ち上げられた瞬間、少しだけ見えた光。
 またあの光が疾走して……それは、舞台から観客席へ伝って、天井へと逃げていったようだが……
 つまりアイツの“機能”ってそういうやつなんだろう。確定ではないが、少なくとも俺はそう確信している。


Face_kenichi

まあ、充分役目は果たしてくれたから、もう帰ってくれてもいいけどさ――


Kenichi

 ――それよりも、今は自分の身。
 俺が戦闘不能になったらその時点で敗北決定だ。
 その意味では、今、佳境かきょうに入ったと云っていいのだろう。


Face_kenichi

やっとご登場かよ。どんだけ準備体操させるんだよ、多少もう俺疲れてきてるぞ?


Face_kasyo

見取り稽古というのは俺的には詰まらないが、実際多くのことを学べるものだ。良かったぞ、これまでのお前の闘い方を高みの見物している時間は


 並川が鎮まっても、まだ場は動揺を隠せないで居る。
 そんな中で謙一に近付いてくる、二人の猛者。


Face_kasyo

しかし、少し時間を使いすぎたな。その所為で相楽にも火が点いてしまった


Face_suzuko

…………


Face_kenichi

……並川先輩を俺に投げてきたのって、どっち? 正直可成りヤバかったんだけど


Face_kasyo

俺がやろうかと思ってたんだが、駆けつけた時には既に隣の女子がな


Face_suzuko

テメエずっと高みの見物でもしてればいいじゃねーか。邪魔だよ、オレの視界に入ってくんな


Face_kasyo

俺としては前日からずっとそれと同じことをお前に云ってきた筈なのだがな


Face_kenichi

いっそそのまま喧嘩に発展して二人で共倒れしてくれると俺としては大変有難いんだけど


Face_kasyo

それもいいかもしれん。お前との時間が終わってから


Face_suzuko

沼谷……テメエ後で潰す。井澤潰してからなぁ


Kenichi

 それだと意味ねーんだよなー……


Kenichi

 ていうか沼谷と相楽ちゃん同時に相手しろってことなのか。覚悟してないわけじゃなかったが、相楽ちゃんも超強いってことが実際今思い知らされて、沼谷もどうせ同等に強者。
 この二人が即興で連携して攻撃してくるとはあんまり思えないが、ノーダメージで切り抜けるのは無理そうだな――


Face_noname

【???】「流石の旦那も、この局面は厳しいかな?」


MeraOut


Face_noname

【珠洲子&嘉祥】
「「ッ……!!」」


Face_kenichi

何――!?


砂嵐


 緊迫していた舞台中央に、突然の砂竜巻!!
 それが沼谷嘉祥と相楽珠洲子に接近し、二人は回避を余儀なくされ、そして二人の距離はこの回避によって大きく隔てられた。
 そこに――


conflict


Face_suzuko

ッ! チッ――!!


 大剣の一撃が、一方に襲いかかる!!


 背後からの奇襲に辛うじて対処した珠洲子。
 両の手のトンファで以て防御してみせた彼女はここで初めて、本来存在するのはずのない因子を目撃する。


Face_suzuko

テメエは――


Face_mera

完璧なタイミングだったと思うのだが……これでも優海町冥王様には届かないのか。こっからどうしたものかな


Face_kenichi

……小松……


Kenichi

 あんだけ自重しろって云ったのになぁ。
 結局顔バレしちゃったじゃないか……。


Face_kasyo

……なるほど。結局、反革命派に附いたわけか。分からないものだな


Face_kasyo

お前も随分、特変と戦いたがっていたというのに、実際何度もそれをやっていたのに関わらず、今この場では特変に味方するというのか


Face_kasyo

だが、感謝するよ。是非俺と井澤の一騎打ちの時間までは、持ち堪えてくれ!!


Face_suzuko

……瞬殺してやるよ


Face_mera

さあ、踏ん張り処だなぁ井澤氏――!


Face_kenichi

持ち堪えろよ小松。すぐ、援護に入る――!


 いよいよ、強者同士の戦いが始まる――


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