「特変」結成編3-5「開戦の朝(2)」
あらすじ
「来いよ、折角の祭りの時間だ。全力で遊べや――」☆「「特変」結成編」3章5節その2。GAC101会場にて400対1がしっかり現実化されるわけですが、謙一くんは何だか楽しそうです。※いよいよ革命章本番に入りましたが、予想される通り、藤間兄妹のエピソードよりも遙かに長いです。
↓物語開始↓

【謙一】
観客あんまり盛り上がってないけど、始めて良いもんなのかねえ
Kenichi
……ま、拝田の云ってたことが的を得てたってことだ。全員九条と同じ壁にぶつかってしまっているのだろう。
Kenichi
って会場を舐めるように見回しながら指定位置に到着した時点で、もう400人の敵に囲まれてるね俺。

【謙一】
沼谷と相楽ちゃんは……まだ見えないな……
Kenichi
そりゃそうだよ、400人居るんだもん。
しかし相手側の大将が何処に居るのかは一瞬で分かる。

【謙一】
自己主張強すぎね!?

【平賀】
やあ!! 君とこうして顔を合わせるのは初めてだなぁ後輩くん!!
一言でいえば、神輿。
十数人の大男たちによってわっしょいわっしょいと支えられる、高塔の神輿にふんぞり返り、メガホンで蟻のようなたった一人の敵へ言葉を贈る。

【平賀】
僕の力、しっかりと理解してくれたかな? 君ならば、今回の絡繰り総てに気付いているだろう?

【謙一】
あれが、平賀利家か……
Kenichi
超楽しそうだな。正直俺も、あの神輿乗ってみたい。
それだけに――

【謙一】
残念、だなぁ……
Kenichi
――楽しみだなぁ。

【平賀】
……君は優秀な人材だ。あの銘乃翠が気に入ったんだ、それはもう、数万人に一人とでも云っておくべき強大な人材だったのだろう。実に惜しいよ、こんなことにならなければ、僕の懐刀として迎え入れても良かったのに……!

【平賀】
まあ、切れすぎるのも問題だからね。君は……不合格だぁ、ここの歴史に刻まれることなく、この僕の歴史の礎にでもなってくれ!!

【怒田】
…………囲め。決着をつけるのは、誰でもいい
指示が回り……
謙一は、更に囲まれる。
殺気の圧が高まる。
Stage: 職員室

【奏】
ケンパイ、いきなり囲まれたけど!?

【美甘】
謙一、逃げてーーー!!

【凪】
逃げ場ないでしょ彼処に。というか、平賀ちょっと恥ずかしくないのアレ?

【情】
……………………

【乃乃】
情さんが大変機嫌悪いです、どうしましょう先生

【薫】
なんんんんんで私に振る!? 私にアレ近付けさせるとかこんな時でも核弾頭かアンタは!!

【キャロ】
皆ちょっと、毎日の礼拝ちゃんと聴いてる……?

【啓史】
聴いてないでしょー

【譜已】
……………………

【翠】
譜已ちゃん、信じてあげましょ? 貴方が信頼している、先輩なんだから

【譜已】
…………お母さん…………

【譜已】
何で、謙一先輩にちゃん付けで呼ばせてるの――?

【翠】
え、そこ……? 今そこ衝いてくるの!? ちょっとこんな時でも怒ってくる譜已ちゃん可愛いわ~(逃)!!

【クロウス】
自由だなアンタら。そして楽しそうだな

【訓舘】
ふふ……そう見えますか?

【沙綾】
……対策は、してるんでしょーね。私のアレを貸してあげたんだから、しっかり無傷で返してよリーダー

【志穂】
…………
Stage: GAC 101会場

【夏川】
こんにちは、特変の管理職さん

【謙一】
夏川先輩っすね。どうも
まず一番近付いてきた女子と、ナチュラルに会話を始める謙一。
その時点で、もう気味の悪いこと仕方無かった。

【夏川】
……どうして、私を?

【謙一】
こんなのどうしようもないんでね。やることもないし、暇だから2年と3年の情報を眺めてました

【謙一】
多分、この場に居る人、8割ぐらいは俺名前答えられますよ

【夏川】
……………………

【謙一】
んで、何の用ですか? まあそんなの訊くまでもないっすけど、態々声をかけてきたってことは何か云いたいことでもあるんでしょう?

【夏川】
何なの……アンタといい佐伯といい、後輩のくせに生意気で……

【謙一】
怖いですか?

【夏川】
ッ――

【謙一】
アンタのことは乃乃から聞いてる。藤間妹に最悪のタイミングでちょっかいかけたらしいじゃないすか

【謙一】
安田って人も一応名前覚えてきましたけど……その件、俺は結構怒ってるんですよね

【夏川】
ハッ――! だから何だってのよ! アンタはこの場所、この状況で!! 私たちに仕返しができるって!?

【夏川】
虚勢もたいがいに――

【謙一】
人にはそれぞれ、パーソナルスペースというのが存在している

【夏川】
ッ――?

【謙一】
大体こう……肩肘60センチ分。これ以上、距離を詰められると本能が嫌だと拒絶をみせるんですよ

【謙一】
それに加えて、そのすれすれの間隔で物事を判断するのではなく、確実な理性で以てやり取りできる距離感というのがビジネス距離っていうらしいですね

【謙一】
つまり今、俺と夏川先輩はそのビジネス距離で話してるってことになります。理性で、コミュニケーションをしてる

【夏川】
だから――

【夏川】
何だって――!
“機能”の発動を“宣言”しながら、夏川彩萌はその距離を更に縮めた。
その距離は、軈て――
――60センチを切る。

【謙一】
分かりませんでしたか?
刹那。
少量の血が、宙を旋回しながら――
その持ち主たる夏川彩萌はそれ以上声を発することもなく、地に転がった。

【謙一】
――そっから先は、俺の“本能”が出るっつってんだよ

【平賀】
な――
平賀
今のは……
何だ――?

【安田】
ッ――かかれ!! 数で、攻めれば何の問題もねえだろ!!
指示が飛ぶ。
だが彼に近付いて何が起きたのかの違和感は拭えず、結果中途半端な勢いのまま、ただ突っ込むに至った5人が――
夏川彩萌と全く同じ結果を辿り、首が回った。

【嘉祥】
ほう……
Kasyo
あのやり方は、地上社会のモノじゃないな。全く俺の知らない“コンセプト”――

【嘉祥】
暗殺技術と云われても、納得してしまいそうだ。見事な手つき
Kasyo
それだけに――
奴の素性のおかしさが露呈するが……

【嘉祥】
それを隠すつもりは、もう無いと来たか――面白い!!

【謙一】
来いよ、折角の祭りの時間だ。全力で遊べや――

【謙一】
首がねじ曲がって四肢が跳んでも、ヒトは踊れるんだからな