「特変」結成編3-4「革命と革命(4)」
あらすじ
「どうせ、勝つよね?」☆「「特変」結成編」3章4節その4。圧倒的絶望の刻は明日。その割にはのんびり作戦会議に勤しもうとしてた孤独な謙一くんの前に再び訪問者が現れます。
↓物語開始↓
Stage: 特変教室

【謙一】
さて……どうしたものか

【光雨】
ぱくぱくぱく(←トウモロコシ)

【謙一】
……………………
Kenichi
気が散るなぁ……。
折角皆、素直に俺の要望に応えて帰ってくれたってのにコイツはほんと……まあ帰る場所なんて此処か俺ん家ぐらいだから、仕方無いといえばそうなんだが。
てか何処でそんなもん仕入れたんだ……

【謙一】
特変がしょっ引かれたら、お前の存在も危うくなるかもしれないんだぜ?

【光雨】
そんなこと云われても、クーにはどうしようもないことなのー

【光雨】
マスターが何とかするってマミーが云ってたから、特に何もやることないクーは暇してるのー

【謙一】
暇してるんならメイドらしく掃除でも……いや、何でもない……
Kenichi
そんなことされたらもっと気が散るな……。
こんこん。

【謙一】
ん?
Kenichi
……気のせいか?
こんこんこん。

【謙一】
いや、気のせいじゃねえな……
Kenichi
作戦会議的な感じで暗幕思いっ切り閉めてたんだが、誰かがベランダ窓を叩いてるっぽい。

【謙一】
誰だ――?
Kenichi
確かアイツらは全員帰った筈なんだが……。
もしや敵の誰かか? また沼谷かな。相楽ちゃんだったらどうしよう。

【謙一】
……無視る意味は特に、ないか
仕方無いとばかりに溜息をついて、謙一はカーテンをそーっと捲った。

【千栄】
(*^▽^*)(*^▽^*)(*^▽^*)
(*^▽^*)(*^▽^*)(*^▽^*)
思いっ切り見覚えのある女子の顔がベランダに貼り付いていた。

【謙一】
……………………
謙一は何となく、カーテンを元に戻した。
こんこんこんこんがんがんがんがん――!!

【謙一】
面倒くせえなぁ……
観念してベランダを開けた。
するとピョンッと庭から教室へ跳び移り、ふぅと一息つく千栄だった。

【千栄】
……何で一回見なかったことにしたの?

【謙一】
見なかったことにしたかったからだが

【千栄】
ひっどおおぉおおい!! いたいけない女の子ベランダに放置って男の子としてどうなの君!!

【謙一】
抑もこの特変のベランダにどうやって来たお前? さっき暗幕閉める前に俺一回ベランダ確認したんだけど、居なかったよね? この教室介してないよね?

【千栄】
……壁走り?
Kenichi
それできるマフラーを俺一人知ってるな……。

【千栄】
ま、いーけどさー。大変なことになったね井澤く――

【光雨】
ぱくぱくぱく――んん!?

【千栄】
え、ちっちゃいメイドさんが居る!? めっちゃコーン散らかしてるし!? 何コレ!?

【謙一】
やっべー遂に他の学生に見られた……
Kenichi
取りあえず誤魔化しとくか。

【謙一】
志穂の又従姉妹だってさ

【千栄】
あの暴走マフラーってホントに人なの……?
Kenichi
云っておいてなんだけど、まさかソレ本当に信じるとは思わなかった!!
そんな何も考えてない千栄は本題に戻る。

【千栄】
沼谷くんに相楽さんまで居るんだー。コレもう勝てないでしょ

【謙一】
皆に云われるなぁ。ていうかお前、大丈夫なのか? こんなところにいて

【千栄】
え? 何が?

【謙一】
いや、だからさ――

【noname】
【???】「失礼しまーす……」
控えめな声の一方で、ノックの0.5秒後に思いっ切り扉を開けて入ってきてまた人が増える。

【秋都】
あ……け、井澤くん……

【謙一】
徳川!?
Kenichi
な、何で――!? 平賀勢に捕まってたんじゃ――

【謙一】
いや、待てよ……徳川、お前今まで、何処に居たんだ……?

【秋都】
え? えっと……病院に……
Kenichi
そうか……
そういえば、昨日同窓会の時に偶然雑務委員活動してるとこに鉢合わせして、それで何だかんだで血塗れになって病院に運ばれたんだった……。
つまり、朝から徳川が居なかったのは全くの別事情だったんだ……。

【謙一】
無事で、良かったよ……

【秋都】
い、いきなり、どうしたの……!? 見ての通り、私は回復したけど――(ていうか心配してくれてた!?)

【謙一】
あー、えっと……どうしたもんか

【千栄】
ねーねー、私の何が大丈夫なのー?

【謙一】
だーもー! お前は今の状況分かってるだろうが!! いいか――
秋都に今のとんでもない状況を解説するついでに、千栄が置かれている筈の状況をちゃんと説明してあげる律儀な謙一である。

【謙一】
……ってこと! つまり俺と安易に話してると身の危険があるの!

【千栄】
へーなるほどねー……そりゃ大変だねー私

【謙一】
えっ、他人事?? お前ほんと頭大丈夫?

【千栄】
そんなガチで心配されると結構ショッキングだけど、別に私おかしいことしてるって感じはしないしー

【千栄】
要はバレなきゃいいってことでしょ? 君と会って、密会をするにしても

【謙一】
……そこまでして、俺に何の用だ?

【千栄】
あれ、察してない? 私に似てフィーリングが鋭いって云ってた割にはニブチンだね井澤くん~
Kenichi
ウゼえ。

【千栄】
今ウザいって思ってたでしょ

【謙一】
そして相変わらず超鋭いや。観念するからお前の目的を教えてくれない?

【千栄】
決まってるじゃん、藤間くんの時と同じ。君とお喋りしたかったってだけ

【謙一】
…………は?

【千栄】
今度はもっと、沢山、君の護真術が見れるかもってね。またまた絶好のチャンスじゃん!

【千栄】
ね、本気出してくれるんでしょー? 沼谷くんも相楽さんも、藤間くんなんかとは比にならないほどの実力者だし

【秋都】
……400対1……一人ずつ相手にするにしても一気に相手するにしても、あまりに井澤くんの負担が大きすぎるよね

【秋都】
井澤くんの労力を割かずに、数を減らせるような……そんな仕組みを会場に仕込むことができたら、効率的だと思うよ

【謙一】
ちょ、え――お二人? お二人さん?
Kenichi
ちょっと、リアクションおかしくない?

【謙一】
君たち、平賀派じゃないの……?

【千栄】
は?

【秋都】
え? どうして?

【謙一】
……………………
Kenichi
どうしてって、それ俺の台詞ですけど……。

【謙一】
いや俺説明したよね!? 反革命派は特変同様にしょっ引かれるって!!

【千栄】
私も説明したじゃーん。バレなきゃいいって
Kenichi
見事過ぎるカウンターが返ってきた。

【秋都】
……そういう意味では……

【秋都】
実際、私たちみたいな考え方をしてる人は、大勢いるのかも

【謙一】
徳川……?

【秋都】
本当は革命を、良く思っていない人。私は今来たばっかりだから確証はないけど……

【千栄】
そりゃ、ぶっちゃけ大多数でしょ? 平賀さんくらいじゃないのー本気でこの革命肯定してるのって

【千栄】
その取り巻きだって、もうその関係の壊し方が分からなくなってるから従ってるって感じ。あの怒田って暑苦しい人はちょっと分かんないけど

【千栄】
つまり、味方になってくれなかった味方なら、結構居るってこと。でも私は普通に井澤くんとこ来ちゃったー♪

【秋都】
完全に無知で訪れました……

【謙一】
徳川……拝田……
Kenichi
――そうだ。
云われてみれば、普通に考えたら、そうじゃないか。
Kenichi
この学園の全員が、9割以上が、平賀に賛同している? 俺たちを「極悪非道」と批難していた奴らが、平賀のやり方に異を唱えないのか?
そんなこと、あるわけがない。

【謙一】
平賀の城は、無理矢理逐一手で固めて維持されてるに過ぎない……
Kenichi
そんな城を、堅いと云っていいのだろうか?
果たしてそれは難攻不落なのか?
Kenichi
――幼少から秀才だった平賀。
自分より出来ない輩に何か云われるのを良しとしなかった平賀。
だから自分の実力を示し、周りに有無を云わせないことにした平賀。
それによって頂点になろうとした平賀……。

【謙一】
何だよ――穴だらけじゃねえか……
Kenichi
別に突然勝率が湧いて出たわけではない。変わってない。
だが、おかしくなった。それなりに怖い相手だと思っていたが、何か今はおかしくてたまらない。

【謙一】
春日山の方が、ずっと強いな……

【千栄】
? いきなり、どうしたの?

【謙一】
なあ、拝田、徳川。お前らはどう思ってる?

【謙一】
俺、負ける?

【秋都】
……負けはしない、んじゃないかな
スムーズに秋都はそう答えた。

【謙一】
……そう云ってきたのは、徳川が最初だな

【秋都】
え、そうなの……? だって、井澤くんだもん……

【秋都】
どうせ、勝つよね?
それは、秋山志穂が先ほど彼に示した「信頼」とは次元が違う。
秋都の場合は、最早「確信」であった。疑うまでもなく、その未来に之くのだと理解している、ただ一人の人間であった。

【謙一】
……ップ――

【謙一】
く――ハッハァ、アッハハハハ――!!

【秋都】
わ、私、何か変なこと云ったかな……?

【千栄】
わーお、徳川さんって結構強い性格してんだねー……

【秋都】
……??

【謙一】
しかも、そこで分かってない顔――プックッフウゥ、あー最高。最高だわ徳川

【秋都】
(最高!!?)
病み上がりの秋都、沸騰開始。

【謙一】
って例の如く顔赤い! 冷やせ冷やせ!!

【秋都】
(謙一くんが私のこと最高謙一くんが私のこと最高謙一が最高――)
ちょっと休憩を置いて再開する。

【千栄】
ま、流石に徳川さんみたいな断言は私できないけどー

【千栄】
ここで勝っちゃったらさぁ……気持ち良くない?

【謙一】
ああ……もう何も、俺たちに文句云えなくなるな……!

【謙一】
そりゃそうだ、9人中8人の行動を封印できたのに、残り1人に学園選りすぐりの400人が全滅したら、もう特変破りやろうって奴すら居なくなるかもな――!

【千栄】
テンション高いね井澤くん。てかそんな秘策もう考えてあるの?

【謙一】
ないけど

【千栄】
ないんだ

【謙一】
なあ、拝田。お前は、この先どんな学園生活を望んでるんだ?

【千栄】
私? うーん……
Chihae
それを考えること自体が、複雑ではあるけど……

【千栄】
楽しい学園。毎日来てて、あー平和だなーって、のんびりできてて、あとテストが無いんだ!

【謙一】
テストは無くさない

【千栄】
……ちえーっ。ま、いーけどさ、その時は井澤くんに勉強教えてもらうし

【謙一】
奏を凌駕する問題児が増えるわけだ……それから?

【千栄】
特に思いつかない

【謙一】
俺の護真術めっちゃ探ってくる割には、ミステリアスな野望何も無いのか

【千栄】
それはただの興味関心だし

【謙一】
あっそ……じゃあ、徳川は?

【秋都】
……今の姿、かな

【秋都】
今っていっても、平賀先輩が五月蠅い今は嫌かな。誰かが王座に就くなら、それが銘乃政権の基本なら……

【秋都】
井澤くんたちで、いいかな

【千栄】
特Bらしからぬ発言だねぇ。それで? こんなことをこんなタイミングで訊いてきたのは、ただの興味本位ってわけじゃないんだよね、その顔だし

【謙一】
徳川、俺今どんな顔してるの

【秋都】
………………悪巧み?(ていうか眩しくて直視できないです!!)

【謙一】
バレてるか。じゃあもう、ぶっちゃけて云うけどさ――

【謙一】
平賀の、そんな大したことの無い根城さ……俺たちで、ぶっ壊してみないか?