「特変」結成編3-1「穴」

あらすじ

「厚顔無恥を晒すだけの……王の形すらなってない王を晒し上げる、最高の革命にしよう――!」☆「「特変」結成編」3章1節その1。革命章スタート! いきなり新キャラたちによる不穏極まりないカットから始まります。

↓物語開始↓


Face_yasuda

……………………


Face_ikarida

どうした安田? 盛大に鬱な顔して


それは、ある日ある時の、ある教室の光景。
暗幕が広げられ、扉窓にもまっさらな紙が貼られ、視覚的には密室であった。


Face_yasuda

いやぁ、なんつーか、ヤベえもん見ちまったなーって……


Face_ikarida

ああ、佐伯の件か。悪かったな、まさかそんな数日気持ちが塞ぐような思いをさせちまって……俺たちも、それは想定外だった


Face_yasuda

そもそも佐伯が真理学園に残ってて、藤間妹と出会ってたってのが想定外でしたし、多分その時点で全部瓦解の方向行ってたんだと思いますよ。先輩たちの所為じゃないっす


Face_ikarida

夏川は?


Face_yasuda

俺の数倍ヤバい落ち込みようっすね。そりゃ、あの核弾頭の眼光をストレートに浴びたらなぁ……


Face_ikarida

話じゃ、全員ドラゴンに度肝抜かれたっていうじゃねーか。そっちの方がヤバくないか?


Face_yasuda

現場にいたから分かるんすよ。そりゃアレも物理的に襲ってこなくて助かったって思いますけど、アレよりも……


Face_ikarida

佐伯の方が、ヤバいっていうのか……流石、特変の一人。どうやら今までアイツを標的にしてこなかったのは正解だったようだ


Face_ikarida

だが……今回の藤間の特変破りであれば、あるいは……と思ったんだがな


Face_ikarida

お前は、どう思ってるんだ? 平賀


Face_hiraga

今更終わったことに仮定をしてどうする。そんな無駄な思索は愚者だけやってればいい、怒田


Face_hiraga

お前は、この僕寄りの人間だろ?


Face_ikarida

……相っ変わらず腹立つレベルで自信豊満だなお前は


Face_hiraga

石黒、これまでの特変破りの戦績は?


Face_sensuke

えっと……総合して特変破りは、俺たちが把握している限りでは141件発生しました


Face_sensuke

その内訳は、申請用紙を通して行われた試合型が17件。5人以下の少数で起こした奇襲が67件。それ以上の団体で起こした奇襲が57件


Face_sensuke

……少数で挑戦した奴らも、その一時において5人くらいでも、実際には他のチームと連携して読み合いを制する為の囮だった、という推測もできます。それを考えたらもっと団体的な戦いだった、とも云えるかも――


Face_hiraga

僕は戦績だけを聞いているんだ、石黒


Face_sensuke

あ、はい、すいません平賀先輩


Face_hiraga

……まあ、実際は石黒の推測通り、「穴」を作るべく盛大に囮を蒔いて、読み合いに持って行こうとしていたのだろう。だが、そこに持って行けることもなく、特変という9人勢に圧倒的な力で瞬殺された。佐伯乃乃も、何やら巨大な力を持っていることも今回君たち2年の働きで判明したわけだ


Face_hiraga

そこを引っ張り出せたことだけは、評価してあげてもいいよ


Face_yasuda

そこだけっすか……


Face_hiraga

当たり前だ、寧ろ君たちが勝手に……藤間、だったっけ? 彼を煽り立てて特変破りを持って行ってしまったのは最悪なんだよ、安田。更に最悪なのは――首魁ではなかった君に云っても詮方ないが、観客をあんなに集めてしまったことだ


Face_hiraga

違和感があるとは思わなかったか? B等部の、無名の学生が一人で特変の頂点に挑む特変破りに、どうして学園生の9割以上が観に来ようと思う?


Face_ikarida

ま……普通に考えて有り得ないわな


Face_hiraga

それは、確実にあちらも気付いている不自然さだ。即座に辿り着かれぬように、窮策は張り巡らしたが……時間の問題だろう。僕たちのところに、彼らが挨拶にでも来るのはね


Face_yasuda

……平賀先輩がた、3年はまだ……少なくとも試合型の特変破りには、一度も出てない


Face_yasuda

それでも、辿り着けるっていうんですか? 確かに凄い不思議な矛盾点かもしれないけど、それだけで……


Face_hiraga

この学園で最も強者の集まる層は、当然A等部の3年だ。特変は今考えるな


Face_hiraga

そして、団体戦を指揮するにあたって、これまで僕が大切にしてきたことは何だと思う?


Face_ikarida

無駄に情報を漏らさないこと、だろ?


Face_hiraga

その通りだ。安田、石黒、僕は君たち2年生の力をおおかた把握しているが、君たちは3年生の力をどこまで把握してる?


Face_sensuke

えっと、それは……あれ……そういえば……


Face_yasuda

全然分かんねえ……何も知らねえってわけじゃないけど、あんだけ学園行事があった割にはあまりにも……


Face_ikarida

先輩風を吹かして回ってたからな。それも、実のところ平賀の指示だったわけだが


Face_hiraga

僕はこの学園の頂点に立っている人間だぞ? その周りに居る3年生が、後輩たちよりも目立っていたら階層の整合さが乱れるだろう


Face_hiraga

それに、下剋上を起こされても困るからね。君たちが2年に進級するよりも前から、優位を作っていただけのことだ


Face_yasuda

ま……マジかよ……


Face_hiraga

情報はたいてい、明かすとそこから付け入る隙を見つけようと動く輩が出てくる。それが取るに足らない雑魚なら即座に君たちが動いて屈服させてしまえばいいだけだ


Face_hiraga

だが、特変なんていうとんでもなく野蛮で、なのに強大な力を持っているような相手の場合は、もう情報を取られた時点でダメージを覚悟しなければならない


Face_hiraga

3年生の実力者は誰なのか。3年生の実力のその詳細は。3年生のこの人の特技は如何ほどのものなのか。これは知られれば知られるほど、奇襲だけでなく試合でも不利に立たされる


Face_hiraga

そして今回は、「藤間だけの問題ではない」と気付いて、藤間を扇動する「上の力」を意識された筈だ。2年生は安田たちの方が納得してるだろう。だが、3年が特変に対して何もしない道理もない。故に疑われるのも自然


Face_hiraga

衒火や佐伯、なんていう野蛮すぎる連中とは特変制度前から、端から関わらないようにしてきたが……奴らも学園生歴は長い、元からこの僕の情報操作に気付いていたとしたら、もう今の時点で僕や怒田の首に狙いを定めていたとしても、決して不自然ではない


Face_hiraga

……3年生は、切り札だ。こんな形で披露するとは流石の僕も当初想定していなかったが、この「切り札」さえ準備できていたなら、特変相手といえども勝機は幾らでも作れる


Face_hiraga

だが意識がこっちに向いたなら、不意をつくのはとてつもなく難しくなる。結論を云うと、2年生がやらかしたのは、この切り札の性能を落としたことだ。今後君たちが昇級して最高学年になった時は、自分の行動で起こるうるものを100通り考える癖を誰か一人でも付けろ


Face_hiraga

……ま、君たちの学年に僕のように頂点に立つべき人種は居ないけどね


Face_ikarida

…………


Ikarida

コイツの言動にムカつかない奴は、真理学園ではそうそう居ないだろう。だが、それを誰も徹底的に咎めようとしないのは、もうこの性格は治らないだろっていう諦めもあるし、コイツがそういう人間だから俺たちは栄華を極めたというのもある。


Ikarida

智戴の平賀――3年はこの男をそう称え、跪いている。


Ikarida

この男の采配が、俺たちの学年を1年以上前から頂点へと押し上げて、今も圧倒的な存在として下学年から崇められている……その事実へと目を向けるたびに、コイツがやってきたことを思い出させる。


Ikarida

それについて何も思わないわけじゃないし、俺はコイツのやり方は……気にくわないところもある。
俺が卑劣と思うことも、平賀にとっては卑劣じゃないことが多く、それで勝てるなら当然の如く躊躇わない。
「中枢」である自分を傷付けることなく、跪かせたクラスメイトを使って末梢をどんどん増やしていく……そうやって平賀王国は創り上げられた。


Ikarida

実際凄い男だ。自分の能力に対し絶対的な信頼を置く一方で、過信をしていない。自分がどういう立場に居れば頂点になれるのかを悟っていたから、それを実行しただけ。それを努力という空気を全く感じさせないままに続けてきたコイツは、間違いなく天才で、上に立つに値する……そう思うときもある。


Ikarida

そして、少なくとも今は……特変制度が突然施行されて、突然俺たち最高学年より上の立場の後輩クラスがふんぞり返りだした緊急事態では、コイツは俺たちの光明に違いなかった。


Face_hiraga

まぁ……正直、もっと緻密に情報収集をしたかったが、これ以上特変時代が続いてそのまま夏期休業に入るのも許しがたい。愚かな2年の諸君のお陰で、時間を懸ければ懸けるほど切り札の味が確実に損なわれるようなってしまったから……


Face_hiraga

攻め時と、するかな


Ikarida

平賀がそう云った瞬間、
さっきまで緊張に包まれていたこの教室が、緊張してるのには違いないが――急激に暑くなったとも感じた。


Face_ikarida

とうとう……その決め台詞を聞く時が来たか


Face_hiraga

不本意ではあったがね。奴らに考える時間を与える方が危険だ。まだ不意を衝ける


Face_yasuda

不意ってことは、奇襲で行くんすか!


Face_hiraga

大莫迦だな安田は。ちゃんと合唱祭を見ていたのか? 特変破りのベストは、「奇襲による公式しあい」だ。これは揺らぎようのない事実だ


Face_hiraga

そして、藤間の件で使われた手段――相手の人数の限定も、試合型の特典だ。これを使わない手はない


Face_hiraga

まったく……語れば語るほど、如何に2年の愚行が愚行だったかが露呈するばかりだな。同じやり方を立て続けにすることになるじゃないか


Face_ikarida

……なるほどな。お前がどういう状況に持って行きたいのかは、何となく俺も分かった


Face_ikarida

だが、そう易々と実現できるか? 石黒の調査は俺も把握してるが、今のところ制度通りに正式で特変破りになったのは鮭沢のやつだけだろう


Face_ikarida

あまりに不公平が目立つようじゃ特変も合意はしない。そして、あまりに特変に勝機が無いと考えれば銘乃学園長も通しはしないだろう?


Face_hiraga

……どうして鮭沢の特変破りは、規定通りに成立したと思っている?


Face_hiraga

云い方を変えよう。特変は……井澤はどうして鮭沢の特変破りを、不利であるにも関わらず受諾した?


Face_ikarida

それは……分かってるのか? 石黒


Face_sensuke

はい、俺が直接……色々交換条件は突き出されましたが、何とか――


……………………。


Face_ikarida

……まさか……お前


Ikarida

これまでと、変わらない。


Ikarida

恐らくいつも通りの平賀利家なのだろう。
確実に勝利を抉り取る――俺にとって、いつまで経っても好きになれない、俺たちの王の顔をしている。


Face_hiraga

さあ、始めようか……愚かにもこの平賀利家の頭上で、厚顔無恥を晒すだけの……王のなりすらなってない王を――


Face_hiraga

晒し上げる、最高の革命にしよう――!


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