「特変」結成編0-6「拿捕」

あらすじ

「ふふっ……もし逆に、私に苦労かけるようなら――」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」0章6節。特変面子との事前接触期間、衒火情くんの後に控えていたのは遠嶋沙綾ちゃん。学園長からの通知で土曜日、というか明日が接触日に決まりつつも、中学校の方で着々と進んでいる卒業式準備にも取りかかる謙一くんでしたが――

↓物語開始↓

Stage: 謙一の母校


Face_kenichi

【謙一】

ってことがあったんだ


Face_bias

【ビアス】

いや、だから知らねえし


Kenichi

次の週。


Kenichi

平日金曜日にまた機会があったので、数年間友達候補のビアスに愚痴ぐちを零していた。


Face_bias

【ビアス】

お前ぼっちを気取ってる割に色んな方面にモテてるよな


Face_kenichi

【謙一】

気取ってるつもりもないんだけどなぁ


Kenichi

ただ、親密な関係を作ろうとは思わないだけで。


Kenichi

絆はほだしとも読むように、その親密さが俺と亜弥の時間に干渉してくることだってある。
その時間を優先するような価値観が、俺にはない。


Kenichi

でも何故か色んな人と関わる羽目になってるんだよなぁ。面白いな人生って。


Face_kenichi

【謙一】

本当にモテてたら今頃彼女とか出来てるのかもなぁ


Face_bias

【ビアス】

お前ソレ他のクラスメイトの前で絶対云うなよ、殺されるぞ


Kenichi

…………。


Kenichi

何で?


その意味を問いただそうとしたところで、また第三者が入ってくる。
ただし今回はちゃんとこの学校の生徒である。


Face_mami

【ガングロ】

おーぃ井澤ぁ


Face_kenichi

【謙一】

ん? 廿栗木?


身だしなみがだらしないことになってる肌黒めの金髪女子。


見た目からして遊んでそうな女子が謙一に話しかけてきた。


Face_bias

【ビアス】

お、遊びのお誘いじゃねえか? ホラ見ろモテてんだろ!


Face_kenichi

【謙一】

遊びっつっても、俺伝言ゲームくらいしかプロってねえんだよな……悪いな廿栗木


Face_mami

【ガングロ】

何からツッコめばいいのか分かんねえってかめんどくせえから全部スルーするけど


つまり遊びの誘いではないのである。


というか遊びそうなのは見た目だけである。


だからといって勤勉でもない、廿栗木じゅうくろき磨美まみは青春を持て余す退屈系女子なのである。


Face_mami

【廿栗木】

ホラ、お前宛の手紙だ


Face_kenichi

【謙一】

手紙……?


Kenichi

あ、これ……学園長の直筆の。


Kenichi

つまり徳川の時と同じで……


Face_kenichi

【謙一】

お前も真理学園なんだな


Face_mami

【廿栗木】

あり得ねえだろお前……首席が真理学園って


Face_kenichi

【謙一】

偏差値で決めるのは良くないと思ったんだ


凄まじくテキトウなコメントである。


Face_kenichi

【謙一】

なになに……

🌟🌟謙一くんへ💕
🌠次の土曜日、教室で遠嶋とおしま沙綾さやちゃんと待ち合わせね💕
☀貶められないように気をつけてね💕💕💕

💕💕学園長より💕💕

Face_kenichi

【謙一】

絵文字覚えたてのC学生か……


Kenichi

てか直筆の絵文字て。


Face_mami

【廿栗木】

お前学園長と何やってんだよ


Face_kenichi

【謙一】

正直俺もよく分かってない


Face_bias

【ビアス】

何だそりゃ


Face_mami

【廿栗木】

ま、いーけどよ。あたしには関係ねーしー……


Face_kenichi

【謙一】

…………


Kenichi

そういや特変という制度が作られるってことだが……


Kenichi

学生生徒にとっては、どういう位置づけになるんだろうな。


Kenichi

ま、それも追々知っていけば良いことか……


timeskip


Face_kenichi

【謙一】

……さて


Kenichi

卒業式練習が思った以上に早く終わった。


Kenichi

卒業旅行とか計画してる奴は自主的に居残ったりしてるが、関係無い俺はさっさと帰宅だ!


と、意気込んでいた井澤謙一は、突然その足を止めた。


Face_kenichi

【謙一】

……………………


何かを見つけたからである。


校門に。


Face_noname

【???】

ふわぁ~あ……


小さいポニテを作った女子が、校門のサイドの石壁に寄り掛かって立っていた。


その制服を着て。


Face_kenichi

【謙一】

アレって……


Kenichi

真理学園の、制服だよな。


Kenichi

…………。


Kenichi

何か、嫌な予感してきたな。


色々悩んだ末……
謙一は判断した。


Face_kenichi

【謙一】

……ちょっといいか?


Face_saya

【ポニテの子】

んー……?


話しかけることに決めた。


Face_kenichi

【謙一】

君、真理学園の学生、だよな


Face_saya

【ポニテの子】

あら、どうして?


Face_kenichi

【謙一】

その制服を着てるからだな主に


Face_saya

【ポニテの子】

主にってことは、別に理由もあるわけ?


Face_kenichi

【謙一】

まあな。確証と呼ぶには全然薄いのは承知だが……俺の勘がえ渡った


Face_saya

【ポニテの子】

何の勘?


Face_kenichi

【謙一】

俺に用があるんじゃないかなって


Face_saya

【ポニテの子】

…………ふーん?


Kenichi

ポニテ少女は少し、深く、笑みを浮かべた。


Kenichi

朧荼雪南よりも、それは遙かに危険な表情なんじゃないとかいうぐらいに。


Face_saya

【ポニテの子】

自意識過剰とか、よく云われるんじゃない?


Face_kenichi

【謙一】

仕方ねえだろ、俺の勘って9割当たるし


Face_saya

【ポニテの子】

それはまた凄い守備率ねー


Face_kenichi

【謙一】

で、どうだった?


Face_saya

【ポニテの子】

うん、多分当たり


少女はブレザーのポケットからアルスを取り出し、上顎を立てて映像を展開した。
そして真理学園と関連するアプリを開いた。


Face_saya

【ポニテの子】

こんなメールが届いてねー


Face_kenichi

【謙一】

…………


Kenichi

その電子メールに書かれていたのは、明日土曜日の昼に指定の教室で、井澤謙一という男と会うように、という学園長からの指示だった。


Kenichi

つまり……


Face_kenichi

【謙一】

お前さんが、遠嶋沙綾……


Face_saya

【沙綾】

貴方が井澤謙一くんってことでいいのね


明日土曜日に会うはずだった二人が、その前日の金曜日に、井澤謙一の中学校にて遭遇した。


心構えとか不充分な状態で出くわしてしまったことに少なからず謙一は動揺していた。


Face_kenichi

【謙一】

いや、何で来ちゃったの


Face_saya

【沙綾】

だって暇だったし


Face_kenichi

【謙一】

えぇえええ……


Kenichi

だからって学校の把握するスケジュール変更すんなし。


Kenichi

何ていうか、コイツもフリーダムそうだな……


Face_saya

【沙綾】

逆に休日に予定作られるって何か損した気分になるじゃない?


Face_saya

【沙綾】

明日折角授業無いんだし、だったら平日に用事全部ぶち込んでダラダラしてよーってなるじゃない?


Face_kenichi

【謙一】

俺に同意を求められてもな――ん、いや待てよ俺……?


Kenichi

でも、俺もそのお陰で明日は亜弥とダラダラできるってことだよな。


Kenichi

……うわっ、それ考えたらすごくお得に見えてきた!


Face_kenichi

【謙一】

お前良い奴だな!


Face_saya

【沙綾】

貴方がそれなりにダメ人間だってことが分かってよかったわ


Kenichi

それ遠回しにお前自身もダメ人間って云ってるよな。


Face_kenichi

【謙一】

……しかし


Face_saya

【沙綾】

なに?


Face_kenichi

【謙一】

いや……普通に会話してるなって


Kenichi

先週が衒火だったから、か……


Kenichi

不思議とマシな奴だとかそんな判断しちゃってる。


Face_kenichi

【謙一】

ホントにお前、学園長に気に入られてるの?


Face_saya

【沙綾】

さあ。というかどうしてそういう判断基準になってるわけ?


Face_kenichi

【謙一】

学園長は全然教えてくれないからな。一体どういう基準で9人を選出したのか


Face_saya

【沙綾】

確かにね。まぁどういう事情があろうとも、私には関係無いけれど


Face_saya

【沙綾】

というか本来関係無かったのだから、ただただ迷惑な気まぐれ


Face_kenichi

【謙一】

……ん?


Kenichi

その云い方からして……


Face_kenichi

【謙一】

遠嶋は反対派なのか、特変に


Face_saya

【沙綾】

寧ろ他の人たちが反対してないのか、そこが気になるところね


Kenichi

……まあ、確かに嬉しい選出って感じもしないのかもな。
という枠がどういう性質を持っているのかも全然分かってないからどうとも云えないが、拒否権が無いというのは中々過激だと云わざるを得ない。


Face_kenichi

【謙一】

烏丸はもろに反対してたな。諦めてたけど


Face_saya

【沙綾】

私も諦めてるけどね。あの学園長有言実行で人の話聞かないし。衒火くんは?


Face_kenichi

【謙一】

アイツは……まぁ、反対はしてなかったかな


Kenichi

メリットがあるとか云ってたし。


Kenichi

その辺は個人情報ってことで秘密にしておく。


Face_saya

【沙綾】

へぇ意外


Face_kenichi

【謙一】

ていうか、遠嶋、他の面子のこともう知ってるのか?


Face_saya

【沙綾】

知ってるわけないわよ。まぁ、ちょっとした探りで見つけた程度。あの二人は目立つしね


Face_kenichi

【謙一】

やっぱり知らされてねえのか……ひでえな


Face_saya

【沙綾】

寧ろサプライズを仕込むのが好きねあの人は


Face_saya

【沙綾】

今回の例でいえば、クラスメイトは4月のお披露目が基本でしょってこと


Face_kenichi

【謙一】

うわっ、云いそうっ


Kenichi

詭弁きべん丸出しなところとか特に腹立ってくるな!


Face_saya

【沙綾】

……まっ、そういうことだから。私はクラスメイトが固定されちゃうことに憤ってるの。だから反対~


Face_saya

【沙綾】

一応これで私、遠嶋沙綾の立場は示したことにするわね


Face_kenichi

【謙一】

ん? あ、ああ……


Face_saya

【沙綾】

じゃ、しっかり話したと思うし、じゃーねー♪


Face_kenichi

【謙一】

…………え?


云いたいだけ云って沙綾はさっと歩いて帰っていった。


Face_kenichi

【謙一】

え? マジ? ホントに……?


Kenichi

…………。


Face_kenichi

【謙一】

……アイツも、管理しろって?


Kenichi

まるで、黒猫。
路地裏を賢く逃げる、腰のよく回る黒猫だ。


Face_kenichi

【謙一】

俺の手、すり抜けそう……


Kenichi

こうして謙一はまた一人、厄介そうな……
否、事実厄介なクラスメイトを知ったのだった。


otherside


Saya

…………。


Face_saya

【沙綾】

……ふぅん。アレが井澤謙一、くん……ねぇ


Saya

烏丸さんや衒火くんを従え、あの銘乃翠学園長の何らかの思惑を実現するよう動く人物。


Saya

素を出すかなと思って、明日休みにもできるし折角だからと奇襲しに来てみれば……


Saya

確かに、堅実といえば納得はできる人。


Saya

云われた通りのことを、しっかりこなす、この社会で最も信頼を勝ち取ることのできる人種かもね。


Saya

……けど。


Face_saya

【沙綾】

何なのかしらねー


Saya

後味が残る。


Saya

言葉にできない、舌の何処かを奔り続けるごく僅かなヒリヒリ感。


Saya

頼りなさそうな雰囲気、天然そう、とか云えば多少は納得できるだろうけど、多少でしかない。


Saya

それでも特定できない残りが、その後味なんでしょうね。



Face_saya

【沙綾】

……ま、考えても仕方ないことなのは確かねー


Saya

彼がどういう人間なのかが分からなくても……


Saya

3年間一緒に居ることは決まってしまったのだから。その中で判明すればいいし、判明しなくてもそもそも興味無いのだから問題無し。


Saya

要は、楽できればいい。


Saya

私の分まで、変化に対してせっせせっせと働いてくれればいい。


Face_saya

【沙綾】

ふふっ……もし逆に、私に苦労かけるようなら――


Saya

――どうしてくれようかしら♪


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