「特変」結成編0-5「非情」

あらすじ

「寧ろ、俺が疑問だ。テメエ、一体俺と何関わろうとしてやがる」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』その「「特変」結成編」0章5節。特変面子との事前接触期間、続いては衒火情くん。学園で最も危険視される学生の一人である情くん相手に、果たして謙一くんは家に帰ることができるのか――

↓物語開始↓

Stage: 謙一の母校


Face_kenichi

【謙一】

ってことがあったんだ


Face_bias

【中の下のモブ】

んなこと報告されてもなぁ


Kenichi

平日。


Kenichi

卒業式練習と卒業旅行の計画で忙しい最後のB等学生生活の隙間時間、珍しく俺は人と話していた。


Kenichi

といっても俺は純正なぼっちということではなく、話せる相手というのはこれまでの通り居るには居るのだ。


Kenichi

コイツはその一人……髙橋ビアス。


Kenichi

野球部という名のダンスチームの部長を務めたこともあり、中央放送のダンス甲子園にも出場した業績を持つ。野球については地区一回戦負けだったとか。


Kenichi

俺との関わりは本来無い筈だったが、1回ダンス人員補給に呼ばれてから割と話す仲になったらしい。俺は知らん。


Face_bias

【ビアス】

お前、ホントに真理学園行くことになったのかよ。俺まずそこにビックリだぞ首席


Face_kenichi

【謙一】

そういやお前どうなったの? 何か目指してたよね


Face_bias

【ビアス】

ほぼほぼ忘れられてるってのは分かった。残念ながら冨士美農林だ


Face_kenichi

【謙一】

そっか。冨士美農林が何処なのかも俺は知らないが、まぁ頑張ってくれ


Face_bias

【ビアス】

やかましいわ、ありがとう


謎の握手を交わす二人。


と、そこにもう一人、男子が加わってくる。


Face_yukina

【雪南】

何だ、ちゃんと友達居たんじゃん謙一


Face_kenichi

【謙一】

何でお前がこんな所に居るんだ不審者


Kenichi

少し警察呼んで捕まえて貰おうか悩んだ。


Face_yukina

【雪南】

何となくだけど警察呼ばれそうな気がした


Kenichi

しかし依然笑みを浮かべて困った様子は浮かべない。
ほんっとにウザったいぜ。


Face_bias

【ビアス】

ん? 誰コイツ?


Face_kenichi

【謙一】

知らん


Face_bias

【ビアス】

いやさっき知ってる素振りしてたじゃん


Face_yukina

【雪南】

朧荼雪南、真理学園からの遣いだよ


Face_bias

【ビアス】

マジか、何てナチュラルに不法侵入してんだよこの見た目イケメン


Face_kenichi

【謙一】

遣い……ってことは、手紙か


Kenichi

……でも、それなら徳川の時みたいに誰かに手紙を渡してもらえばよかったはずじゃ。


Kenichi

何で真理学園生が直々に来たんだ?


Face_yukina

【雪南】

きっと、何で俺自身が来る必要あったのかー、とかそういうのを気にしてるんだと思うけど


Face_kenichi

【謙一】

人の心勝手に読むな気持ち悪い。気持ち悪い


Face_yukina

【雪南】

繰り返して強調されると流石の俺も傷付くところあるけど、まぁソレが必要だったんだよ


Face_yukina

【雪南】

謙一、この後の用事は何も無いね?


Face_kenichi

【謙一】

……ああ。こうやっていきなりイベント持ちかけられても大丈夫なように用心してるからな


Kenichi

……でも、平日、放課後にいきなり呼ばれるとは思わなかったがな。


timeskip


Face_yukina

【雪南】

……此処だよ


Face_kenichi

【謙一】

ここは……


雪南に連れられ、謙一が辿り着いたのは。


優海駅近くの、街。


要は駅前の路地裏である。


清掃が行き届いていない、腐臭にまみれた空間。


景観の殆どは壁で、空も遮断されていた。


時刻は夕方であり、多少の赤い光が視界を助けるようだが、謙一の疑問は既に別にあった。


Face_kenichi

【謙一】

……目的の人物は何処にいるんだ?


Face_yukina

【雪南】

ん? いや、今日は居ないよ?


Face_kenichi

【謙一】

ふぁ!?


Face_yukina

【雪南】

あれ、云ってなかったっけ? 今日は場所の下見。分かりにくいでしょここ?


Face_kenichi

【謙一】

確かにその通りだなこの野郎


Kenichi

駅前にも関わらずこの秘境ぶり。勿論悪い意味で。


Face_yukina

【雪南】

明日の夜、衒火情てらひじょうくんに君は此処で会わなきゃ行けない


Face_kenichi

【謙一】

手紙とか無しの情報か。じゃあお前に提供してもらうしかないわけだが


Face_yukina

【雪南】

まぁ、謙一ならもう察してると思うけど……


Face_yukina

【雪南】

二邑牙奏ちゃんや銘乃譜已ちゃんとは、ちょっと一線を画く相手だと思った方がいいかな


Face_kenichi

【謙一】

…………


timeskip


Face_kenichi

【謙一】

んじゃ、行ってくる


Face_ami

【亜弥】

今は……夜の時刻、ですね。夜道、気をつけてくださいね


Face_kenichi

【謙一】

ああ


Kenichi

……雪南の話を思い出しながら……


Kenichi

土曜日の19時に、俺は愛する家を出る。


Kenichi

行くべきは、駅前のあの路地裏……


flashback


Face_yukina

【雪南】

衒火情は、真理学園において最も「危険」と評価される生徒の一人


Face_kenichi

【謙一】

危険……?


Face_yukina

【雪南】

彼に関われば、楽しい楽しい学生時代が終わっちゃうと云われてる。アッチの意味で


Face_kenichi

【謙一】

いや、どっちの意味なんだろうな。不思議と予想できちゃうけども


Face_kenichi

【謙一】

…………


Face_yukina

【雪南】

そして関わったかどうかを決めるのは彼自身。彼の邪魔をしたと、彼が判断した時点でその人は終わる


Face_kenichi

【謙一】

例えば?


Face_yukina

【雪南】

進行方向に立ってただけでぶっ飛ばされる


Face_kenichi

【謙一】

最低だ……


Face_yukina

【雪南】

同級生でも先輩でも、教師でも大人でも、彼の王道を止めることなんてできない。彼の王道は、事実上真っ直ぐだ。折れやしない。


Face_kenichi

【謙一】

話を聞けば聞くほど会いたいなくなってくるな……


Kenichi

会うだけならばまだしも、4月からは3年間クラスメイトだぞ……


Face_yukina

【雪南】

ふふっ……まぁ、9.9割の人間は会う前も会った後も、そう感想を漏らすよ


Face_yukina

【雪南】

真理学園トップクラスの嫌われ者……というより、危険人物と云うべきか。


Face_yukina

【雪南】

そんな彼、衒火情くん。周りからはこう呼ばれてるね――


flashback_return

joeappearance

――非情。


Face_kenichi

【謙一】

…………


Kenichi

夕方の此処も相当に暗かったが。


Kenichi

夜だともう本当に暗い。暗闇だ。真っ暗だ。


Kenichi

それでも、目が慣れてくれば見えるものは見えてくるし……


Kenichi

見えなくても、俺が意識すべきものについては問題無かった。


Kenichi

確かに、其処に……20m程先に、何者かがいる。


Kenichi

何の建物かは分からないが……外付けの階段の、剥き出しの踊り場から、地上の俺を見下す者が。


Kenichi

その視線が。


Kenichi

その威風が。


Kenichi

視覚を過剰なまでに補強する。


Face_kenichi

【謙一】

衒火情、か


Face_joe

【情】

……慣れてんな


Kenichi

男の声。学生の声なんだろう。


Kenichi

けどそのオーラは俺のイメージする学生のそれじゃない。


Kenichi

喰う者と喰われる者。


Kenichi

コイツは断然前者……そう思わせる確かな力が。


Kenichi

だが衒火は、俺を喰おうとはしていないことも、分かった。


Face_kenichi

【謙一】

品定めかよ。それはこっちの仕事の筈だったんだがな


Face_joe

【情】

口も回る。テメエ、何者だ


Face_kenichi

【謙一】

聞いてないのか? 俺は井澤謙一。学園長あたりから此処で待つよう云われたんだと思うが


Face_joe

【情】

この俺様を管理するらしい奴が謁見えっけんしに来るとか、な。


Face_joe

【情】

まぁ、俺にもメリットがないわけじゃない。だが事実として俺に利益ある時間なのか、それを見極める為に承諾してやった


Face_kenichi

【謙一】

随分と上の立場から物云うじゃねえか


Kenichi

王道、ね。


Kenichi

確かに云い得て妙。


Kenichi

コイツは一切ぶれない。


Kenichi

もし見極めるまでもないと、この時点で評価されていたら俺は亜弥のところに帰れなかったかもしれない。


Face_joe

【情】

寧ろ、俺が疑問だ。テメエ、一体俺と何関わろうとしてやがる


Face_kenichi

【謙一】

別にお前と関わりたいわけじゃねえよ


Kenichi

……釣られるように、俺も随分と低い声を出してる。


Kenichi

こんな空気を浴びるのは割と久し振りだ。


Kenichi

間違っても亜弥には、見せたくない姿。


Face_kenichi

【謙一】

察しろよ、俺もお前同様にメリットがあるんだ。だからお前には居て貰わなくちゃいけないんだ


Face_joe

【情】

俺を縛る気でいんのかよ


Face_kenichi

【謙一】

具体的な方針は今後決める。その為の情報もいまいち集まってねえし、これもその為の時間だろ


Face_joe

【情】

気に入らなきゃ潰す


Face_kenichi

【謙一】

気に入らなかろうが過ごしてもらう。俺のメリットのためにな


一切下手に回るつもりなし。


漸近ぜんきん的、衝突一歩手前の主張。


……10分もこの時間は使われなかった。


Face_joe

【情】

……ふん


衒火情は、階段を昇っていった。


完全に闇に、姿を消した。


それを確認してから……


sky3
Face_kenichi

【謙一】

……帰るか


謙一も踵を返し、明かりのある路地へと戻っていった。


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