「特変」結成編0-2「通知(1)」

あらすじ

「ということなので、謙一くん、譜已ちゃんをしっかりエスコートしてあげてね~」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」0章2節その1。疑問や悔恨は色々残る真理学園受験を終えた謙一くんに、一通の手紙が届きます。その差出人は、面接試験で彼に悲しみを背負わせた裸エプロン――銘乃翠さんでした。

↓物語開始↓

Stage: 謙一の母校


Face_kenichi

え? 真理学園から?


Kenichi

……悲しみと憐れみの受験から約1週間後。


Kenichi

まだ一ヶ月以上残っているB等生活の最中、校長室に呼び出しされる。


Kenichi

恐らくこの学校の生徒で一番ここに通ってる生徒である。


Face_hukaKocho

うむ。恐らく入試関係のことだろうが……


Kenichi

といっても説教喰らいまくってる問題児として俺は扱われてない。


Kenichi

学年ごとに掃除場所が配当されており、帰りのHR直前に俺含むグループは校長室をお掃除させてもらうことになっていた。
その時間を経て校長とは将棋を打って投げるくらいの仲になったわけだが……


Kenichi

今回はそういう私的な呼び出しではなく、困り事の相談というか、俺が困り事の中心にいるというか……


Face_hukaKocho

普通、そういうのは合格発表の日に来る筈なんだよなぁ……


Face_kenichi

同意っす……


Kenichi

要するに、手紙が学校に送られてきたのだ。
真理学園から……


Face_hukaKocho

恐らく、君の住所が分からなかったから、コッチに送ってきたんだと思う。ていうか儂らも君の住所知らないし


Face_kenichi

そこはホントにすみません。毎度云ってますけど事情が混み入って……


Face_hukaKocho

追及はしない。毎度のことながらね


Kenichi

校長から手紙を受け取る。
ここは俺的にはホームな空間なので、そのまま手紙を開封してしまう。


Kenichi

その中身は……


Face_kenichi

……ん


Kenichi

たった一枚の紙が折られて入っていた。


Kenichi

若干ピンク色の、淡い香りを漂わせる。何というか、事務性の欠けた文書である。
極めつけには、手書きである。


MidoriTegami


Face_kenichi

…………………………………………


Face_hukaKocho

…………特に入試と関係無い内容だなぁ


Kenichi

二人して字面を前にして立ち尽くすばかりである。


Kenichi

てか俺のスケジュール完全無視の強行である。


Face_kenichi

マジかよ、日曜に外出なきゃいけないのかよ……


Face_hukaKocho

まぁ、相手は君にとって大事なへりくだり先の真理学園の関係者だろうから、ガン無視はできないわな


Face_kenichi

そんなのするつもりもないですけど……


Kenichi

まぁ、もしかしたらもしかすると、何か受験とも関係してるかもしれないし、試験の延長線という可能性すら……
どうやら俺の受験はまだ終わってなかったらしい。


Face_kenichi

まっ、テキトウに気張りますわ


Face_hukaKocho

そうするといい


Kenichi

用事はこれだけだったらしいから、校長室から出ようとする。


Face_hukaKocho

……井澤くん


Kenichi

が、扉を開ける直前で呼び止められる。


Face_kenichi

はい?


Face_hukaKocho

……君は、本当に優秀な学生だよ


Face_kenichi

ん……どうも


Face_hukaKocho

何でもできる。何でもやる。基本的には、全て一人でこなす


Face_hukaKocho

そんな君がこの学校の誇りであることは云うまでもない


Face_kenichi

……


Face_hukaKocho

だが、その姿に何故か、恐ろしさすら覚えることもある


Face_hukaKocho

子どもは大人へ、教育の中で変化していく


Face_hukaKocho

色んなモノを背負うようになって、逃げて、闘って、そうしてこの社会における人間の生き方というのを学習していく


Face_hukaKocho

それが善良な大人へと育て上げる教育というプロセスであり、それを個々に適応させるよう働きかけるのが我々学校の使命だ


Kenichi

いつもは、ただただゲーム弱すぎる気さくなおっさんの顔だが……


Kenichi

この時は少しばかり、何か違う顔も見られた、気がした。


Face_hukaKocho

が……君は結局、この学校に、我々の教育に適応できなかったな


Face_kenichi

俺、それでも成績だけは完璧に獲りましたけど


Face_hukaKocho

君も理解しているだろうが、教育の成果というものは、数値だけで明確に表せるわけではない


Face_hukaKocho

この社会で叫ばれているのは、その数値の為に不明確な領域を犠牲にする若者の問題。が、君の場合はそれとも違う


Face_hukaKocho

君の学生生活は、根本的に他の生徒と異なっているように見えていた。結局それが何であるのか、我々は理解することもできなかったがね


Face_kenichi

まぁ、何ていうか……気にしないでくださいよ


Face_kenichi

俺この数年間一度も体調崩したことないですよ。毎日元気に、学業も行事も全うしましたよ


Face_kenichi

学生幹部も、ボランティアも……部活は諸事情で入りませんでしたけど、限られた時間の中でやれるだけやったつもりです


Face_hukaKocho

そして進学先も、中央大陸の大学附属高校を念頭に置くことができるほどに、道幅は豊かに広かった


Face_hukaKocho

その中で、君は通常ならば考えることもないだろう、真理学園を土壇場で選び走った


Face_kenichi

いやホント、その度はすいませんでした……


Face_hukaKocho

我々は君を理解することができなかった。君が何も語りたがらないのもあるが、それでも分析し理解を示すこととて我々の方法なんだ


Face_hukaKocho

君は……あまりに遠い


Face_kenichi

…………


Face_hukaKocho

他の学友たちにとっても、我々教師にとっても、君はあまりに遠い存在のように思われる


Face_hukaKocho

それが一体どうして恐怖に繋がるのか、どのような危険性がその先に孕まれているのか、矢張り分からない。すまないな、井澤くん


Face_kenichi

……俺だって、分からないことだらけですよ


Face_kenichi

そもそもこのご時世、何が正解なのかなんて誰にも分からないっすよ。だから……

Face_kenichi

兎に角、生きるんですよ


timeskip


Face_kenichi

……で


Kenichi

兎に角足掻くことに決めてる俺がそれなりに意気込んで来てみれば、其処には――


Face_midori

はぁーい、謙一くん~!


Face_fui

は、恥ずかしいよ~……!


Kenichi

――メチャクチャ見覚えのある二人が、ロビーではしゃぎまくっていた。


Kenichi

今からそこに合流するとなると、主に周りの視線とかなんだけど、凄く辛いものがある。


Face_kenichi

……遅くなりました


Face_midori

集合時間はまだまだ先だったわ~、謙一くんは約束を徹底的に守るタイプね~堅実だわ~、ねっ譜已ちゃん~


Face_fui

そ、そうだね……えっと、えっと……すみません~……


Face_kenichi

……………………


Kenichi

正直、何から片付ければいいのか俺は分からない。


Face_midori

それじゃ、謙一くんも来たことだし~、予定より早いけどショッピング、しちゃいましょ~♪


Face_fui

あっ、ま、待って、まだあんまり開店してないよ~……!


ということで最も身長の低い女子に引っ張られる形で、3人のショッピングホリデーが始まった。


Face_kenichi

……で、流石にそろそろ状況を呑み込みたい欲求が限界突破してきたんですけど


Kenichi

このままじゃいけないと思って、仕方なくこっちから話を切り出す。
もう順番とかどうでもいいや、一つ一つ潰していこう……!!


Face_midori

あら~? 何が分からないのかしら~?


Face_kenichi

そうですね……取りあえず、お二人のことを知っておかないとコミュニケーションしづらいですよね


Face_fui

え……お、お母さんもしかして、そのことすら手紙に書いてなかったの……!?


Face_midori

そういえば書いてなかったわ~……でも、女の子はミステリアスをまとって魅力的になるものなのよ~


Face_fui

え、えぇぇぇぇぇぇぇ……


Face_kenichi

…………………………………………


Kenichi

お母さん。


Kenichi

おかあさん。


Kenichi

お か あ さ ん 。


Kenichi

………………………………………………。
………………………………………………。
………………………………………………。


Face_kenichi

………………――はああぁああああああああああああああああああああ!?!?!?


Kenichi

お、お母さん!?


Kenichi

この裸エプロン面接官が!?


Kenichi

このどう見ても健気な可愛い後輩ちゃんの!!?


Kenichi

母親あぁああああああああ――!?!?!?


Face_kenichi

――――――――――――――


Face_midori

めっちゃ見比べてるわね~! 譜已ちゃんとお母さんの顔~、そんな見詰めないでも親子らしく似てるのに~


Face_fui

お母さん……


その後10分程度のクールダウンを経て、改めてお互いの自己紹介タイムが設けられた。


Face_midori

ごめんね~、せめて面接の時に名乗っておけば良かったかもね~


Face_fui

せめても何も、ほぼ全て常識の範囲内だよお母さん……


Face_midori

銘乃めいないみどり!!


Face_midori

この超、ちょ~~~~~う可愛いB等学生・真理学園のアイドル銘乃譜已ふいちゃんの正真正銘のお母さんで~~す!


Face_midori

何ならDNA鑑定で証明してもいいわ~


Face_fui

こ、こんなお母さんで、本当に、ごめんなさい……


Kenichi

何で娘の方が謝りしているんだろう。


Kenichi

ていうかあの時からずっとC等学生かな、とか思ってたんだけど、まさかの学生を娘に持つ母親だった


Kenichi

世の中色んな人が居るんだな、やっぱ進学すると見る世界の規模が変わるんだなぁ(白目)。


Face_kenichi

……ていうか母親がどうして娘の学校の入試の面接官なんてやってたんすか


Face_midori

え? だって普通に教師だもの~


Face_kenichi

裸エプロンで一体何を教える気なんだアンタは!!!??


Face_fui

お母さ~~~~~~ん……!!!!?


二人の若者から集中攻撃を食らう教師。


Face_midori

いや~、だって普通に会話してたらつまんないじゃない~~


Face_fui

お母さん……ちょっと、どこかで二人で話そっか……


Face_midori

ふ、譜已ちゃんが近年まれに見る規模で怖いわ~!? 助けて謙一くん~~……!!?


Face_kenichi

親子の話に水差す趣味は無いというか関わりたくないというか……


Kenichi

そりゃ自分の知らないところで母親が赤の他人にケツ振ってたら心中複雑になるだろうさ。


Kenichi

てかそう考えたら俺、この女の子とも気まずいんだけど!!!!


Face_kenichi

君の母親とは1分も会話してないから、あの時は何も無かったからそこは誤解しないでな!?


Face_fui

は、はい……分かってます……お母さんの蛮行ばんこうは、最近始まったものではないので……


Face_kenichi

蛮行て


Kenichi

この親子似てないなぁ。いや、似てほしくない。この女の子はずっと真面目でいてほしい。


Face_fui

め、銘乃譜已、です……お母さんの、子です……


Face_kenichi

そんな緊張しなくても……


Face_midori

そんな緊張抜けずの譜已ちゃんが可愛いわ~! でも家の中ではそんなことなくて――


Face_fui

お か あ さ ん ?


Face_midori

何でもないで~す……


Face_kenichi

うん、何となくよく分かった気がする


Kenichi

銘乃家の夜はさぞや賑やかなことだろう。


Face_midori

そしてしんがり務めますは、井澤謙一くんで~す♪ 真理学園にはあろうことか編入試験を受けにきてくれましたウルトラレアA等学生で~す♪


Face_kenichi

全部アンタが云っちゃってるじゃないすか……


Kenichi

てかまだ厳密にはB等ですわ。


Face_kenichi

まぁ取りあえずお互いの名前は知れたことだし、次の疑問にシフトしますか


Face_midori

何かしら~


Face_kenichi

この時間ですよ


Kenichi

勿論手紙にはこのことも書かれてなかった。


Face_kenichi

このショッピングモールで何をするつもりなのか


Face_midori

あらあら、此処に来てやることなんて一つでしょ~


Face_kenichi

つっても色々あるでしょうに


Kenichi

冨士美ふじみテラスは、最近新設されたばっかりの南湘なんしょうトップクラスの規模を誇るショッピングモールだ。


Kenichi

敷地は駅をも呑み込んでおり、冨士を美しく見られる街という第一イメージが今、変わりつつある。それだけの破壊力を持った新時代の場所。


Kenichi

ショッピングは勿論のこと、レッスン施設から保育所、ホテルに公民館的施設まで……「この街でやれないことはない」というスローガンを掲げるだけある、圧巻の多機能。


Face_kenichi

広すぎるなぁ……逆に萎縮いしゅくしちまうよ


Face_midori

あらあら~若者が怖がってちゃダメよ~


Face_midori

その猛々しい積み重ねが社会人になった時にどれだけ価値があるのか、イヤってほど思い知らされちゃうんだから~


Face_kenichi

俺にとっては悪魔の巣窟にしか思えないんすよ


Kenichi

誘惑してくる悪魔ってね。


Kenichi

それほど物欲にまみれてる自覚はないが、現代人として多彩な物に対して興味を持たないわけじゃない。


Kenichi

だけどそれを手に入れる為の対価を俺は持たない。


Face_kenichi

俺からすれば此処でやれることは、ただこうして歩くことだけですね


Face_fui

…………


Face_midori

ふふっ、大丈夫よ~、手紙に書いた通り財布の強制はしてないわ~。つまり、消費は必須でないからね~


Face_kenichi

その細かい配慮はできてるのに何故それ以前のことを書かないのか


Kenichi

にぱにぱしやがって、可愛いお母さんだ。
周りから見たら兄妹でショッピング、みたいに思われてるのかもしれない。


Face_midori

今回謙一くんを呼んだのはね、色々あるんだけど……取りあえず、手伝ってもらおうと思ったからよ~


Kenichi

お、やっと本題に入れるみたいだ。


Face_kenichi

手伝うって、何を?


Face_midori

譜已ちゃんの新学期の準備よ!!


Face_noname

【謙一&譜已】「「…………」」


Kenichi

正直斜め下にビックリだけども本人の居る手前どうリアクションしていいのか分からない結果、殆ど消化不良に終わった。
でも本人も知らなかったっぽい。


Face_fui

お、お母さん、えっと、どうして面接で初対面だった男の人に私の新学期のお手伝いをしてもらうことに……?


Face_midori

だって譜已ちゃん、男慣れした方がいいと思うから~


Face_fui

え、えぇえええ……!?


Face_kenichi

もうちょっと言葉選んでくださいよ!


Kenichi

微妙に質問に答えてねえ。


Face_midori

奏ちゃんも居ない今がチャンス! 慣れない男の人にドッキドキする譜已ちゃんを見てストレス解消大作戦!


Face_kenichi

それつまり嫌がらせじゃないすか


Kenichi

俺にとっても娘にとっても!


Face_midori

ということなので、謙一くん、譜已ちゃんをしっかりエスコートしてあげてね~


Face_kenichi

むしろエスコートしてほしいの俺の方なのに!


Kenichi

此処分かんないってば!!


Face_fui

え、えと、す、すみませんお母さんが無理矢理……!?


Face_kenichi

うわぁ確かに慣れてなさそう!


Kenichi

どうやらこのお出かけの目的の中核に居るのが自分と分かってパニックに陥ったらしい娘さん。


Kenichi

見た感じ、男の人に限らず、こんな感じなんじゃなかろうか。


Face_midori

取りあえず~……下着売り場にでもいきましょうか~!


Face_fui

!?!?!?!?!?


Face_kenichi

オイ


ということで3人、それぞれの方向に騒ぎながら冨士美の街を回るのだった。


……。


…………。


……………………。


timeskip


Face_midori

ふぅ~……買ったわ~、いっぱい買ったわ~💨


Face_noname

【謙一&譜已】「「…………」」


お昼頃になって、目に留まったカフェスペースに座り、というか倒れ込み休憩する3人。


新調したのは主に学習道具や電子辞書、鞄、ついでに食材と娘の下着だった。


Face_kenichi

何なんだこの母親は……世の母親ってまさかこんな感じなのか……?


Face_fui

違うと、思います……


Kenichi

苦労を共に重ねたからか、譜已ちゃんとは少し話せるようになった。


Kenichi

けど非意図的に、その……サイズを知ってしまったというか、まぁそんな感じで依然気まずくて仕方ない仲である。


Face_midori

謙一くん、意外だったわ~。何からナニまで詳しくて、凄く参考になったわ~


Face_fui

う、うぅぅ……


Face_kenichi

どうもと云うべきか、ごめんと云うべきか……


Face_midori

譜已ちゃんは長女だから、私も親としては初体験なことばっかりでね~。やっぱり私の眼に狂いは無かったわ~👍


Face_kenichi

貴方自体は狂ってるけどな


Kenichi

ホント、俺達周りからはどう見られてたんだろ……


Face_kenichi

てか、長女か。その云い方からすると、弟なり妹なりが居るんだな譜已ちゃん


Face_fui

は、はい、2人妹が。居るん…です……


Face_kenichi

何でブルーになってるんだろ……


Kenichi

この子もこの子で色んな表情を持ってて実際面白い。
流石、この母親と過ごしてるだけある。どんな感想だ。


Face_fui

その、2人とも、私のこと、虐めるので……


Face_kenichi


Face_midori

虐めてなんかないわよ~。2人とも譜已ちゃんを玩具としか思ってないのよ~


Face_fui

ほぼ変わりない事実だよ……


Face_kenichi


Kenichi

……………………。


Kenichi

この子、保護してあげた方がいいんじゃなかろうか。


Face_midori

謙一くんお腹空いたわ~、何か作って~


Face_kenichi

何ですか唐突に。ここ家じゃないんすけど


Kenichi

何か買えよ。


Face_midori

あら~、私に刃向かう気かしら~??


Face_kenichi

このタイミングで権力振りかざしますか!?


Face_fui

お、お母さん……


Kenichi

何て子どもなお母さんだ!


Face_kenichi

はぁ~……日曜にどうしてこんな疲れなきゃいけないんだ……


Face_fui

ごめんなさい……


Face_kenichi

何で君が謝らなきゃいけないんだ……


Face_midori

譜已ちゃんに謝らせるなんて、いい度胸してるわ謙一くん!


Face_kenichi

究極的には謝らせたのアンタだから


という疲れるだけの会話があと十数分続いた。


Face_noname

【謙一&譜已】「「…………」」


Face_midori

2人とも最早グロッキーなことになってるわ~


Kenichi

ほんと不思議、コレ休憩時間だよな?
こんな集中継続攻撃を譜已ちゃんは毎日耐えてるのか……


Face_kenichi

これならウインドウショッピングでもしてる方がマシか――


と、謙一は特に何も考えず首だけ回して周りを見た。


当然そこはカフェスペースであるため、カフェ施設の景観ばかりが視界に映る。


Face_kenichi

――ん?


が、ある一点で首が留まる。


「食べ物持ち込みOK、キッチンあります♪」


Face_kenichi

…………


Face_midori

あ、やっと気付いた~


首を元に戻したらテーブルには、食材が。


Face_kenichi

……………………


Face_fui

……え?


Face_midori

うふふ~


……。


…………。


……………………。


timeskip

Face_kenichi

フルバーストナポリタン風ベジタブルスパゲティ井澤家エディション、ボナペティート


Face_fui

えぇええッ!?


Face_midori

うわ~、野菜たっぷりなスパゲティだわ~!


約10分後、テーブルにが並んでいた。



Face_midori

井澤家エディション以前に、フルバーストナポリタンにベジタブルスパゲティという概念すら知らないのよねぇ。でも良い香りだわ~


Face_kenichi

要は美味しければいいでしょ


Face_midori

圧倒的な自信ね~。じゃ、いただきまーす――

Face_fui

お母さん!?


一口野菜とスパゲティを入れた瞬間母親が爆発したかのように譜已は錯覚した。


Face_midori

譜已ちゃんッ、コレッ、冗談抜きで美味しいわ~!


Face_fui

お母さん、髪の毛……


無傷で髪の毛がボッサボサになってる母親を心配しながら、恐る恐る譜已も一口野菜を頬張った。

Face_fui

――!? ~~~~~……!!!!!


ほぼほぼ母親と同じリアクションであった。


Face_kenichi

…………


Kenichi

取りあえず、お口には合ったみたいだ。


Kenichi

……下着店の直後に何故か八百屋寄ってたから不思議には思ってたが、その時から既に「作って」というお願いを計画していた。
アレは咄嗟の我が儘でなく、計画された要求。
下手すれば、これは……


Kenichi

“面接”が続いてるかもしれない。


Kenichi

それを考えたら、まぁやれるだけのことはやらないとな……


Face_fui

こ、これ、食べたこと、ないです……ホントに、ナポリタン――!?


Face_kenichi

本来ならスパゲティ主役のなめらかさっていうのを出さなきゃいけないんだろうけどな


Kenichi

タマネギ、ピーマンの他にも色々野菜準備されちゃってたから、コレだけあるんだったらいっそコッチ作っちゃえってな感じ。


Face_kenichi

ナポリタン風の野菜炒め、て思った方が適当かと


Face_kenichi

でも昼食時なのを考えたら、サイドメニューに仕上げるのも物足りないかと思ったので、じゃあセンターにしちまえと


Kenichi

丼と大差ない。それ一皿が主食、メニュー、サイドメニューを全て担う。
きっと女性のお昼ご飯の量はこんぐらいだろうと決めつけて、敢えて一品で留めた。だから俺には少し物足りないんだが……
それを補うに余りある要素を***(企業秘密)***で***(企業秘密)***することで***(企業秘密)***的にフルバーストさせてるわけだ。


Face_midori

コレ、凄く重いわね~……でも量としては適切で、でもでも、何か不思議だわ~


Face_midori

どうなってるのかしら、この味付け? 私料理はからっきしだから~


Face_kenichi

まぁキッチンにはフリーで調味料置いてあったんで、ソースを色々加えまして


Face_fui

味付けは濃いというより……内容が濃い……?


Face_kenichi

味付け濃くしてもよかったんだけど、2人がそれ得意かどうかが分かんなかったから


Face_kenichi

ただでさえナポリタン自体濃いんだからそれ以上求めるのもどうかなって


Kenichi

ウスターソースは元々色々詰め込まれてるわけだし、最終的な味調整はコレ一つで仕上げた。
まぁぶっちゃけて云えば、手軽さを追及した井澤家料理なわけだ。その分細かい配慮は飛ばしてるというか、雑な部分があるのは否定できない。


Face_midori

コレなら野菜嫌いな子も、いっぱい食べられるわね~


Face_kenichi

実際のところ、そこがメインコンセプトっすね。野菜の好き嫌いは割と露骨に人それぞれってのが出ますから。


Face_kenichi

2人がその辺どうなのかも分からなかったんで、じゃあスパゲティ化しちまえって


Kenichi

亜弥が好き嫌いの激しい子なのでなく、単にこの野菜惣菜主食化企画が面白いってことだからシリーズ化してる。


Kenichi

今回はスパゲティ渡されたから野菜を「スパゲティ化」しただけ。渡してきたってことはスパゲティはまず2人共大丈夫なんだろうし。


Kenichi

ともかく確実な点稼ぎ。それと……


Face_kenichi

ピーマンとタマネギとトマト買ってたんで、ナポリタンと他サラダっぽいの想定してたのかなと


Face_midori

でも一品に仕上げたのね~


Face_kenichi

だってそれでいったら何かつまんないじゃないすか


Kenichi

ちょっとした腹いせ。
終日勝手に振り回されるだけというのもしゃくだから、ちょっとはコッチのやり方に振り回されるがいいと。


Kenichi

面接で試されるのは、コレができるかどうかだ。
勿論どういう位置づけの試験かにもよるが、この人ならこれくらいが丁度良いのではないかと。
実際美味しいんだから、文句は云われんだろ。


Face_midori

ふふ……凄いわ~、これなら毎日でも家に来て作ってもらいたいぐらいよ~


Face_kenichi

それは全力で却下きゃっかしますけど


Face_midori

残念だわ~……しょんぼり


Face_fui

…………


Kenichi

譜已ちゃんまでしょんぼりしてるのが疑問だが、地味に可愛い。


Face_kenichi

取りあえずご満悦まんえつってことでいいすかね


Face_midori

文句なしの満点よ~☀


Kenichi

ふぅ……取りあえず、緊張が解けた。
本当に読みにくい相手だ……。


それから食事を済ませた3人は、特に目的を持たない会話に再びシフト。


主に2人が限界まで疲れ果てるまで、その時間は続いた。


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