「特変」結成編2-12「物の価値(5)」

あらすじ

「お前、こんなとこで何やってんだよ」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章12節その5。乃乃ちゃんに助けられた藤間妹は、会場へと急ぎます。そしてフリクションを展開する藤間兄と謙一くんの戦いは佳境に。

↓物語開始↓


Face_fui

【譜已】

……ふー……


 奏との通話を終えた譜已は、起こしていた上半身をゆっくり倒していく。
 枕には若干ダイブ気味だった。


Face_nagi

【凪】

……ほら。一応水分摂っておきなさい


Face_fui

【譜已】

うん……


 再度身体をゆっくり起こし、凪からスポーツドリンクの入ったコップを受け取り、身体の中に入れていく。


 それから今度こそ、しっかりベッドに包まれる。


Face_nagi

【凪】

……無茶をさせる


Face_fui

【譜已】

奏ちゃんを、責めないであげてください……私、嬉しいから……


Face_nagi

【凪】

……どうして、嬉しいの?


Face_fui

【譜已】

だって……えへへ……


Face_fui

【譜已】

これで、ちょっとは……皆の役に、立てたかなって……


Face_nagi

【凪】

……今年は……本当に、よく笑うわね


Face_fui

【譜已】

そう、かな……


Face_fui

【譜已】

……そうかも……


Nagi

……それは……


Nagi

 とても危険な香りを、感じさせる、笑顔だった。
 一言で云えば――「波」。


Face_nagi

【凪】

……井澤謙一


Face_fui

【譜已】

え――?


Face_nagi

【凪】

何でもないわ。頑張ったのだから、寝なさい。これは命令


Face_fui

【譜已】

……うん……その


Face_fui

【譜已】

いつも、ありがと……凪ちゃん・・・・


Face_nagi

【凪】

……私は――


Face_nagi

【凪】

常に、貴方の味方だし、貴方の近くに居るから


otherside

Stage: とある教室


Face_nono

【乃乃】

こ、これは……


Nono

 ご教授したら即意識を失ってしまった彼女らのうち誰かのアルスが、黒板前のビジュアルボードに、プロジェクターの如く映し出していた光景。
 それが中継であることはすぐに分かった。


Nono

 そしてその中でボコボコにされているのが謙一さんだというのもすぐ分かった。


Face_nono

【乃乃】

そういえば特変破りが何たらって……仮眠を取る前に皆さん話していたような……


Nono

 その辺の記憶はもう殆ど夢現で曖昧だけれど、今特変破りが起きているならこの人のいなさも納得だ。見たところ会場はGACで……恐らく皆、観客としてそちらに移動している。


Nono

 ……それにしても……謙一さん――


Face_nono

【乃乃】

もしや、本当に戦闘手段を持たないのでは……? だとしたら相当ヤバい状況では――


Face_nodoka

【温】

あ、あの……!!


 縄縛りから解放されていた温が乃乃に声を掛ける。
 可成り焦った様子である。


Face_nono

【乃乃】

……落ち着いてください。まず、現状の把握をさせてくれませんか?


Face_nono

【乃乃】

貴方は今、束縛されていた……それもこの特変破りの中継を見せられながら


Nono

 それに、叫びが聞こえた。決して穏やかじゃない、本気の叫びが。


Face_nono

【乃乃】

……貴方はこの特変破りに、どのような関与をしているんですか?


Face_nodoka

【温】

と、藤間昴は……今特変破りに挑戦している人は、私のお兄ちゃんなんです……


Face_nodoka

【温】

昴が、闘ってるんです……昴は人を傷付けること、嫌いなのに……


Face_nono

【乃乃】

……それにしては、随分と戦闘センスが養われている気がしますね


Face_nodoka

【温】

昴は、私を護る為に……二人で生きてく為に、必要に駆られて護真術を身に着けてきたんです


Face_nodoka

【温】

時には悪人と対峙したし、普通の人とも衝突して……沢山、傷付いてきて……ぶっちゃけ身体はそんなに強くないのに、妹だからって私を庇って、もっと傷付いて……けど――


Face_nodoka

【温】

優海町は、強い政権のもと平和でした……だからもう、あんな姿を見なくて良いんだって、思ってたのに……


Face_nodoka

【温】

――お願いします!!


 藤間温は、特変佐伯乃乃に頭を下げた。


Face_nono

【乃乃】

……!


Face_nodoka

【温】

昴は……私の、献上された指輪を……家族わたしたちの絆を取り戻すために、私の代わりに闘ってるんです……!


Face_nodoka

【温】

本当は、銘乃政権には感謝してる立場だし、だから特変とも闘う意思なんて微塵も持ってなかった!! なのに、こんな、こんなの……


Face_nodoka

【温】

このままだと、折角癒えてきてた昴の傷が、また、開いちゃう……もう見たくない、あんな姿――! だから!!


Face_nodoka

【温】

この特変破りを、中止させてください!! お願いします!!!


otherside

Stage: GAC 101会場


Face_shiho

【志穂】

ハゲぇえええええもっと気張れやゴラあぁああああああ!!!


Face_kenichi

【謙一】

うっせええハゲてねえぇええ!!


Face_subaru

【昴】

ッ――そこだ!


Face_kenichi

【謙一】

グハッ


Face_saya

【沙綾】

ちょっと志穂逆効果よー


Face_shiho

【志穂】

骨は拾ってやる(←無線で)


Face_kenichi

【謙一】

お前ホントこれ終わってから覚悟しろよ(←無線で)


 様々なヤジが飛ぶ中、依然井澤謙一は防戦一方。主に回避に専念していた。


 だが、それは一方的な不利とは見なせなくなっていた。何故なら――


Face_subaru

【昴】

グッ……はぁ……はぁ……!!


Face_kenichi

【謙一】

……やっと、息が切れてきてくれたか……


 元々一方的な攻撃に持ち込むのが護真術であった昴にとって避けたい事態が、この長期戦化であった。
 出し惜しみのしないラッシュを続ければ、当然普通よりも消耗が激しくなる。


 そうなれば、隙は確実に生まれる。


Face_chihae

【千栄】

……最初から、これを狙ってたのかー


Chihae

 今の藤間くんの状態なら、攻撃さえ確実に回避できていれば井澤くんにも勝機がある。


Chihae

 ……けど、全然井澤くん、動く気配がない。もしかして――


Face_chihae

【千栄】

私への嫌がらせかな……?


Chihae

 分かってるんだよ、井澤くん? だから、見せてほしいって直訴したのに……


Chihae

 こんなこと続けてないで、やっちゃいなよ――?


Face_subaru

【昴】

ッ――らぁあ!!


Face_kenichi

【謙一】

ッと!


Kenichi

 ……だいぶ、慣れてきたな。


Kenichi

 出し惜しみのしなさが奏に似ていたから、すぐ短期決戦型なのだと推測できた。となると、俺の心情的に一番好ましい対策は、長期戦に持ち込むこと。


Kenichi

 藤間の“機能”は、結局は接近戦の強化でしかない。そりゃ喰らえばヤバいし、何がヤバいってそれでリズムが崩れてラッシュを受けるのが一番ヤバい。だからB等部の時点でこの実力は、少なくとも平均以上だ。


Kenichi

 ただ、人の動きには必ず個人の癖が宿る。それがある程度各人の動きをパタン化してしまう。藤間のラッシュだって藤間の癖によってパタンが限られてくる。それを見抜いてしまえば、可成り楽に回避できるようになる。


Face_saya

【沙綾】

ねえリーダー、後輩虐めてないで早く終わらせてあげなさいよー万気相できなくても首絞めるとか色々やりようあるでしょー?


Face_kenichi

【謙一】

今そんなことしたら俺の今までの苦労水の泡じゃないすか


Face_saya

【沙綾】

ってことはやっぱり今まで同様調べ物終わらせるつもりだったってことね。もういいじゃない、情くんの働きでその子に指示する奴がクラスメイトにいたって分かったんだし


Face_kenichi

【謙一】

肝心のが分かってねえだろうが


Kenichi

 何で、ここまでして――


Kenichi

 沢山のヤジに囲まれて、身体の震えを殺して、


Face_subaru

【昴】

はぁ……はぁ……


Kenichi

 コイツは、こんな目を、してるんだ――


Face_mikan

【美甘】

――謙一!!


Face_kenichi

【謙一】

! 美甘……!


 ティーボにて美甘がクラスインした。


Face_kenichi

【謙一】

入室してきたってことは、何か分かったのか?


Face_mikan

【美甘】

うん……実は――


……………………。


Face_akitsu

【秋都】

……………………


Face_mera

【目羅】

早く決着を付けてくれないと、私たちは徳川くんのオーラに呪い殺されてしまいそうだね


Face_yuzuyu

【柚子癒】

ちょっともう誰かあの子外に連れてってよー……!!


Face_mirei

【美玲】

あははは九条さんも無理難題なことを云うネ(←泡を吹きながら)


Face_sia

【シア】

重篤……


Face_yukina

【雪南】

まずこの人を外に連れて行った方がよさそうだねー


Yukina

 ……惜しいなあ。
 今日は彼の実力を見れると思ったのに……


Yukina

 なかなか爪は、晒してくれないもんだね。


Face_kokona

【栞々菜】

……大丈夫です


Face_kokona

【栞々菜】

あの人は、逆転劇の達人です! 詐欺師ですから!!


Kokona

 何かを、仕掛けている……それは、井澤先輩が、何かを壊そうとしてるということ。
 先輩の、先輩がたの考える一番良い終わり方……それが何なのか、また私に見せてください!!


Face_gangoro

【黒田】

やべえ腹減った……


Face_mami

【廿栗木】

早弁するからだろうが豚


Face_yudai

【四谷】

にしても、もうこれ結果は見えてるよなぁ。序盤はどうなることかと思ったけどよ


Face_mami

【廿栗木】

どうだろーな……


Face_yudai

【四谷】

ん?


Mami

 アイツは……普通じゃねーからなぁ。


Mami

 どうせこのまま終わることは、許さねえんだろう。ま、別に何でもいいから早く終わらせてくれ、この隣の飢餓してる豚のために。


Face_suna

【鮭沢】

……こんなところで特変解体だなんて、絶対許さないんだからね井澤


Face_suna

【鮭沢】

私は佐伯と再戦するんだから


Face_toshihisa

【春日山】

大丈夫だよ、鮭沢さん。彼は、僕が認めた……骨の髄までクオニアンの男だ


Face_toshihisa

【春日山】

君の持つ、君ならではの優しさを……僕は信じてる


……………………。


Face_subaru

【昴】

はぁ……はぁ……


Subaru

 走れ。


Subaru

 たとえ今、肺が潰れても、それでもいい。
 後で足が砕けても、構わない。


Subaru

 震えるな。躊躇うな。俺は、家族を護るんだ。


Subaru

 指輪を――
 温の、想いを――


Face_subaru

【昴】

――取り返すんだあぁあああああああああ……!!!


Face_kenichi

【謙一】

……………………


 一撃が、繰り出される。
 これまでと同様……いや、スタミナの欠乏によって威力や速度はだいぶ落ちているが、それでも万気相すら使っていない謙一にとっては脅威の一撃だった。



 それは、避けねばならない一撃。


 だから――


Face_kenichi

【謙一】

――なあ……


Face_subaru

【昴】

――え?


 彼がソレを全く回避する素振りも見せなかった、この瞬間は、観客含めて静寂が起きた。


Face_kenichi

【謙一】

お前、こんなとこで何やってんだよ


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