「特変」結成編2-12「物の価値(4)」

あらすじ

「あんな……あんなお兄ちゃんの顔…見たくない――!」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章12節その4。一騎打ちの特変破りがGACにて白熱する一方その頃、一般棟で調べ物を探し続けていた美甘ちゃんたちは――

↓物語開始↓

otherside

Stage: 特変教室 ベランダ


Face_nono

……ん……んん――?


Nono

……えっと……
ここは――


Face_nono

……――!


 乃乃的に異様な状況に思わず勢いよく起き上がる。
 彼女ほど熟睡した場合には、ゆっくり1分くらい待ってから起き上がった方がいいのである。


Face_nono

うぅ……クラクラする……えっと、そっか……


Nono

 徹夜が響いて、それでちょっと仮眠をとろうと……


Face_nono

……今、何時だろ


Nono

 空は青い。つまりベタな起きたら夕方だった事件は無さそう。
 でも、随分と学園が静かだ。もしかしたら、もう授業が始まっているのかも――


 ベランダから教室に戻る。すると――



Face_nono

え――


Nono

 誰も……いない……?


Face_nono

……今、昼休みなんだ……結局、寝過ごしちゃってる……


Nono

 けど、どうして誰も?
 皆、昼休みも基本的にこの教室で寛いでるのに。


Face_nono

……光雨さん? 光雨さーん


Nono

 簡易ロッカーを開けてみる。結構な頻度で、ここで光雨さんが寛いでるからだ。
 けど、今は光雨さんもどっかに行ってしまっているらしい。


Nono

 つまり、今この教室は、本当に……私独りだけ、ということになる。


Face_nono

……奇妙、だなぁ……


Nono

 思わず、ちょっと笑ってしまう。だって、毎日あんなに騒がしい場所なのに……今は、こんなにも……


Face_nono

……………………


Face_nono

……静か、すぎるよ……


Nono

 笑えたのは、一瞬。
 私は、今この場所が、怖かった。だから――



Nono

 教室の外に出て……
 更に、違和感に気付く。


Face_nono

誰も……いないの……?


Nono

 私の主観でも何でもなくて……
 今、この時間。本当にこの場所は。このフロアは。
 絶対的に、静かだった。


Nono

 人の気配が、しなかった。


Face_nono

…………


Face_nono

皆……どこに、いるんだろ……


Nono

 とても、教室に戻る気にはなれなかった。
 私は、誰も居ないフロアを、足早に去る――


otherside


Face_mikan

にしても……こんな所に部屋があるだなんて……


Face_kurousu

一般棟が建てられた時から、このシステムはあったらしいな。一体何のために設計されたのやら


Mikan

 献上制度によってクラス毎に奪われた「大切な物」は、どれも「石柱」の中に集められていた。


Mikan

 真理学園の一般棟、その内部は基本的に目に優しそうな木目がよく目立つ。当然純粋な木造なわけない……ていうか圧倒的に石やらコンクリートやらで出来ている筈なんだけど、これまた単純な石造でもないみたいだ。


Mikan

 だって山田先生が手を掲げた途端にとある石柱に突然穴が開いて、そこからまるで異空間に突入したかと思えば、ちょっと広めの倉庫室が……


Mikan

 追究しすぎると神隠しに遭うとかしきりに噂になってる我が学園はやっぱり建物から次元が違うんだということでウチは諦めた。今は取りあえず、B等部の倉庫を片っ端から調べていた。


Face_so

ていうか先生、何でこんなに管理がさつなの~!?


Face_kurousu

GSは基本的に家の片付けが不器用な連中の集まりだ


Mikan

 ……そう、思った以上に苦戦している原因は、この管理状態のひどさもある。
 ホントならB等部3年専用の倉庫室を調べるだけで済んだはずなんだけど、どうやら実際は無秩序なレベルで混合しちゃってることが判明。1カ所目に藤間昴に繋がる情報は見つからなかった。


Mikan

 ということで今、2カ所目――本来なら調べる必要もないB等部2年の倉庫室を漁ってるのだった。


Face_so

あっ、何このハサミ! ちょっと高級感あるし、何か専門的な形状してる気がするー


Face_mikan

多分、髪の毛カットする時に使うやつじゃないかな。ってことは、美容師志望の学生の物だったのかも


Face_so

これ……何だろ? 何かもの凄く腐臭がするんだけど……もしかして、生もの? えーっと……


 奏はフリーザーバッグに貼られた詳細用紙を確認する。


Face_so

ネギマって書いてある……


Face_mikan

……………………


Mikan

 一応保管はしてたんだな……保存はできてなかったけど……
 ていうかA等部の献上品まで混ざってるのか……


Face_so

それからそれから……あ、これトンファじゃん!


Face_mikan

トンファ……それってもしかして、あの人のじゃ――


Face_so

え? ……あぁ、本当だ、相楽珠洲子って書いてあるもん紙に


Face_so

ドッチが最強かって元から真理学園で議論になってたけど、ジョーパイの圧勝だったねー……


Face_mikan

それでも情は怪我してたし、やっぱ相当に強い人だったのは間違いないな……


Mikan

 っていけないいけない、今は藤間昴のを――


Face_mikan

お、藤間――


 手に取ったフリーザーバッグに入った紙には「藤間温」と書かれていた。


Face_mikan

うぅ、惜しい……


Face_so

え……何それ?


 奏はその献上品に目を持ってかれた。


Face_so

指輪、だね……でも結構汚れてる


Face_mikan

光沢も殆どない……


Face_kurousu

ふむ……金にはならないだろうが、作りはその辺で売ってる雑貨とは全く異なる、本格的なものだな


Face_so

先生、分かるの?


Face_kurousu

大人をなめちゃいけない


So

 大人だったらもうちょっとしっかり片付けてよ……


Face_kurousu

これはの指輪だな。一応名前くらいは知ってるんじゃないか?


Face_mikan

あ……宝石とか売ってる?



Face_kurousu

実際、かなり価値のあったものと予測できる。あそこは高いのしか売ってないからな


Face_so

え……そ、そんなのを、どうして学生が……? しかもこんな年紀入って……ミカパイ、これ持ってたのって誰なの?


Face_mikan

えっと、それが……ちょっと惜しいんだけど……


Face_so

藤間……温……


So

 あれ……?
 こ、この名前……どこかで――


Face_so

そ、そうだ確か……


otherside

Stage: 銘乃家


Face_nagi

……調子はどう?


 凪は、ベッドの中で天井を見詰めているクラスメイトに声を掛ける。


Face_fui

……うん……ごめんね……いつも――


Face_nagi

毎年、何度も聴いてるソレは飽きてるから


Face_fui

……うん……


Face_nagi

……何か、気になってることでも?


Face_fui

え――?


Face_nagi

いつもはぼうっとしてるだけじゃない。でも、今日は……ちょっと様子が違うわ


Face_fui

……うん……ちょっと、気になって


Face_nagi

もしかして……特変破りのことが?


Face_fui

うん


 疲れ気味に、譜已は笑った。


Face_nagi

…………貴方にも私にも、関係の無いことよ。学園を休んでいるんだもの


Face_fui

そんなことは、ないよ……だって、私も、凪先輩も……特変だもの


Face_nagi

貴方に、あんな莫迦たちの心配をする余裕が今あると思って?


Face_fui

へへへ……あんまり、無いのかなぁ


Face_nagi

だったら今は忘れ――


 凪のアルスが音を鳴らした。着信である。


Face_fui

凪先輩


Face_nagi

……ちょっと失礼するわ


 譜已の隣から離れて、凪はアルスを自立させ画面を形成する。
 着信の相手は――


Face_nagi

…………


 凪は画面通話を選択した。


Face_so

えっと……もしもし、すいません、まじすいません


Face_fui

いきなり謝られちゃった……


Face_nagi

当然よ、貴方本当に何をしてるのか分かってるの?


Face_so

フッ……愚問だよ


Nagi

 そこで何故かその回答をしたこのゆでだこには次登校したら跳び蹴りかましてやろうと決めた。


Face_nagi

それで、何の用かしら


Face_so

ムリそうなら勿論答えてくれなくていいんだけど、譜已ちゃんにちょっと訊きたいことがあって……


Face_fui

私……?


Face_nagi

切るわよ


Face_so

うー分かってるんだよー! でもでも、ケンパイがちょっと、いや可成りピンチだから薔薇にも縋る思いなんだよー!


Face_mikan

藁な……


Face_fui

謙一先輩が……えっと、私にできることがあるなら……


Face_nagi

……!


Face_so

ごめんね……えっと、譜已ちゃんさ……今は生態班ってところに所属してるみたいだけど……そうじゃなくて、単なる手伝いで駆り出されてた時期ってあったよね?


Face_so

その時に、一緒に仕事したことある人の名前ってさ……藤間温ちゃん、じゃなかった?


Face_fui

え? 温、ちゃん?


Face_so

私もちょっとは手伝ってたし、ちょっとは知ってるんだけどさ……譜已ちゃんはもっと何か知ってるんじゃないかなって


Face_fui

う、うん……凄く、知ってるよ。よくお仕事手伝ったし、仲良くなってくれた


Face_fui

だから結構……深い話も、話してくれた、かな――


otherside


Face_noname

【昴】「終わりだあぁああああああ!!!」


Face_noname

【謙一】「ガ…ハッ……!!」


Face_nodoka

だめ、もう、止めて……昴、やめて――!?


Face_nodoka

ッ――ほどいて!! 私、行かないと!! 皆ぁ!!


Fui

 温ちゃんの両親は、毘華大陸で仕事をしていたけど……
 当時毘華で流行してた工業病を患って、温ちゃんとお兄さんの昴くんを残して亡くなった。


Face_joshi

なんで、そんなに邪魔したがるのさ!! 考えてみなよ温、ちゃんと冷静になって!!


Face_joshi

このまま特変破りに勝てば、損することは何もないんだよ!! 兄貴は特変解体の英雄になって、銘乃政権を崩せれば献上された物を守るものも居なくなる、還ってくる!!


Face_joshi

勿論アンタの指輪だって還ってくるんだよ!! だから……アンタの兄貴の決意の邪魔を、アンタがしてどうするんだよ!!


Fui

 その直前に、昴くんにはお父さんから、温ちゃんにはお母さんから……二人の結婚指輪を託された。
 ずっと見守ってる……それが家族の証だって。


Fui

 それからお兄さんの昴くんが、温ちゃんを連れて各地を転々として……それも、凄く辛い日々だったって。
 それでも耐えて、大輪大陸に渡ってきて、綺麗な空気の優海町に辿り着いて、真理学園に迎え入れられた。


Face_nodoka

昴の何を理解してるっていうの!? 昴が英雄になりたがってたのを一度でも、一瞬でも見たことあるの!!? 私は、一度もないよ!! 一番昴と一緒に生きてきた私が云うんだよ間違いない、昴は今、傷付いてるよ!!


Face_nodoka

苦しんでる……特変相手でも、傷付けたいなんて、思わないんだよ昴は!! もう傷付けたくないんだよ、そういう人生を送ってきたんだよ昴は!! だから……絶対に、こんなのダメ……


Face_nodoka

止めさせないと!! 昴を、助けないと!! お願いだから……ほどいてよ、私をGACに行かせて――!!


Fui

 昴くんにとっては両親と交わした、最後で、永遠の約束……。
 温ちゃんと家族の絆を、長男として護ることを、これまでに比べたらずっと平和な優海町に来た今でも変わらずに、第一に生活してるって。


Fui

 温ちゃんも、昴くんと、その指輪を大切にしてこれからも過ごしていきたいって、切に願ってるのが私にも分かったんだ。
 そして、二人の指輪は……その証拠なんだってことも。


Face_joshi

お願いだから……


Face_joshi

お願いだから、黙っててよ、温ぁ……!! 私たちだって――


Face_nodoka

あんな……あんなお兄ちゃんの顔…見たくない――!


Face_joshi

私たちだって――!!


Face_noname

【???】「……やっと、人を見つけました」


Face_joshi

「「「――!?」」」


Face_nodoka

え――?


Face_nono

ふむ……しかし、どうやら緊縛プレイの最中だったお様子。お邪魔して申し訳ありませんでした


Face_joshi

と、特変の……核弾頭――!? どうして、こんな所に!?


Face_nono

そのお詫びといってはあれですが、縄の絞め方が杜撰なようですから……


Face_nono

私が、お手本を見せてあげませう


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