「特変」結成編2-11「青春とは学業である(3)」
あらすじ
「学び、そして、進まなければならない自分の道を把握し、歩いて行く為に……俺たちは勉学するのである。」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章11節その3。採点完了で観客に見られながら結果発表! 優等生チーム相手にハンデを持ってしまった特変は3勝できるのか――!?
↓物語開始↓
Kenichi
――学生の醍醐味は学業である。
Kenichi
学び、そして、進まなければならない自分の道を把握し、歩いて行く為に……俺たちは勉学するのである。
Kenichi
步みを忘れた者、步みを覚えなかった者。
……座っていることしか教えてもらえなかった者。
俺は、彼女のその姿をよく覚えている。忘れられるわけがない。人は教育されることで、やっと人になれるのだと魂が理解した瞬間。
Kenichi
今という期間は、無駄にしてはならない。止まってはならない。座ってはならない。
――俺が勉強してきたのは、具体的には妹の為だったのだが……
Kenichi
より本質的には、恐怖だったのかも、しれない――
Stage: セントラルホール 1C

【めのは】
――さあ、お集まりの先輩がた、お昼ご飯は済ませましたかー!!

【学生】
「「「いえぇええええええええい!!!」」」

【めのは】
今回は何かいきなり呼ばれました、しがないったらありゃしない雑務委員――!

【めのは】
不肖、この後輩の進行で、特変破りをお送りしまーーす!!!☆

【学生】
「「「いえぇええええええええい!!!」」」
真理学園の中心、学園大道路に浮かぶボール――セントラルホールの最下層に設置されているホールステージにて、取りあえず集まってた者たちは盛り上がっていた。
そこには当然、当事者の集団も立っていた。

【謙一】
うわー、すっごい集まっちゃってるお客さん……
Kenichi
セントラルホールで結果発表って聞いて、美玲さんから聞いてた話もあってか何となくこうなりそうな予感はしてたけどさ……

【沙綾】
こう主役な感じで立ってみると、確かに学園にしては豪華なステージに見えてくるわねー。テンション上がっちゃう。あーかーくん発見~♪

【夏裟花】
ゲゲッ……もう見つかった、何でこの大観衆の中で瞬時に見つけてくるんだよ……

【音々】
あの面倒くさがり怠け者の沙綾が大舞台に立ってるー……何か珍しー

【謙一】
沙綾は相変わらずの平常運転だな……コッチ側は益々空気が悪くなってるっていうのに

【奏】
……ああ……始まる……公開処刑が……

【栞々菜】
頑張れー美甘せんぱーーい!!

【美甘】
もう頑張ることないんだよなー……ただ死刑宣告を待つことしか……
司会が今回のルールを何も知らない2サークル以上の観客たちへマイクで説明していく。

【めのは】
――さあ、果たして特変の未知な学力に、特Bチームは勝つことができるのかー!!

【石黒】
……だから、俺がリーダーなんだって……

【めのは】
取りあえず10人の選手は、特設ステージ裏に入ってくださーい☆

【謙一】
よく見たらあの特設ステージ、段ボールだよな……
Kenichi
まぁ昨日の今日だし、頑張った方、なのかな……。
いや、でも、ショボいなぁ……
段ボールで建てられた、3mくらいの超速席控え室に詰め込まれる10名。
途端、セントラルホールのガラス窓たちが一気に暗幕で内部と遮断される。突如暗くなったセントラルホールを照らすのは――

【めのは】
おお凄い……こういう感じで、お送りしまーす!!
最下層、1サークル。つまり特変面子や司会、選手らの立つステージ。
それそのものが液晶ディスプレイとなって、下から上へ光を送る。

【譜已】
ま、眩し……っ!

【乃乃】
私たちは庭のあたりまで退避しましょうか。どうやらこの電光掲示板みたいな床が、観客たちに結果を示す役割を持つようですから、その邪魔にならない位置に

【志穂】
こんなの準備できるなら控え室もっと頑丈なの作っとけよ。もうヨレヨレになってんじゃねーかアレ
「しばらくお待ちください」という表示がシンプルにステージ床に照らされた。
その数秒後に「待ってる間に譜已ちゃんの秘蔵写真を楽しんでね~ byスポンサー」という文字と共にまさにその通りな写真集がスライドショーされた。

【譜已】
……………………(←膝を着く)

【志穂】
何もしてねーのに罰ゲーム喰らったな、銘乃家の娘は苦労するなー

【乃乃】
今のは譜已さんのおねしょ写真ですか? うーむ1サークルに居てはあまりに分かりづらくて堪能できません……

【情】
ごがあぁあああああ(←芝生でおねんね)

【乃乃】
おや、情さんが暗い世界で食後に芝生に寝転んでしまいました

【志穂】
そんなにキーワード揃ってたら寝るしかねえじゃん。私もー

【志穂】
ごがあぁあああああ

【譜已】
…………これは、現実じゃない……きっと夢だから、私も寝ちゃおうそうしちゃおう――

【乃乃】
譜已さんまで寝転んでしまいました。というか譜已さんが支離滅裂です

【めのは】
って特変の先輩がた! 何で4人中3人、寝てるんですか! そこの人工芝ってそんなに気持ち良かったですか!?

【乃乃】
むぅ……ここはいっそ私も寝てしまいましょうか。このままではとばっちりを受ける立場になりそうですし、全滅してしまえば謙一さん達への中々絶妙な嫌がらせになる気がします……凪さんの平穏を崩すのが、ここ最近の私の目標です――!

【乃乃】
すやぁ

【めのは】
……………………

【めのは】
――何しに来たのか分からない本日も絶好調フリーダムな先輩がたのことは放っておいて、さあ、準備が整ったようですからいきましょう先鋒戦!!

【めのは】
挑戦者側――鑓多美玲!! 特変側・二邑牙奏!!
せっまい段ボールから何とか脱出してきた二人が、目が痛くなるほど光ってる光源の中央に立つ。
因みに美玲は結構呼吸が荒くなっていた。

【美玲】
すーーーーはーーーーー――

【奏】
美玲さん、大丈夫!? 心臓止まるんじゃない!?

【美玲】
だ、だいじょぶ……今日は、除細動服着込んでるから……

【奏】
じょ、え、何? よく分かんないけど、どうせ美玲さんのことだから大丈夫ではないんだろうなー……

【美玲】
変な信頼……(泣)
結果が、ディスプレイにでっかく表示される。
500vs79

【めのは】
二邑牙奏、言語35点、文学30点、数学ⅠAにて4点、社会歴史にて10点、もはや完全公開処刑の得点だッーーーー!!! コレ進級できるのか、流石に心配だーーー!!

【奏】
すーーーーはーーーーー――

【美玲】
……除細動服、要る……?

【めのは】
対して特進クラスの鑓多美玲、言語110点、文学160点、数学ⅠAにて20点、社会歴史にて35点、社会地理にて40点、社会倫理にて64点、社会政治にて46点! 1年の時点でコレは驚異!! 伊達に図書館のヌシはやってなかったーー!!

【めのは】
差は歴然! 勝者・挑戦者側ーーー!!!

【観客】
「「「うおぉおおおおおおおおおおおお!!!」」」
先鋒戦、結果は誰一人として疑いもなく予想していた通りの結果になった。
奏、超落ち込みながら仲間たちの庭へ。

【奏】
――って寝てるし!!?
怒り心頭で叩き起こしまくる奏と不機嫌起床した情がステージ真横で喧嘩勃発させているのをガン無視して、司会が次鋒戦へと移行させる

【めのは】
昼休みは残り短いから、ササッと進行しちゃうのですよー!!

【めのは】
挑戦者側――九条柚子癒!! 特変側――堀田美甘!!

【柚子癒】
……その、大丈夫? 堀田さん……

【美甘】
……最悪だ……ウチ、最近、人の目を浴びすぎてないか……

【柚子癒】
まぁ、ソレはアレよ、管理職の所為よ(←テキトウ)

【美甘】
謙一のバカーーーー……!
再び、結果がシンプルに表示される。
280vs210

【めのは】
普通の数値対決になったーー!!

【柚子癒】
フツーゆーなーー!!!

【美甘】
アレ……案外取れてた感じ……?

【めのは】
九条柚子癒は言語60点、文学65点、数学ⅠAで50点、数学ⅡBで40点、理科化学で35点、理科生物で30点でした! ガッツリ理系の偏向!!

【めのは】
対して堀田美甘は、言語45点、文学50点、数学ⅠAで10点、社会歴史で20点、そんでもって社会地理でなんと85点取ってます!! 勝負には敗れましたが、明らかにコッチの方が個性出てるーー!!

【栞々菜】
美甘せんぱーーーい!! 凄いですよーーーー!!

【奏】
何でミカパイ、私と違って褒められてるのーー!! 裏切り者ーーー!!

【美甘】
え、何か、ごめん……?

【美甘】
そういえばウチ、地理というか……地図は結構、昔から詳しいんだった……

【柚子癒】
ゥゥッ――何よそれ……! 何で、こんな、試合に勝ったけど勝負に負けた感覚――!!

【めのは】
ということで何故か膝を着いてる挑戦者側のまたまた勝利ーーーー!! 王手だーー!!!
……ここまでは、戦況を事前に分析していた者たちならば予想通りの流れ。
つまりこっからが本当の見所なのである。
中堅戦が、始まる。

【めのは】
挑戦者側――土方ゆかり!! 特変側――遠嶋沙綾!!

【夏裟花】
うっわ、マジかよ……

【音々】
どっちも凄く、頭良いよね……ドッチが勝つんだろかーくん……!! てかゆかりが勝てーー! 沙綾負けろーー!!

【夏裟花】
ちょ、音々、テンション上がってるのは分かるけどあんまり押さないで――
2サークルの観客席に立つイチャイチャ中の夏裟花、登場してきた沙綾と目が合う。

【沙綾】
(にこにこにこにこにこにこ)かーくぅん……?
Kasaka
ぎゃーーーー!!!

【沙綾】
まったく、あの雌牛……私が行動を束縛されている目の前であんなにかーくんにアピールしてくれちゃって……うふふ、良い度胸じゃない、見た目通り兇悪だわ――

【ゆかり】
はぁ……夏裟花ったら……

【めのは】
さあ、特変とか以前に寮母さんと修羅場トリオってことで有名なお二人の対決!! その結果はぁ――

【めのは】
ッ――!!?
495vs610

【めのは】
い、一気に次元が上がったァ――!? まず真理学園では見られない成績がぶつかり合ったーーー!!

【めのは】
土方ゆかり、言語105点、文学100点、数学ⅠAで70点、数学ⅡBで55点、理科化学で65点、理科生物で50点、理科地学で50点だぁあああ!! コレほんとに1年の本番レベル模試の成績なのかーーー!?

【めのは】
だがしかし、遠嶋沙綾は、言語195点、文学45点、数学ⅠAで80点、数学ⅡBで100点、理科物理で100点、社会地理で60点、社会歴史で15点、社会政治で15点……!! 何か波立った詳細ですが、総合点は土方ゆかりを圧倒しているーー!!

【めのは】
こ、コレが特変の本気……!! 特変が一勝を奪い取ったーーー!!!
悔しさよりも衝撃が場を支配し、長く響めくセントラルホール。
……数字が映し出されるステージに、未だ立つ二人は、ばつの悪い表情でその場から出る……。

【沙綾】
ホント、ゴリゴリの理系よねーゆかりは

【ゆかり】
沙綾ちゃんは、本当に興味無いものはやらないから、面白いことになってるね……文学の成績の悪さはいつも通りだし

【沙綾】
何で他人の心情なんか分析しなきゃいけないのよー金にもならないのに

【ゆかり】
……やっぱり、いつも通り。変わらない沙綾ちゃんだ

【ゆかり】
そんな強い沙綾ちゃんに、僕が勝てるわけが、ないんだよね……あはは

【沙綾】
……………………

【音々】
ゆかりーーー! お疲れーーーー!!

【夏裟花】
……お前ら、その成績少しぐらい俺に分けてくれてもいいじゃん……

【沙綾】
……勝ち負けとか、ゆかりは何にも気にしなくていいのよ

【沙綾】
私がぜーんぶ、奪っちゃえばいいだけの話だし

【ゆかり】
……沙綾ちゃん……

【めのは】
クッ――さあ、何か、こっからもっと盛り上がる予感がするんですが、いきましょう副将戦!! 対戦カードはぁ――

【めのは】
挑戦者側――石黒専助!! 対するは特変側――烏丸凪ぃいい!!!

【凪】
……上級生と当たってしまったわ

【凪】
さて、1年の私が一体どこまで食い下がれたのやら
結果発表。

【めのは】
ちょ――
300vs590

【めのは】
先輩の名折れだーーー!! 石黒専助、1年後輩にボロ負けの結果だーーーていうか微妙ぉー!!

【石黒】
コレでも表彰されるレベルなんだぞ!!? おかしいのは絶対相手だからなーー!!?

【凪】
私の所為にしないでほしいのだけど。というか、私までスベったみたいな空気になってるこの状況、どうしてくれるのかしら(怒)

【譜已】
あ、凪先輩、怒ってる……凄い不機嫌……

【奏】
そりゃそうだよ、放課後2時間半も拘束された割には本人的に全然大したことない勝負だったのが判明しちゃったんだもん……

【めのは】
名折れすぎる石黒専助、言語115点、文学100点、社会地理40点、社会歴史45点! 確かにこの学園の私立文系志向では良好な成績ですが、特変を相手取るにはあまりに微妙過ぎたーー!!

【めのは】
烏丸凪は言語190点、文学175点、数学ⅠAで80点、社会地理で70点、社会歴史で75点!! どの科目でも石黒専助を圧倒した、無難な勝利だーー!!

【めのは】
特変が2勝目をゲットして、大将戦に持ち込みだーーー!!

【石黒】
グッ――何故だ、俺はA等部に入ってから結構勉強してるんだぞ、模試で良い点を取るために……ッ! 良い成績を取るために!!

【石黒】
なのに、どうして1年の春の時点で、これだけの点数を既に――!!

【凪】
……どうでもいいのよ
膝を着く石黒専助に、彼女は一瞥もなく、仲間たちのもとへ歩いて行く。

【凪】
私には、他人から点を付けられて一喜一憂する貴方たちの心など理解できないわ。一体何の得があるというの? 模試は、大学選びの最新基準を手に入れることが目的でしょう? それか自分がどこまで得点できるか、どこが得点できていないかの再確認

【凪】
どうしてそんなモノで、勝負に持ち込んできたのかさえ意味不明だわ

【石黒】
……なら、どうして、君は高得点だったんだ――!? 勉強してなければ、8割前後なんていう得点領域には――

【凪】
何にも興味無いだけよ

【凪】
――興味無いから、やってるだけ

【石黒】
……………………

【奏】
な、ナギパーイ? 落ち着いてる? 平穏?

【凪】
あろうことか私を心配する素振りを見せる貴方を見てると多少乱れそうね

【奏】
んがーーーいつも通りだーーー!! 心配して損したしーー!!

【譜已】
うう……特変だと、やっぱりそれぐらい勉強できなきゃ、ダメなのかな……

【凪】
……そんなの無意味な基準よ。無視していなさい譜已。貴方は貴方のやりたいだけ、学べばいいだけのこと。強制されてやるようなことじゃないわ

【譜已】
成績の良い凪先輩にソレを云われても……うう……

【石黒】
……君こそ……

【石黒】
ワケが、分からないぞ……烏丸凪

【めのは】
――さあ!! あとカードは一つ!! もう皆さん、分かってるとは思いますがー!!

【めのは】
挑戦者側――小松目羅!! 特変側――井澤謙一!!

【めのは】
正真正銘最終決戦!! 大将対決だーー!!!