「特変」結成編2-10「青春とは存在確立である(1)」

あらすじ

「必ず誰かが料理をしなければ、真理学園の日常は維持されないのよ。つまり、この私の立つ場所は必ず存続する」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章10節その1。学園の食堂で嵌められた謙一くんは否応なしに特変破りを承諾。その相手は調理場のヌシ・鮭沢枢奈ちゃん!

↓物語開始↓

290617



PM0 45


Face_kenichi

【謙一】

……ほ、ホントにいいのか?


Kenichi

 ……俺の目の前には、いつもと違うランチが広がっていた。


Kenichi

 ハンバーグ定食……別に俺だって、作れないことはない。ただ昼に、というのは滅多に無い……亜弥に朝から負担をかけるのも嫌だし……というかもう一つ。
 抑もお金をかけて、ご飯を食べたいとは思ったことがないのだ。
 知っての通り、この俺井澤謙一は可成りの貧乏癖を持つ……兎に角お金を消耗することに、恐らく一般以上に敏感になっている。
 それに加えて料理スキルを持つ俺が、まさか外食するなんて――


flashback


AM10 45


Face_kenichi

【謙一】

まだ6月だってのに、暑くなってきたなぁ……


Face_ku

【光雨】

溶けるの~……(←横たわりながらゴリゴリ君ムシャムシャ)


Face_kenichi

【謙一】

アンドロイドなのに何その8月フライングした夏バテの図


Face_mikan

【美甘】

一応機械だしな……熱さには弱いってよくいうし


Face_saya

【沙綾】

何かニュース見る限り、今年も異常気象の称号が付きそうね


Face_saya

【沙綾】

思ったんだけど、観測史上最高、ていうの毎年どっかで聴いてる気がするのよね私。ソレで毎年お祭り気分で落ち込んでね皆


Face_kenichi

【謙一】

それな


Kenichi

 でもまあ、優海町は自然が多いし、その分涼しさは他よりも期待できるんじゃなかろうかね。無くても今まであのクーラーの無い我が家でずっと過ごしてきたし。
 ……亜弥、節約とか考えて扇風機すら回さなかったりしないよな……ソレについては、もうあんな事件二度と起こさないよう可成り強く云い聞かせたが……心配だ……


Face_nono

【乃乃】

……ふぅ……


Face_saya

【沙綾】

あら、何処行ってたの? 乃乃、そんな汗だくになって……まさか外行ってたの?


Face_nono

【乃乃】

ちょっと調達を


Face_so

【奏】

ち、調達……今度は私たちに一体何の苦悶を……(怯)


Face_nono

【乃乃】

別に、何かするつもりはありませんよ……今は


Face_so

【奏】

今は!? い、いつか、その明らかに怪しい袋の中身で一体何をするつもりなのかなノノパイ!!?


Kenichi

 乃乃は、サンタクロースを彷彿とさせる、白い袋を担いでいた。
 調達したものはその中に入っているのだろうと誰もが連想した。そして中に入っているのはサンタとかそんな夢も希望も無い残酷な現実なのだろうとも想像していた。


Face_nono

【乃乃】

大したものではないです。ちょっと思い至って料理をするのですが、その原材料ですかね


Face_kenichi

【謙一】

? へえ、お前料理するんだ。個人的にソレは興味あるわ、何集めたんだよ?


Kenichi

 リセットステージの短い時間内で外を歩いてたのだから、真理学園内と考えられる。
 となると……森に生えてる食草とかその類いかな――?


Face_nono

【乃乃】

見てみますか?


 乃乃は厳重に縛っていた口を開放した。


 虫の死骸がめちゃ集められていた。


Face_noname

【女性陣】

「「「ぎゃあぁああああああああああ!!」」」


Face_kenichi

【謙一】

思ってたのと違う!!


Face_nono

【乃乃】

今、どうにも優海町にはユウミヒナミツゼミが早期、しかも多量発生していると聞くではありませんか。どうしてそんな名前が付いたかはハッキリされていませんが、名前からしてきっと蜜が詰まっているんですよ……!


Face_nono

【乃乃】

ということで調べる為に、落ちてた死骸を回収してきました


Face_kenichi

【謙一】

そ、そんなに死骸をこの短時間で見つけられたのか……


Kenichi

 足下がそんなことになってると思うと、何か怖い……暑さ無しにしても外歩きたくない……。


Face_so

【奏】

嫌だ、絶対、嫌だからね……!! 私食べたくないからね、罰ゲームでも使っちゃダメだからね!!


Face_nono

【乃乃】

むむ……そこまで意地にならなくても……食わず嫌いは忌むべきですよ奏さん


Face_so

【奏】

虫は食べ物じゃないですーーー!!!


Face_toshihisa

【春日山】

……この教室は人数の割に、いっそう騒がしいね


Face_kenichi

【謙一】

あれ、春日山……どうしたよ6Fに


Face_toshihisa

【春日山】

いや、朝に奇襲されてる姿をちょっとだけ目撃してね


Kenichi

 ……登校時にいきなり奇襲に遭って、走り回って教室まで行った。その後は奏に何とかしてもらって、乃乃に敗者たちを引き渡した。
 が、俺のダメージは大きかった……逃げる途中で挟み撃ちに遭ったりして、カバンを引き裂かれて……


Face_kenichi

【謙一】

俺の、弁当が……


Kenichi

 愛妹弁当があああああ……


Face_saya

【沙綾】

あーもう折角立ち直ったと思ったのに、ダメじゃない春日山くん。何、敗者のくせにみっともなく、もっとみっともない目に遭ったリーダーを虐めに来たの? 良い趣味してるわね、見直したわ


Face_toshihisa

【春日山】

何回貴方に見直されるんでしょうね僕は……ていうか、誤解です。寧ろその、お弁当が駄目になってしまう光景を見ていたから、その代わりが見つかったかを確認しに


Face_mikan

【美甘】

つまり、新しい昼食は確保したかってこと……? わざわざ心配して見に来るとか……


Face_toshihisa

【春日山】

あはは……実はその先に、本当の目的があったりするんだけどね。井澤くん、もしまだ昼食が見つかってないなら――


flashback_return

Stage: 一般棟1F 食堂


Face_kenichi

【謙一】

……い、いいのか本当に?


Face_toshihisa

【春日山】

特変破りでは、ちょっと迷惑をかけちゃった気がしたからね。同時に感謝もしてるから、これぐらいは


Face_toshihisa

【春日山】

周りに何か云われた時は、特変破りに負けた罰ゲーム、とでも言い訳しておくよ


Kenichi

 ――そういうわけで、突如昼食を失ってしまっていた俺に春日山が手を差し伸べ、何と奢ってくれることになったのだ。


Kenichi

 無料で利用するなんてこと、まずない場所――学生に大人気なこの一般棟の食堂を利用して、だ。志穂が云っていたが、他人の金で食べるご飯は特別……ていうかここ入学して、一般生徒から飯を奢られるような経験をするだなんて……


Kenichi

 B等学校の時には味わったことのないような謎の感動に打ち震えるばかりだ。


Face_kenichi

【謙一】

グスッ……いざ、いただきます――!!


Face_toshihisa

【春日山】

そんな本気で相対しなくても……


 謙一、他人の作ったハンバーグを食す。


Face_kenichi

【謙一】

おお……何か、普段身内以外の料理なんて食べる機会無いから、新鮮だ……確かこの食堂で飯作ってるのも、調理委員なんだろ……? つまり俺と同じ学生で……やるじゃねえか


Face_toshihisa

【春日山】

井澤くんはいちいち新鮮な反応をするから、見てるコッチも何だか楽しいよ……! まぁ、僕自身もあんまりこの場所は使わないんだけどね


Face_toshihisa

【春日山】

いつ見ても、お昼時の調理委員の仕事っぷりは熾烈だ


Kenichi

 春日山や譜已ちゃんが所属している特殊委員会とは違って、一般の委員会は誰でも好きなところに所属することができる。変更も簡単だ――但し、簡単に環境を変化させるリスクが真理学園では高いことは三重の事件で触れられている。


Kenichi

 そんな一般的な委員会の中で、最も「熾烈」と呼ばれるのは調理委員だそうだ。毎度忙しいのではなく、今俺らが見ているように……お昼休み、食堂が解禁され学生が雪崩れ込んでくるのと同時に担当調理委員が調理場に入り、準備する。この食堂も結構広いけど、矢張りマンモス校のこの学園からすれば可成り狭い、と云わざるを得ない。


Kenichi

 そういうわけで食堂で買うのも食うのもモタモタするな、ていうのが利用者の暗黙の了解になっているらしい。他の学生を待たせるのも悪いし、とっとと俺も食べちまわないとな……


Face_kenichi

【謙一】

ほうほう……この味噌汁はジャガイモが張り巡らされてるのか……ご飯も大盛りだし、糖分半端ないな……だが食べ盛りの部活男子にはコレぐらいが丁度良いんだろうな、俺部活やってないけど――


Face_toshihisa

【春日山】

……ん?


 軽く研究しながらも夢中で食べ進めてる謙一を眺めていた淑久。
 その視界に、彼のハンバーグ定食の隣に置かれた物が入り、意識が引き寄せられる。


Face_toshihisa

【春日山】

井澤くん……それ


Face_kenichi

【謙一】

……ん? どうした――


Kenichi

 隣の春日山が指差したのは、俺らの丁度間に置いてた、俺の私物。


Face_kenichi

【謙一】

――ああ。コレか?


Kenichi

 俺の――宝物。


 ソレは、随分と傷と年紀が入った、ロケットペンダントと呼ばれるモノだった。
 一般的に想像されるペンダントよりも一回り以上大きい、シンプルに楕円のメタリック仕様だった。


Face_kenichi

【謙一】

……何か良いことがあった時とか、新しいモノを体験する時には、コイツがあることを意識するようにしてるんだ


Face_kenichi

【謙一】

まぁ癖みたいなもんだ。気にしないでくれ


Face_toshihisa

【春日山】

……その辺りには、触れないようにしておくよ。ただ、僕が知りたいのは寧ろその……


Face_toshihisa

【春日山】

そのサイン……


 大きめのソレの片面には確かに、黒い跡が残っていた。
 それは単なる汚れでなく、よくよく見たならば同じく年季の入った黒い文字列であることが分かる。


Face_toshihisa

【春日山】

白宮さんの、かな……?


Face_kenichi

【謙一】

――! わ、分かるのか……!?


 井澤謙一、テンション上がる。
 勢いのままに隣の男子の肩を掴むが、その春日山も同様にテンション上がっていた。


Face_toshihisa

【春日山】

そりゃそうだよ、この……何か多少拙さはあるけど、油性ペンにも関わらず素材を削り刻みつけるかのような、平均的なアイドルとは一線を画す力強い筆跡……!! こんなモノを書ける人は一人しか知らない……!!


Face_kenichi

【謙一】

鑑定士みたいに喋り出したな! さては貴様、クオニアンか――!!


Face_toshihisa

【春日山】

……その問いは、敢えてそのまま聞き返すことで答えよう


Face_kenichi

【謙一】

…………


Face_toshihisa

【春日山】

…………


 食堂で突然立ち上がった二人は熱い握手を交わした。


Face_toshihisa

【春日山】

ま、そこまで熱中できる時間は無いんだけどね……オタク度は高くない。けど……


Face_toshihisa

【春日山】

沢山、助けられたんだ。挫けそうな僕を、彼女の力強く、他人に媚びず、ただバカ正直に紡がれる歌は幾度もなく、僕に勇気を分けてくれた


Face_kenichi

【謙一】

……そっか


Kenichi

 あの人に救われた民は、俺だけじゃないんだな……
 ちょっとだけ寂しくもあり、それ以上に誇らしくもある。


Face_kenichi

【謙一】

俺も、そんなところだ。金は無いからあんまりグッズは持ってない。歌もあんまり知らない


Face_kenichi

【謙一】

こんなんでクオニアンを名乗っていいのか、分からないがね


Face_toshihisa

【春日山】

何を云うんだ井澤くん……! 僕はコレを見た瞬間、確信したんだ。君は、間違いなく<<コア>>なクオニアンだってね


Face_toshihisa

【春日山】

クオニアンたる僕が、井澤くんを認める。君はクオニアンだ――!


Face_kenichi

【謙一】

春日山……


 二人は熱い握手を交わした。


Face_suna

【クッキングジャンキー】

……………………


Face_suna

【クッキングジャンキー】

いや、いきなり立ち上がったり座ったり握手したりしてないで早く食いなさいよ、後つっかえてるのよ


Face_noname

【2人】

「「あっ、すいません……」」


 気付けば背後に立っていた女子に注意され、大人しく座ってご飯を処理しにかかる。


 が、その手を止めざるをえない事件がここで発生した。


Face_suna

【クッキングジャンキー】

ふぅ~~ん(←ペンダントを手に取る)


Face_kenichi

【謙一】

んぐ――!? ……ちょ、何して――!!


Face_suna

【クッキングジャンキー】

何かボロっちいわね。やすりとかで磨いた方がいいんじゃない?


Face_toshihisa

【春日山】

何を云っているんだ……そんなことをしたら、サインが消えてしまうじゃないか……!! ただでさえもう既に多少見えづらくなっているのに!!


Face_suna

【クッキングジャンキー】

アイドルだか何だかしらないけど、要は他人の筆跡でしょ? ソレ、そんなに重要? ただの文字じゃない


Face_kenichi

【謙一】

ええい、帰せ無信仰者め!! 名を名乗れぇ!!


 無理矢理奪い返そうとする謙一。が、躱される。
 この時点で食堂の注目を盛大に集めてるが、今の謙一はらしくもなく冷静さを失っているようだった。


Face_suna

【クッキングジャンキー】

アンタ時代とキャラがブレブレになってるわよ。確かに無信仰だけど、アンタ達はただのアイドルオタク或いはアイドルファンってだけじゃない。宗教レベルでアイドルに憧れるとか、ちょっといやだいぶキモいわよ


Face_kenichi

【謙一】

白宮さんをキモいと云ったか貴様!!!


Face_suna

【クッキングジャンキー】

ソレは云ってないわよね? アンタもうちょっと冷静なキャラしてたわよね少なくとも合唱祭では……?


Face_toshihisa

【春日山】

クオニアンは、その精神を莫迦にする者には徹底抗戦する意思がある。そして、同じクオニアンを同志と認め、互いの人生を応援する摂理がある


Face_suna

【クッキングジャンキー】

マジで何云ってるのか分からない……春日山までちょっとキャラ変わってるじゃないのよ……


Face_toshihisa

【春日山】

って、どんな無礼者かと思えば、鮭沢さんじゃないか。調理委員の仕事はどうしたの?


Face_kenichi

【謙一】

!? 知り合いなのか、この大罪人と――!


Face_toshihisa

【春日山】

鮭沢枢奈さん、僕と同じクラスの、称号「調理場のヌシ」を持つ女子だ……その日担当じゃなくても時間があれば必ず何処かの調理場に立ってるってことで、ある意味ソッチ方面でも罪だらけになってる変わり者だね


Face_kenichi

【謙一】

春日山も大変だな……こんな非合理差別主義の女子と同じクラスだなんて……


Face_kenichi

【謙一】

キモいとかウザいとか死ねとか簡単に云っちゃう奴が居るからいつまで経っても平和なんて来ないんだ!! そんな奴ら死んじまえばいいんだ……!!!


Face_suna

【鮭沢】

アンタもう発言の何もかもが支離滅裂でぶっちゃけ退いてるわよ私


Face_kenichi

【謙一】

退くのは勝手だが、そのペンダントは返せ。あと白宮さんと春日山を莫迦にしたのを撤回し謝罪してもらおうか


Face_suna

【鮭沢】

謂われの無い罪を認める莫迦ではないのよ私は。ちょっとだけ忠告しに来てあげただけなのにねー?


Face_kenichi

【謙一】

忠告……?


Face_suna

【鮭沢】

そんなに大切なモノなら、無防備にテーブルになんか置いてちゃ駄目でしょ、ソレで盗られたんじゃ、盗られる方が悪い


Face_suna

【鮭沢】

盗難率高いからね、この食堂……ていうか真理学園は。飢えてる奴も多いからかしらね(←周り見渡す)


Face_noname

【学生】

「「「~~~♪」」」


Face_toshihisa

【春日山】

……何人か心当たりがありそうだね。確かに、貴重品……特に金品として価値ありそうなものは自分の身同様に自分で守れっていうのは暗黙の了解だ


Face_toshihisa

【春日山】

白宮さんの年紀入りのサインとなると……いつのものかにもよるが、可成り値が張るかもしれない


Face_kenichi

【謙一】

グッ……そんな無法地帯なのかこの学園……でも寮制度とか考えたら、確かにイメージはできなくもない……


Face_suna

【鮭沢】

ってことでコレは預かるわ。井澤謙一


Face_kenichi

【謙一】

はあ!!?


 調理委員の枢奈はペンダントを無雑作にスカートのポケットに仕舞った。


Face_suna

【鮭沢】

ここから無理矢理にでも奪い返すっていうなら完全にセクハラで訴えてやる。コレだけの目撃者が居るんだから、学園だけじゃない、優海町全体で……優海町を越えて、そんな恥ずかしい側面が知れ渡るわよ


Face_kenichi

【謙一】

……それでも、お前を押し潰すことはできる。特変を使うまでもなく……俺一人で


Face_suna

【鮭沢】

まぁ、アンタが完全に悪者でいいって云うなら私の脅迫も無駄になるかもだけど――


Kenichi

 ……それは、できればやりたくない。悪者として君臨すると、この学園では不利なことばかりだ……銘乃学園長という絶対的有利な要素はあるけども……。
 それとは別に、俺は亜弥の兄だ。そんなみっともない汚点を、持つわけにはいかない――


Face_suna

【鮭沢】

――コレを私の方から手放す条件は、考えてるわ


Face_kenichi

【謙一】

……? 条件、だぁ――?


Face_suna

【鮭沢】

特変破り。本気でやってくれるなら、勝敗に関わらず返却するわ


Face_toshihisa

【春日山】

な――!?


Face_suna

【鮭沢】

私が勝ったって、特変を解体する意思は今のところ私は持ってない。正式試合であれば、アンタたちが勝っても、私にデメリットは無くて……つまり、ソッチにメリットは無いけれど、デメリットも無い。私に少しメリットがあるだけの、利益無き特変破り


Face_suna

【鮭沢】

ただし、やるからには本気でやってもらう。……どう? 時間を割いてでも、このペンダントを安全に取り返す良いチャンスだと思うけど


Face_kenichi

【謙一】

……………………


Face_kenichi

【謙一】

ああ、いいだろう。何で挑んで来ようとも、叩き潰してやるよ。罰ゲーム無しの正式型……ルール通り、ソッチから申請用紙を持ってこい


Face_suna

【鮭沢】

ふふん……分かったわ。6Fでしょ、アンタたちの教室。放課後にでも同意を貰いに行くわ


 鮭沢枢奈は満足げに笑みを浮かべ、食堂から去って行った……。


Face_noname

【男子】

鮭沢が、特変破りだってよ……ただいつも通り飯食いに来ただけだってのに、とんでもないもの見ちまった……! てか何で井澤謙一が普通に食堂来てんだよ! 今まで居なかったろあいつ……!!


Face_noname

【女子】

やるとしたら、種目はやっぱり……


Face_toshihisa

【春日山】

……注目を浴びるどころか、凄く面倒な事態にまで発展してしまった……また僕は迷惑を……


Face_kenichi

【謙一】

いや、気にするな春日山。俺が不用心だったのが悪い……だが――


Face_kenichi

【謙一】

どうやら今回の相手は、何も躊躇することなく、叩き潰してよさそうだ……!


……………………。
……………………。
……………………。


timeskip

Stage: 特変教室


Face_mikan

【美甘】

なーにやってんだばぁあかあぁああああああああああああ!!!!


 昼休み終わり、教室に帰って事情を説明したら取りあえず土下座させられる管理職。
 落ち度が完全に自分にあると理解してる謙一は即地面に顔をくっつけた。


Face_kenichi

【謙一】

マジすんません……とんでもないご迷惑を、マジすんません……


Face_saya

【沙綾】

こんな完全敗北の態度してるリーダーなんて滅多に見れないわよ(←写メ)


Face_fui

【譜已】

だ、ダメですよぉ沙綾先輩……


Face_joe

【情】

……ハゲの尻拭いをする趣味はねえ。自分で拭え。俺は関与するつもりはねえ


Face_kenichi

【謙一】

ハゲてないけどそれは無論そのつもりだ。今回の特変破りは相手曰くデメリットが無いってことだから


Face_so

【奏】

デメリットがない……? どーゆーこと、ケンパイ?(←地に伏す背中を踏みながら)


Kenichi

 なんという屈辱!! でも甘んじて受けねば……!!


Face_kenichi

【謙一】

よく分からないが、対戦相手――鮭沢枢奈は、勝っても特変を解体する意思を持たないと云った。そして勝敗に関わらず俺に物を返すと


Face_mikan

【美甘】

……なんか、珍しいタイプの相手だな……特変破りの、意味あるのかソレ……?


Face_saya

【沙綾】

なーんでその言葉をそのまま鵜呑みにできるのよ貴方たち。普通に考えて嘘でしょそんなの。リーダーに特変破りを頷かせる為の、絶妙なライアートーク


Face_saya

【沙綾】

合意意思を食堂で取られたとなれば、逃げ場は無いでしょーね。場を見た証人が100人以上いる。特変に対する印象を改め始めてる春日山くんも見てしまっている。今更取り消すような真似をすれば、ヘイトは一気に上昇して益々特変破りの波は荒れる


Face_saya

【沙綾】

ほんっっっと面倒臭いこと引き起こしたわねーリーダー(←背中足蹴り)


Face_kenichi

【謙一】

云い訳できませぬ


Kenichi

 つまり、結局いつも通り……負けてはいけない戦いということ。
 しかも、相手が嘘吐きであれば、ペンダントを返すってこと自体も嘘である確率が出現する。まぁ勝ってしまえば、仮に返してくれなくても一般的な倫理に従って女性教師に回収をお願いすればいい……その時まで無事でいてくれればいいんだが……


Kenichi

 俺の心は疲弊し荒れる一方である。


Face_fui

【譜已】

……謙一、先輩……(←しゃがむ)


Face_nagi

【凪】

譜已。その体勢完ぺきスカートの中見えるわ


Face_kenichi

【謙一】

俺が見上げなきゃ大丈夫。で、どうしたんだ?


Face_fui

【譜已】

え、えっと……その、盗られちゃったものって……(←正座する)


Face_fui

【譜已】

そんなに、大切な物、だったんですか……?


Face_kenichi

【謙一】

……………………


Face_kenichi

【謙一】

ああ。俺の人生の、象徴みたいなもんかな


Face_saya

【沙綾】

そこまでの物を盗まれるとか、笑えない間抜けよねー。ちょっと可哀想になったから私が笑ってあげるーwww(←人の背中に腰下ろす)


Face_kenichi

【謙一】

……有り難う、ゴザイマス……(←受け入れる)


Face_nono

【乃乃】

……それにしても、謙一さんの弱味を一瞬で見抜き衝くとは中々の手練れですね。幾ら一般学生で溢れていたとはいえ、今やすっかり恐怖対象の特変に一人で話しかけてくる度胸といい……


Face_nono

【乃乃】

今回の相手は矢張り、個人戦においては最も強敵なのかもしれません


Face_noname

【???】

個人戦じゃないわよ


Kenichi

 ……!!
 こ、この声は――!!


 一同、後方扉を向く。
 仁王立ちしてる女子のご登場である。


Face_suna

【鮭沢】

放課後って云ったけど、お互い準備に時間をかけたいでしょうから、走って今書いてきたわ。井澤謙一


Face_suna

【鮭沢】

いや……特変! 私たち調理委員と、料理勝負よ!!


 敵が9人揃っていたとしても、食堂の時と違わぬ自信の振る舞い。
 バシッと一番近くにいた美甘に申請用紙を突きつける。


Face_suna

【鮭沢】

取りあえずざっと内容を見て、サインだけ頂戴。職員室に届けるから


Face_saya

【沙綾】

あぁ……思い出した、その顔、調理場のヌシじゃない


Face_saya

【沙綾】

料理のことしか頭にない、時間外勤務違反常習犯の鮭沢枢奈……そんな貴方が、どうして私たちに牙を向けたのかしら


Face_suna

【鮭沢】

昼休み終わるから、余計な会話はしたくないんだけど。遠嶋、アンタが云ったように私は料理しか考えてない。私は今のところどんなジャンルで対戦しても無敗の特変と料理の腕を比べたいと思っただけよ


Face_suna

【鮭沢】

権力的には私たちの上に立ってる奴が、私よりも料理の腕で劣ってるのかどうか、私が真理学園で一番なのかどうかをね……!


Face_so

【奏】

えっと……それで、勝って、どうなるの?


Face_suna

【鮭沢】

どうもならないわよ、状況は特に変わらないんじゃない? 私が自慢げになるだけ


Face_mikan

【美甘】

ホント意義ねえなこの勝負……てことは、何だ、デメリットがないってのは嘘じゃないのか?


Face_suna

【鮭沢】

どんな圧政を繰り広げられようと、そこに食の文化が排除される可能性は無いわ。人は食べなきゃ生きられないんだから


Face_suna

【鮭沢】

必ず誰かが料理をしなければ、真理学園の日常は維持されないのよ。つまり、この私の立つ場所は必ず存続する。私はソレさえあれば充分なのよ


Face_suna

【鮭沢】

いずれ、世界に羽ばたくこの鮭沢の研磨の日々が奪われない限りね。これは物じゃないから、献上制度でも奪えない。私からすれば銘乃政権は特に問題は無いってことよ


Face_so

【奏】

うわあ、ホント料理のことしか考えてねえ……


Face_saya

【沙綾】

……この人が相手となると、ちょっと私の考えも変わってきそうねリーダー。絶対単純よこの人、料理しか考えてないから嘘とかつけない人種よ


Face_kenichi

【謙一】

なら安心か……ヤイ鮭沢、ホントにこの勝負終わったらアレは俺の手元に戻ってくるんだろうな


Face_suna

【鮭沢】

アンタのアクセサリーなんかに興味無いもの。持ってても邪魔になるだけだし、約束は守るわ。ただし、これも云ったけど――


Face_suna

【鮭沢】

全力でやるっていうのも約束のうちだから。お互い約束を破るような真似はしない、それがデメリットが無いまま終わる為の条件


Face_kenichi

【謙一】

…………


 這いつくばったまま、鮭沢が持ってきた申請用紙――今回の特変破りの内容を確認する。


Face_kenichi

【謙一】

料理対決、開催は明日、特別授業終了の放課後……1F食堂にて


Face_kenichi

【謙一】

対戦人数は、それぞれ――3名ずつ!


Face_nagi

【凪】

……この自業自得の管理職の他に、2人巻き添えで出なきゃいけないってこと……?


Face_suna

【鮭沢】

折角の機会に、1人だけ実力測るってのも勿体ないでしょ。いい? 本気のメンバーを出しなさい! もし自業自得ってだけの理由で、料理もできない井澤を出してくるなら、約束は破られたと見なすから


Face_kenichi

【謙一】

……一応、自炊派だ。料理はできる方と自覚してるから、俺は出てもいいと思う


Face_suna

【鮭沢】

なら、一つ安心するわ。それでサインは? 理不尽なルールにはなってない筈だけど


Kenichi

 特別授業が終わるのは12時45分頃……つまりお昼時の食堂だから、さっきみたいに学生で混雑することだろう。その中から25人を無作為に抽出して、審査員とする(この間にも普通に食べに来た学生にはいつも通りの食堂の対応をするらしい)。
 先鋒・中堅・大将で一騎打ち×3、それぞれの試合ごとにテーマを定め、調理場で好きなところを使って少なくとも5人分の料理を作る(目安として30分。しかし厳密な時間制限は無しとする)。25人はその料理を分け合って、どちらの料理が美味しかったかという基準のみで判定してもらう。
 この勝利数で、特変破りの勝敗を決する。


Kenichi

 ……特に目立つ不平さは見られない。強いて挙げるとすれば――


Face_kenichi

【謙一】

審査員が、味以外で判断するってのは充分ありそうだが……


Face_suna

【鮭沢】

コレばっかりはアンタ達の日頃の行いが悪いのが原因でしょ。まぁ、私たち調理委員の方からも開戦前に強く云い聞かせるわ。守れなきゃ一生出禁って


Face_saya

【沙綾】

ソレは良い脅迫ねー。食堂に依存してる学生が食堂使えなくなるとか入水したくなる事態だもの。加えて、今回は勝たせても全然学生側にメリット無いものね、どっちが作ったかも伏しておくと良いかも


Face_suna

【鮭沢】

フッ――


Face_saya

【沙綾】

この私を笑うとか貴方良い度胸してるじゃない……後でかーくんに泣きついてやる……動機くれてありがと鮭沢さん!


Face_joe

【情】

コイツの思考回路どうなってんだ


Face_mikan

【美甘】

知らないよ……知りたくもないよ……それで、どこがおかしかったんだ……?


Face_suna

【鮭沢】

仮にコックを伏したって、分かるわよ。料理には、その人のアイデンティティがよく映るもの


Face_saya

【沙綾】

芸術語り出したわねー。もうホントに昼休み終わるわよー


Face_kenichi

【謙一】

……断る道は俺たちには無い


Face_nagi

【凪】

無いのは貴方だけよ


Face_kenichi

【謙一】

俺には無い。受けて立とう、調理委員――!!


 井澤謙一の名をもって、この特変破りは成立した――


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