「特変」結成編2-7「青春とは放課後である(4)」

あらすじ

「こうやって食べまくったところで、私が日々消費してるエネルギー量と比べたら、まだまだ満タンは先だ」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章7節その4。矢張り特変、秋山志穂ちゃんのぶっ壊れ性能が発覚する回です。吐瀉物にアルコールはぶっかけない方が良いです。

↓物語開始↓


Face_shiho

早く次の肉、回してくんねえと――


Face_shiho

――私、負けるんだが?


Face_noname

【全員】「「「!?!?」」」


 二人の総消費量――ほぼ互角!


 秋山志穂は、ベタ過ぎる大食らい巨漢・黒田岩伍郎に全く引けを取っていない!!


Face_yudai

な、何だと……!?


Yudai

 あのほっそい身体のどこに、15人前の肉が!?


Face_kenichi

志穂――!? お、お前、まさかの大食らい系のキャラだったのか!?


Face_shiho

んな意味不明なコメントしてる暇あったら焼けよハゲ


Face_kenichi

ハゲてねえ!!


Kenichi

 だが、至極その通りだ……!
 もし、コイツの大食らいってキャラ付けの濃度が、「特変」級だったら……!!


Kenichi

 黒田岩伍郎に遅れを取らないのならば、勝負の差は完全にサポーターの手際に掛かってくる!!


Face_shiho

エキサおかわり


Face_mikan

もう何杯目だよこの炭酸!!


Face_kokona

せんぱーいお肉焼けました、お加減どうですかね!


Face_shiho

ん――まぁ及第点、個人的にはもうちょい早く上げていい


Face_kokona

了解です!


Face_kenichi

オーダー! 豚もも2人前、豚肩ロース3人前、舌串焼き1人前、カルビグラーデションセット2皿!!


Face_shiho

プラスお米大盛りとシーザーサラダー、あとチョコレートパフェ


Face_kenichi

まだサイドメニュー頼むの!? てかデザートやめてよ!!?


Face_shiho

なーに云ってんだハゲ、肉だけ食っててもつまんねーだろ、食事はバランスだバランスー


Face_kenichi

推定グラムからしてもうバランス以前の問題な気もするが……あーもう、負けんなよホントに!


Kenichi

 ……志穂の様子には、明らかに余裕がある。
 今頼んだものまで含めば――カルビグラーデションセットは1皿で2人前らしいからソレも考えて――30人前に到達しそうだ!!


Kenichi

 あーもう、正直もう勝負とかしないで皆で焼肉パーティーすればいいじゃん!! 俺ら焼いても焼いても食べれないの辛いわホント!!


Face_yudai

水お代わりしといたぜ、まだまだイケるな!


Face_gangoro

ガツガツガツガツガツ、ジュルジュルジュルジュル――


Face_yudai

……敵を見て、俄然ヤル気になったか……


Face_noname

【常連】「よっしゃ、上質に焼けたぜー! 1,000円ぐらいは価値引き上がったに違いねえ!!」


Face_yudai

岩伍郎がペース上げるつもりだから、もうちょっと早く焼いてくれてもいいんだけどな! サンキュー


Face_noname

【常連】「そういうわけにもいかねえよ! 肉は何が何でも、全力で焼き仕上げる! それが焼き手の大前提ってもんよ!」


Face_mami

まっ、そう速度にストイックにならなくたって、アッチは七輪3つで動いてるし――


Face_akitsu

豚もも2人前、豚肩ロース3人前、舌串焼き1人前、焼き完了、カルビグラーデション1皿分焼き完了、あと1皿は20秒――!


Face_yudai

な――


Face_noname

【常連】「なにいぃいいいいいいいいい!?!?


 開始から15分以上経ち、戦況は互角。
 この勝敗を分かつのは軍勢かずの差であると誰もが推測していた。


 が、ソレはこの光景で容易く砕かれた。


Face_kokona

サーロインブロック4人前、上カルビと肩サンカク1人前、豚バラと肩ロース2人前、シンシン気鋭パフェ2人前、ホルモンマンダラ1皿、焼きそば5人前、持ってきましたー!!


Face_kenichi

何で焼きそば5人前頼んでんだよ、てか普通鉄板だろ七輪で焼けねえだろ!?


Face_akitsu

ロースセット2皿、サーロイン1人前、焼きそばとお好み焼き2人前、焼き完了、井澤くん!


Face_kenichi

焼けんのかよ!!? お好み焼きとか最初液体じゃん、どうやって焼いたの徳川!?


Face_mami

アイツら……人手不足にも関わらず、分担しやがった……!?


 三重栞々菜がオーダーされた品を取りに走り、それぞれのテーブルに置いていく。


 徳川秋都が、秋山志穂の座るテーブル以外、すなわち9台の七輪を支配し、1人でやるメリットを最大限活かしデメリットを最低限に抑え、最高速度のペースを保ちながら肉を仕上げ皿に移す


 そして井澤謙一が素早く皿を回収し、志穂の机に置く。


Face_mikan

何で焼きそばとお好み焼きが……てかチョコパフェもう無くなってるし!


Face_shiho

おかわりー


Face_mikan

あーもう、チョコパフェおかわりー!! あと肩ロース・バラ・ミミガー3人前追加!!


 堀田美甘が秋山志穂のオーダーを担当し、飲み物のセルフサービスも奔走する。


 動きがシステム化された、少数軍勢。
 それは一人の働きの影響が大きい一方、それさえ注意すれば見通しが非常に立ちやすい。


Face_kenichi

志穂の様子は!


Face_mikan

美味しそう! ウチもパフェ食べたい!!


Face_kenichi

俺だって肉食いてえよ!


Face_akitsu

サーロインブロック、上カルビ肩サンカク豚バラ肩ロース、シンシン気鋭マンダラ焼きそば、焼き完了、どんどん来て! 井澤くん!


Face_kokona

はーいただいま! 井澤先輩、無駄口は足に回してくださーい!!


Face_kenichi

わーってるよ! しっかし焼きそば5人前もいらねえだろ……


Face_shiho

がつがつ、むしゃむしゃ、ばっくばく!!


Face_kenichi

その擬音で食ってる奴初めて見たわ……


Kenichi

 しかし、無駄なメニュー含めて、全部定ペースで喰らい続けているのも事実で、それが確実に黒田に小さくないダメージを与えている。


Kenichi

 奴が挑んできたのは、親友曰く唯一見せ場を作れるであろう大食いという、つまりは奴の土俵。しかも会場は自分の家だ。
黒田にとってこれ以上無い環境で――それで追い付かれているという状況は、必ず奴に精神的な負担をもたらすだろう。


Kenichi

その精神的ダメージの影響が真っ先に来るところは何処かと云えば――


Face_kenichi

食欲、だろ――?


Face_gangoro

ッ――! ガツガツガツガツ――!!


Face_yudai

……! ペースが落ちてんぞ、岩伍郎……! さては、焦ったな……!!


Yudai

 ペースを上げようとしてたのは、余裕ではなく、焦燥の表れ……!
 秋山志穂が追い付いてくるのを理解して、焦っちまったんだ……! アッチには軍勢の問題があったんだから、まず肉を確保できる量に差が生じる……だからそのまんまのペースで食っておけばよかったのに――


Yudai

 ――だが、実際、コレは焦るわな……何せ、今はもう俺たちと同じペースで、肉を焼き仕上げてきてる。あの、特変ですらない女子が焼き奉行のセンスを遺憾なく発揮しやがってる……!


Face_akitsu

……………………


Face_mami

……徳川……そういや、アイツ……


Face_yudai

ん、もしかしてガングロ、あの女の子の知り合い?


Face_mami

……ま、あんま話したことは無いけど……地味に知ってんだよ……


Mami

 “優等生”、だからな――


Face_mikan

シフォンケーキ1人前、タピオカプールパフェ1人前、流し杏仁豆腐パフェ1人前……ってこの店パフェのメニューも多くね?


Face_noname

【お袋】「最近スイーツにハマっちゃって……///」


Face_kenichi

てか肉頼めよ!!?


Face_kokona

持ってきまーす!!


Face_akitsu

井澤くん!!


Face_kenichi

サンキュー! ほら餌だ、食え食え!!


Face_shiho

誰がテメーのペットだゴラ(←蹴る)


Face_kenichi

あんだけ食ってて何でその変わらない身のこなし!?


Face_gangoro

ッ……!! ガツガツ……!


Gangoro

 な、何でアイツ、全然ペースが落ちてねえんだ……!! そりゃ、女子でも食う奴はめっちゃ食うけどよ!!
 アイツは……そういう次元じゃねえ、俺とも、次元が……違う!!
 腹が減ってねえ……? じゃあ、減ってたらどうなってたんだよ!? 俺は――全然足下に及ばねえってか!?


Face_gangoro

うぷ――


Face_yudai

はーい抑えて抑えて! 岩伍郎、一旦休憩だ


Face_gangoro

はぁ……はぁ……け、けどよ侑代!


Face_yudai

勝負も大事だが、食い物も大事にしなきゃな。それがこの家でのルールなんだろ


Face_gangoro

ぐっ……


Face_yudai

……相手に揺さぶられちゃ、負けだ。何てったって、特変はまずそっから仕掛けて、合唱祭でも勝ち上がったんだからな


Face_yudai

アドバンテージはまだコッチにある。まずは、冷静に、そして相手を無視して。あっちはどうやら胃袋の吸引力変わんないみたいだからな、吸い込まれちゃ負けだぜ――?


Face_gangoro

……へっ……やっぱりこんな時でも、侑代は侑代だぜ!


Face_yudai

だって俺が負けても特変破りやったのは岩伍郎だけだし、罰ゲームとか来ないからノビノビとできるし


Face_mami

それ、もう負けるって予想してるよなお前……?


Face_gangoro

おい親友!?


 四谷侑代の予測は的中していた。



timeskip



PM7 00


Face_midori

55対106で……


Face_midori

特変の、大勝利~♪




Face_mikan

やったあぁあああああああ……!!!


Face_kokona

やりましたね秋山先輩ー! お腹大丈夫ですかー!?


Face_shiho

流石に肉とパフェ飽きた


Face_noname

【親父】「じゃあ次はラーメンでもいくか嬢ちゃん! 具材は各自で焼くタイプだ」


Face_shiho

よっしゃソレで


Face_akitsu

わ、私もうやらないよ、特変破り終わったし……


Face_shiho

……………………


Shiho

 今回の特変破りって、コイツが居なかったら勝てなかったってことだよな普通に考えて。


Shiho

……………………。


Face_shiho

――何か腹立ってきた!!


Face_mikan

い、いきなりどうしたし!?


Face_shiho

うああぁああああこうなったらヤケ食いだあぁああああ美甘も附き合ええぇえええええ!!!


Face_mikan

まだ食べるの!?


Face_noname

【常連】「いやーすっげえ闘いだったなぁガンちゃん!!」


Face_gangoro

……………………


Face_noname

【常連】「あらら、ガンちゃん落ち込んでる?」


Face_yudai

というよりは満腹で指一つ動かせない感じだなー


Face_noname

【お袋】「しっかし、まさか岩伍郎がこの手の勝負で負けちゃうだなんて。しかも女の子に、ねえ」


Face_noname

【お袋】「特変……何だかよく分からないけど、面白いクラス作ったね学園長」


Face_midori

でしょ~☀


Face_midori

さてさて……特変破りも終わったことだし……


 銘乃翠は買い物袋から一升瓶を取り出した。


Face_midori

祝勝パーティーよ!!


Face_kenichi

俺たちまだ帰れないの!!?


 ということで学園長の懐に甘えて祝勝パーティーが始まった。


Face_kenichi

はぁ……


Face_midori

謙一くん、折角私がお金RPを払っているのだから、溜息なんて漏らさず楽しめばいいのよ~?


Face_kenichi

すいません、気が回らなくて。しかし、俺がかなり疲れてるのも事実でして……主に精神的に


Face_kenichi

今回のは幾ら何でも無茶振り過ぎたでしょう? 志穂と徳川居なかったら終わってましたよ俺ら


Face_midori

そうね~……志穂ちゃんのことは信じてたけど、正直徳川さんには助けられたわよね~。あと侑代くんが思いの外策士で、その辺私も予想外だったのよ~


Face_kenichi

特変以外のことには結構ガバガバな思慮ですよねアンタ……


Face_midori

私も一応反省はしてるから、こうやって奢ってるのよ~。食べ放題コース6人前出すのは大人の力業なんだからね~


Face_kenichi

出してもらった手前非常に云いづらいんですが、俺は夕飯は家で食べることにしてまして……


Face_noname

【お袋】「だったら、テイクアウトでもする?」


Face_kenichi

え、そんなことできるんですか?!


Face_noname

【お袋】「本当はそんなサービス無いけど、折角来てくれたんだものね。御夕飯にここのお肉なり焼きそばなりパフェなり、焼いて何でも持って行きなさいな」


Face_kenichi

なんて粋なお計らい!! ありがとうございます優海町大好き!!


Face_midori

私でも引くぐらい細やかな現金さんよね謙一くん~


Face_kokona

栞々菜も食べていいんですよね~! やったー!


Face_noname

【常連】「栞々菜ちゃん、こっちで一緒に食べないかい? 学園の話聴かせておくれよー!」


Face_noname

【お袋】「とか云いながら本音は食べ放題コースの肉を恵んでもらおうってことでしょー。大人が何やってんだか」


Face_noname

【お袋】「んじゃ、頑張った栞々菜ちゃんへのご褒美って意味で、ちょいと増量しておこうかね」


Face_noname

【常連】「「「優海町大好き!!」」」


Face_yudai

優海町大好きな俺らもひっそりと井澤くんのメニューのお零れ貰っちゃいましょうかガングロさん


Face_mami

……まぁそんぐらい貰わないとタダ働きにも程があるわな……


 経営大丈夫か、なんて他人の心配は肉と酒の前には無力な疑問と化す。
 腹も膨れれば思考も幸せ経路になる。


 誰も彼もがアホのように喜び踊り、宴を過ごすばかりである。


Face_kenichi

……そういやよ


 そんな中で、家で晩飯を過ごす為に控えめな燥ぎの謙一が、功労者に声をかける。


Face_shiho

んー?(←魚介カレーに挑戦中)


Face_kenichi

どんだけ食うんだよお前……限界はいつ来るんだ? その辺流石に分かってんだろ?


Face_shiho

さあ? 寧ろ足りないぐらいだな


Face_kenichi

は?


Kenichi

……………………。
……………………。
……………………。


Kenichi

 は????


Face_shiho

……私は、普段運動しまくってる。お前も知ってる通り、すっげー運動する


Face_kenichi

ま、まあ人間離れした流れからの跳び蹴りはよく喰らうわな、主に俺が……


Face_shiho

お前の知らないところでも私はかなり運動してるし、それに立ち方や歩き方にも拘ってる


Face_shiho

例えば静止。止まってるんだから動くよりマシって思うか? ピタッと止まってるのはすんごい疲れるんだ。存在すらも静止させて……それぐらいの質を保ったまま歩くとなれば、もっと疲れる


Face_shiho

私は、毎日疲れてる。エネルギーを消費して、それを補え切れてない毎日が続く。こうやって食べまくったところで、私が日々消費してるエネルギー量と比べたら、まだまだ満タンは先だ


Face_kenichi

いや、お前ソレ、燃費良いのは分かったけどケータイのバッテリーとは違うんだから……


Face_shiho

そんなわけで、私は毎日一生懸命活動してる。活動する為には、エネルギーが必要だ


Face_shiho

……私にとって、最大の価値があるんだよ。食事っていう時間は


Face_kenichi

……………………


Kenichi

 学園長や三重は信頼という形で志穂を応援していた。だが、実際誰も志穂があの黒田に勝てるとは思ってなかった筈だ。
 しかし唯一、志穂本人だけはその背景故に自分が勝つということを確信していたし……抑も勝負なんてどうでもよくて、ただ食事をして日頃堆積した問題の解消が目的だった。


Kenichi

 実際ソレで勝ったんだし、俺らは文句を云う必要は全く無い。
 無い、が……


Face_noname

【親父】「いいこと云うねー嬢ちゃん! そうさ、人生で一番怖いことは、お腹が空くことなんだ。だがそれは毎日やってくる脅威だ」


Face_noname

【親父】「だから、人生で一番当たり前で……大事なことは、飯を食って、満腹になることなんだ。嬢ちゃん、今日だけとは云わず、また来な! 食べ放題、サービスしてやるからよ!」


Face_shiho

まだ満腹じゃねーけど、分かった、また何度か来るわー


Kenichi

 ……たまに見せる、この秋山志穂という女子の。


Face_shiho

食わなきゃな。何事も、達成する為ならば――


Kenichi

 がさつさの裏に静止する、このストイックな態度は何だ――?



otherside



Face_mami

……暑苦し


Mami

 コイツらと一緒に居ると、いつもそうだ。


Face_gangoro

~~~~……


Face_yudai

水、飲んどく?


Face_gangoro

何も受け付けねえ……


Face_yudai

はは、頑張ったなぁ岩伍郎。でも正直、ネギマ取られたくらいで勝負を挑む相手ではないぜ? ていうか罰ゲームもあるじゃん、どうすんだよ


Face_kenichi

ああ、それは正直もう無くてもいいんじゃねえかと思うんだ、こんなに皆さん幸せムードだし、変なことしてぶち壊してもな。黒田家にはテイクアウトまで特別用意してくれたし、コレでチャラでよくね?


Face_yudai

それ、制度的にいいの?


Face_kenichi

人間らしさを介入させるぐらいが優海町には丁度良いんじゃねえか? それに、これから志穂がこの店の常連になる可能性があるから、何というかこれから迷惑かけるかもしれないわ君らに


Face_yudai

まぁ、いざという時は俺のコネ使ってこの店の財政事情をサポートする感じで。まぁ元々結構してるんだけどなー


Face_kenichi

……お前ってホント何者なの……? ただの一般学生に見えないんだけど……


Mami

 気付けば真理学園に入学してて、気付けばコイツらと連んでいて……
 それから四谷の家とも、この黒田の家とも何かお世話される感じになっていて……
 ここの常連には思いっ切り覚えられて……


Mami

 何であたしはこんなに面倒な日々を送ってるんだ……挙げ句の果てには特変破りにまで巻き込まれるし……


Face_mami

…………ん?


Mami

 賑やかな空気で、欠伸をしているあたしは実に浮いていることだろう。賑やかな奴らには気付く気も無いのだろうが。
 しかし矢張り目立つ。何故なら……


Mami

 この廿栗木磨美の他にも、あたしと似たような姿の奴が、あたしの眼に留まったからだ。




Face_mami

……徳川


Face_akitsu

……? 廿栗木、さん?


Mami

 ずっと隅っこで、水を飲んで、燥ぎ回る連中を見て――いや、見てるのは一人だけか。
 そんな感じで座っている徳川の対席に、エキサを持って座る。


Face_mami

食べ放題なんだろ? もっと食えばいーじゃん。少なくとも、一番働いてたお前は学園長の財布に甘える理由があるだろ


Face_akitsu

……あはは……


Mami

 秋山志穂がどんだけの大食らいであっても……
 今回の特変破りは、この徳川が居なかったらあたしたちには勝てなかっただろう。
 間違いなく裏の功労者。特変に協力した、一般学生……付け加えるなら、最も特変を倒しうる立場「特B」に在籍する優等生。


Mami

 ……更に私が知る限りじゃ――


Face_mami

焼き奉行は、初めてだったんだろどうせ


Face_akitsu

う、うん。普段、こんな賑やかな所、行かないからね……


Face_mami

お前、何か昔から色んなのに巻き込まれてたよな。あの頃の井澤に負けじとさ


Face_mami

高層ビルの屋上からダイブしながら窓清掃したって聴いた時には1分ぐらい止まったぜあたしの時間が。何をどうやったら普通に勤勉な学生がそんな事になるんだって


Face_mami

表情の変化が読み取りにくいから、私から見たら無表情でどんな仕事もこなす危ない系の女なんだよなぁ


Face_akitsu

私そんな印象受けてたんだ……別にそんな、凄いことをしてるわけじゃないと思うのに。誰でもできるって云われた事を、頼まれたからやっただけで……だから私は結局暇な、ただの学生……


Akitsu

 ……でも、彼は、違う。


Face_mami

絶対徳川はただの学生ではない……


Face_akitsu

……謙一くんは、ただの学生じゃないよね


Face_mami

は? 何でいきなりアイツが出てくんの


Face_akitsu

あの人は、毎日、使命があって闘ってる。他の人じゃやれない、彼だから任された先の見えないお仕事を、彼は……必死に、こなしてる


Face_akitsu

……彼はもっと、遠くに、行っちゃったね


Face_mami

まぁ……状況はあの頃とは各々変わっただろうけど……しっかし井澤も、徳川も、変わんねえな


Face_akitsu

……井澤くんは、変わってない、って思うの……? 廿栗木さんは


Face_mami

ソッチまず訊く辺り徳川らしいな……。あたしは別に井澤を見てきたわけじゃないけど、アイツここ来る前も、結構ストイックに毎日過ごしてたろ? 何というか……ボランティア系の活動だって、好きでやってるようにはどうしても見えなかった。どっちかと云えば、点数稼ぎの方向だと思ったよ


Face_mami

あんな生活、絶対あたしは真似したくないね……途中で挫折ぶっ越えて何かしら壊れて飛ぶわ


Face_akitsu

……よく見てると思うよ、廿栗木さん


Face_mami

目立つ奴だったしな。まぁ今でもそうだけど


Face_mami

……アイツは何がしたいんかねぇ。特変なんて悪者に仕立て上げられて、コレは点数稼ぎにはならない、寧ろ社会的には悪評になる。だから、アイツがやってきたことは――


Face_akitsu

――その先に無闇に踏み込んだら


Face_mami

ん……


Face_akitsu

敵に、見なされるよ。廿栗木さん……


Mami

 ――警告。
 表情を消してる最大要因のその眼鏡が、またも徳川の表情を打ち消すが――


Mami

 コレはやんわりなんて全くしてない、ガチガチの警告。
 井澤が関わると……本当に、コイツの姿は何色にも見えてくる。


Face_mami

……分かってる。徳川だって、分かってるだろ、このあたしがそんなやぶ蛇に手出す疲れた趣味なんて持ってないって


Face_akitsu

そ、それなら、安心、かなぁ……


Mami

……………………。


Face_mami

……なぁ、徳川って結局どっち側?


Face_akitsu

え……?


Face_mami

お前、特Bだろ? なのに、今回そっちの味方をした。徳川を知ってるあたしはソレが自然に見えるけどさ


Face_kokona

えー!? おじさん、昔プロのバスケプレイヤーだったの!? それ、もっと教えてー!!


Face_mami

あの、三重、って後輩よりも危険な立場に居るんじゃねえかって。その辺お前はどう考えてるわけ?


Mami

 ソレはあたしには一切関係の無い興味関心である筈だが。
 ……目立つ井澤の陰に、この女子の姿はよく見られた。何人この存在に気付いているかは知らないけど、少なくともあたしの目には同様に留まった。
 徳川は、訳が分からない奴だと。


Face_akitsu

……分からない


Face_mami

分からない、って……まぁ、その気持ちは分からないことも、ないけど……


Face_mami

四谷も黒田も、お前と三重を一般学生に告発するような真似はしない。あたしも興味無いしな。だから今回の特変破りでは特にそんな、薄暗い展開には発展しないだろうけどさ


Face_akitsu

それについては、分かってる……特変破りに限らず、特変の人たちと関わってる姿を見られるって、とても危険なんだって


Face_mami

あの、小松とか朧荼って奴? アイツらがよく目立ってたから、徳川のことはそう記憶されてないとは思うけど……


Face_akitsu

時間の問題、だね。特Bは学期を迎える度に「更新」される……今は特変への敵対意識が薄くても、更新される度にその性格は強くなっていく筈……


Face_akitsu

そんな中に、特変破りの意識の低い……私みたいな人が居たら、逃れようがないほどに浮いちゃう……だから、コレは早く解決しなきゃいけない問題


Face_akitsu

それは分かってるんだけどね……


Face_mami

ソレは……特Bならではの問題だから、クラス替えたら少しはマシに――


Mami

 しまった、と思った。
 すぐ口を止めたが、あたしの発言は手遅れだった。


Mami

 ……が、徳川は、笑った――のかどうかも分からない、表情が分からない。


Face_akitsu

何か……気を遣わせちゃった感じ、かな……ごめんね


Face_mami

…………


Face_akitsu

元々同じ学校の同級生ってだけじゃなくて色々と縁もあって……知ってるんだよね、廿栗木さんは


Face_mami

……自分のストーキング癖が多少目立つことは、自認してるんだな徳川は


Akitsu

 ――私は、今年度初めて、謙一くんと同じクラスにならなかった。
 それは、私の人生にとって、とんでもなく大きな事件で。


Akitsu

 だけどそれ以前に、もっと無ければならなかった巨大な事件が、消失した。


Face_akitsu

――謙一くんが、真理学園に来るだなんて、思わなかった


Akitsu

 私の、身を投げるほどの一大決心が、あの日無駄になったのだと分かった。



flashback



Face_kenichi

徳川って、真理学園受験したんだな


Face_akitsu

あ……う、うん……えへへ、井澤くんとは縁が無い学校だけどね……


Face_kenichi

ん、そんなことないぞ。縁無いどころか、俺の進学先ここだし



flashback_return



Face_akitsu

――どうして、来ちゃうかな……


Akitsu

 私の、眼に入る場所に、まだ彼は存在して……
 でも、決して同じ場所ではなくて。


Akitsu

 無駄になって、ただ意味も分からず壊れた私に――


Face_akitsu

もう、決められる、わけがないよ……


Face_akitsu

特Bを離れて、同じ6Fからも離れるだなんて……そんな覚悟、もう、できるわけが、ない……


Akitsu

 もはや、運命だった。
 私の日々は、地獄のように、またしても輝いた。


Face_mami

まぁ、ホント……アイツがここ来たのは頭おかしすぎるだろって思ったわ、うん


Face_akitsu

おかしいよ、やめてよ・・・・本当に……


Face_mami

……ん……――?


Face_kenichi

ちょ、美甘、何このドリンク!? 何でもいいからお代わり注いできてって確かに云ったけどクッソマズいよコレ!?


Face_mikan

3つぐらい混ぜてみた☆


Face_kenichi

ガキみたいなイタズラすんなよ!? ってワカメ入ってる! さてはワカメスープの素でも入れたなお前、うっげ近年稀に味わう不協和音半端ねえ……!


Face_shiho

ここで吐くなよハゲ、てかそのドリンク頂戴


Face_shiho

……………………


Face_shiho

えぼえぼえぼえぼえぼえぼ


Face_kenichi

お前が吐くのかよ!!?


Face_mikan

うわーーーー今まで飲み食いした分が一気に戻ってくるうぅううううう!?!?!?


Face_kenichi

ぎゃあぁあああああああああああ!?!?!?




Akitsu

 貴方に、私は見えていない。


Akitsu

 貴方は私を憶えていない。


Akitsu

 一方的な地獄から――


Face_mami

うおぉおおおおおおいくっさ! てかまだ凄い勢いで吐いてる!? ギャーコッチにも来たぁあ!?


Face_akitsu

……オブツフィナーレとハイター希釈液、確かしっかりしてる飲食店には用意されてますよね


Face_akitsu

私、多少経験がありますので、お手伝いいたします、店長さん


Akitsu

 ――壊れ立つだけの私が、逃れる術は、まだ見当たらない。


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