「特変」結成編2-7「青春とは放課後である(3)」
あらすじ
「せいぜい楽しむんだな、最後の贅沢な食事を、黒田焼肉でな!! まいどありぃ!!」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章7節その3。唐突に始まる焼肉勝負の特変破り。どう見ても大食らいの黒田岩伍郎くんに対するはマフラー担当秋山志穂ちゃん。コレを書いてたら何故か焼肉店ではなくドリンクバー豊富なファミレスに行きたくなりましたとさ。
↓物語開始↓
Stage: 黒田焼肉

【黒田】
ただいまー!!!

【常連】
おうお帰りガンちゃん! 今日も盛大に腹減ってる顔してるじゃねーか!! 見てて俺も腹減るぜ!! カルビお代わり!!

【親父】
おっせえな岩伍郎!! 早く準備しやがれ!!

【黒田】
悪いが今日は俺はオフだぜぇ! そして今から特変破りだぁ!!

【お袋】
アンタ、昨日ちゃんと確認したじゃない、岩伍郎は物資委員で遅くなるって

【親父】
あれ、そーだったか?」

【お袋】
でも特変破りっていうのは聴いてないよ岩伍郎? 学園長さんまで連れてきて、一体何を押っ始めるのかは説明してもらいましょうか

【翠】
特変破りをこのお店でやりましょうってことになったのよ~

【謙一】
いや、俺らは全く把握できてないんですけど学園長、勝手に黒田の怒りに便乗しないでください
Kenichi
しかし学園長に逆らえるわけもなく、こうして完全に店まで引っ張られてしまったのだが……
どうやらこの黒田岩伍郎という学生の実家は優海町海沿いの焼き肉屋なようだ。何か羨ましいわそういうの。
……で、実家のお店で一体何をやるつもりだ? 既に常連さんが結構入ってきてる時間帯なんだが。

【四谷】
は? 特変破り? 何云ってんだ岩伍ろ――って特変居るぞガングロ!!

【廿栗木】
うっせーガンゴロ云うなチャラ男。んなワケねーだろこんな素朴な焼き肉店に権力者が――って本当に来てるし!!

【謙一】
廿栗木……? 何でお前がこんなとこに

【廿栗木】
ソレはコッチの台詞だわ井澤……何で豚とお前らが一緒に、しかも学園長居るし……嫌な予感がする、私ぁここで退散しとこうか……

【黒田】
何云ってんだ、歴史の転換点だぜ? しっかり目撃しとけってガングロ! 俺がお前らの無念を晴らす!!
Mami
別に無念も何も、今のところ特変に直接被害は喰らってねえんだけど……
Yudai
しかし岩伍郎が闘う、この場所で……となれば、やることは――

【黒田】
大食い対決!! 毎日肉に囲まれた俺に、そう易々と勝てると思うなよぉおおおお!!

【四谷】
やっぱりかー。でもコレ案外勝算あるぞガングロー

【廿栗木】
知らねーよどっちでもいいよあたしは、てかガングロゆーなそんな黒くない

【翠】
実はこーゆーことがあってねー。あと特変破りっていうのはー(←事情説明)

【親父】
なーるほどー! いいじゃねーか、漢見せてやれ岩伍郎!! 食べ放題コースお二人様ご案内!!

【翠】
書類は通してないから、奇襲型ってことになるわねー。負けたら罰ゲーム、ってことで内容考えておいてね謙一くん~

【謙一】
それ以前に勝ち目薄いですって! どう見てもあの巨漢大食らいですよ俺が一人前食べ終わる頃には3人前終わってますよ!!

【四谷】
因みに俺が食べ終わる頃には5人前終わってるぜ岩伍郎は

【謙一】
誰だか知らないけど情報提供ありがとう、そういうわけで勝ち目薄いどころか無いですって!! 三重の時には云いそびれましたけど、何でこう勝手に承諾しちゃうんですか俺らの代わりに!!

【翠】
だって私最高権力者だもん~☀
Kenichi
勝てない……!

【美甘】
でも本当にどうするんだ……? あと、一応もう少し詳細にルール説明してもらわないと

【黒田】
肉だ! 肉を食いまくれ!!

【四谷】
詳細な説明が苦手な岩伍郎に代わって、コイツの親友を一応やってる四谷侑代が提案といこうか

【四谷】
食べ放題コースは、お一人様3,900円。当店で取り扱う全ての肉は勿論のこと、サラダやライスといったサイドメニューやパフェ・メロンなどの手抜きなしなデザートメニューも全部食べ放題。但し、当店全てのメニューが<<!ボリューム命!>>で仁王立ちしてますんで、そう簡単に完食もとい元を取れるとは思いなさんな

【四谷】
そして今回特別にご用意する特変破り用のメニュー及びルールですが、このコースをお互い1名ずつオーダーしていただきます! そしてメニューは全て当店の定める一人前のグラムで一品分とし、対戦者は1時間以内で肉メニューにおいて何人前分を平らげることができたかで競います。サイドメニュー等勝負に関係無い皿のオーダーは自由とします

【四谷】
……どうよこんな感じで? 因みにそれ以外の面子は闘いに使われるメニューを食べることは禁止、だけど肉を焼く、オーダーを代行する、などのサポートは人数に関わらずOKとします

【翠】
おっけ~♪ お金は二人分、私が出してあげるわ~店長さん

【親父】
まいどありぃ!! よかったなぁ岩伍郎、タダ飯だぜ!! その分しっかりやれよ、勝負は全力でなぁああ!!

【黒田】
親父の教えは、ここで120%活かし尽くしてやるぜえぇえええええ!!!

【謙一】
やべぇ、もう退路がねえ……
Kenichi
この四谷とかいうチャラ男ビジュアルの男子、いきなり登場しといて(登場したのは寧ろ俺らだけど)、こっちの首を絞める策を叩き出しやがった……!
どうやら一品一品ボリュームが半端ないらしいこのお店の一人前をこの場で定義し、この一人前を最低単位とした……コレでめっちゃ食べたにも関わらずカウントがなかなか増えない、精神的な負担が俺たちにプラスされる。
黒田岩伍郎にとってもソレは同じだが……コイツはこのお店の息子、此処を決闘場所としたことからも、矢張りホームフィールドであるのだろう。俺たち同様の精神的負担には、なり得ない……!

【廿栗木】
何でこんな、暑苦しいことになってんだよ……
Mami
……しかし、黒田が1年で随一の大食いなのはあたしも知ってるし、コイツがこの分野でそう簡単に負けるってことはないだろう。
もしかしたら……ホントに、コイツ何の前触れも無しに奇跡起こしちまうかもしれないな……
Mami
興味はねえけど、暇だしまぁ、見てるぐらいなら――

【黒田】
頼むぜぇ侑代! ガングロ! 俺の肉を焼いてくれーー!!
Mami
仕事回ってきたあぁああああ!!?

【廿栗木】
……恨めしや……特変……

【謙一】
廿栗木まで敵かよ……! クッソ、どうする誰がいく!? 云っておくけど俺そんな腹減ってないからな! 晩飯は必ず家で食べるんだからな! 日課だし!

【美甘】
そんなの殆どの人が日課だよ! ウチも、お腹は空いてきてるけど食べ放題を選ぶほどじゃないぞ! そもそもそんな食えないし、女子だし!

【志穂】
んじゃー私が行くか。腹は減ってねーけど

【栞々菜】
こ、こーなったら、栞々菜が行くしか……! 食べ盛りだし、ここで先輩たちに恩を返すつもりで……!

【秋都】
いや、三重さんは抑も特変じゃないから……って――

【謙一&美甘】
「「あれ?」」

【栞々菜】
ふぇ?
……………………。
一同、志穂をガン見する。

【志穂】
私が行くって云ってんだー。何か文句あっかゴラ

【謙一】
いや、文句っていうか、不安しかないなって……
Kenichi
何でお腹空いてないお前に行かせなきゃいけないんですかって感じで……

【志穂】
私ぁこう見えても金欠だからな。人の金でタダ飯食えるってなれば、テンションも上がるだろ

【志穂】
しかも食べ放題で肉だ。美甘に附いてきてやっと良いことあったって感じだ

【美甘】
どんだけ嫌だったんだ優海町ガイド……まぁ、志穂からすれば放課後を縛られたみたいなもんだからか……

【志穂】
そうだ。それに加えて――(←ガン飛ばす)

【秋都】
???

【志穂】
――私は頗る機嫌が悪い。危機的なほどに腹が減って無くても、何か自棄食いしたいぐらいの気持ちだったんだ

【志穂】
……その、ついでだ。お前もぶっ壊してやるよ、豚野郎

【黒田】
……云うじゃねえか、気持ち分かるぜ、タダ食いってのは気持ちの良いもんだ

【黒田】
せいぜい楽しむんだな、最後の贅沢な食事を、黒田焼肉でな!! まいどありぃ!!

【四谷】
ここで全然カッコつかないのが岩伍郎だな、流石

【謙一】
何で腹も減ってないのにそんな自信満々になれるんだよあのマフラー……(←泣きそう)

【秋都】
…………(泣きそうになってる謙一くんも何か可愛い……💕)
ということで銘乃翠がRPで約8000円支払って、何の対策も準備できずに特変破り開催である。
半分以上状況を飲み込めてない、でもお酒はしっかり飲んでいる明るい常連たちは岩伍郎を、素面でもう俺らも自棄になってやろうかって気分の謙一らは志穂をサポートすることに
取りあえず始まりだけは合わせるかってことになり、お互いに肩ロース一人前とライス(中)とドリンクバーが自動オーダーされる。因みにドリンクバーはお馴染みのセルフサービスなので、これもサポート者が気を利かせて注ぎにいく必要がある。

【お袋】
こっちは戦闘準備完了! いつでもどんだけでもオーダーしてきて!

【四谷】
氷は要らねえんだよな、ただの常温水で

【黒田】
余計な刺激は今は要らねえ……今はただ、肉に集中する……!

【美甘】
ヤッバイよ超本気の勝負姿だよアッチ、なのにコッチはのオレンジだよ、おもっきし自己主張激しいドリンクだよ! 腹に溜まりそうだよ炭酸!

【志穂】
そんなに気合いも要らねえだろ、いいか美甘、勝負でも飯でも、一番大事なのは――

【志穂】
――楽しむことだ
志穂が、笑みを浮かべた。
それは事実上、開戦の合図。皿と飲み物が揃った。
二人同時にを割る……!!

【謙一】
だーもう、ホントお前マジで勝てよ!? 刃を持て――!!

【志穂】
――ぶっ壊す
二人同時に肩ロースを七輪に投げ込む!
刹那、「じゅわ~~~」という音と共に新鮮な肉の焼ける香りと煙が店に充満し始める。
Kenichi
ぎゃあぁあああああああああああ……!!!
Kenichi
どうせこのメニュー一口も食えねえのにこんな美味そうな肉をただ焼き続けろって? もはや拷問じゃねえかあぁあああああああああ!!!

【志穂】
――おかわり

【全員】
「「「!!!??」」」

【栞々菜】
は、はやい……!! 流石秋山先輩です!!

【謙一】
いや待て、まだ焼けてねえだろ、先走ったらまた食中りでぶっ倒れるぞお前!!?

【志穂】
あ? 何云ってんだ、まだ食うわけねーだろ、米だ米
志穂はごはん(中)を一食分平らげていた。
Kenichi
ソレ勝負に関係無いっていってんだろ!!?

【志穂】
おらー早く注いでこい、あっコレはセルフじゃなかったか

【noname】
【お袋】「準備できてるよー! ほら、そろそろ肉も焼ける頃だし……次を持って行った方がいいんじゃないかなサポーターさん?」

【四谷】
見せつけてやりな岩伍郎! お前の見所なんてコレぐらいなんだからな!
Kenichi
親友にその云い方はどうなんだ。

【謙一】
――って!?
黒田岩伍郎、良い感じに焼かれた、まだちょっと赤みが見られる程度の肩ロースを一気に口へ――噛み砕く!!

【栞々菜】
おぉおお凄いです、黒田先輩、見た目に違わぬ、素晴らしい食いっぷりです!! 見とれちゃうレベルですよー!!

【謙一】
お前は見とれないでサポートしろ! 志穂、次は――

【志穂】
ッかはぁああ!! やっぱエクサイッキは肉食いながらに限るなぁー!!
Kenichi
お前まだ肉手ぇつけてねえじゃねえか!!?

【志穂】
美甘、ドリンクお代わり。それからリブロース!!

【親父】
準備できてるぜえー!!

【栞々菜】
栞々菜が持ってくる!!

【常連】
よっしゃ、俺たちも焼き始めるか!

【謙一】
ッ――なに!?
常連たちは自分たちの座っていたテーブルの七輪を使って黒田岩伍郎用の肉を焼き始める。

【四谷】
別に、七輪一つだけで焼けとはルールに書いてねえよな?

【四谷】
ごっちゃになったら困るし、このお店の総20卓を丁度半分こして使いましょうや。ま、10卓をその人数で使いこなせるかは知らないけどな

【謙一】
何でコイツいきなり特変破り担ぎ込まれてきたのに適応できてんだよ、俺より策士じゃん!!

【廿栗木】
コイツ頭だけは良いからな。ったく、共食いの時間だ豚ー、豚トロ一人前あがりー

【黒田】
極上に焼けよぉーガングローー!!

【廿栗木】
ガングロ云うな豚ぁ、こっちも何度か附き合わされるうちに焼くの上手くなってんだよ

【謙一】
クッ……如何に上質に焼くか、柔らかい状態で食べさせるかも勝敗に影響してきそうだな……!

【秋都】
堅くなっちゃうと時間かかるからね……取りあえず、1卓に2人前ぐらいのお皿は準備しちゃって、1人前ずつ焼いてみたらどうかな。やっててコレ得意だって思った人はもっと卓数を多く担当してもらったり、効率的な役割分担はやっていく中で見つけるしかないよ……!

【謙一】
ああ、そうだな……! 三重、徳川と一緒に客の座ってない空いてるテーブルに少なくとも2人前の肉を置いてくれ!! 美甘は志穂の隣でずっと見ててくれ、サイドメニューは兎も角飲み物は必須だからな!

【美甘】
わ、分かった……!

【翠】
私は中立を保つ為、観察に徹するわ~
Kenichi
こんな時に数に入ってくれない学園長!!

【黒田】
親父ぃ! 相変わらず美味えぜ!

【親父】
ま、最低限食える肉を用意してるからな! 食えるなら結局、何でも美味えんだよ

【親父】
大事なのはソレを、如何に美味しく引き出すか! ここでは寧ろ客――焼き手の腕が試される!

【四谷】
此処の常連は、皆焼き手歴が年輪巻いてる! 肉を硬くするなんて真似はやらないだろうぜ

【四谷】
そして岩伍郎の鉄の胃袋!! コッチは万に一つも、軍勢の乱れる隙間なんてありゃしねえぜ!!

【廿栗木】
お前ホント楽しそうな暇潰しには徹底的にノリノリになるよな

【四谷】
ガングロも楽しめばいいじゃん

【廿栗木】
こんな汗掻いて飯一つ食えねえのに何が楽しいんだって話になる
Kenichi
グッ……戦況は冷静に見れば、一目瞭然。
黒田岩伍郎は焼肉に集中して、志穂はサイドメニューも堪能して……
10卓の七輪を、アッチは余すことなく完璧に扱いこなしている。対してコッチはまともに焼くのに回れる人員が俺、徳川、三重の3人のみ! そして焼き手の経験の差も歴然……!
Kenichi
間違いなく不利!! 一体どうして学園長はコレに応じちゃったのか!!

【栞々菜】
頑張ってーー! 秋山せんぱーーい!!

【四谷】
今更だけど、特変以外にも、てか後輩で特変の味方してるやついるんだな――
Kenichi
三重は純粋にこの時間を楽しんでそうだが……
実際、まず前提として、志穂に本当に頑張ってもらわないと――

【四谷】
な――何!?

【謙一】
は――!?

【志穂】
……おいおい、早く次の肉、回してくんねえと――
――勝負から、約10分。
空となった肉の皿の数、黒田岩伍郎15皿。
秋山志穂――13皿。
しかしサイドメニューを考慮すれば、二人の喰らい尽くした推定グラム量は――互角!!

【志穂】
――私、負けるんだが?