「特変」結成編2-7「青春とは放課後である(2)」
あらすじ
「お前のせいで俺がずっと大事にしてたネギマが、4月に奪われたんだあぁああああああ……!!!」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章7節その2。優海散歩、商店街の回です。しかし穏やかに終わってはくれず、この放課後は急展開へ突入でしたとさ。
↓物語開始↓
Stage: 優海町 商店街
一行は商店街に到着した。

【謙一】
おお、俺のイメージしてた商店街と大体同じ感じだ。良かった……
Kenichi
奇天烈なものに襲われるんじゃないかと若干ビクビクしてた……。

【栞々菜】
変な先輩ですねー。あ、勿論「RP」はこの商店街でも使えますよ!

【栞々菜】
ユストビは大体娯楽品だったりファッションだったりレストランカフェが大半だから、食料メインで展開してる商店街は潰れる気配無いんですよねー

【志穂】
その辺、あの学園長の主権が効いてる感じがするなぁ

【美甘】
生活必需品も、この商店街を使った方が見つけやすいし安く買える。あんまり、ウチは利用したことないけど――

【町民】
おい、アレもしかして合唱祭の時の――!!」

【noname】
【一行】「「「あれ?」」」
ナチュラルに囲まれていた。

【町民】
よー井澤くんだっけか!? 見てたぜー合唱祭!! 凄かったなぁオイ、前説から本気感じたぜー!!」

【謙一】
あ、はい、どうも……

【町民】
おおマフラーの子だねぇ! 体調は良くなったのかい?」

【志穂】
全部吐いたんで、オールクリア

【美甘】
何がオールクリアだ、どんだけウチも悲惨な目に遭ったか……

【町民】
美甘ちゃんだ、名前可愛いねーてか全部可愛いねー! でも皆、見ない顔ねー栞々菜ちゃん以外!」

【栞々菜】
井澤先輩と秋山先輩、それに徳川先輩ですー! 3人とも新規組なんですよー!

【秋都】
ど、どうも……私はもう何回か此処にお世話になってますけど……

【町民】
おお、よく見たらこの子、特Bの合唱祭の子だ!! どす黒い声出してた子!」

【謙一】
どす黒くはなかったと思いますが

【町民】
美甘ちゃんは新規組じゃないのかい? って、美甘ちゃん……? ほや、この名前どっかで――」

【美甘】
ち、ちょっとここ最近全然来てなかったってだけで! 一応、新規では、ないです……(←謙一の背中に隠れる)

【栞々菜】
美甘先輩、怯えなくてもいいのに! ここの人たち、皆優しいよ! 元気いっぱいだし!!

【謙一】
まぁノリの良い人たちなことは合唱祭で分かってるけども……
Kenichi
しかし厄介なのは、どうやらこの人達、美甘が学園で孤立化してた事情を知らないらしいこと。
俺らも美甘に一体何があって孤立化してたのかはまだ知らないわけだし、不透明で複雑な背景が今この場に発生しているとしても、対処ができない……そんな所に、三重の無邪気で考え無しな美甘先輩アピール。
Kenichi
ちょっとコレは早く何とかしないといけないな……。

【謙一】
えっと、あの時は特変破り――っていうとまだ微妙に浸透してないか、投票とかしてくださって有り難うございました

【町民】
おうよ!! つっても俺ぁ息子のクラスに票入れたけどな。組織票ってやつだ!」

【町民】
しっかし、贔屓が当然なのが例年の合唱祭なのに、今年はちょっと違ったね! 今までに無かった、特進クラス同士の実力勝負! 票差はあったようだけど、実質一騎打ちだったみたいよ」

【栞々菜】
うーん実力勝負とはいっても、特変はちょっと卑怯にも見えたけどなー……合唱祭は合唱で勝負すべきなのにー。まぁ実際凄かったし美甘先輩も居るからそんな文句はもう云いませんけどー

【志穂】
云ってるじゃねえかゴラ。文句あっかゴラ

【謙一】
後輩脅すなって。まぁ、三重らしい感想ではあるな。話によれば、あの合唱祭が気に入らなかったから俺らに勝負挑んだっていうんだし
Kenichi
俺たちのやり方が三重の「青春」に反していたから、特変破りを決意したと。ホント恐ろしい勇気と行動力だ。
今はこういうやり方があるっていうのも、身を以て実感したみたいだけど……。
Kenichi
あの合唱祭は、こんなにも多くの人に記憶や影響を与えた……それはつまり、状況が変わりイベントが発生するには充分な刺激が拡散されたということ。あの合唱祭直後の学園長の上機嫌な姿を見たが、もしかしたらこの辺の事態を読み取った結果のものだったのだろうか。

【町民】
よー特変の兄ちゃん、サービスしてやっからちょっと店寄っていけよ! 商店街初めてなんだろ?」

【謙一】
え、サービス!? マジすか、いやー何か助かります!

【志穂】
サービスって言葉に弱いなあの貧乏、一瞬で連れてかれたぞ

【美甘】
ちょ、待って謙一……!?

【栞々菜】
あ、待ってくださいよー美甘先輩ー!!

【志穂】
…………何か置いてかれた

【志穂】
取りあえず徳川でも睨んでるか(←ガン飛ばす)

【秋都】
何で私そんな睨まれてるんだろ秋山さん……

【志穂】
特に理由はない。しかしどう見ても私よりもヒエラルキー下そうなビジュアルしてっから取りあえず立場を分からせておこうとな

【秋都】
えー……(ていうか秋山さんと一緒に居たところで楽しくないよ……謙一くんと居なきゃ意味が無いよね何にせよ追わなきゃ)

【志穂】
ん――
Shiho
何の怯えも無く徳川がハゲらを追っていった。
……………………。

【志穂】
――無視られた!!?
Shiho
この、私が、あんな見事なまでに平凡なビジュアルをした眼鏡キャラに!!?
ついさっきヒエラルキー下だろと認定したばかりの女に、スルーされた!!?

【志穂】
……………………

【志穂】
んがーーーー!!!
何かダメージを受けた志穂も腕を振り回して追っていった。

【町民】
……情緒不安定?」

【町民】
変な子がいっぱいらしいからね、特進クラス! これから真理学園、もっと活気に溢れるのかねぇ」
こんな感じで商店街で出会う優海町民と仲良くなりながら、またサービスを受けながら、楽しく謙一らは商店街を歩いて行く。

【謙一】
なるほど、確かに冨士美で調達するより此処の方が安いな……!
Kenichi
バスを使わなくてもコクローで走ればすぐだし、此処は本格的に俺の生活圏に入れるべきだぞオイ……!

【美甘】
すっかり商店街の活気に溶け込んだな謙一……凄いよなホント、その適応性というか

【栞々菜】
先輩たちのお陰で栞々菜もいっぱい貰っちゃいました! えへへ、予想以上の青春です!

【志穂】
…………(←リベンジのがん飛ばし)

【秋都】
…………(いつもと違って、テンション上がって無邪気に燥いで喜んでる謙一くんが眩しい……!!!)

【志穂】
…………(←落ち込む)

【美甘】
あれ、何で志穂そんなに元気無いの……?
そうやって歩いていると、また面倒臭い人物と鉢合わせする一行。

【翠】
いきなり面倒臭そうな顔をしないでよ傷付いちゃう~

【謙一】
この程度で傷付くような貴方じゃないでしょ……
Kenichi
ってかもう指摘するのも最近サボってたけど、外出時もその裸エプロンなの? 警察ちゃんと仕事してる?

【翠】
謙一くんたち、一体何をしてたの~? もしかして特変権力を使って商店街でカツアゲ?

【謙一】
権力は使わずに色々サービスしてもらってました。初めて来たんですよ俺

【栞々菜】
栞々菜が町の情報に疎い井澤先輩にガイドしてまーす!

【翠】
早速後輩を手なずけたのね~、流石謙一くん、良い傾向だわ~
Kenichi
ダメだこの人はこの人の主観のままに話を進めてしまう、全部悪者の記述に変換してしまう……。

【謙一】
えっと……学園長こそ、こんな所で何を?

【翠】
私は真理学園長なので、実質的にこの優海町のトップなのよ~

【翠】
だから優海町の皆とは仲良くしないとね~。お買い物ついでに、町の皆とお話するのも私の仕事☆

【町民】
よう翠ちゃん、今日も相変わらず官能的なエプロンしてんなー!」

【翠】
渋谷さんはちょっと髪の毛が減っちゃったわね~

【謙一】
案外まともな仕事だった……

【栞々菜】
そうだ、学園長! その、明石監督、知りませんか? ここ数日バスケ部にも来ないんですけど――

【翠】
あら~、そうね~……栞々菜ちゃんに云えることは~――

【翠】
――知る必要は無い……ってところかしら♪

【栞々菜】
????

【謙一】
(KOEEEEEEE!!)
Kenichi
俺が学園長に丸投げした案件だけど、案の定そんな感じの結末になったか……。

【美甘】
……………………

【謙一】
ま、まあ何だ、大人の事情ってやつだろ。気にするなってことさ

【栞々菜】
? そうですか……? ならそうします! 監督の訓練は皆の身体に刻み込まれてるから、少しぐらいいらっしゃらなくても大丈夫です!
Kenichi
ホント危険な程に天然ポジティブな女の子である。

【町民】
お? 学園長さんじゃねえか! 丁度今、物資委員のガンちゃんに助けてもらってるぜー!」

【翠】
ガンちゃんと聴いて顔は全然思い浮かばないけど、しっかりお役に立てて良かったわ~。腰、大丈夫? 本格的にヤバそうだったら病院紹介してあげるからね~

【町民】
へヘッ、見くびってもらっちゃ困るぜー、俺ぁまだまだ現役なんだよ。しかし流石にLサイズの液タブを2Fに運ぶのは現役だろうと俺一人じゃキツいわな」

【翠】
通販で買ったんだったわね~趣味用のペンタブ~。ぶっちゃけ顔と似合わないわ~どう見ても八百屋さんの顔だもの~

【町民】
うるせー」

【謙一】
ペンタブって何だ?

【秋都】
ペンタブレットの略で、操作デバイス……パソコンのマウスみたいなものだよ。コンピュータ上でお絵かきするのに便利なんだ

【秋都】
液タブは、液晶一体型ペンタブレットのことで、液晶にコンピュータの画面を映して、直接ペンで操作できるの。普通に紙に書く感覚で、デジタルペインティングができるって(謙一くんと喋れてる~今日ステキ~☆)

【志穂】
なーに勝手にウチの管理職と会話してやがるんだ無断でゴラァ(←ガン飛ばしリターンズ)

【秋都】
液タブって持ち運びし易いお手軽なサイズもあれば、もう固定設置確定な大きさのもあって、それは重量も凄いことになってるんだって。もしかしたら今このお店の2Fに運ばれた液タブは、複数人でやらないと設置できないサイズだったのかも(謙一くんが私の話聴いてる~体育館頑張ってお掃除して良かった~☆)

【志穂】
な、んだと……最早コレ完全意図的に無視ってるだろ……!?

【美甘】
いや抑も何で徳川さんに攻撃仕掛けてんのさ志穂……

【翠】
ぶ~~、一般学生のくせに私の謙一くんと楽しそうにお喋りして~~~(←がん飛ばすアナザー)

【謙一】
へ~そういうのあるんだ、今やデジタルで絵を描く時代かぁ……徳川も詳しいな、俺とは違ってデジタル強い系?

【秋都】
う、ううん! ただ耳にしたことあるってだけで、私は周りの人とそんな変わりないと思うよ……(け、けけ謙一くんに私についてを訊かれた!? ど、どうしようこんなに人に見られてる、何か凄く強い視線を色々感じるくらいには見られてる筈なのに顔紅くなっちゃってる気がするどうしよう、もう謙一くんのスケコマシ――!!)

【翠】
…………私を見事なまでに無視っちゃうとは、一般学生の分際で……

【美甘】
何だろう、今とんでもない表現を訊いてしまった気がするけど、忘れとこうかな……
結局楽しく会話をしていたところに、

【???】
おーいこんな感じでいいかー? 俺インストールとかその辺は分かんないからなー
大声が店の階段から響いてきた。

【町民】
おーう! もう時間だし、帰っていーぜガンちゃん!! サンキューなー!!」

【黒田】
また何かあったら呼べよー!!
そして巨体が降りてきた。

【謙一】
おお……野球部では必ず一人はいそうな高身長高恰幅……
Kenichi
コレは美玲さん以上にビジュアルでキャラ立ってるぞ……。

【黒田】
にしてもあんなでっかい液晶のやつ、何に使うんだあのじーさん――
Kenichi
目が合った。

【謙一】
え?

【黒田】
あ
Kenichi
指差された。

【黒田】
……い……いいいいい――

【黒田】
いさわけんじいぃいいいいいい――!!!?

【謙一】
微妙に名前勘違いされてる!!!
名前は訂正させるも、悪い流れは止まらない。

【黒田】
テメエ……俺の前に、よく姿を現せたな井澤ぁ!!?

【謙一】
そんなつもりは全く無かったんだが……俺が何かやった? 一応訊いとくけど
Kenichi
俺は、こんなビジュアルの学生初めて会った筈だけど……

【黒田】
あったりめーだ!! お前のせいで……お前のせいで――!!

【黒田】
お前のせいで俺がずっと大事にしてたネギマが、4月に奪われたんだあぁああああああ……!!!

【謙一】
やっべえ全然思い出せねえそんな謎過ぎる事件……!!?
Kenichi
しかしこのガチ泣き、嘘をついてるように思えないから実際に彼のネギマは彼の前から消えてしまったんだろう。俺だって目の前で亜弥の作った親子丼他人に没収されたらブチ切れると思うし。
Kenichi
しっかし記憶に無いんだよなぁ……4月ってことはまだ特変がバラバラな時期だろ……

【翠】
多分謙一くんは悪くないわよ~それ

【謙一】
え? 何か知ってるんですか学園長?

【翠】
だって要は献上したってことでしょ、ソレ

【黒田】
してねえぇええええよおぉおおおお無理矢理奪ったんじゃねえかよ俺のネギマあぁああああ!!!

【謙一】
4月の時点でネギマ献上されてるの俺たち!? ソレ誰か食ったのか……?

【翠】
各クラスにはグリーンシャドウ隊が回収に行ってるから、多分その中の誰かが腐らせるの勿体ないし食べてるわよー

【謙一】
形式的には特変への献上品なのに途中で食われてるじゃねえか!!?
Kenichi
だとしたらネギマ事件に関しては俺たち何も悪くないと思う!!
……って主張したいけど、この男子は本気で悲しんでるな……まぁ何にせよ奪われたってんのは事実だからな……

【黒田】
許さねえ……この黒田岩伍郎のメシを掠め取った罪は、償ってもらうぜ特変!!

【謙一】
こ……この流れ、まさか――

【黒田】
こんな所で遭ったのも運命!! 特変破りだあぁあああああ!!!

【翠】
よっしゃ、やりましょーーー!!

【謙一】
な――何ぃいいいいい!?!?
間違いなくこれまでで最速の特変破り成立。
ただ優海町を散歩するだけだった筈の放課後は、まだまだ終わらない――