「特変」結成編2-6「青春とは友情努力勝利である(6)」

あらすじ

「責任も取らず、ていうか女子学生一人に全部背負わせて――そんなバスケ部の誉れなんか、女子一人の試合一つで汚れちまうモンなら、いっそ捨てちまえ!!!」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章6節その6。バスケ試合は終わりましたが、栞々菜ストーリーは意外な方向へ展開を進めます。

↓物語開始↓

flashback



Kokona

 ――パパとママが、離婚した。
 ママが家を出て行って、栞々菜もそれに附いていくことになった。今の学校と友達と、お別れしなきゃいけなかった。


Kokona

――どうして、離婚したの?


Kokona

 返ってきた答えは、結構シンプルだった。


Kokona

――中途半端だったから。


Kokona

 パパとママは、学生の時から附き合い始めて、卒業の時に……栞々菜を産んだって。あれ、結婚は? って訊いたら何かビールをイッキし始めたから、多分あんまり突いちゃいけない話題なんだなって思った。やっぱりなんでもない、って云ったらありがとって云われて、頭を撫でられた。


Kokona

 ママは、とっても、昔に戻りたいって口にしてた。
 やり直したいって。それはパパも零していた言葉。
 きっと楽しい思い出があったんだ、そう思って訊いてみた。だけど、特に無いっていつも云った。


Kokona

――特に無かったことに今気付いたから、戻りたい。


Kokona

 そう云うママは、毎日栞々菜の学校の話を楽しみにしてた。正直、そんなに云える事、無いんだけどなぁ。いっつも絞り出して……それにママは栞々菜の頭を撫でながら、笑って聴いて……それで、話の最後には必ず、こう云う。


Kokona

――もっと、青春しなさいね!


Kokona

 青春って何だろう? よく聴く言葉で。先生に聴いてみると、今の君たちだって。いや、そうじゃなくて、もっと詳しく聞きたいのに、そこまで訊くと先生たちも困っちゃうみたいだった。
 友達にも訊いてみても、栞々菜と同じ、よく分からないって感じだった。


Kokona

 青春って何だろう? パパと別れを告げる最後の夜、それを訊いた。
 パパは、云った。


Kokona

――進学したら、部活とかやってみたらどうだ?


Kokona

 やるからには、全力を尽くして仲間と世界一を目指せ! なんて付け足して。
 その頃、クラブ活動みたいのなら知ってたけど、部活って何だろうって、よく分かんなかった。じゃあパパは、どんな部活、やってたの? それが、最後の質問。


Kokona

――俺もママも、バスケだったよ。


Kokona

 ママと、ちょっぴり貧しい生活をしながら……部活を知らなかった栞々菜はステキなことを思いついた。きっと、こんなステキな生活は無い! 新しくできた友達にスポーツ系のマンガを借りながら、栞々菜は決めた。


Face_kokona

パパとママよりも、バスケ上手になって、皆で世界を目指して、汗を流す!!


Kokona

 青春!! きっと、コレが青春!!


……………………。


Kokona

 ――栞々菜を養うのも限界が来て、ママが栞々菜を手放す時が来た。
 栞々菜が進学する、丁度良いタイミング。栞々菜はお金が無くても生活していけるらしい、真理学園に入ることになった。これから栞々菜は、ママとも別れて、この学園で数年間、青春していくんだ。


Face_kokona

見ててね、ママ!! 栞々菜、ママよりも、パパよりも、沢山青春してみせるから!!


Kokona

 最後の、挨拶。
 ママは――


Kokona

 何だか、ちょっぴり苦しそうな、顔をしてた。


flashback_return

Stage: GAC 204会場



Face_kokona

――負けた


 静寂の中、膝を地に着けた三重栞々菜の声だけが、小さくも重く響いた。


 それは、何かが折れた音だった。


 その無音且つ音速で場に押しつけられたような圧倒的な力は、その場にいる全員――


Face_saya

は~い審判が仕事サボってるけど代わりに私が区切ってあげる。特変の勝ち~


 ――1人例外が居るようだが、沈黙させていた。


Face_saya

ま、最初から見えてた結果ではあるけどねぇ。三重さん、ホントに勝ちに来るんだったら、相手ぐらいしっかり調べておかなきゃダメよ


Face_saya

堀田美甘はB等部1年の時点で、球技大会・女子バスケ個人の部において優勝経験持ってるんだから


Face_joshi

は――え……!? せ、先輩、久々利先輩それ、ホント、ですか……?


Face_joshi

わ、私に訊かれても……清水先輩は?


Face_danshi

ああ、知ってる……何かアクシデントが重なったのか、堀田美甘が球技大会に参加させられた事があったんだ……当然というか、団体の部には出てないけど、マンツーマンを優しくしたような競技……個人の部で、圧勝した


Face_danshi

そういや決勝の時も、今みたいな……超、ロングシュートを3発連続で入れて、一瞬で試合終了してた……


Face_saya

そういうこと。貴方たちの部活動精神に口だしするつもりは私には無いけど……少なくともコレはバスケ部の試合じゃなくて、特変破り。バスケ部の仕来りなんか知ったこっちゃないのよ


Face_saya

仮に三重さんじゃなくて、男子のエースさんが戦ってても、最終的には今みたいにあっさり終わってたでしょーね。だって単純な一騎打ちだったら美甘の方が圧倒的に上だもの


Face_saya

美甘の云ってた通りよ。貴方は、やるまでもなく負けるのが分かってたのよ。何てったって、無謀なんだもの


Face_so

さ、さささ、サヤパイぃぃぃぃぃ……!!! 云わせておけばこのおぉおおおおお!!!


Face_kaoru

何で真っ先にアンタが怒ってんのよ……


Face_mikan

…………


Face_mikan

ごめん、ウチ、ぶっちゃけシュートの方が得意なんだ


 座り尽くした敗者に……堀田美甘が口を開ける。


Face_saya

ねえ美甘、さっきの……一応訊いとくんだけど、狙ってやったの?


Face_mikan

昔っから、球技は得意中の得意だったんだよ。試合に出るかどうかは別として、ね


Face_mikan

だって玉を投げるくらいなら、独りでもやれるだろ?


Face_mikan

サッカーはあんまり性に合わなかったけど、代わりにバスケはよくやってたんだよ。もっと子どもぐらいの時から、ずっと……どっか公園でバスケットを見つけてさ、走ったり登ったり、どのくらい飛距離伸ばして入れられるかな~、みたいなことばっかりやって


Face_fui

…………


Fui

何か、悲しい……


Face_saya

じゃあこの試合だって一瞬で終わってたんじゃないの? 貴方、まさかの舐めプ? ちょっと可哀想よ、全部失っちゃう三重さんのこともっと配慮してあげなさいよ


Face_tokuhen

「「「(オ マ エ ガ イ ウ ナ)」」」


Face_mikan

いや、ウチは本気でやってたよ。このやり方は、二度は通用しない相手だって分かってたし


Face_mikan

出たのは一回でも、球技大会のバスケは毎回観てる。女子バスケ部がどれだけ強いのかも分かってる。マンツーマンならロングシュートができるならとても有利……だけど失敗すれば次は確実に警戒されてブロックが入ってくるに違いない。ウチとしても、一発で決められるタイミングを狙ったんだ


Kenichi

 ソレであの距離から確実に決めたってか……。
 どんだけボッチで練習してたんだよ、何か悲しくなってくるよ。


Face_mikan

それに……ウチは、興味があったんだ


Face_mikan

この後輩は、何でこんなに真っ直ぐ頑張れるんだろうって……どうしてそう、頑張ることしかできないんだろうって


Face_kokona

……!


Face_mikan

詳しいことは訊かないけど……お前は一度、ここで折るべきだって思ったよ。お前を見てると、何だか……怖かったんだ、ウチは


Mikan

 ホントに、何だろう。
 親近感でも湧いたか。親近感とは何だ。ウチはウチ自身のことを、どれだけ分かってる?


Mikan

 ……全然分かんない。だから、そういうことはアイツに任せて……
 ウチは兎に角、試すことにしたんだ。それがウチの、今あのクラスに居る理由でもあるから。


Face_joshi

「「「――栞々菜!!」」」


Face_kokona

……!!


 静寂の圧力は、沙綾や美甘の会話の中で、気付けば弱まっていた。
 そして、気付けば、敗者・三重栞々菜の周りには……人が集まっていた。


 同級生や先輩の、同じバスケ部の女子たちが。


Face_joshi

頑張った……ホントに、栞々菜、頑張ったよ……


Face_kokona

……度会ちゃん……でも…栞々菜は、負けちゃった……


Face_kokona

勝てば、皆で、青春できたかもしれないのに……


Face_joshi

……思い上がんじゃないよ後輩


Face_kokona

久々利、先輩……


Face_joshi

皆で手に入れるんだったら……皆でやんなきゃ、ダメでしょうが……何勝手に、後輩の分際で一人で背負い込んでるだか


Face_kokona

……!! だ、だって! 誘ったけど全然靡いてくれなかったじゃないですかー!! 皆だって勝手なこと云ってるーー!!


Face_joshi

「「「(明後日の方向を向く)」」」


Face_kokona

うぅ……栞々菜だって……皆と、やりたかったよ……特変破り……


Face_kokona

もっと堀田先輩と闘いたかったもん……


Face_saya

この子、全然折れてない気がするんだけど美甘


Face_mikan

……そうだな


Face_unknown

――三重栞々菜


Face_kokona

――!! か――


Face_kokona

監督――


 暖まりかけた空気が、再び緊張する。
 これまで沈黙を貫き場を見てきた男が。


Kokona

 明石監督に――


Kokona

 初めて、名前で呼ばれた……


Face_kokona

は、はい!! 栞々菜です! 三重、栞々菜です!!


Face_noname

【監督】「……三重――」


2年間、ずっと、光を見るために、暗闇の道を走り続けてきたに等しい、少女へ向けて――


Face_noname

【監督】「――退部だ」


――道を閉ざした。


Face_kokona

……………………


Face_kokona

……――え?


Face_noname

【監督】「貴様は、このバスケ部の公式の許しを得ることなく、しかも我々の時間を無断で割いて、挙げ句の果てにバスケットボールという種目で敗北した」


Face_noname

【監督】「B等部女子の身分でこのバスケ部の調和を乱す烏滸おこがましさ、更にバスケ部の誉れ高さに泥を塗った行い、もはや見過ごすにも苦しい」


Face_kokona

ぁ――


Face_noname

【監督】「故に、二度とこのバスケ部に足を踏み入れるな弱小者!! 貴様はこの最強のバスケ部に、全く不要だ!!」


Face_kokona

ぁぁ――


 折れる。


 完全に折れていく音が、煩わしい程の無音を通じて再び学生たちを沈黙させていく。


Face_saya

あらら、絶望ねぇ。残念、一世一代のマンツーマンの代償は、案の定大きかったわねぇ三重さん


Face_saya

ま、私にはー関係無いけどねー


Face_noname

【監督】「もう休憩時間は過ぎている。用事が済んだだろう、特変? さっさと部外者は消えていただこうか。そこの部外者も、連れて行ってくれると有難い」


Face_noname

【監督】「――些か身体が冷えたかもしれん、準備運動だ、男子レイアップコース100周!!」


Face_saya

ってことらしいから怒られる前に撤退しましょー


Face_so

サヤパイあの監督と一緒に死んでマジで


Face_mikan

……………………



Face_danshi

「「「…………」」」


 男子が、着々と準備をし始める。
 ……浮かない顔ばかりの、男子たち。


Face_joshi

「「「栞々菜……」」」


 もっと酷い顔をしていて、身体すら動けず、栞々菜を囲む女子たち。


Face_kokona

――――


 三重栞々菜。


Face_mikan

……………………


dageki1


 ――この現実は、ぶっ壊す価値があるのだと。


 堀田美甘はソレをやって後付けした。


break



Face_noname

【監督】「――!? なに!?」


Face_saya

ちょ!?


Face_so

え、何、何いきなり!?


Face_shiho

……へっ


Face_kenichi

~~~~……(←頭痛)


 全男子と全女子が、その一点に注目した。
 出現した破壊音と。
 出現した穴に。


栞々菜窮地


Face_mikan

……さあ、コレも無視するかよ


Face_noname

【監督】「貴様、何の真似だ!! 堀田美甘!!」


Face_shiho

いやホントだよ、何やってんだよ美甘~こんな、パンチ一発で床に穴開けちゃってさー


Face_danshi

「「「(パンチ一発で床に穴!!)」」」


Face_mikan

何勝手に仕切ってんだよ、話はまだ、終わってねえだろ明石監督……


Face_mikan

責任も取らず、ていうか女子学生一人に全部背負わせて――そんなバスケ部の誉れなんか、女子一人の試合一つで汚れちまうモンなら、いっそ捨てちまえ!!!


Face_noname

【監督】「……何だと……貴様、何の立場でソレを云ってるのか、分かってるのか……?」


Face_kenichi

いやいや、分かってないのは寧ろソッチでしょ明石監督(←諦め)


 何やら心労を諦めた感じの謙一が、美甘の隣に、バスケ部女子たちの前に立つ。
 準備をしていた男子たちの手も完全に止まり、この休憩時間はまだ終わらないのが明らかだった。


Face_kokona

――!


Face_mikan

謙一……!


Face_kenichi

クールダウンしとけ。お前の云いたい言葉を、云いたい相手を、しっかりまとめとけ


Face_mikan

……ありがと。謙一


Face_kenichi

ま、話が終わってないってところは代弁してやる。確かにその通りだからな


Face_saya

あら? 何かまだ終わってない話なんてあった? 要は三重さんの青春物語終了でめでたしめでたしってことでいいんじゃないの?


Face_kenichi

このまま終わっちゃつまんないだろ。どうせ起きた特変破りだ、もう一癖くらい付けて締めてやろうぜ。少なくとも乃乃なら絶対見逃さないわな


Face_saya

……あー、そうね、私ともあろう者がそんな重要なこと見逃そうとしてた


Face_saya

罰ゲームまだじゃない!!


Face_noname

【監督】「罰、ゲーム――?」


Face_danshi

……! そ、そうか、マンツーマンで三重が負けたから……三重の罰ゲームが、まだ終わってない!


Face_kokona

……罰ゲーム――


Face_joshi

こ、栞々菜はもう、ボロボロなのに……!! もうこの時点で立派な罰ゲームなのに、まだ何かをやるっていうんですか!? お願いだから、もう休ませてよ……栞々菜を――!


Face_mikan

まだだよ。まだ休むタイミングじゃない


 美甘が振り返り……しゃがみ込み力を失った栞々菜の脚を軽く叩き、
 脇を持って、無理矢理立たせる。


Face_kokona

ほ、堀田、先輩――でも――


Face_mikan

……いいか、女子バスケ部。特にB等部、お前たちは勇敢にもこの特変に挑んだんだ! たとえ無謀だったとしても、そこに勇気があったのは間違いない。ウチだけは、見逃さずに、それを全力で評価する!


Face_mikan

だから後は……友情、努力、そして――勝利を掴み取るだけだ


Face_kenichi

ま、ウチのボッチバスケプレイヤーと遊んでくれたお礼みたいなもんかな、一つ教えてやるよ


Face_kenichi

走りたくても、道が塞がれたってんなら、ぶっ壊しちまえばいいんだ


Face_kenichi

――今から、そのやり方を、教えてやる


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