「特変」結成編2-6「青春とは友情努力勝利である(3)」

あらすじ

「だから、バスケ部を辞めるっていう一見将来に絶大な影響を及ぼさなそうな決断でも、実際には自分の評価が学園・優海町でグルグル変わり得ると」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章6節その3。三重栞々菜ちゃんの調査の末に、彼女がこの特変破りの確定で置かれてしまった立場が見えてきます。

↓物語開始↓

otherside



Face_noname

【女子】

栞々菜、まだ諦めてないんだよね……寧ろ、めちゃ本気というか……


Face_noname

【女子】

いっつもそうじゃん……どんなに頑張ったって、あの監督が振り向くわけないって、分かってるのに……諦めず頑張れば、絶対に何とかなる……そう信じてやまない。このままじゃ、栞々菜……監督に目を付けられて、もっと酷い仕打ちを――


Face_noname

【女子】

え? 先輩、ソレ何の話なんですか――?


Face_noname

【女子】

清水先輩がこっそり教えてくれたんだけど、監督……もう栞々菜を退部にするつもりだって


Face_noname

【女子】

「「「え――!?」」」


Face_noname

【女子】

流石に本人の意思の関係無しに退部させるのは監督もヤバいから、こうして特変破りっていう口実ができて、ようやく邪魔な奴を消せるって機嫌良くしてたらしいよ……


Face_noname

【女子】

ど、どうして特変破りが、栞々菜が退部させられる理由になるんですか!? あんなに頑張ってる子なのに!?


Face_noname

【女子】

多分、勝手にバスケ勝負……バスケ部に繋がるような種目で特変に負けたとなったら、真理学園バスケ部の名誉に傷が付く……監督嫌いでしょ、こういうの


Face_noname

【女子】

……そんな……


Face_noname

【女子】

さっきも忠告したのよ……! 今からでも、取り消せって……抑もそんなことできるのか分からないけど、栞々菜は一切考えてないって。大丈夫、絶対勝ってみせるからって……もう、いつも通り折れないわ……


Face_noname

【女子】

どうしよう……栞々菜、負けちゃう……ただ真っ直ぐ過ぎるってだけで、良い子なのに……


Face_noname

【女子】

特変のことだから、絶対に策を講じて栞々菜を陥れるに決まってる。あの子、人数制限もしてないのよ……いくら栞々菜でも数人がかりで囲まれちゃ……衒火情から逃げられるわけない


Face_noname

【女子】

……私たちが、応えなかったから……



otherside



Face_kokona

【栞々菜】

ッ――ハァ……ハァ……!!


きゅきゅダンきゅきゅきゅきゅダンきゅきゅ――


Face_kokona

【栞々菜】

――ラアァアアアアアアアア!!!


ドォォンッ……!!


Face_kokona

【栞々菜】

ハァ……ハァ……ッ――絶対、ぶち込んでやる!


Kokona

 スラムダンク!! ……とまでは、ちょっといかないけど。
 明日はこのゴールに、特変っていうディフェンスを飛び越えて……


Kokona

 獲得してみせるんだ!!


Face_kokona

【栞々菜】

ハァ…ッ友情……――!!


Face_kokona

【栞々菜】

努力――!!


Kokona

 皆で!!
 青春、してみせるんだ!!


Face_kokona

【栞々菜】

――ショオォオオリイィイイイイイイイ!!!


ドォオオオオオオオン――!!!


Face_kokona

【栞々菜】

……諦めなければ……勇気を持てば……


Face_kokona

【栞々菜】

夢は、叶う――



otherside



Face_noname

【女子】

……私たちは、間違ってない……このバスケ部には、最初から私たちに希望なんて用意されてなかった……


Face_noname

【女子】

久々利くくり先輩……


Face_noname

【女子】

アンタも、ホント、災難だったよね度会わたらい……態々真理学園に外部入学してきて、その理由が「強いバスケ部で活躍したい」だったんでしょ。もうちょっと、調べておくべきだったわね


Face_noname

【女子】

転校とか、考えないの? まだ2年なんだし、普通に手遅れじゃないでしょ?


Face_noname

【女子】

……調べてはみたんですけど……どうにもここ数年、転校の例って無いらしいんですよ真理学園。多分……


Face_noname

【女子】

ああ……そっか、そりゃそっか


Face_noname

【女子】

どーゆーことですか、久々利先輩?


Face_noname

【女子】

銘乃政権は色々ヤバいことしてそうじゃん? いや実際ヤバいけど、そんなの外部に妄りに漏らされちゃメリット何も無いわけよ。私たちもレゾンを導入された際にきつ~く「情報漏洩」の倫理を釘刺されたでしょ


Face_noname

【女子】

情報漏洩されない為に、転校が許されてない可能性が……


Face_noname

【女子】

この学校益々ヤバい……! うぅ、私たち不遇過ぎる! 男子の皆が羨ましい……!


Face_noname

【女子】

……それに……辞めるのは、どうにも……


Face_noname

【女子】

ああ、真理学園って繋がり意識が高いっていうか、不可欠なところあるものね。附き合いに挫折なんかしたら、下手すれば学園――優海町で生きていけなくなる


Face_noname

【女子】

あ、えっと、それもあるんですけど……


Face_noname

【女子】

栞々菜ちゃんに、悪いなって……


Face_noname

【女子】

「「「…………」」」


Face_noname

【女子】

……おかしいのは、アイツよ。栞々菜なのよ


Face_noname

【女子】

私たちの足はもう、動けないのに……アイツはいつまで経っても走ってて……アイツだけが、走ってて――


Face_noname

【女子】

それで云うのが「皆でがんばろう」って、身勝手にも程があるでしょ……


Face_noname

【女子】

ある意味……栞々菜が居なくなったら、私たちも救われるのかも


Face_noname

【女子】

ち、ちょっと!!


Face_noname

【女子】

不謹慎なのは分かってる!! 私だって栞々菜好きだし可愛いし、何より尊敬してる……! あんなに直向きに練習できる栞々菜が……でも……


Face_noname

【女子】

それが、全部無意味な時間だってことを、どうしても栞々菜は理解してくれない……誰も報われない時間が、あの子が諦めない限り永続して、私たちを縛り付ける……


Face_noname

【女子】

私たちにとっても、栞々菜にとっても……監督に同意するの凄く嫌だけど……良い機会になるんじゃって……


Face_noname

【女子】

「「「…………」」」



otherside



Face_yukina

【雪南】

……以上、秘密の花園の中継でした、っと


Face_kenichi

【謙一】

…………


Face_mikan

【美甘】

…………


Face_yukina

【雪南】

分かったかな。三重栞々菜というB等部2年生の女の子が今、どんな窮地に立たされているか


Face_yukina

【雪南】

まぁ完全に自分から火の沼に突っ込んでいってるところは否定できないけど、特変破りの勝敗がどう傾いたとしても……女子バスケ部に、明るい未来が果たして存在するのか


Face_yukina

【雪南】

今日志穂ちゃんや情くんが片付けたようなモノとは、一線を画す特変破りなんだよ。バックグラウンドの渦巻き具合が違う。それだけは、何となく謙一には知っておいてもらいたかったんだよね


Face_kenichi

【謙一】

……ああ。知ることができて、よかったよ。素直に感謝だ


Kenichi

 でも後で絶対通報してやる、学園全女子学生の為に。


Face_mikan

【美甘】

…………


Face_yukina

【雪南】

三重栞々菜ちゃんのモットーは、「友情・努力・勝利」――そのような青春を獲得することだ。逆に云えば、そのような青春の無い日々に、過ごす価値は無い


Face_kenichi

【謙一】

そこまで云えることなのか? まるでバスケ部を追い出されたら学園生活終わり、みたいな印象じゃないか


Face_yukina

【雪南】

それには二つの意味が解説できるかもしれない。しかし余計なことかもしれない。どうする、ストーカーの妄言でも聴いてみるかい?


Face_kenichi

【謙一】

自分でストーカー云うなし。聴くだけなら困らない。お前の声質でストレスが増幅するだけだ


Face_yukina

【雪南】

とても頼む人の物云いとは思えない清々しさだね、思わず何かがスッキリしそうだよ謙一。まぁそれはいいとして――


Face_yukina

【雪南】

さっきもお着替え中のバスケ部女子たちが云ってたでしょ、優海町で所属を大きく変えるのはリスクを伴う、的なことを。新規組の謙一には分かりにくいロジックかもしれないけど


Face_kenichi

【謙一】

そこは俺も可成り疑問に思ってたんだ。三重の努力に縛られてるってことも云ってはいたが、それでもそんなに希望が無いなら、どうしてバスケ部を続けてるんだ? 辞めればいいだろ?


Face_yukina

【雪南】

真理合宿で多少は真理学園・優海町のことは勉強したろ? その時に学んだ筈だ、この真理学園が世界的にも珍しすぎる奇策で以て在校生を確保していると


Face_kenichi

【謙一】

……! 寮制度か!!


Face_yukina

【雪南】

端的に云ってB等部以上の学生の中には、何らかの事情で身寄りを持たない、つまり失敗のできない奴が少なくない。ここでいう失敗とはすなわち、優海町において“孤立”すること


Face_yukina

【雪南】

定職を持っていて且つ特変として権力を持つ謙一には無縁の話だろうけど、そういう学生は委員会活動などを通して2種類の経済基盤を固めるんだ。すなわち、金銭的基盤と相関的基盤


Face_kenichi

【謙一】

……前者は単純に、仕事をして受ける報酬のことだな。後者は……実績を持つことで、この人はどういうことができるのかを把握できる。そんな感じか?


Face_yukina

【雪南】

そそ。真理学園における寮制度と、それに誘われた学生についての心理的課題なんかは初代政権時からその性質を変えつつ存在している。流石にソレ全部を講義する力は俺には無いけど……少なくとも今、銘乃政権においてどんな問題が発生しているかは、一つ意見が云える


Face_yukina

【雪南】

あの娘さんが居ないからこそこんな危険なこと云えるんだけど、銘乃翠は特変制度にも見出せるようにある程度の自由主義を掲げてはいる。戦い、勝った者がそれに見合う未来を手にすれば良いと


Face_yukina

【雪南】

だが同時に特変制度に見出せるように……それは全く以て平等ではない。ゴリゴリの自由主義であるなら、平等な条件下での競争が謳われるべきであって、本来献上制度のような悪政は不必要な筈だ。一般学生を挑発するのに確かにクリティカルな効果を発揮しつつあるが、コレは週を跨ぐたびにクラス単位で物資的勢力を削がれているのと同じ。時間が経てばどんどん不利になる


Face_yukina

【雪南】

おまけに、寮制度で学生を寮に住まわせることはしているが、その生活サポートは最小限を更に下回っているように思う……コレは俺のフィーリングが狂ってなければ、わざとだ。食生活に困ってる学生の例は流石に訊いたことないけど、「色んな事を試す」にはあまりに所持物も後ろ盾もなさ過ぎるんだよ


Face_mikan

【美甘】

…………


Face_yukina

【雪南】

このレベルの生活をしてる学生にとって実際に大事とされているのは、何かしらの活動に積極的であることと、自分の生活環境を大きく変えないことだ


Face_kenichi

【謙一】

……どちらも、お前の表現でいう相関的基盤に繋がってるからか。例えば何か部活動に入り懸命に活動していくことで、その分野について他一般人よりも専門的な技術を身につけるだろうし、そういう自分を間近で知ってくれている他人が増える。信頼できる知人ができるってのも、重要だろうな


Face_kenichi

【謙一】

しかし将来何か仕事や生活場所を提供してくれるくらいに信頼される関係を築くのは実際大変だ。その一方で崩れるのは容易くて、それをまた再構築するのは難しくて……だから部活動を辞める、みたいな生活環境を変える行為は構築してきた関係に小さくない影響を与える


Face_yukina

【雪南】

そういうことが起きうるのと、そういうことが起きるということの重大性を何となく察してしまうからこそ、生粋の帰宅部なんて居ないし何もしない雑務委員なんて居ないし、無闇に自分の所属関係を変えるなんてこともできない。真理学園に入った時点でのその人の財政や思想の事情でほぼ確定してしまう……ちょっとしたかな



Face_kenichi

【謙一】

……だから、バスケ部を辞めるっていう一見将来に絶大な影響を及ぼさなそうな決断でも、実際には自分の評価が学園・優海町でグルグル変わり得ると


Kenichi

 しかも、三重にいたっては監督の怒りを買って、バスケ部の面汚しで追放される、なんて状態になるんだろ……?
 コレは流石にヤベえだろ……そんな噂流れたら真理学園じゃなくても周りの視線変わるぞ。


Kenichi

 ソレがどれだけ客観的にみて、三重にとって重大な事態なのか、それを理解するには……


Face_mikan

【美甘】

…………


Face_kenichi

【謙一】

今ので一つの意味だな。二つ目は……三重の家庭環境、っていったところか


Face_yukina

【雪南】

流石察しが良い。そして予想している通り、三重栞々菜ちゃんもまた、そういう学生なんだよ


Face_yukina

【雪南】

両親は離婚し、母親に附いていった栞々菜ちゃんだが、貧困により真理学園へ寮生入学することを決めた。そして今、両親含め親戚とは一切連絡のつかない状況だ


Face_yukina

【雪南】

彼女には、“後”が無い。さっきのロッカーの雰囲気から察せられるように彼女には味方も居ない。それは彼女自身だって分かっている筈なのに、どうして辞退しようとしないのか、抑もどうして特変破りを申し込んでしまったのか、流石にそこまでは俺も分からない


Face_yukina

【雪南】

……さあ、真理学園に突如舞い降りた悪の親玉殿。此度の小さな勇者、どう料理するおつもりで?


Face_kenichi

【謙一】

……つってもなぁ……俺らが負けてやる道理も無いし、何にせよ三重がそういう選択したんなら、それをどうこう云う権利もねえ。学園長も一般学生のことは「金魚の糞」程度にしか見てなさそうだし、慈悲を分けてやることもないんだろう……つくづくとんでもない学園に入学しちまったもんだと思う外無いな


Kenichi

 だけどこの学園に入学し、特変として生活することによって俺も大切なものを得ている。ぶっちゃけ三重よりもハイリスクを犯して俺は決断し、作戦を練り、一般学生を蹴散らしてきたんだ。
 今更、悪者を躊躇うつもりもない……。俺も三重も、この学園に所属する者として闘うことにした、それも自分の意思で……そこに変化が無いのならば、もう俺が何か云えるわけがないのだ。


Face_kenichi

【謙一】

対策は今から考えるが、返り討ちにするさ。それが無謀であっても立ち向かってきた挑戦者に対する礼儀ってやつだろ


Face_mikan

【美甘】

……どうかな


Face_kenichi

【謙一】

ん――?


Face_yukina

【雪南】

お?


 ……暫く、沈黙していた堀田美甘が。
 呟いた。


Face_mikan

【美甘】

……特変の在り方だって……結局は、まだ定まってないだろ


Face_mikan

【美甘】

だったら……それだって、試して、良いはずだ


 声量とは裏腹に、
 瞳には膨大な熱を宿して――



timeskip

290604

Stage: GAC 204会場


Face_kokona

【栞々菜】

…………


Face_noname

【女子】

……よりにもよって、部活中の休憩時間を使って、特変破りだなんて……馬鹿過ぎるでしょ栞々菜……


Face_noname

【男子】

どうしても、監督に見てもらたかったんだろうな……女子部の力を、認めさせるために


Face_noname

【男子】

でも相手は、特変だろ。仮にバスケそのものの実力は三重が勝ってても、作戦を練ってくる筈だ……どんなに汚くても


Face_noname

【監督】

…………」


Face_noname

【女子】

ッ――!! き、来た……特変が来た!


 ――ついに、本番の時。
 何の躊躇いもなく部活のユニフォームを着て、ただ直立していた三重栞々菜を、入室と同時に見据える――


Face_mikan

【美甘】

…………


 ただ一人の、「勝負着」の女子。


Face_kenichi

【謙一】

ども、明石顧問。部活中にすいません、特変です


Face_noname

【監督】

…………」


Face_so

【奏】

うっわ超怖ぇえ!! コミュニケーション円滑にやるつもりないよこの監督! ベタに前時代のおっちゃんだよ譜已ちゃん!!


Face_fui

【譜已】

わ、私盾にしないでぇ~……


Face_saya

【沙綾】

うっわ、汗の臭い半端ないっ! ファブっときなさいよ休憩中なら


Face_shiho

【志穂】

バスケなんて最近やってないなー。要はパッと走ってパッと投げてりゃいいやつだろ?


Face_noname

【監督】

…………」


Face_noname

【男子】

「「「…………」」」


Face_kenichi

【謙一】

来て早々ヘイトを荒稼ぎするのマジ止めてほしいんだけど君たち


 特変は、計6人来た。
 しかしそのうち5人はある意味分かりやすく、制服姿であった。
 今から運動するんだ、という気合いを感じる服装であるのはたった一人、それをバスケ部は理解する。


Face_noname

【女子】

う、うそ……


Face_noname

【女子】

まさか、本当に「マンツーマン」……!?


Face_kokona

【栞々菜】

…………


Face_mikan

【美甘】

三重栞々菜……お前の相手は――


Face_mikan

【美甘】

堀田美甘、サシでやる


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