「特変」結成編2-5「束の間なお茶会(4)」

あらすじ

「それらの建物を繋ぐ建物が、学園大道路のど真ん中に設置されている……空中に。」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章5節その4。誘い主である美玲さんに附いて行く謙一くん。その道中に、彼は初めて真理学園の「中心」に足を着けたのでした。セントラルホールのチュートリアル性質強めの回です。

↓物語開始↓

timeskip

Stage: 一般棟2F 空中歩廊棟廊下


Face_kenichi

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Face_mirei

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 楽な4限終わりだというのに二人はめちゃくちゃ疲れていた。
 そんな二人、何にも仕組まれちゃいなかったエレベーターに乗り、2Fで降りてすぐそこにあった廊下を歩いていた。
 木製色の明るい一般棟に繋げられたその道は、白と黒を基調にモダンが冷たく彩られていた。
 美玲の革靴が、よく響く。高い天井、遙か奥まで続く通路……自然と音につられ、謙一もこの場所の特異性に目を遣った。


Face_kenichi

……よくよく考えてみれば、放課後以前に移動教室でエレベーター使ってたんだ。安全は証明されていたってことか……


Face_mirei

その……ごめんね、いやホントにコレはごめんねって云って良いよね、うん……ごめんね……


Face_mirei

差出人の名前を書き忘れてなければ、あんなドキドキすること、お互い無かったもんね……


Kenichi

 要は、昨日のお礼がしたいとかで、放課後一緒にある場所まで来てほしい……とのことだったのだ。エレベーター繋がりで美玲さんじゃないかっていう推測もしようと思えばできただろうに、悪い方に疑い過ぎてしまったか。


Kenichi

 まあ美玲さんがドキドキし過ぎて体調急変するような事態にはならなかっただけマシと考えよう。もうコレは忘れよう。そんなことより……


Face_kenichi

俺、初めて来たんですよね此処


Kenichi

 噂には聞いていた、真理学園の最大の名所。



Kenichi

 真理学園は「森に学園の要素が散りばめられている」学園だ。具体的には、真ん中に片側二車線の学園大道路を挟んで、翠さんの森が盛大に展開されており、児育園やらC等学校やら、NYホールやらこの一般棟やらが建っている。
 そしてそれらの建物を繋ぐ建物が、学園大道路のど真ん中に設置されている……空中に。


Kenichi

 「空中歩廊棟」は、その本質は名の通り廊下であり、真理学園の彼方此方の建物を繋いでいる色々と巨大な通路なのだ。
 真理学園自体が広いから、例えば一般棟からC学棟までこの歩廊で歩くとなると、下手すれば片道20分はかかるらしい。とはいえ普通に地上に出て森を抜けて学園大道路を通ってまた森に入って……なんてことをやるよりはずっと効率の良いアクセスなわけだ。


Face_mirei

初めてって……モーニングコールは?


Face_kenichi

礼拝には一度出たことあるんすけど、その時はクラス単位で野暮用が発生してたもんで、それで地上に降りてホール行ったんですよ


Face_kenichi

でも沙綾が面倒臭いって駄々こねて、それで特変権力で特変は礼拝不参加でOKってことにしちゃったんです。だから正規ルートを使ってNYホールに行ってないどころか、礼拝すら受けてないんですよ俺ら


Kenichi

 ミッションスクールの醍醐味の半分以上を躊躇いなく侮辱する俺たちである。


Face_mirei

そっかー……私、好きなんだけどなーモーニングコール。メシニストではないけど、ああいう落ち着いた時間って朝に取れるのはとても貴重だと思うの


Face_mirei

井澤くんなんか、すっごく忙しい毎日を送ってるから、尚更オススメするかなー


Face_kenichi

なるほど。そう熱弁されると参加してないのが勿体なく思えてきますね。そもそも参加必須の筈ですけど


Face_kenichi

ちょっと考えてみようかな……いつか礼拝出る時の為にも、ここのルートを覚えておくべきか


Kenichi

 8時30分のモーニングコールは、児育園からA等学生まで、4種の学生(児童)と職員らが全員NYホールに集まり行われる。何千人という規模が集まるのだから混乱もしやすかろうが、それは毎日続けられている。それは朝からトランシーバーを持って頑張る教職員や宗教班の学生の努力は勿論だが、そのルートを全て繋げている空中歩廊棟がなければまず予定通りに礼拝へ進めることはできないだろう。


Kenichi

 特に……空中歩廊棟の、中央の球状空間――



Stage: セントラルホール



Kenichi

 すなわち空中歩廊棟の本体と云ってもいい「セントラルホール」のコンバート力が上手くできてるよな。


Face_kenichi

すっげえ……都会に来てる気分だぜ


Face_mirei

学園だよ。学園の、真ん中。自動車が走る道の真上


Face_mirei

このセントラルホールは沢山の段差道でできてる。C学棟だと1F、児育園棟だと3Fから廊下が繋がって……このセントラルホールで上り下りしながら、NYホールの連絡歩廊に


Face_mirei

だけどただ連絡通路ってだけじゃなくて、このホールは見ての通り、色々と使えそうでしょう? 例えばど真ん中のステージでは360°お客さんに囲まれた状態での軽音楽ライブができるの。別に軽音楽じゃなくても、盛り上がりそうなイベントがあるなら、皆ここを使いたがるよ


Kenichi

 学園大道路頭上の巨大な球体……その内側には通路が何段にも貼り付けられており、基本はこの壁沿いの通路たちを歩いたり昇降したりする。一方で球体の底面部……というわけじゃないんだろうが、最下層の中央にはちょっとしたステージがあり、まるでどこぞのコロッセウムの如くパフォーマンスもできるわけだ。何故か俺は此処で何かしらの公開処刑で何百もの瞳に晒される予感がしなくもない。


Kenichi

 ……何か、怖くなってきたな!


Face_kenichi

じ、じゃあ行きましょうか……どこをどう行けば目的地に?


Face_mirei

7Fまで上がろ


 実にややこしい会話だが、例えば一般棟2FとC学校棟1Fでは、後者の方が高度が高かったりする。それはC等学校エリア自体の高度が一般棟よりも高いからである。
 天井高さ約5mの通路が幾つも敷き詰められたセントラルホールは、全10F構成となっており、1Fは美玲が云ったようなステージや人工芝などが中央に広がるエリアとなっている。2Fから10Fは球面に沿って円周するよう設置された通路ばかりの面で、中央部には歩廊が広がらず1Fのステージを覗き見ることができるようになっている。井澤謙一が何となくコロッセウムと表現したのは(観客席を含めて)円形競技場を思い出したからであろう。
 NYホールの連絡通路は二つある。第一連絡通路がセントラルホールの2Fに、第二連絡通路が5Fにある。一般棟2Fと繋がっている一般棟連絡通路はセントラルホールの4Fにあり、C学棟と繋がっているC学棟連絡通路はセントラルホールの6Fにある。よってモーニングコール時、混雑緩和のためにA等及びB等の学生は連絡通路にて整列を調整し、セントラルホール4Fに到着したところで、NYホールの混雑状況によっては無駄にゆっくり外周しつつ、2Fへ降りてNY第一連絡通路を通り礼拝場(NYホール下段会場)に到着する。C等学生はセントラルホール6Fに到着したら、まず混雑はしないのでまっすぐ5FのNY第二連絡通路を通り、上段会場に到着し、シートに着席する。因みに唯一児育園生たちは学園大道路に出てそのまんまNYホールに向かった方が早く、ホールに着いてから階段で上段会場へ向かう。モーニングコール時に仕事の残っていない職員や宗教班も同様に上段会場にて着席する。
 以上のような結構複雑な、実質モーニングコールの便宜化の為に建築されたと云っていいセントラルホールの周囲連絡通路(場合によっては観客席)の主要な説明である。


 ただし、ここからが今謙一と美玲が歩いているような、主要でないコースの説明となる。


Face_kenichi

C等学校とは6Fで繋がってるんですよね? じゃあそれより上って?


Face_mirei

本来の歩廊の使い方からは逸してるんだけど、例えば物置だったり、秘密の会議だったり


Face_kenichi

要は何も予定は立てずに取りあえず道は作っておきましたってことか……


 7Fより上のフロアにおいて連絡通路は一つしかなく、モーニングコールで使われる予定もないこれらの道はがさつながら教職員からは物置扱いされ、学生たちからはその時その時の私用スペースとして使われたりもする。観客席としてもステージは遠いので、矢張りついでに付けた道たちの価値は相対的に低いと云わざるを得ない。


 が、7Fは少々例外で、二人は此処と繋がった、ある連絡通路へと進んでいった。



Stage: とある連絡通路



Face_mirei

ごめんね、4限終わりなのに……こんなに疲れる道歩かせて――


Mirei

 ってアアッ! またテキトウなごめんを云っちゃった……!!


Face_kenichi

……別に、どうせ暇でしたし、夜までに帰れれば俺としては問題ないですよ


Mirei

 ……気にしてない、かな。
 いや、でも……どうかな、どうだろ……


Face_mirei

じーーーーーー……


Kenichi

 何だろう、突然すごく視線を感じる。真横から、見上げるような……
 ってどう見ても美玲さんじゃねえか。


Face_kenichi

えっと、どうしました……?(←横見る)


Face_mirei

ふっわああぁああ何でもないよー??


Kenichi

 ベタながら口笛の吹けてない美玲さん。ていうかこの文脈で口笛とか意味不明なんですが。その時点で何でもないことはないの暗示してますが。
 ……そんな追及はイジワルな気もしたので、別の話題にでもしようか。


 一本道を二人は歩き続ける。
 天井や壁はガラス張り、自分が今大道路を横に逸れ森林の真上を歩いていることを認識しながら、謙一は別に気になってたわけでもない話題を口笛のできていない美玲へと投げる。


Face_kenichi

そういや俺たちは三者面談とか誰も無いけど、特Bは?


Face_mirei

え? あー……多分、無いかなぁ


Face_kenichi

え、何その曖昧すぎる認識。自分のクラスなのに


Face_mirei

あははは~♪☆


Face_kenichi

笑って誤魔化さない


Face_mirei

と云われましても、特Bにも担任が居なくて……連絡は来ないし、誰も訊きに行かないしで……まぁこの5日間全然何にも話が来てないから、きっと大丈夫なんだと


Face_kenichi

楽観的だなぁ。ま、小松や徳川みたいなしっかり者も居るわけだし、酷い事態にはならないか


Face_mirei

私もしっかりしてるタイプだと思うんですが(←挙手)


Face_kenichi

であるならばまず名前を書くことを忘れないでください


 ……テキトウな話題を続け、二人が十数分かけて到着した、井澤謙一にとっては全く未知の領域……地上であれば学園の深い森林のど真ん中に立っている施設。
 連絡通路を歩き終えて、自動ドアを越えて、井澤謙一が見た光景――


Face_kenichi

ッ――!!


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