「特変」結成編2-5「束の間なお茶会(3)」

あらすじ

「放課後、6Fエレベータ前でお待ちください……と」スタジオメッセイのメイン作品『Δ』、「「特変」結成編」2章5節その3。何か手元に届いた手紙。その解釈がねじ曲がってちょっと可愛い事件が起こります。前回と違って何も考えず読める回かと。

↓物語開始↓

Stage: 特変教室



AM10 45


Face_so

【奏】

なんか暇だぁ~……4限終わりなのはいいけど、それが5日連続になると謎の倦怠感来るよね~


Face_so

【奏】

遊び盛りの学生的には嬉しいことの筈なのに~


Face_saya

【沙綾】

楽しいかどうかじゃないのよ、大事なのは楽かどうか。私みたいに充実したいならそういう板挟みな不満感はガン無視して忘れ去ることね後輩


Face_so

【奏】

いや別にサヤパイなんかになりたくないし。サヤパイなんかになっちゃったら色々と終わりだし


Face_so

【奏】

光雨~、何か暇潰しのもの用意して~


Face_ku

【光雨】

じゃあ、こんな動画見つけてみたのー! 再生なのー!(←壁に画面形成)


Face_so

【奏】

暗幕しめてー! あと電気消してー! ……ってうわー何これ!?


Face_fui

【譜已】

ふ、ふぇぇぇぇぇぇ……!!?


Face_nagi

【凪】

…………(←無言で譜已の眼を隠す)


Face_nono

【乃乃】

女性がたが基本全裸で踊ってますね。どこかの民族の儀式でしょうかね


Face_mikan

【美甘】

ていうか周りで普通に服着た、どう見ても都会人な男たちがカメラ回しまくってるんだけど……え、AV……? こういうジャンルのもあるのか……?


Face_joe

【情】

フン……クオリティの低いAVなことだ。文明観察のやらせなら、より複雑な行程を組み象徴を明示すべきだろうが。何がしてえんだコイツらは


Face_saya

【沙綾】

つまり、どこの人たちかは知らないけど、老若関わらず沢山女集めて、1,2時間どっかの平原を歩かせたり踊らせたりしたってところかしらねー全裸とボディペイントで。肌の色とかバラツキあるし、きっと凄いグローバルな村社会ね


Face_so

【奏】

このショッキングな映像1時間20分もあるんだけど……こんなのずっと見てろってゆーの光雨!? リセットステージ全部使って何をリセットしろっていうの!?


Face_shiho

【志穂】

ごがあぁあああああ(←爆睡)


Face_kenichi

【謙一】

何だかんだで一緒に騒いでるよなぁこいつら


Kenichi

 多少人数あるクラスでよくあるグループ形成とかこいつらには無いんだろうな……仲は決して良くないが、引け目を感じるほどの譲歩価値が無いからか、皆お構いなしに会話(7割くらい喧嘩)している。クラスとしてまとまっているとも見れるだろうし、散らばってるとも云う。


Kenichi

 まぁどっちにしても後先分からん俺は様子見を決め込むしかないのだから、結局退屈だろうが何だろうが4限で終わってくれるこの三者面談期間は負担も少なく有難いことこの上ない。すぐ帰って亜弥と遊べるわけだし。


Kenichi

 ……ただ、今日の放課後は一つ予定ができてしまったから、すぐには帰れなさそうなのだが。


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Face_kenichi

【謙一】

…………


 暗い教室でショッキングな民族儀礼擬き低レベルAV映像に舌鼓を打つクラスメイトを尻目に置きつつ、謙一は封筒を取り出した。
 既に内容は何十回と見直した、とても簡潔なものであった。


Face_kenichi

【謙一】

放課後、6Fエレベータ前でお待ちください……と


Kenichi

 マンガでよくあるのは、朝登校したら自分の下駄箱の中、上履きの上ど真ん中に添えられたちょっぴりピンクに染まった封筒……その中身が「放課後、屋上にてお待ちしております」という名無しの手紙。


Kenichi

 名無しってところがミソで、冷静に考えて結構迷惑な類いのこちらの手紙、解釈は色々できよう。
 例えば恋愛マンガならば可成りの確率でラブレターだ。一度コレを疑ってしまうと、放課後までの約6時間を犯人推測で悶々とさせられることとなる。思春期男子には結構なテロ攻撃だと云えよう。
 一方でサスペンスドラマとかだったらコレはすんごい確率で犯人からの呼び出し。コレを一度受け取ると、犯人的に自分は都合が悪い存在であり、指定場所に行くと消されるなり濡れ衣として利用されるなり、ロクな未来が待っていない。


Face_kenichi

【謙一】

指定場所は、エレベータ……


Kenichi

 すぐそこだ。乗るとこもエレベータ乗っても狭くてロマンは無い。AV的にはここ最近人気になりつつジャンルではあるが、どちらかというと俺のイメージはグロテスクなシーンだな……ほら、首だけドアに挟まって胴体はリフトだったら安全装置が機能しなきゃそのうち引き千切られるし、突如リフトワイヤーが全部切れて6Fから一気にリフトが落ちたら中にいる人はほぼ確実に死ぬし。


Kenichi

 極めつけに俺がこの学園においてラブレターみたいな平和なモノを受け取るような存在なのかっていうと、そりゃ断じてNOだろう。俺は特変であり、しかもリーダーみたいな感じだから誰からも敵と見なされ殺意を向けられる立場なのだ。


Kenichi

 可愛らしい筆跡のお待ちくださいだが、残念ながらこの手紙は地獄への片道切符ってことだ。何て素晴らしい火曜サスペンスの馥郁。


Face_kenichi

【謙一】

こんなユニークな奇襲をしてくるとはな……


Kenichi

 しかも最も戦力の低いであろう俺一人を呼び出して、エレベーターという密室に閉じ込め暗殺するというのだ。


Kenichi

 これは充分に警戒していかないとな……。


 ということでビックリするくらい勘違いを疾走させる井澤謙一の疾走する思考が虚しく散る放課後まで時間を進めることとする。



timeskip



Face_kenichi

【謙一】

……直ってんな……


Kenichi

 無茶振りをした俺が云うのもなんだけど、エレベーターって依頼して1日経たずに修理完了させられるんだな……。


Kenichi

 良かった、コレで美玲さんが普通に学園生活を送ることができる……そう思っていたのに、いきなり殺人の為に利用されるとはな。


Face_kenichi

【謙一】

……ん、待てよ?


Kenichi

 エレベーターを使うって……もしここに仕掛けを作っているのだとしたら、その仕掛けは既に組み込まれている筈で……
 普通に考えて犯人が中に乗るわけがない。きっと監視カメラを中に仕組んで、そこから俺が6Fから搭乗したタイミングで落下させるんだろう。それが一番考えられるやり方……だが。


Kenichi

 もし、「中に搭乗したら自動で落下させる」装置であったなら?


Face_kenichi

【謙一】

このエレベーターは業者さんが使うばかりで、あとは先生や物資委員がたまに運搬用に使う……基本的に一度も使われない日の方がずっと多いって聞いた。だから緊急な修理とは見なされてなかったのだし……


Face_kenichi

【謙一】

それを考えて監視カメラというコストを節約していたら……


Face_kenichi

【謙一】

美玲さんはその作戦に考慮されているのか――?


Face_mirei

【美玲】

え、わ、私がどうかしたの……?


Face_kenichi

【謙一】

……!!!


 ガシッ!!


 謙一はちっちゃなお姉さんの両肩鷲掴みで視線をストレートにぶつけた。


Face_mirei

【美玲】

……!?!?


Mirei

 えっ、なに、何でいきなりこんな、井澤くんの顔が近くに……!? 肩も、抱かれちゃって――


Mirei

 抱かれちゃって!!??


 ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ。


Face_mirei

【美玲】

い、井澤、く――


Mirei

 どどどどうして、こんな、井澤くん……!? 私は、ただ、お話がしたいから、取りあえずお手紙を書いて、ポストに――


 ピンク色に染まった鼓動と思考で鑓多美玲がある事に気付く。


 朝のお手紙(下駄箱的な場所に)

  ⇒「放課後」(女の子が男の子に)

    ⇒「お待ちしています」(名無しで手書き)


Mirei

 ――コレって告白の流れじゃないですか!!?


Face_mirei

【美玲】

わ、わわわわ私ぃ……!?


Mirei

 今から彼に告白するんですかあぁああ……!?(←錯乱)


 ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ――


Mirei

 ど、どどどどどうしよう、全然、そんなつもり、無かったのに……! きっと井澤くん、そこまで解釈しちゃって、それで一生懸命に考えてくれちゃって、それで今本気の答えを出そうとしてくれてるんだ……!?


Mirei

 どどどうしッ、ホントどうしよう流れから考えて準備してきてる井澤くんより先に私が云わなきゃな流れだよね、でも何を云えばいいの!? あれ、そもそも何で待ち合わせて――ってソレを云わなきゃいけないよねどう考えても!!


Mirei

 でも、コレ、云ったら井澤くん、場合によっては凄く落ち込んでしまうんじゃ――あれあれ、ていうか今何で井澤くんに肩抱かれてるの!? 順番は!?


 ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ――!!!


Mirei

 あぁあああんどうしよおぉおおおお……!!!! もうワケが分からないよおぉおおおおおおおお!!??


 主治医が見たらガチ勢の走り幅跳び並みでドクターストップをかけそうな勢いのまま混乱した美玲の思考は、己の鼓動音が集中を乱し、井澤謙一の相対的に大きく強い両手が熱を伝えショートさせるようだった。


 しかしそんな中でも――


Face_kenichi

【謙一】

――美玲さん


Face_mirei

【美玲】

……!!


 彼の声は、全く別の静かな通路を伝い、鑓多美玲のど真ん中を貫くようだった。
 それはあらゆる抵抗や対処を停止させ、最早次の彼の言葉を待つ以外を許さないのだった。


Face_mirei

【美玲】

ッ……――


Mirei

井澤……くん……


 短時間の無音静寂――




 ――以下、結末。


Face_kenichi

【謙一】

――このエレベーターには爆弾が仕込まれている!! 乗ってはダメだ!!


Face_mirei

【美玲】

どういうこと!!?


 お互いすぐに誤解は解けたが、暫く本格的に立ち直れなかったのだった。


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